逆質問を「事業等のリスク」から作る方法|会社が自分で書いた弱点を使う

逆質問で困るのは、聞きたいことが本当は無いからではなく、材料が無いからだ。材料は有価証券報告書の「事業等のリスク」にある。会社が自分で書いた弱点なので、外部の批評にならず、しかも採用サイトには載っていない。この記事では、リスクの記述を質問に変換する型と、そのまま使える例、避けたほうがいい聞き方を示す。

なぜリスクの章が逆質問に向くのか

「事業等のリスク」は、金融商品取引法に基づいて有価証券報告書に記載が求められる項目だ。会社が自分で「これがうちの弱点だ」と書いている。

ここが逆質問に向く理由は3つある。①失礼にならない。会社自身の記述を引用する形になるので、外部からの批評にならない。②他の学生と重ならない。採用サイトにも説明会にも出てこない材料だからだ。③会話が続く。課題の話は「どう思うか」と逆に聞かれやすく、自分の考えを述べる余地がある。

そしてもう一つ。リスクの章を読んでいる学生はほとんどいない。読んだという事実そのものが、調べ方の本気度を示す。

注意点は、リスクの章が定型文で埋まっている会社もあることだ。「為替変動」「自然災害」「感染症」だけが並んでいる場合は、その会社固有の記述が少ないので、別の材料(対処すべき課題やセグメント情報)に切り替えたほうがいい。

読むのは上から3つだけ

リスクの章は10項目以上あることが多いが、上から3つを読めば足りる。多くの会社は重要度の高い順に並べており、その会社固有の事情は上位に来る。

探し方はCmd+F(WindowsはCtrl+F)で「事業等のリスク」と検索する。2026年3月期から章立てが変わった企業が多いので、章番号で探さないほうが速い。

読むときは「この会社にしか当てはまらない記述か」を基準にする。「為替の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります」は多くの会社に共通するが、「特定の顧客への売上依存度が高く」「原材料の一部を単一の供給元に依存しており」といった記述はその会社の構造を示している。

メモするのは1つでいい。志望動機で別の1つを使うなら、逆質問用に1つ残しておく形にすると、一貫しつつ重複しない。

変換の型:リスク → 打ち手 → 人

型は3段だ。①会社の記述を引用する ②自分の解釈を挟む ③人や仕事に接続して聞く。

①は「有価証券報告書の事業等のリスクで、〜と記載されていました」と、事実として置く。②は「〜という構造だと理解しています」と、自分がどう読んだかを示す。③で「その打ち手はどの部署が担っているのか」「新人がそこに関われる可能性はあるか」と、人の話に落とす。

③が肝心だ。リスクの話だけで終わると評論になる。「自分がそこで働く」という接続があって初めて逆質問になる。

所要時間は、リスクの章を読む5分と、質問を組み立てる5分。合計10分で2〜3個作れる。

そのまま使える質問例

特定顧客への依存:「事業等のリスクで、特定の顧客への売上依存度について記載されていました。同時に対処すべき課題では顧客基盤の拡大を挙げられています。新規開拓は成果が出るまで時間がかかる仕事だと思いますが、若手が担当を持つのは何年目くらいからでしょうか」

人材の確保:「人材の確保・育成をリスクとして挙げられていました。一方で有価証券報告書の平均勤続年数は同業他社より長く、定着はできているように見えます。確保が難しいのは、特定の職種や領域ということでしょうか」

特定事業への利益集中:「セグメント情報を拝見すると、利益の大半を1つの事業が稼いでいる構造でした。事業等のリスクでも、この事業の市場環境について触れられています。他事業を伸ばす計画はどのように進めていらっしゃいますか」

規制・制度変更:「規制の変更をリスクとして挙げられていました。制度が変わったときに、現場では実際にどのような対応が発生するのでしょうか。入社後にその対応に関わる可能性はありますか」

いずれも「有報を読んだ」「自分で解釈した」「働く前提で聞いている」の3つが入っている。

避けたほうがいい聞き方

①批判に聞こえる言い方。「〜という問題を抱えていますよね」ではなく「〜と認識されていると拝見しました」にする。主語を会社の記述に置く。

②調べれば分かることを聞く。有報や決算説明資料に答えが書いてあることを聞くと、読んでいないことが露呈する。逆効果になる。

③答えが「はい/いいえ」で終わる聞き方。「〜は課題だと考えていますか」では会話が続かない。「どのように」「何年目から」「どの部署が」と、開いた形にする。

④数字を並べるだけ。「ROEが◯%で営業利益率が◯%ですが」と前置きが長いと、暗記の披露に見える。数字は1つで足りる。

⑤待遇の話をリスクに絡めて聞く。「業績が悪化した場合、給与はどうなりますか」は、調べた形跡があっても印象が悪い。待遇は別の場で確認する。

リスクの章は、業界研究にもそのまま使える

同業3〜5社のリスクの章を並べると、業界共通のリスクと、その会社固有のリスクが分離できる。全社が同じことを書いていればそれは業界構造の話で、1社だけが書いていればその会社の事情だ。

これは志望動機にも効く。「業界共通の課題に対して、御社だけが〇〇という打ち手を取っている」という切り口は、1社だけ見ていては出てこない。

所要時間は1社5分、5社で25分。逆質問の材料を作るついでに、業界研究が終わる。

よくある質問

Q. 事業等のリスクはどこにありますか。
A. 有価証券報告書の第2【事業の状況】の中にあります。Ctrl+F(MacはCmd+F)で「事業等のリスク」と検索するのが早いです。
Q. リスクが多すぎて選べません。
A. 上から3つに絞ってください。重要度順に並んでいることが多く、また自分の志望職種に関係するものを優先すると自然に絞れます。
Q. 面接官がそのリスクを知らなかったらどうしますか。
A. 「有価証券報告書に記載されていた」と出典を添えれば問題ありません。現場の方が全ての開示を把握しているとは限らないので、丁寧に前置きすれば失礼になりません。
Q. 逆質問はいくつ用意すべきですか。
A. 3つ用意して、場の流れで1〜2つ使うのが現実的です。うち1つをリスク起点にすると、他の学生と重複しにくくなります。
Q. 事業等のリスクはどこにありますか。
A. 有価証券報告書の「事業の状況」の中にあります。2026年3月期から章立てが変わった企業が多いので、Cmd+F(Ctrl+F)で「事業等のリスク」と検索するのが確実です。
Q. リスクの内容を聞くと、ネガティブな印象になりませんか。
A. なりません。会社自身が法定開示に記載した内容だからです。ただし「問題を抱えていますよね」ではなく「〜と認識されていると拝見しました」と、会社の記述を引用する形にしてください。