非上場企業のIR情報はどこにあるか——存在しない理由と、5つの方法
志望企業のIR情報を探しても出てこない。その理由の多くは、探し方が悪いのではなく、そもそも作られていないことにある。非上場企業には投資家に開示する義務がないからだ。ただし完全に手詰まりではない。非上場でも有価証券報告書を提出している企業があり、親会社の有報から子会社の実数が読めることもある。この記事では、その5つの方法を順に示す。
なぜ非上場企業にIR情報がないのか
IR情報は投資家向けの情報だ。株式を証券取引所で売買できる上場企業には、投資家保護のために情報を開示する義務がある。有価証券報告書は金融商品取引法、決算短信は取引所の上場規程に基づく。
非上場企業には、その義務がない。株主が創業家や親会社に限られていれば、投資家に向けて説明する必要がないからだ。だからIR情報は「見つからない」のではなく「存在しない」。
この違いを理解しておくと、探す時間の使い方が変わる。何時間検索しても出ないものは出ない。早めに次の手に切り替えたほうがいい。
方法①——非上場でも有報を出している企業がある
まずEDINETで社名を検索する。上場していなくても、過去に有価証券届出書を提出しているなど一定の条件を満たす企業は、有価証券報告書の提出義務を負う。
実例として、三菱UFJ証券ホールディングスやSBI証券は上場していないが、有価証券報告書を提出している。この場合、上場企業とまったく同じ粒度で従業員数・平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与が読める。
検索して出なければ次の方法に進めばいいだけなので、コストは数分だ。諦める前に必ず一度検索する。
方法②——上場している親会社の有価証券報告書を読む
志望先が上場企業の子会社なら、これが最も強い方法だ。親会社の有報の「従業員の状況」には、セグメント別または主要な子会社別の従業員数が記載される。
さらに多くの有報には「最大人員会社の状況」という項目があり、グループで最も従業員数の多い会社の平均年間給与まで載る。非上場の事業会社の給与を、公的な資料から読める唯一の正攻法だ。
金融業界がこの方法の典型例になる。上場しているのは持株会社だけだが、その有報から三菱UFJ銀行914万3,000円、三井住友銀行933万8,000円、みずほ銀行870万1,000円といった実数が読める。証券会社も同様で、野村證券1,325万3,000円は野村ホールディングスの有報、SMBC日興証券1,153万7,000円は三井住友フィナンシャルグループの有報、みずほ証券1,134万3,000円はみずほフィナンシャルグループの有報から取れる。
従業員数で2番目に多い会社まで記載されることがあるので、目当ての会社が最大でなくても載っている可能性がある。金融・保険・小売・テレビなど、事業会社が非上場の業界では必ずこの節まで読む。

方法③〜⑤——決算公告・求人票・同業からの推定
③決算公告——株式会社には決算公告の義務があり、官報、日刊新聞、または自社ウェブサイトで貸借対照表(大会社は損益計算書も)を公告している。売上や利益の規模は把握できる。自社サイトで公告している会社なら「企業名 決算公告」で見つかることがある。
④求人票と募集要項——初任給、賞与の実績月数、平均残業時間、有給取得率、離職率。新卒採用の募集要項には、有報にない情報が載っていることがある。特に若手の待遇を知りたい場合、有報の全社平均より求人票のほうが的確だ。
⑤同業の上場企業からの推定——同じ業界・同じ規模の上場企業の数字を見れば、水準の見当はつく。あくまで推定であり、面接で断定的に言うべきではないが、相場観を持って臨むかどうかで質問の質が変わる。
面接でどう使うか
非上場企業の面接では、調べた形跡そのものが評価される。上場企業と違って情報が整っていない中で、どこまで調べてきたかが見えるからだ。
たとえば「親会社の有価証券報告書を拝見しました」という一言は、それだけで他の学生と差がつく。そのうえで「グループ全体では〇〇の事業が利益の中心だと理解しましたが、御社の位置づけはどうなりますか」と聞けば、会話が具体的になる。
同業の上場企業と比べた視点も有効だ。「同業の上場企業と比べると、御社は〇〇に強みがあると理解しています」という切り口は、非上場であることを不利にせず使える。
注意点として、上場廃止した企業の有報は最後の提出年で止まる。最新の提出年月日を必ず確認し、何年時点の情報かを把握しておく。
外資系の日本法人はどうするか
外資系の日本法人は、その多くが非上場なのでIR情報がない。ただし本国の親会社が上場していれば、その国の開示制度で全社の情報は読める。米国ならSECのEDGAR、欧州なら各国の開示システムだ。
ただし注意点がある。本国の開示には日本法人単体の数字は通常含まれない。全社の売上・利益・従業員数は分かるが、日本での待遇や事業規模は出てこない。
使えるのはセグメント情報の地域別開示だ。「日本」または「アジア太平洋」の区分で売上が開示されていれば、その地域が全社に占める比重は分かる。会社にとって日本市場がどれくらい重要かの目安になる。
面接では「本国の開示で、アジア太平洋地域の売上構成を拝見しました」という切り口が使える。日本法人の情報が無いことを前提に、代わりに何を見たかを示す。
調べた形跡が、非上場ほど効く理由
上場企業は情報が整っているので、調べること自体は難しくない。だから差がつきにくい。
非上場は逆だ。情報が整っていないので、どこまで調べてきたかがそのまま見える。「親会社の有価証券報告書を拝見しました」の一言で、他の学生とはっきり分かれる。
そのうえで「グループ全体では〇〇の事業が利益の中心だと理解しましたが、御社の位置づけはどうなりますか」と聞けば、会話が具体的になる。面接官にとっても答えやすい質問になる。
注意点が1つ。上場廃止した企業の有報は最後の提出年で止まる。最新の提出年月日を必ず確認し、何年時点の情報かを把握しておく。数年前の数字を「現在の姿」として語ると、かえって印象を損なう。