子会社の年収の調べ方——親会社の有価証券報告書から読む
志望先が「〇〇株式会社(上場企業の子会社)」の場合、その会社自身の有価証券報告書は存在しないことが多い。だから検索しても年収が出てこない。しかし諦めるのは早い。親会社の有報の中に、子会社の数字が載っているからだ。この記事では、その載っている場所と読み方の手順を、実在の数字で示す。求人票にも口コミサイトにも出てこない水準が、公的資料から読める。
なぜ子会社の年収は検索で出てこないのか
有価証券報告書を提出するのは、原則として上場している会社だ。子会社は上場していなければ提出義務がなく、「〇〇株式会社 有価証券報告書」で検索しても存在しない。
口コミサイトの推定値はあるが、サンプルが偏っている上に、投稿者の役職も年次も分からない。求人票には初任給しか載らない。
確実な方法は1つで、上場している親会社の有報を開くことだ。親会社には連結グループ全体を説明する義務があるため、主要な子会社の情報が有報の中に含まれている。
手順——親会社の有報の「従業員の状況」を開く
1. まず親会社を特定する。子会社の公式サイトの会社概要に「株主: 〇〇ホールディングス100%」などと書いてある。
2. EDINETで親会社名(または証券コード4桁)を検索し、書類種別を「有価証券報告書」に絞って最新のPDFを開く。
3. Cmd+F(WindowsはCtrl+F)で「従業員の状況」を検索する。セグメント別または主要子会社別の従業員数が載っている。
4. 同じ節の少し先にある「最大人員会社の状況」を探す。ここが本命だ。
本命は「最大人員会社の状況」——事業会社の年収がそのまま載る
多くの持株会社の有報には、グループで最も従業員数が多い会社について、従業員数・平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与を記載する欄がある。これが「最大人員会社の状況」だ。
実例を挙げる。銀行はどこも持株会社しか上場していないが、この欄から三菱UFJ銀行914万3,000円・三井住友銀行933万8,000円・みずほ銀行870万1,000円という銀行本体の実数が読める。
証券も同じだ。野村證券1,325万3,000円は野村ホールディングスの有報、SMBC日興証券1,153万7,000円は三井住友フィナンシャルグループの有報、みずほ証券1,134万3,000円はみずほフィナンシャルグループの有報に載っている。5大証券は全社が非上場だが、全社の年収が公的資料で分かる。
従業員数が2番目に多い会社まで載せている有報もある。志望先がグループ最大でなくても、載っている可能性はある。
さらに、みずほFGやりそなホールディングスのように、主要子会社ごとの平均年間給与を同じ表に並べて開示している会社もある。この場合は複数の子会社の水準が一度に分かる。
落とし穴①——持株会社の数字と混同しない
有報の最初に出てくる「提出会社の状況」は、持株会社そのもの(本社機能の数十〜数百人)の数字だ。ここを志望先の年収と誤解すると大きくずれる。
実例では、同じグループ内で持株会社1,315万円(26人)と事業会社782万円(3,235人)が併存するケースがある。532万円の差だ。ネットの年収ランキングの多くは持株会社側の数字を転載している。
見分け方は従業員数で、提出会社の人数が連結の数%しかなければ持株会社型。その場合は必ず「最大人員会社の状況」まで読み進める。
落とし穴②——最大人員会社が志望先とは限らない
「最大人員会社」はあくまで人数が最多の会社であって、グループの中核事業とは限らない。
実例として、TBSホールディングスの最大人員会社は㈱TBSテレビではなく、学習塾を運営する㈱やる気スイッチグループ(1,459人・448万6,000円)だ。テレビ局の年収を知りたくてこの欄を見ると、まったく別の会社の数字を読むことになる。
欄の冒頭に社名が明記されているので、必ず社名を確認してから数字を読む。志望先の名前でなければ、その数字は使えない。
最大人員会社にも載っていなかったら
①セグメント別の従業員数と求人票を組み合わせる。親会社有報でセグメントの規模感をつかみ、待遇は募集要項の初任給・賞与実績で補う。
②同業の上場企業から推定する。同じ業界・同規模の上場企業の水準は目安になる。ただし面接で断定的に語らないこと。
③非上場でも有報を出している会社か確認する。三菱UFJ証券ホールディングスやSBI証券のように、非上場でも提出義務を負う会社が例外的にある。EDINETで社名検索するだけなので、先に試す価値がある。
非上場企業の調べ方の全体像は、関連ガイドの「非上場企業のIR情報」で詳しく扱っている。