東京応化(4186)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、東京応化を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「営業利益が43.2%増」です。
有報の数字(第96期)
- 売上高
- 2,370億円
- 純利益
- 333億円
- ROE
- 15.6%
- 従業員数(連結)
- 2,132人
- 従業員数(単体)
- 1,555人
- 平均年間給与(単体)
- 973万円
- 平均年齢
- 40.7歳
- 平均勤続年数
- 16.7年
出典:東京応化の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
東京応化工業を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、東京応化工業に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは東京応化工業の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
結論から言う。東京応化工業は、半導体の材料に絞って稼ぎ、中期計画の目標を前倒しで超えつつある会社だ。
知っておきたいことは3つある。
2025年12月期は、売上2,370億円、営業利益473億円でどちらも過去最高だった。中期計画の最終年度(2027年12月期)のROE目標13.0%も、すでに15.6%で超えた。
同じ年にドイツの会社を買い、装置事業を売った。純利益333億円には、この売却による特別利益が含まれる。
世界4強のうち、上場して半導体材料に絞っているのは東京応化だけだ。売上は材料の2部門にほぼ集まっている。
この記事では、会社が何に賭け、数字のどこを割り引いて読むべきかを確かめる。
第1章 東京応化工業は何に賭けているのか
1-1. ROEの目標を、前倒しで超えた
ROEは、株主から預かったお金でどれだけ利益を出したかを示す指標だ。会社自身が経営指標に置いている。
中期経営計画「tok中期計画2027」は、2027年12月期の目標を掲げている。売上高2,700億円、営業利益480億円、ROE13.0%である。
直近期のROEは15.6%で、前期の11.8%から上がった。最終年度を待たずに、ROEの目標は超えた。
ただし、15.6%をそのまま本業の力とは読めない。純利益には装置事業の譲渡益が入っているからだ。有報は営業利益の増加も挙げており、本業も伸びてはいる。
逆質問に使える。「ROEは目標を超えましたが、特別利益を除いても13%を保てる見通しですか」と聞ける。
1-2. ドイツの会社を買い、装置事業は売った
2025年は、買う動きと売る動きが同時に起きた年だった。
買ったのは、ドイツのmicro resist technology GmbHだ。全株を持つ完全子会社にした。狙いは、欧州の顧客に近づくことと、同社の技術との融合である。
売ったのは装置事業だ。譲渡の特別利益が入り、純利益は333億円(前期比+47.0%)で過去最高になった。
装置は売り切りで、材料は使うたびに繰り返し買われる。材料の商売に集中する判断だと読める。
志望動機と逆質問に使える。「装置を譲渡して材料に集中した背景は何か」と聞くと、戦略を理解していると伝わる。
1-3. 狙いは「先端レジストのシェアNo.1」
フォトレジストは、半導体の回路を描くための感光材料だ。微細化が進むほど、高度な品が必要になる。
会社は成長の柱を「先端レジストのグローバルシェアNo.1」と明記している。投資もそこに集まっている。
国内では郡山工場の製造棟に200億円を投じる(既支払は約126億円)。韓国では検査棟が竣工し、平澤市で高純度化学薬品の新製造棟が着工した。韓国にはサムスンなどの顧客がいて、2012年に合弁会社も設けている。
ただし、顧客は世界の巨大半導体メーカーだ。価格交渉では不利になりやすい。だから首位を取ることに意味がある。
志望動機の根拠になる。「首位を狙う先端領域で、自分は〇〇として貢献したい」と話せる。
1-4. 売上は材料の2本柱に集まっている
2025年12月期の売上は、2つの部門でほぼ二分される。エレクトロニクス機能材料が1,247億円(52.6%)、高純度化学薬品が1,094億円(46.2%)だ。
前者の中核は、先端のフォトレジストだ。後者は、洗浄や現像に使う薬液を扱う。どちらも半導体の製造工程で使われる。
この年は売上が+17.9%、営業利益が+43.2%伸びた。営業利益率は20.0%で、前期の16.5%から上がった。
課題指摘と職種選びに使える。「半導体向けの2本柱に集まっている」ことを踏まえ、どちらの部門を志望するか根拠を持てる。
1-5. 今期予想と、2030年までの道筋
2026年12月期の予想は、売上2,610億円(+10.1%)、営業利益522億円(+10.2%)だ。営業利益は、2027年の目標480億円をすでに上回る計画になっている。
長期ビジョン「tok Vision 2030」は、電子材料の世界企業を自己定義している。先端レジストのシェアNo.1に加え、バイオやライフサイエンスなど新分野の事業構築も掲げる。
28卒が入社する2028年は、中期計画の終了直後で、この長期ビジョンの終盤にあたる。
逆質問に使える。「中期計画の目標を上回る見通しですが、2027年以降の目標はどう更新しますか」と聞ける。
第2章 業界比較——半導体材料4強の違い
フォトレジストの世界4強は、JSR、信越化学、住友化学、東京応化工業だ。違いは、どこまで半導体に絞るかにある。
2-1. 4社は何に集中しているか
東京応化は、半導体材料に経営資源を集める。多角化はしない。
JSRは、2024年に産業革新投資機構が約9,000億円でTOB(株式の公開買付け)を終え、非上場になった。
信越化学は、塩ビ、シリコーン、半導体シリコンなど複数の領域を持つ。住友化学は、医薬、農薬、樹脂なども手がけ、半導体材料は事業の一部だ。
志望動機に使える。「なぜ他の3社ではなく東京応化か」を、集中度の違いで答えられる。
2-2. 東京応化の独自性と、その裏側
独自性は3つある。1つ目は、半導体材料への集中だ。研究開発、設備投資、人材を一点に向けられる。
2つ目は、JSRの非上場化後、フォトレジスト専業の上場企業になったことだ。
3つ目は、micro resist technologyの買収である。同社の持つナノインプリントや3Dレジストは、次世代の回路形成に向けた材料だ。他の3社は持たない。
一方、集中の裏側として、売上は1-4で見た2部門に集まっている。
志望動機と課題指摘の両方に使える。強みとして「集中」を挙げ、そのうえで依存の度合いを確かめる質問を添えられる。
東京応化の構造的課題と追い風は、5つに分けて第3章で扱う(### 課題1:地政学リスクと米中対立/### 課題2:先端プロセスの寡占化/### 課題3:開発投資の長期化/### 課題4:人材獲得競争/### 課題5:環境規制(PFAS規制))。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題——### 課題1:地政学リスクと米中対立/### 課題2:先端プロセスの寡占化/### 課題3:開発投資の長期化/### 課題4:人材獲得競争/### 課題5:環境規制(PFAS規制)
- 第3.5章 押さえておくべき東京応化工業・半導体材料業界の最新ニュース
- 第4章 内定者の正体
- 第5章 職種別キャリア分析
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答例
- 第8章 やましゃんの総合評価