積水化学(4204)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、積水化学を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「投資の4割は赤字事業へ」です。

有報の数字(第104期)

売上高
1兆3,093億円
純利益
752億円
ROE
9.1%
従業員数(連結)
26,752人
従業員数(単体)
3,156人
平均年間給与(単体)
946万円
平均年齢
44.2歳
平均勤続年数
15.9年

出典:積水化学の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

積水化学工業を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、積水化学工業に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは積水化学工業の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、積水化学工業株式会社 有価証券報告書 第104期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

結論から言う。積水化学工業は、利益を出している事業の稼ぎを、まだ赤字の次世代事業に集中させている会社だ。

知っておきたいことは3つある。

会社は2030年に「業容倍増」を掲げている。業容とは事業の規模のことだ。当期の売上高1兆3,092億円が、2兆6,000億円規模になる計算である。

当期は、本業の利益が過去最高だった。それでも最終的な利益は減った。過去の投資の一部を、損失として処理したからだ。

最大の賭け先は、薄くて曲がる太陽電池の工場である。この事業は、いまは赤字の区分に入っている。

この記事では、この3点を有価証券報告書(有報)の数字で確かめ、面接で語れる形にする。有報とは、会社が法律に基づいて国に提出する年次報告書のことだ。

第1章 積水化学工業は何に賭けているのか

1-1. 会社が自分で決めた目標——2030年の業容倍増

出発点は決算の数字ではなく、会社が自分で置いた目標だ。長期ビジョン「Vision2030」は、2030年の業容倍増を狙うと有報に書いている。

当期の売上高1兆3,092億円を、2兆6,000億円規模にする宣言である。

そこへ至る直近の3年が、中期経営計画「Accelerate2028」だ。対象は2026〜2028年度である。Vision2030の折り返しで、速度を上げる位置づけになっている。

28卒が就活をしている時期に、ちょうど始まる計画だ。

面接での使い方

志望動機で「2030年の業容倍増という目標に、中計の最終年度から関わりたい」と、目標の年度を根拠に語れる。逆質問では「倍増のうち、新領域にどれだけ期待していますか」と聞ける。

1-2. 賭けは設備に出る——堺工場に900億円

戦略は、言葉より設備の動きで確かめる。有報の設備計画を見ると、1件だけ桁が違う。

積水ソーラーフィルムの堺工場(大阪府)で、ペロブスカイト太陽電池の製造設備に900億円を投じる。2025年1月に着手し、2028年3月の完了予定だ。他の4件の合計の4.7倍にあたる。

ペロブスカイト太陽電池は、薄くて曲がる次世代の太陽電池だ。建物の壁面など、従来は置けなかった場所に貼れるとされる。資金の調達方法に補助金も入っており、国の政策と重なる領域だと分かる。

面接での使い方

志望動機で「この会社の賭けの中心は、堺工場のペロブスカイトだ」と言い切れる。逆質問では「2028年3月の完成後、事業として黒字になる時期をどう見ていますか」と聞ける。

1-3. 28卒が入るのは、計画の最終年度

時間軸に並べると、28卒の立ち位置がはっきりする。

2028年3月に、堺工場の設備が完成する。その翌月の2028年4月に、28卒が入社する。入社した年度は、Accelerate2028の最終年度だ。2030年の目標は、入社3年目に迎える。

建設を見届けた世代ではない。動き出した設備で、最終年度の数字を作る世代だ。

その設備が稼げるかどうかは、入社1年目から現場で見ることになる。

面接での使い方

志望動機で「完成直後の設備で、最終年度の数字づくりに貢献したい」と、自分の入社時期とつなげて語れる。キャリアの最初の3年が長期ビジョンの最終局面と重なる、という話もできる。

1-4. 本業は最高益なのに、純利益は減った

当期の売上高は前期比+0.9%だった。経常利益は1,172億円で、前期より5.6%増えた。経常利益とは、会社が通常の活動で稼いだ利益のことだ。5期連続の増加で、過去最高を更新している。

それでも、親会社の株主に帰属する純利益は前期比△8.2%と減った。

理由は減損損失だ。投資した資産が期待した収益を生まないと判断し、価値を切り下げて費用にする処理である。前期の27億円が、当期は233億円に増えた。8.36倍である。

つまり、過去の投資の一部が期待どおりにいかなかった。新領域に大きく張れば、当たらない投資も出る。減損は、その裏側だと読める。

面接での使い方

「減益ですね」で止まらず、課題指摘として「本業は5期連続増益で、減益は減損が8.36倍に増えた影響だと理解しています」と言える。そこから「減損の中身と、今後の再発防止をどう考えますか」と逆質問につなげられる。

1-5. 設備投資の38.6%が、赤字の「その他」へ

当期、最も多く設備投資を受けたのは「その他」事業だった。428億円で、全体の38.6%を占める。

その「その他」は、127億円の赤字である。前期より赤字が広がった。有報によれば、中身はフィルム型リチウムイオン電池と、ペロブスカイト太陽電池だ。

一方、売上最大の住宅向けの設備投資は、前期より減っている。

稼ぎ頭は高機能プラスチックスだ。車の合わせガラス用中間膜や、半導体・電子材料などを手がける。ただし当期は、この事業だけが減益だった。稼ぐ事業から資金を集め、次の事業に注ぐ構図になっている。

面接での使い方

課題指摘として「赤字が広がる事業に、設備投資の38.6%が向かっている」と数字で言える。逆質問では「その赤字を、稼ぐ事業がいつまで支える計画ですか」と聞ける。

第2章 化学業界の収益構造

2-1. 「化学」を名乗る住宅メーカー

社名から想像する姿と、売上の中身は違う。売上の40.9%は住宅で、「セキスイハイム」を作る事業だ。従業員も住宅が10,481人で最大である。

ところが利益では、順位が入れ替わる。高機能プラスチックスが、事業ごとの利益の45.3%を稼ぐ最大の利益源だ。利益率でも、住宅の2倍近い。

家を建てる事業は、人手が要り、利益率が低い。素材の事業は、人が少なく、利益率が高い。性格のまったく違う2つの事業が、同じ会社の中にある。

面接での使い方

志望動機で「住宅と素材という、性格の違う事業を持つ点に惹かれた」と語れる。逆質問では「住宅の利益率を上げるために、どんな施策がありますか」と聞ける。

2-2. 働く側の事実——人は減り、賃上げは続く

連結の従業員は26,752人で、前期より166人減った。提出会社単体では、平均年齢が44.2歳、平均勤続年数が15.9年、平均年間給与が946万円だ。

賃上げについて、有報は具体的に書いている。2023年度以降、4年連続でベースアップを実施した。2026年度は、提出会社単体の平均で4%超である。

一方、管理的地位にある労働者に占める女性の割合は、5.7%だった。男性の育児休業取得率は93.3%と高い。

面接での使い方

志望動機で「4年連続のベースアップ」を、働く環境の根拠にできる。課題指摘では、女性管理職の比率を取り上げ、自分がどう貢献できるかを語れる。

2-3. 減損の読み方と、会社の来期予想

減損には、悪い面と良い面がある。悪い面は、過去の投資が期待どおりにいかなかったことだ。良い面は、減損した分だけ資産が小さくなり、翌期以降の費用が軽くなることだ。

会社自身の2027年3月期の予想は、売上高1兆4,084億円、営業利益1,150億円である。営業利益とは、本業で稼いだ利益のことだ。

売上は住宅、高機能プラスチックス、環境・ライフライン、メディカルに分かれている。特定の事業への依存は、小さい。

面接での使い方

逆質問として「予想どおりなら減損の影響が薄れる来期、ペロブスカイトの立ち上がりは利益にどう響きますか」と聞ける。会社自身が出した予想を材料にするため、質問に根拠が付く。

積水化学の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(主力の高機能プラスチックスが減益/メディカルが売上・利益ともに二桁近く落ちた/営業CFが34.3%減った/2027年3月期は増収増益でも、経常は減益の計画)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上高1兆3,092億円(+0.9%)に対し経常利益1,172億円(+5.6%)は5期連続の増加である一方、減損損失が27億円から233億円へ8.36倍(205億円増)になったため税金等調整前当期純利益は1,050億円(△12.5%)・親会社株主帰属当期純利益は751億円(△8.2%)と経常段階から18.1ポイント逆転したこと、4つの報告セグメントでは高機能プラスチックスが利益の45.3%(593億円)・利益率12.99%と最大ながら唯一の減益(△3.1%)で、住宅は売上の40.9%・従業員10,481人(39.2%)と最大規模ながら利益率6.93%・1人あたり354万円(高機能プラ714万円の半分)、メディカルは売上△5.5%・利益△13.0%と最も落ち込んだこと、そして設備投資1,110億円(+65.3%)のうち428億円(38.6%・前期の4.61倍)が127億円の赤字を出す「その他」=フィルム型リチウムイオン電池とペロブスカイト太陽電池に投じられセグメント資産も+81.6%に膨らんだ一方で売上最大の住宅は投資を△15.0%減らされたこと、営業CFは仕入債務・前受金・棚卸資産の悪化で△34.3%・現金は△23.5%となり社債199億円を発行して自己株式の取得を4.08倍(364億円)に増やしたこと、連結26,752人・提出会社3,156人(11.8%)の平均年収946万2,708円(+1.2%)だが有報は2023年度以降4年連続のベースアップと2026年度は提出会社単体平均4%超(組合員平均5%超)の賃上げを明記していること、そして2027年3月期は売上+7.6%・営業+8.0%でも経常△2.7%の計画で第1四半期は営業利益254億円(+20.1%)と過去最高——積水化学工業の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 化学業界の構造的課題——主力の高機能プラスチックスが減益/メディカルが売上・利益ともに二桁近く落ちた/営業CFが34.3%減った/2027年3月期は増収増益でも、経常は減益の計画
  • 第3.5章 面接前に押さえる積水化学の最新ニュース10本——投資の38.6%が赤字事業・減損8.36倍・4年連続ベアまで
  • 第4章 内定者の正体——「セキスイハイムが好き」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収946万円の読み方と、26,752人でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続15.9年、男性育休93.3%、4年連続ベアの意味
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 積水化学の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第104期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は946万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 積水化学の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第104期)では、提出会社(単体)が3,156人、連結が26,752人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 積水化学が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。