INPEX(1605)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、INPEXを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「営業利益率56.5%」です。
有報の数字(第20期)
- 売上高
- 2兆114億円
- 純利益
- 3,938億円
- ROE
- 8.2%
- 従業員数(連結)
- 3,720人
- 従業員数(単体)
- 889人
- 平均年間給与(単体)
- 1,323万円
- 平均年齢
- 39.2歳
- 平均勤続年数
- 11.4年
出典:INPEXの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
INPEXを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、INPEXに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはINPEXの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
INPEXは、日本最大の石油・天然ガス開発企業であり、掘って売る「上流」だけを担う国策色の強い会社だ。
知っておきたいことは3つある。
稼ぎ方は価格次第だ。 営業利益率(売上のうち本業の利益が占める割合)は56.5%と非常に高い。ただし原油価格と為替で大きく動く。
賭け先は長期戦略と中期計画だ。 2035年に向けた長期戦略の下で、2025〜2027年の3年計画を進めている。アバディLNG(液化天然ガス)の投資決定も、この期間内に予定されている。
国が深く関わる。 経済産業大臣が「黄金株」(甲種類株式)を持つ。敵対的買収から日本のエネルギー資産を守る仕組みだ。
この記事では、INPEXが何に賭け、どこで稼ぎ、他社と何が違うのかを確かめる。
第1章 INPEXは何に賭けているのか
1-1. 「責任あるエネルギー・トランジション」という賭け
INPEXは2025年2月に長期戦略「INPEX Vision 2035」を発表した。副題が「責任あるエネルギー・トランジションの実現」だ。トランジションとは、化石燃料から脱炭素へ移っていく流れのことである。
「責任ある」の一語が、この会社の立場を表している。急に化石燃料を止めればエネルギーが足りなくなる。供給を続けるだけでは脱炭素に逆行する。その両方に責任を持つという宣言だ。
2035年を終点に、まず2025〜2027年の3年で何をするかを決めている。28卒の入社は2028年4月で、この3年間が終わった直後にあたる。
志望動機で「掘り続けながら移行にも責任を持つ会社だから」と語れる。逆質問では、中期計画が終わった後に何を掲げるのかを聞ける。
1-2. 確認埋蔵量——掘るほど減る資産
確認埋蔵量とは、地下にあり、技術的にも経済的にも取り出せると確認された量だ。これがINPEXの本当の資産である。売れば減るため、探鉱(新しい資源を探して掘ること)で見つけるか、権益(資源を掘って売る権利)を買わなければ会社は縮む。INPEXが買うのは会社ではなく、鉱区の権益だ。
有価証券報告書には、埋蔵量の価値(将来の売上を今の価値に直した額)も載る。2025年1月1日時点で3兆2,064億円だ。ここから売った分が引かれ、新しく見つけた分が足される。
逆質問向きの論点だ。「産出で減る埋蔵量を補うのは探鉱か権益の取得か。いまはどちらに重点を置くのか」と聞ける。
1-3. 減収減益でも利益率56.5%——利益は価格で決まる
2025年12月期の売上収益は2兆113億円で、前期より11.2%減った。営業利益は1兆1,354億円で、こちらも減った。原油の平均販売価格が1バレル70.69米ドルと下がり、円高も重なったためだ。
それでも営業利益率は56.5%で、前期よりわずかに高い。減益の中でも利益率は崩れていない。
利益を左右する価格は、中東情勢や世界の景気で決まり、自分たちでは動かせない。動かせるのは、どこを掘るか、どの権益をいくらで買うか、巨大案件を予算内で終えるかだ。
「減益だった」で止めず「利益率は維持している」と語れる。価格に左右される仕事を引き受けられるか、志望動機で自分の答えを持っておく。
1-4. 稼ぎ頭はイクシス、赤字はネットゼロ事業
イクシスは、INPEXが豪州で進める巨大なLNG(液化天然ガス)プロジェクトだ。2025年12月期のセグメント利益(事業ごとの利益)は2,708億円で、海外案件の中でも大きな柱になっている。利益の柱が一つの案件に偏っている、ともいえる。
一方、水素・CCS(CO2を回収して地中に貯める技術)・再生可能エネルギーを含む「その他」は、288億円の損失だった。前期の145億円から赤字が広がった。中期計画が先行投資を認めている段階だ。
課題指摘として「稼ぎが一案件に偏る点」と「新事業の赤字をどう黒字にするか」を論点にできる。自分がどちらに貢献したいかを添える。
1-5. 中期経営計画の目標と、現状の差
会社自身が掲げた中期経営計画(2025〜2027年)の目標は3つある。累計営業CF(本業で稼いだ現金)を3年合計で2.2兆円以上にする。温室効果ガスの排出量(生産量あたり)を、2027年に2019年比で35%減らす。アバディLNGの最終投資決定を、この期間内に行う。
2025年12月期の営業CFは6,939億円だった。計算上、残り2年で約1.5兆円が必要になる。
資金の準備も動いている。豪州の子会社から約1,750億円を戻し、2030年代初頭の生産開始を目指すアバディLNGの投資に備えた。
逆質問で「目標2.2兆円まで残り約1.5兆円。油価が下がった場合の優先順位は」と聞ける。志望動機では、アバディLNGの立ち上げに関わりたいと語れる。
第2章 業界比較——「上流専業のE&P」という独自ポジション
2-1. エネルギー業界の中のINPEX
エネルギー業界は、上流(探鉱・開発・生産)、中流(精製)、下流(販売)に分かれる。E&Pとは、このうち上流の探鉱と生産を担う事業のことだ。INPEXは上流専業である。
ENEOSや出光興産は精製・販売が中心で、営業利益率は2〜4%程度だ。商社のエネルギー部門は3〜8%で、商社全体の一部門という位置づけになる。INPEXの56.5%とは水準が大きく違う。
「商社でもENEOSでもなく、なぜINPEXか」に対して、事業構造の違いを数字で説明できる。
2-2. 他社と違う3つの点
国策企業である。 経済産業大臣が黄金株を持ち、政府との連携が強い。
海外比率が約90%である。 世界中に権益を持つ。
巨大案件を自社で運営している。 イクシスLNGを運営し、アバディLNGの投資決定も準備している。
志望動機で「エネルギー安全保障に直結する規模の仕事をしたい」と語る根拠になる。
2-3. 「なぜINPEXなのか」を語る軸
答えの軸は4つにまとめられる。世界規模の案件を自社で運営できる希少性。エネルギー安全保障を担う国策性。上流に立つことで生まれる利益率の高さ。既存事業を続けながら移行を進める「責任あるエネルギー・トランジション」だ。
逆に、金融・商品・物流の総合力で勝負したい人は商社、給油所の運営や燃料の精製・販売に関わりたい人はENEOSが合う。
先にこの住み分けのどこに自分がいるかを言い、そのうえでINPEXを選ぶ理由を一つに絞って語る。
INPEXの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(エネルギー安全保障の構造的重要性/脱炭素の進行とトランジションの長期不確実性/LNG市場の構造変化/水素・アンモニア市場の創出フェーズ)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題と追い風——エネルギー安全保障の構造的重要性/脱炭素の進行とトランジションの長期不確実性/LNG市場の構造変化/水素・アンモニア市場の創出フェーズ
- 第3.5章 押さえておくべきINPEX 最新ニュース
- 第4章 内定者の正体——選考プロセスとES・面接攻略
- 第5章 職種別キャリア分析——「世界規模のメガプロジェクト×ネットゼロ」のキャリア地図
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答例
- 第8章 やましゃんの総合評価