大成建設(1801)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、大成建設を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「減収でも営業56%増」です。
有報の数字(第166期)
- 売上高
- 2兆891億円
- 純利益
- 1,700億円
- ROE
- 18.7%
- 従業員数(連結)
- 18,503人
- 従業員数(単体)
- 9,518人
- 平均年間給与(単体)
- 1,191万円
- 平均年齢
- 42.3歳
- 平均勤続年数
- 17.0年
出典:大成建設の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
大成建設を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、大成建設に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは大成建設の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、大成建設株式会社 有価証券報告書 第166期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
大成建設の第166期は、売上が減ったのに利益が大きく伸びた決算だ。ただし、その増益には続く部分と続かない部分が混じっている。
知っておきたいことは3つある。
売上は3.0%減ったが、営業利益は56.4%増えた。増益の中心は建築事業で、利益は前期の6.9倍になった。
増益の一部は、一度きりの要素だ。工事の損失に備えたお金の戻し入れと、保有株の売却益がそれにあたる。
会社は3か年の投資計画を持ち、他社の買収は別枠にしている。東洋建設の買収は、その実行例だ。
この記事では、増益のうち続く部分と続かない部分を、自分の言葉で分けて語れるかを確かめる。
第1章 大成建設は何に賭けているのか
1-1. 3か年で3,700億円、買収は別枠
有報には、会社が何に賭けているかが書いてある。長期ビジョン[TAISEI VISION2030]と、その途中の中期経営計画(2024-2026)だ。中期経営計画とは、会社が3年ほどの数値目標を示す計画のことだ。最終年度は2026年度である。
3か年の投資は3,700億円。うち成長投資は1,740億円で、全体の半分近くを占める。
さらに有報は「M&A投資は別枠で実施」と添えている。M&Aとは他社の買収のことだ。3,700億円には、買収の金が入っていない。
志望動機で「投資の半分近くを成長に振る会社だから」と根拠にできる。逆質問では、別枠の買収をどこまで想定しているかを聞ける。
1-2. 東洋建設を完全子会社にした
賭けは口先だけではない。2025年8月、海洋工事に強い東洋建設を、株の公開買付け(株を公開で買い集める方法)で取得すると決めた。9月30日に子会社とし、その後、他の株主の持ち分も整理して100%子会社にした。
効果は数字に出ている。土木事業の売上は7,202億円に増えた。有報は理由に、東洋建設を取り込んだことを挙げる。
東洋建設は、洋上風力の基礎工事に使うケーブル敷設船にも314億円を投じている。完成は2026年6月だ。
志望動機で「足りない技術を買って取り込む会社だ」と語れる。東洋建設の名前を出せる学生は少なく、差がつく。
1-3. ROEの目標は8.5%だった
ROE(自己資本利益率)とは、株主から預かったお金でどれだけ利益を出したかを示す指標だ。第166期は18.7%だった。
会社が2024年5月に決めた2026年度の目標は、「8.5%程度」である。策定から1年で、実績が目標の2倍を超えた。
ただし18.7%には、株の売却益が含まれる。これを除くとROEは約12.7%で、6ポイント分は保有株の売却によるものだ。
逆質問で「目標を大きく超えた後、次の計画をどう置くか」を聞ける。数字を「本業」と「売却益」に分けて話すと、課題を見ている学生として扱われる。
1-4. 建築の増益と、工事損失引当金の戻し入れ
建築事業は、売上が9.0%減ったのに、利益は大きく伸びた。工事1,000円あたりに残る利益は、8円から61円に増えた。
ただし建築の増益670億円のうち、約305億円は工事損失引当金の動きによる。
工事損失引当金とは、赤字が見込まれる工事の損失を、先に計上しておくお金だ。当期は、これを戻し入れた。想定ほど赤字にならなかったからだが、戻し入れは一度きりである。残りが本業の採算改善と読める。
課題指摘で「増益の半分近くは引当金の戻しで、続くのは本業の改善分だ」と整理できる。逆質問では、来期以降の建築の採算の見通しを聞ける。
1-5. 株の売却益と、働く側の数字
最終利益のうち、投資有価証券売却益が546億円ある。取引先の株を売って得た利益だ。持ち合いを見直す動きの中で売っているが、売れる株は限られる。前期にも同規模の売却益があった。
働く側の数字も確認する。平均年間給与は1,191万円で、前期比12.6%増えた。平均年齢は42.3歳、平均勤続年数は17.0年だ。連結従業員は18,503人で、5期で増えている。利益の回復が、処遇にも回っている形だ。
課題指摘では「好決算には、続く部分と続かない部分がある」と分けて語れる。働き方の質問では、年収の伸びが続くかを逆質問にできる。
第2章 総合建設業の収益構造
2-1. 受注してから売上になるまで数年かかる
建設業は、受注してから完成まで数年かかる。売上は、工事の進み具合に応じて少しずつ計上される。だから受注高(新しく受けた工事の金額)が、先を占う指標になる。
第166期の受注高は2兆4,362億円で、売上高を上回った。手持ちの工事は増えている。売上が減った理由も、この時間差で説明できる。国内の大型工事の多くが、まだ工程の初期段階にあるためだ。
受注時の価格で数年後に作るため、資材が上がれば差額は自社が負う。この時間差が、利益の振れを大きくする。引当金の動きも、その一つだ。
逆質問で「受注時の価格をどう決めているか」を聞ける。受注が売上を上回る点は、今後の売上の根拠として志望動機に使える。
2-2. 土木・建築・開発は稼ぎ方が違う
土木は道路やトンネルなどで、発注者は国や自治体が多い。施工できる会社が限られ、価格競争になりにくい。そのため利益率が高く、利益額は955億円に達する。建築の利益を上回る。
建築は発注者が民間中心で、競争入札が多い。参入する会社が多く、利益率が振れやすい。前期と当期の差が、それを示している。
開発は不動産の売買や賃貸で、工事とは稼ぎ方が違う。ゼネコンは建てる会社だが、稼ぎ方は3通りある。
志望動機で「どの事業で、どう貢献したいか」を稼ぎ方の違いから語れる。課題指摘では、利益が土木に支えられている点を指摘できる。
大成建設の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(一過性の利益が剥落する来期/建築事業の利益率をどこまで戻せるか/自己資本比率5期連続低下と、フリーCFのマイナス/人を増やしながら、利益を守れるか)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。受注高2兆4,362億円(△0.1%)・売上2兆890億円(△3.0%)でありながら営業利益1,879億円(+56.4%)・純利益1,700億円(+37.3%)・ROE 18.7%、売上総利益率は10.7%から15.8%へ5.1ポイント改善、建築事業は売上△9.0%で利益6.9倍だがその増益670億円のうち304億円は工事損失引当金の戻し入れ、純利益のうち546億円は投資有価証券売却益、平均年収1,191万134円は+12.6%、そして2027年3月期は増収減益の計画——大成建設の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 総合建設業の構造的課題——一過性の利益が剥落する来期/建築事業の利益率をどこまで戻せるか/自己資本比率5期連続低下と、フリーCFのマイナス/人を増やしながら、利益を守れるか
- 第3.5章 面接前に押さえる大成建設の最新ニュース10本——引当金275億円・株式売却益546億円・年収+12.6%まで
- 第4章 内定者の正体——「ものづくりが好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,191万円の読み方と、土木・建築・開発のキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続17.0年の意味、人件費を投資と呼ぶ方針、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生