積水ハウス(1928)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、積水ハウスを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「売上5年で1.62倍」です。

有報の数字(第75期)

売上高
4兆1,979億円
純利益
2,321億円
ROE
11.3%
従業員数(連結)
32,186人
従業員数(単体)
14,178人
平均年間給与(単体)
907万円
平均年齢
43.5歳
平均勤続年数
16.2年

出典:積水ハウスの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

積水ハウスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、積水ハウスに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは積水ハウスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、積水ハウス株式会社 有価証券報告書 第75期(2025年2月1日〜2026年1月31日)に基づきます。比較対象の大和ハウス工業は第87期の数値です。

結論から言う。積水ハウスは、2028年度の利益目標に向けて、米国の統合と資産の圧縮で体質を変えている最中の会社だ。

知っておきたいことは3つある。

・会社自身が決めた目標:第7次中期経営計画(2026年度〜2028年度)は、最終年度にROE 12%後半を掲げる。ROEとは、株主から預かったお金でどれだけ利益を出したかを示す率だ。28卒の入社年(2028年4月)は、この最終年度にあたる。
・米国は統合、他は圧縮:2026年1月に、米国のグループビルダー4社を1社へ統合した。一方で、米国の賃貸住宅開発とオーストラリア事業の資産は圧縮する。
・伸びているが年収は低い:売上は5年で1.62倍に伸びた。ただし平均年収は、大和ハウス工業より194万円低い。

この記事では、会社の賭けが決算にどう表れているか、そして大和ハウス工業と何が違うかを確かめる。

第1章 積水ハウスは何に賭けているのか

1-1. 有報が明かす「2つの賭け」——2028年度にROE 12%後半

有報(有価証券報告書)は、会社が法律に基づいて出す年次の公式資料だ。その「経営方針」を読むと、この会社が何に賭けているかは、はっきり書いてある。

グローバルビジョンは「『わが家』を世界一幸せな場所にする」。それを進める第7次中期経営計画には、基本方針が2本ある。

・国内:「グループ総合力による積水ハウス経済圏の深耕」
・海外:「ゲームチェンジに向けた成長基盤の構築」

数値目標は、1つだけ明示されている。「ROEについては最終年度(2028年度)に12%後半の水準を目指します」。当期のROEは11.32%だ。あと3年で、1ポイント以上の引き上げが目標になる。

財務戦略には、成長戦略の遂行や適切な株主還元と並んで「財務健全性の回復」が入っている。回復と書くからには、傷んだ何かがある。それは1-3で見る。

面接での使い方

志望動機では「会社自身が決めた2028年度のROE目標に貢献したい」と言える。逆質問では、あと1ポイント強をどの事業で積み上げる計画かを聞ける。

1-2. 賭けは口先ではない——米国の4社を1社に統合した

賭けを口で言うのは簡単だ。問題は、組織と金を実際に動かしているかである。

積水ハウスは2026年1月、米国のグループビルダー4社を統合し、「Sekisui House U.S., Inc.」を始動させた。買った4社を4社のまま持たず、1社に畳んだ。有報は、日本で培った積水ハウステクノロジーの移植とブランド構築を加速すると書く。

同時に、減らす領域も明記している。米国MF(賃貸住宅開発)とオーストラリア事業は資産を圧縮する。そして米国戸建住宅事業を中心に、「筋肉質なポートフォリオ」(事業の組み合わせ)をつくる。増やす領域と減らす領域を、同じ方針の中で分けて書いている。

国内では、事業を請負型・ストック型・開発型に分け直した。ストック型とは、建てた後も続く収入のことだ。賃貸住宅管理には「積水ハウスシャーメゾンPMを日本一のプロパティマネジメント会社へ」という目標が置かれた。プロパティマネジメントとは、賃貸物件の管理運営を指す。「積水ハウス経済圏」は、建てた後の管理でも稼ぐ考え方を指している。

面接での使い方

志望動機では「増やす領域と減らす領域を分けて示す会社だから」と理由にできる。逆質問では、資産を圧縮中の米国MFとオーストラリアの現状を聞ける。

1-3. 28卒が入る2028年度は、第7次中計の最終年度

28卒の入社は2028年4月である。この会社の時間軸に重ねてみる。

・第7次中計:2026年度〜2028年度
・ROE 12%後半の目標年:2028年度
・米国4社の統合:2026年1月に始動済み

つまり、入社する年が目標の達成を問われる年になる。「私が入社する2028年度は、第7次中期経営計画の最終年度です」と言えるだけで、時間軸を理解している学生だと伝わる。

先ほどの「回復」の中身も見ておく。第74期に、米国ビルダー買収の影響が出た。自己資本比率(総資産のうち、返済しなくてよい資金の割合)は、40.80%まで下がった。当期は42.73%へ戻している。回復は途中にある。

面接での使い方

志望動機に「入社年が最終年度」という接点を入れられる。課題指摘では、財務が一度大きく下がった点に触れられる。

1-4. 第75期決算——増益でもROEが下がった理由

当期(第75期)は増収増益だった。売上高は4兆1,979億円で、前期から3.4%増えた。当期純利益(最終的に残る利益)は、5期連続で増えている。

買収の影響が出た第74期も、当期純利益は7.6%増えた。大型の投資をしながら、利益を落とさなかった。

一方、ROEは前期から下がった。理由は、総資産が4.1%増え、売上の伸びを上回ったことだ。買った資産が、まだ売上を生み切っていない。

「ROEが下がりました」で止めない。「増益でも、買った資産がまだ売上に結びついていないためROEが下がったと読みました」と、理由まで言えると、数字を読む学生として扱われる。

面接での使い方

課題指摘では、増益でもROEが下がった理由を自分の言葉で語れる。逆質問では、統合後の米国事業の売上が、資産に見合う規模になる時期を聞ける。

1-5. 単体14,178人・連結32,186人——人員の構造

従業員は連結32,186人。うち積水ハウス単体は14,178人で、単体比率は44%である。大和ハウス工業は30%だ。連結の規模は大和ハウス工業のほうが大きいが、単体では同社の16,508人に近い。本体の人員規模は、両社でそれほど変わらない。

セグメント別では、戸建・賃貸住宅・商業建築が15,686人で、連結の約半分を占める。この会社の中心は、やはり住宅を建てる事業だ。リフォームにも4,126人を置いている。建てた家のその後を担う領域に、これだけの人員を割いている。

面接での使い方

志望動機では「住宅を建てる本体が人員の中心にある」と、働く場の実態を踏まえて話せる。逆質問では、リフォームの人材をどう育てるかを聞ける。

第2章 ハウスメーカーの収益構造

2-1. 大和ハウス工業との違いを構造で理解する

同じ最大手2社でも、数字を並べると性格が違う。大和ハウス工業は規模と収益性で勝り、積水ハウスは成長率・財務の厚さ・多様性で勝る。

成長率では、積水ハウスの5年の売上成長1.62倍に対し、大和ハウス工業は1.26倍にとどまる。自己資本比率も、積水ハウスのほうが大和ハウス工業の34.4%より厚い。

働く側の事実も並べる。左が積水ハウス、右が大和ハウス工業だ。

・平均年収:907万円 / 1,101万円
・平均年齢:43.5歳 / 40.7歳
・平均勤続年数:16.2年 / 15.7年
・女性役員比率:26.7% / 10.0%

年収は大和ハウス工業が高い。一方、女性役員比率は積水ハウスが2倍以上高い。何を重く見るかで、評価は分かれる。

面接での使い方

志望動機では、成長率と財務の厚さを両社比較の軸にできる。年収が低い事実は隠さず、「それでも選ぶ理由」を用意しておくと、逆質問で処遇の考え方を聞きやすい。

2-2. 「建てた後」を担う事業と、薄い利益率

ハウスメーカーの仕事は、「建てて売る」が中心だ。新築は大きな売上が一度立つが、その後は関係が薄れやすい。

一方、リフォームや賃貸住宅管理は、建てた家との接点が続く。積水ハウスは、リフォームに4,126人、賃貸住宅管理に2,108人を置く。建てた棟数が積み上がるほど、対象も増える構造だ。

ただし、当期純利益率(売上のうち、最終的に利益として残る割合)は5.5%と薄い。同じ建物に関わる仕事でも、不動産デベロッパー(建物を開発して貸す会社)とは稼ぎ方が違う。利益率が薄いと、資材価格や人件費の上昇が利益をすぐ圧迫する。

薄さを弱みと決めつけず、会社がどう対処しているかを見たい。ストック型事業の育成は、その対処の一つと読める。

面接での使い方

課題指摘では「利益率が薄いからこそ、建てた後も稼ぐ仕組みが要る」と言える。逆質問では、ストック型事業を今後どこまで伸ばす考えかを聞ける。

積水ハウスの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(国内の新築市場は縮んでいく/コストは上がるが、価格には乗せきれない/金利は、顧客の購買力を直接削る/建てた後、30年の責任が残る)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上4兆1,979億円は5年で1.62倍、当期純利益は5期連続増加、自己資本比率42.73%はハウスメーカーとして厚い。一方で当期純利益率は5.5%と薄く、ROEは11.32%。第74期に売上が30.6%増えた大型投資が、この5年を決定づけている。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 住宅業界の構造的課題——国内の新築市場は縮んでいく/コストは上がるが、価格には乗せきれない/金利は、顧客の購買力を直接削る/建てた後、30年の責任が残る
  • 第3.5章 面接前に押さえる積水ハウスの最新ニュース10本——売上5年1.62倍、第74期の30.6%増収、女性役員比率26.7%まで
  • 第4章 内定者の正体——「家づくりに関わりたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収907万1,924円の読み方と、単体14,178人の組織でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続16.2年の読み方、女性役員比率26.7%という数字、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 積水ハウスの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第75期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は907万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 積水ハウスの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第75期)では、提出会社(単体)が14,178人、連結が32,186人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 積水ハウスが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。