日揮HD(1963)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、日揮HDを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「5期で3期が赤字」です。

有報の数字(第130期)

売上高
7,453億円
純利益
418億円
ROE
10.2%
従業員数(連結)
8,154人
従業員数(単体)
245人
平均年間給与(単体)
975万円
平均年齢
44.6歳
平均勤続年数
12.8年

出典:日揮HDの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

日揮ホールディングスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、日揮ホールディングスに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは日揮ホールディングスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、日揮ホールディングス株式会社 有価証券報告書 第130期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

日揮HDは、売上が減っても黒字に戻した直後の会社だ。

知っておきたいことは3つある。

・第130期は売上が13.1%減ったのに、純利益は418億円の黒字になった。売上のうち粗利が残る割合(売上総利益率)が、2.21%から8.61%に上がったためだ。
・5期のうち3期は最終赤字だった。EPC(設計・調達・建設を丸ごと請け負う仕事)は、1件の採算が全体を左右する。
・会社は2026〜2030年度の新しい5年計画を始めたところだ。28卒が入る2028年4月は、その途中にあたる。

この記事では、会社が何に賭け、どこで稼ぎ、何が危ういのかを、有価証券報告書の記述で確かめる。

第1章 日揮HDは何に賭けているのか

1-1. 賭けは3つ——2030年度の目標を知る

会社は長期ビジョン「2040年ビジョン」を5年ずつに分けている。2026〜2030年度は中期経営計画「BSP2030」だ。中期経営計画とは、会社が数年先の目標を自分で決めた計画である。

重点戦略は3つ。

・総合エンジニアリング事業の持続的な競争力強化
・機能材製造事業の成長加速
・ソリューションビジネスの拡充

目標は2030年度に営業利益600億円、当期純利益500億円、ROE10%以上だ。ROEは、株主から預かった資金でどれだけ稼いだかを示す率である。M&A(企業買収)による収益は、この目標に入れていない。

面接での使い方

志望動機では、3つの重点のどれに関わりたいかを軸にできる。逆質問では、買収を除いた目標の達成見通しを聞ける。

1-2. 前の5年は計画の半分——次の5年で2,800億円

前の計画(BSP2025)は、成長投資2,000億円を見込んでいた。実績は約1,000億円にとどまる。有報は理由を「M&Aを中心に当初計画どおりの投資判断に至らない案件もありました」と書く。

それでも手は打っている。医薬品事業の譲受、高田工業所との資本業務提携、ファインセラミックス分野の事業譲受、宮城県富谷市の新工場だ。

次の5年は総額2,800億円を置く。ただし「比較的早期に効果の収穫が可能な案件を中心に」と条件を付けた。前回の反省が、計画の書き方に出ている。

面接での使い方

課題指摘として、前回の投資が半分だった点を挙げられる。逆質問では、2,800億円の優先順位を聞ける。

1-3. 減収なのに黒字——戻したのは採算

ROEは前期のマイナスから10.2%へ戻った。売上は減っている。動いたのは売上ではなく、利益の残り方だ。

有報は改善の理由を、海外の大型プロジェクトが複数完工し、全体として採算が改善したためと記す。前期の悪化については、BSP2025の総括にこうある。

「市場と分野の多角化を急いだ結果、人財リソースの分散や適正配置不全を招き、それらがプロジェクトの安定遂行に影響を及ぼしたことでいくつかの案件で採算悪化が発生いたしました」

失敗の原因を、人の配置まで言葉にしている。5期のうち3期が最終赤字であり、BSP2030が「遂行体制の強化による収益基盤の安定化」を第1の重点に置くのも筋が通る。

面接での使い方

課題指摘では「回復は規模ではなく採算の立て直しだ」と言える。逆質問では、人員配置の見直しが現場でどう変わったかを聞ける。

1-4. 稼ぎ頭の振れ幅と、赤字期を支えた機能材

総合エンジニアリング事業は、前期の営業損失145億円から、当期は営業利益336億円へ振れた。この会社の業績は、ほぼこの事業で決まる。

機能材製造は、触媒や半導体向け材料などを作る事業だ。利益率は総合エンジニアリングの約2.7倍ある。前期の赤字期にも、グループを支えていた。

有報は、生成AIを中心とした半導体・電子材料関連の需要が好調だったと記す。プラントを建てる会社が、素材でも稼いでいる。

面接での使い方

志望動機では、プラントと素材の二本柱に触れられる。応募前に、どの事業会社で働くのかを確認する理由にもなる。

1-5. 受注の先送り、中東リスク、働く側の事実

受注高は4,780億円で、受注残高は1兆1,666億円だ。受注残とは、契約済みでまだ完成していない仕事を指す。

受注が伸び悩んだ理由を、有報は顧客の先送りと説明する。設備投資の最終決定が2026年度以降にずれ込んだ。特に水素、燃料アンモニア、SAF(持続可能な航空燃料)で目立つ。一方、LNG、半導体、データセンター関連は計画が進んでいる。

中東の案件では、社員の安全確保を最優先に「退避を含めたあらゆる可能性を考慮して対応」したと有報にある。危機管理統括部は見積もり段階から関わり、緊急対策本部の訓練も行っている。

働く側の数字も押さえたい。連結従業員は8,154人で、第128期の8,865人から減った。提出会社(持株会社)の平均年齢は44.6歳、平均年間給与は974万円。事業会社は1,000万円前後だ。

面接での使い方

逆質問では、脱炭素案件の受注時期の見通しを聞ける。志望動機では、海外駐在のリスクを理解した上で受ける姿勢を示せる。

第2章 エンジニアリング業の収益構造

2-1. 丸ごと請け負う商売——利益が振れる理由

EPCは、設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)の頭文字だ。顧客はオイルメジャーや国営石油会社である。日揮は設計から試運転まで、丸ごと請け負う。

契約から引き渡しまで、複数年かかる。その間に資材が上がり、工期が延び、政情が変わる。有報は、リスクの見積もりは複雑で、高度な技術力と豊富な経験を要すると記す。その差は、原則として日揮が負担する。第1章で見た粗利率の急変は、この構造の結果だ。

共同事業にも落とし穴がある。パートナーが債務を払えなければ、日揮が負担し、大幅な追加費用が生じる。

面接での使い方

課題指摘では「採算は見積もりの精度と遂行体制で決まる」と語れる。自分の強みを、遂行体制の強化に結びつけられる。

2-2. 顧客のお金で建てる——現金が積み上がる理由

大型プラントでは、着工前や工程の節目に顧客から代金を受け取る。完成前の代金は「契約負債」として負債に計上する。当期は契約負債が433億円増えた。現金及び現金同等物は4,004億円で、総資産の約半分に達する。

自社の資金を使わずに工事を進められるため、借入も少なくて済む。

ただし契約負債は、いずれ工事で返す義務だ。自由に使える金ではない。プロジェクトが中止になれば、返還を求められることもある。

面接での使い方

「現金の厚さは余裕ではなく、定額請負という事業の要請だ」と説明できる。逆質問では、手元資金の使い道の優先順位を聞ける。

2-3. ゼネコンとは別の商売

同じ「建てる」でも、ゼネコンとは構造が違う。ゼネコンの発注者は主に国内企業や官公庁で、現場は国内にある。日揮の発注者はオイルメジャーなどで、現場は中東やアフリカ、東南アジアだ。政情、為替、資材、パートナーと、変数が多い。

比較した建設・住宅企業の中で、日揮の売上規模は最小で、自己資本比率は最も高い。ゼネコン各社は赤字にならなかったが、日揮は5期で3期が最終赤字だった。

面接での使い方

「なぜゼネコンではなく日揮か」という問いに、発注者と現場の違いで答えられる。

日揮HDの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(5期で3期が赤字という振れ幅/受注が売上を下回っている/カントリーリスクと社員の安全/総合エンジニアリングの利益率4.95%)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。5期のうち3期が最終赤字(第126期△355億円、第128期△78億円、第129期△3億円)で第130期に418億円の黒字転換・ROE 10.2%、売上は△13.1%減ったのに売上総利益率が2.21%から8.61%へ6.40ポイント改善し粗利は3.39倍、総合エンジニアリングは営業損失145億円から営業利益336億円へ482億円の改善、受注高4,780億円は売上の64.1%で顧客が投資判断を先送り、受注残高1兆1,666億円(約1.57年分)、現金4,004億円は総資産の47.7%で受取利息120億円は営業利益の34.1%、自己資本比率51.2%は業界トップ、そして中東情勢で「退避を含めたあらゆる可能性」を検討——日揮HDの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 エンジニアリング業の構造的課題——5期で3期が赤字という振れ幅/受注が売上を下回っている/カントリーリスクと社員の安全/総合エンジニアリングの利益率4.95%
  • 第3.5章 面接前に押さえる日揮HDの最新ニュース10本——受注目標1兆7,400億円・第1四半期営業利益+56.4%まで
  • 第4章 内定者の正体——「海外で働きたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——年収1,049万円(日揮グローバル)の読み方と、EPC・機能材のキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続15.1年、海外駐在と安全対策、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 日揮HDの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第130期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は975万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 日揮HDの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第130期)では、提出会社(単体)が245人、連結が8,154人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 日揮HDが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。