ALSOK(2331)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、ALSOKを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「16期連続増収でも目標未達」です。
有報の数字(第61期)
- 売上高
- 5,970億円
- 純利益
- 333億円
- ROE
- 9.2%
- 従業員数(連結)
- 66,949人
- 従業員数(単体)
- 11,741人
- 平均年間給与(単体)
- 622万円
- 平均年齢
- 41.8歳
- 平均勤続年数
- 18.3年
出典:ALSOKの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
ALSOKを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ALSOKに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはALSOKの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、ALSOK株式会社 有価証券報告書 第61期(2025年4月1日-2026年3月31日)、および2027年3月期第1四半期決算短信(2026年7月31日公表)に基づきます。
ALSOKは、16期連続で売上が増えても自社の利益目標に届かず、買収と省人化で目標を取り直しに行く会社だ。
知っておきたいことは3つある。
前の中期経営計画(会社が自分で決めた3年間の目標)で、利益率とROEの目標10.0%以上に届かなかった。ROEとは、株主の出資に対する利益の割合である。
目標を埋める手段は、設備管理や防災の会社の買収と、警備の省人化だ。
事業の中身は人の仕事が大半で、利益は値上げが通るかどうかに左右される。
この記事では、目標と現状の差、買収の中身、人手の構造を順に確かめる。
第1章 ALSOKは何に賭けているのか
1-1. 前の中計で届かなかった「10%」を、もう一度掲げた
前の中計「Grand Design 2025」は、売上高経常利益率とROEをともに10.0%以上とする目標だった。結果は8.4%と9.2%で、届かなかった。売上高経常利益率とは、売上に対する経常利益(本業を中心とした利益)の割合だ。
次の中計「ALSOK STAGE 2028」も、ROE10%程度、売上高経常利益率10%程度を掲げる。差は、ROEで0.8ポイント、利益率で1.6ポイントだ。
有報から読める賭けは3つある。
買収で、FM(ファシリティマネジメント、設備管理)事業等と介護を広げる。FMは売上が+16.6%で、伸び率はグループ最大だ。
常駐警備を「省人運営モデル」へ転換し、機械警備とFMではAIで業務を標準化する。
個人向けを広げる。ただHOME ALSOK事業の売上は248億円で、まだ動いていない。
志望動機に「警備で稼ぎ、買収と省人化で10%を目指す会社だから」と使える。逆質問は「利益率10%まで残り1.6ポイントを、どの事業で埋める想定ですか」が作れる。
1-2. 賭けは口先ではない——FMと防災を買い足している
当期の有報には、施設管理・ビルメンテナンス・防災の買収と承継が4件並ぶ。
2025年9月 富士通ホーム&オフィスサービス等から、施設管理事業を承継
2025年11月 沖縄綜合警備保障が、沖縄ビル・メンテナンスを子会社化
2026年3月 クボタから、平和管財の株式60%を取得
2026年5月 日本ドライケミカル(防災設備)に、公開買付け(TOB、株を一斉に買い集める手続き)を開始。買付代金は835億円
4件とも警備に隣接する領域で、自社のALSOKファシリティーズに統合する形だ。835億円は、当期の営業利益469億円の1.8倍にあたる。
買収には裏側もある。のれん(買収価格が相手の純資産を上回った差額)は274億円。インドネシアの子会社ののれんは、約5億円を減損(価値を切り下げること)した。
28卒が入る2028年4月は、新中計の最終年度だ。入社時の会社は、買った事業をつなぎ込む途中にいる。
課題指摘に使える。「買収した会社の人と仕組みを一つにする仕事で貢献したい」と言える。逆質問は「統合の局面で、若手はどんな役割を担いますか」。
1-3. 利益が伸びた理由は、値上げが通ったこと
当期の売上は5,970億円で、過去最高を更新した。営業利益も増え、469億円になった。
利益が増えた理由は値上げだ。従業員の処遇改善で労務費が150億円増えたが、売上も伸びた。売上に対する原価の割合は、前期の76.3%から76.0%に下がった。有報は「お客様に価格改定をお願いしてまいりました」と書く。ROEが前期の7.9%から9.2%に上がった主因も、この利益の増加だ。
追い風もある。有報は、刑法犯認知件数が4年連続で前年を上回り、国内の体感治安が悪化していると書く。
志望動機に「人件費の上昇を価格に反映できている会社だから」と使える。逆質問は「値上げを今後も通すために、現場では何をしていますか」。
1-4. 稼ぐのはセキュリティ、伸びるのはFM、人が多いのは海外
セキュリティ事業が本業だ。営業利益は報告セグメントの合計の78.5%を占める。
伸びているのはFM事業等で、利益率は12.1%。セキュリティ事業の10.8%より高い。
人が多いのは海外だ。連結従業員66,949人のうち、30,440人(45.5%)が海外事業にいる。だが海外の売上は連結の4.7%で、営業損失は11億円。前期の5億円から広がった。
課題指摘に使える。「従業員の半分近くがいる海外の黒字化」を、自分の貢献の切り口にできる。逆質問は「海外の赤字を止める時期の目標はありますか」。
1-5. 働く側の事実と、有報に書かれた会計の誤り
単体(ALSOK株式会社)の従業員は11,741人。平均年齢は41.8歳、平均勤続は18.3年、平均年間給与は622万円だ。
当期の有報には、会計の誤りへの再発防止策も載る。2025年4月、退職給付債務のデータ入力の誤りが判明した。2020年以降の有報などを訂正し、2025年5月に訂正報告書を出した。再発防止策として、決算パッケージの再開発と再鑑(二重確認)体制の整備を挙げる。
逆質問に使える。「平均勤続18.3年の組織で、若手はどんな役割を期待されますか」。管理部門志望なら、再発防止を課題指摘に使える。
第2章 警備という労働集約型サービス業の収益構造
2-1. 原価の大半は人件費——賃上げは直接、利益に響く
売上原価4,540億円の大半は、現場に立つ警備員の給与だ。製造業の原価は材料と設備が中心だが、警備は人の時間が商品になる。
前述の労務費の増加150億円は、売上の2.5%にあたる。値上げで吸収できなければ減益になり、通れば増益になる。ALSOKの利益は、価格交渉に左右される。
課題指摘に使える。「人手と価格の両面から利益を守る仕事に関わりたい」と言える。逆質問は「賃上げと値上げのバランスは、誰がどう決めますか」。
2-2. 機械警備はストック、常駐警備はフロー、警備輸送は縮む市場
機械警備(売上1,841億円)は、契約先にセンサーを置いて月額料金をもらうストック型だ。解約されない限り、売上は積み上がる。
常駐警備(1,388億円、+12.6%)は、警備員を派遣するフロー型だ。当期は大阪・関西万博と東京2025世界陸上で伸びた。アジア競技大会(2026年9月、愛知・名古屋)のような大会は、終われば売上が消える。伸びを「成長」と読むか「イベント特需」と読むかで、会社の見方が変わる。
警備輸送(731億円)は現金を運ぶ仕事だ。有報は、金融機関の店舗統廃合等でATM台数が減少していると書く。会社は「ATM綜合管理サービス」など、現金管理の効率化サービスへ軸足を移している。
志望動機と逆質問に使える。「契約が積み上がる機械警備に関わりたい」「常駐警備の特需後の売上をどう保つのか」と聞ける。
2-3. 警備業法という参入障壁
警備業は警備業法の下にあり、監督官庁は国家公安委員会(警察庁)だ。有報の「法的規制に関するリスク」には、警備業法や道路交通法など十数本の法律が並ぶ。警備員の教育時間や資格は法律で決まっており、人を雇ってすぐ現場に出せるわけではない。
この規制が参入障壁になる。全国に警備の拠点と駆けつけ網を持つ会社は限られ、ALSOKとセコムで市場の大半を占める。有報が「日本の警備業におけるリーディングカンパニー」と書く根拠は、ここにある。
志望動機に「規制に守られた市場で、全国網を持つ会社だから」と使える。他社との違いを問われたときの根拠にもなる。
ALSOKの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(従業員の45.5%がいる海外が、売上4.7%で赤字/人が採れない産業で、人が商品である/HOME ALSOKが+0.9%——「導入余地が大きい」のに伸びない/買い続ける会社の、のれんと統合の負担)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。16期連続増収でも中計の目標(ROE10%・売上高経常利益率10%)には届かず、ROE9.2%を3つに分けると動いたのは純利益率。労務費150億円増を値上げで吸収し、FMと防災を1年で4件買い足し、従業員の45.5%がいる海外は売上4.7%で赤字。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 ALSOKが抱える構造的課題——従業員の45.5%がいる海外が、売上4.7%で赤字/人が採れない産業で、人が商品である/HOME ALSOKが+0.9%——「導入余地が大きい」のに伸びない/買い続ける会社の、のれんと統合の負担
- 第3.5章 面接前に押さえるALSOKの最新ニュース10本——日本ドライケミカルTOB835億円、2027年3月期予想の営業利益557億円、第1四半期+15.4%まで
- 第4章 内定者の正体——「人々の安全・安心を守りたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収622万1,418円の読み方と、連結66,949人・単体11,741人でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続18.3年の読み方、女性管理職7.2%と女性役員20.0%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生