双日(2768)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、双日を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「買収の代金を先に払った年」です。

有報の数字(第23期)

売上高
2兆7,574億円
純利益
1,036億円
ROE
10.1%
従業員数(連結)
26,789人
従業員数(単体)
2,094人
平均年間給与(単体)
1,257万円
平均年齢
40.5歳
平均勤続年数
14.7年

出典:双日の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

双日を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、双日に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは双日の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、双日株式会社 有価証券報告書 第23期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

結論:双日は「会社を買って事業を増やす」途中にあり、第23期はその費用が先に出た年だった。

知っておきたいことは3つある。

・賭けの大きさ:会社は当期利益を1,036億円から2,000億円へ増やす目標を掲げる。そのために、3か年の中期経営計画で6,000億円を投資する。
・減益の理由:売上総利益(売上から原価を引いた粗利)は増えた。しかし買収した会社の費用で販管費(人件費や運営費)が352億円増え、税引前利益は197億円減った。
・弱点の場所:資源事業は従業員828人の小さな部門だ。それでも当期純利益が前期の292億円から48億円に落ちた。

この記事では、3点を有価証券報告書(会社が毎年出す公式の報告書)の数字で確かめ、面接で語れる形にする。

第1章 双日は何に賭けているのか

1-1. 賭けの中身——3ヶ年で6,000億円を投じ、当期利益2,000億円を目指す

報告書の「中期経営計画2026」には、会社が何に賭けているかが数字で書かれている。2030年の姿は「事業や人材を創造し続ける総合商社」だ。

その先の到達点を、会社は「Next Stage」と呼ぶ。当期利益2,000億円、時価総額(株式の値段の合計)2兆円がターゲットだ。当期利益は今1,036億円なので、およそ2倍にする話になる。

中計の目標は3つに絞られている。財務規律を守って6,000億円を投資すること。3ヶ年平均でROE 12%超にすること。ROEは、株主のお金でどれだけ稼いだかを示す割合だ。もう1つは株主への還元である。

成長の考え方は「KATI(カチ)モデル」という。得意な事業を起点に、個別の取り組みを大きな「カタマリ」に育てる。同じ段落には、見込みのない事業は撤退も含めて見直すとも書かれている。

面接での使い方

志望動機で「当期利益2倍の計画に、どの領域で貢献したいか」を語れる。逆質問では「ROE 12%超という3ヶ年平均の見通し」を聞ける。

1-2. 賭けは買収に表れている——買った会社の上に買い足す

賭けが口先でないことは、買収の重ね方で分かる。報告書が挙げる当期の例は次のとおりだ。

・エネルギーソリューション:米国のMcClure社を買収して参入し、Freestate社を買い足した。豪州ではEllis Air社、Climatech社を買収した。
・インフラ:豪州のCapella社を買収した。開発実績と高度専門人材を取り込むためだ。
・化学:日本エイアンドエルを買収し、電池部材の取引で得た知見を製造へ広げた。

領域は3つに集中しており、狙いは「カタマリ」づくりだ。人を取り込むことが買収の目的に明記されている点も見逃せない。

買収の結果、総資産は1年で5,608億円増えた。3ヶ年6,000億円の投資枠のうち、大半に相当する資産が1年で積み上がったことになる。

面接での使い方

6社の名前を挙げ「どの事業が最も育つと見るか」を語れば、志望動機の根拠になる。逆質問は「買収後、若手はどんな仕事を任されるか」にできる。

1-3. 増収でも減益——買った会社の費用が先に効いた

第23期は増収だった。売上総利益も増えた。それでも税引前利益は197億円減っている。

原因は販管費の352億円の増加だ。報告書は理由を「連結子会社の新規取得による増加」と説明する。買った会社の費用が、成果より先に乗ったかたちだ。

会社が開示する「基礎的収益力」でも同じ傾向が出る。これは、売却益や減損といった一時的な損益を除いた、本業の稼ぐ力を示す指標だ。第23期は前期比で16.5%落ちた。

ROEは11.7%から10.1%へ下がり、中計が掲げる12%超を下回った。買った資産が、まだ利益を生み切っていない。

面接での使い方

課題指摘で「増収減益の原因は買収費用の先行で、焦点は回収の時期だ」と述べられる。逆質問は「買収した会社が利益を出し始める時期の目安」にできる。

1-4. 資源と自動車——利益が大きく動く事業と赤字の事業

7つの事業部門のうち、減益が目立つのは2つだ。

・金属・資源・リサイクル:当期純利益が292億円から48億円へ落ちた。豪州の原料炭の市況下落と、減損の計上が理由だ。
・自動車:当期純利益は赤字だった。豪州の中古車事業で減損が出た。

金属・資源・リサイクルの従業員は828人で、全体の3.1%にすぎない。一方、自動車は5,787人で全体の約2割を占める。人員の多い事業が赤字という点は、見ておきたい。

面接での使い方

課題指摘で「赤字の自動車事業の立て直し」を、自分が貢献したい論点にできる。逆質問は「資源の市況に左右されにくくする方針」にできる。

1-5. 働く側の事実——従業員2万6,789人、平均年間給与1,257万円

連結の従業員は2万6,789人だ。双日本体(単体)は2,094人で、連結の約8%にあたる。残りは子会社などで働く人たちだ。

単体の平均年齢は40.5歳、平均勤続は14.7年。平均年間給与は1,257万円だ。女性役員比率は36.4%である。

面接での使い方

入社後の働き方を語るときの根拠にできる。逆質問は「単体2,094人で多くのグループ会社と関わる中で、若手がどう関われるか」にできる。

第2章 総合商社の収益構造

2-1. 「収益」ではなく「売上総利益」を見る

商社の収益(売上高)には、仲介する取引の総額が乗る。このため実力が測りにくい。双日の場合、収益のうち手元に残る売上総利益は13.3%だ。

だから商社の実力は、売上総利益と当期純利益で測る。会社が「基礎的収益力」を自ら開示しているのも、同じ理由からだ。

面接での使い方

業績を語るとき、収益ではなく売上総利益で話せば、商社の見方を分かっていると伝わる。

2-2. 「資源」と「非資源」——振れ幅の大きい資源

商社は事業を「資源」と「非資源」に分けて語る。資源は原料炭や原油など、市況で価格が動く事業だ。価格が上がれば大きく稼ぎ、下がれば減損が出る。

双日の一過性の損益も、この2つに分かれる。非資源はガス小売事業の売却益などで238億円のプラスだった。資源は豪州石炭事業の減損などで126億円のマイナスだった。

売却益が減損を上回り、見かけの減益を和らげた。つまり実力値の落ち込みを、資産の売却益が一部覆い隠している。

従業員828人の事業が、全社の減益の主因になる——これが資源事業の性質だ。

面接での使い方

課題指摘で「資源の振れ幅と、売却益に頼らない収益づくり」を論点にできる。

2-3. 買収で事業を増やすモデルの時間差

買収の利点は、時間を買えることだ。ゼロから作るより、すでに回っている会社を買うほうが速い。代償は、買った初日から費用が連結に乗ることだ。成長が出るまでには時間がかかる。第23期は、この時間差が決算に出た年だった。直近の第1四半期では、買収した事業が利益に貢献し始めている。詳しくは有料部で扱う。

規模では、三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅の5大商社と差がある。双日は特定の領域で存在感を出す道を選ぶ。航空・社会インフラの防衛関連、ベトナムなどアジアの事業基盤、エネルギー・ヘルスケアの電力小売が例だ。

面接での使い方

志望動機で「規模ではなく、特定領域で戦う会社だから選んだ」と語れる。逆質問は「買収事業が黒字化するまでの標準的な期間」にできる。

双日の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(基礎的収益力の低下/自動車事業の赤字/資源市況への感応度/財務レバレッジと営業キャッシュフロー)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。収益2兆7,574億円(+9.9%)・売上総利益+207億円に対し販管費は+352億円増えて税引前利益は△197億円、基礎的収益力は1,227億円から1,024億円へ△16.5%、一過性損益は非資源+238億円と資源△126億円、金属・資源・リサイクルは従業員828人で当期純利益△244億円、自動車は従業員5,787人で△53億円の赤字、総資産は買収で+18.2%——双日の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 総合商社の構造的課題——基礎的収益力の低下/自動車事業の赤字/資源市況への感応度/財務レバレッジと営業キャッシュフロー
  • 第3.5章 面接前に押さえる双日の最新ニュース10本——買収5件・基礎的収益力・第1四半期の急回復まで
  • 第4章 内定者の正体——「商社で世界を舞台に」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,257万円の読み方と、単体2,094人組織でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——女性役員比率36.4%の他社比較、勤続14.7年の意味、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 双日の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第23期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は1,257万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 双日の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第23期)では、提出会社(単体)が2,094人、連結が26,789人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 双日が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。