東亞合成(4045)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、東亞合成を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「アロンアルフアの会社。だが接着材料事業の営業利益は、全体の2.0%だった。」です。

有報の数字(第113期)

売上高
1,623億円
純利益
128億円
ROE
6.0%
従業員数(連結)
2,680人
従業員数(単体)
1,444人
平均年間給与(単体)
740万円
平均年齢
43.0歳
平均勤続年数
18.0年

出典:東亞合成の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

東亞合成を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、東亞合成に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは東亞合成の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、東亞合成株式会社 有価証券報告書 第113期(2025年1月1日-2025年12月31日)、および2026年12月期第2四半期(中間期)決算短信・2026年12月期通期業績予想の修正ならびに配当予想の修正に関するお知らせ(いずれも2026年7月31日公表)に基づきます。

東亞合成は、地味な基礎素材で稼ぎ、3年で590億円を設備に投じる化学メーカーだ。

知っておきたいことは3つある。

接着材料事業の営業利益(本業の儲け)は3億円だ。これは事業別利益の合計の2.0%にすぎない。利益の53.3%を稼ぐのは、基幹化学品事業である。

2026〜2028年の中期経営計画(会社が3年先までの目標を決めた計画)が進行中だ。28卒が入社する2028年は最終年度で、答え合わせの年になる。

株主への約束も重い。稼いだ利益の90%程度を株主に返す方針を掲げた。株価が会社の純資産の1.0倍以上になること(PBR)も目標だ。

この記事では、会社が何に賭け、どこで稼ぎ、どこに課題があるかを確かめる。

第1章 東亞合成は何に賭けているのか

1-1. 4つの注力分野と、3年で590億円の投資

注力分野は、モビリティ、半導体、メディカル、環境インフラの4つだ。2026年2月に発表した中期経営計画で示された。

裏づけになるのが投資額だ。2026〜2028年の設備投資は、3年累計で590億円を計画する。中身は、ソーダ電解工場の更新と、高機能ポリマー工場の増強などである。

投資はすでに動いている。まだ完成していない設備(建設仮勘定)が増えた。資金の一部は、社債の発行で調達している。

最終年度の2028年は、売上1,800億円、営業利益180億円を目標にしている。

面接での使い方

志望動機に使える。4分野のどれに関わりたいかを、590億円が動く3年間と結んで語れる。

1-2. 稼いでいるのは、有名ブランドではなく基幹化学品

事業は5つある。基幹化学品、ポリマー・オリゴマー、樹脂加工製品、接着材料、高機能材料だ。

最も稼ぐのは基幹化学品事業だ。事業別の営業利益の合計のうち、53.3%を占める。中身は電解製品、アクリルモノマー、工業用ガスで、派手さはないが利益の柱である。

一方、「アロンアルフア」を含む接着材料事業の営業利益は3億円だ。事業別の合計の2.0%にとどまる。

この事業は、前期に営業利益が21.0%減った。米国での合弁解消に伴う体制変更で、固定費が増えたためだ。

伸びたのは樹脂加工製品事業で、営業利益が56.4%増えた。下水道など、老朽化したインフラ向けの製品が売れた。

面接での使い方

課題指摘と逆質問に使える。「接着材料は知名度の割に利益が小さい。米国の体制変更後、利益をどう戻す計画か」と聞ける。

1-3. 直近は減収・最終増益、今期は上向きだ

前期(2025年12月期)は、売上が減り、営業利益も微減だった。それでも最終利益は、7.5%増えた。

理由は政策保有株式の売却だ。取引関係のために持つ他社株で、その売却益が最終利益を押し上げた。本業が伸びたわけではない。

2026年7月31日には、通期予想を上方修正した。営業利益の予想は、145億円から155億円になる。

155億円が実現すると、営業利益率(売上のうち営業利益が占める割合)は9.1%になる。中期経営計画の目標は10.0%で、まだ届かない。

面接での使い方

最新ニュースの文脈に使える。逆質問では「営業利益率10.0%まで残りの差を、どの事業で埋めるのか」と聞ける。

1-4. 株主への約束:ROE6.5%、PBR1.0倍以上、総還元性向90%

ROE(自己資本利益率)は、株主から預かったお金で、どれだけ利益を出したかを示す比率だ。

東亞合成のROEは、5期のあいだ5.6〜7.0%の範囲で動いただけだった。前期は6.0%である。会社が自分で決めた目標は、2028年に6.5%だ。上げ幅は0.5ポイントしかない。

PBRは、株価が1株あたり純資産の何倍かを示す。1倍を下回ると、市場は会社を、資産を分けたほうが価値があると見ている状態になる。会社は2028年に、1.0倍以上を目標にした。

そのための手段が株主還元だ。計画期間の総還元性向(稼いだ利益のうち、配当と自社株買いで株主に返す割合)を、90%程度にする。

利益の大半を返しながら、590億円を投資する。この両立は、社債などの調達に頼る部分が大きい。

面接での使い方

逆質問に使える。「利益の9割を返しながら590億円を投資する資金の見通しを、どう考えているか」と聞ける。ROE目標が控えめな理由も、投資が先行する期間だからかと確かめられる。

第2章 化学メーカーの収益構造

2-1. 「基幹化学品」という地味な土台

利益の柱は、最も地味な事業だ。中身は3つある。

電解製品:食塩水を電気分解して作る苛性ソーダや塩素。紙、繊維、化学品の製造に欠かせない。

アクリルモノマー:アクリル酸などの原料。紙おむつの高吸水性樹脂、塗料、接着剤の材料になる。

工業用ガス:産業用の各種ガスである。

大量に作って大量に売る素材で、価格は市況で動く。前期は販売数量の減少などで、売上が減った。それでも営業利益は増えている。固定費の削減が効いた。

電解設備は、老朽化すれば更新が必要になる。中期経営計画にも「ソーダ電解工場の更新」が入っている。

面接での使い方

課題指摘に使える。「市況で売上が動く事業なので、固定費の管理が利益を支えていると理解した」と語れる。

2-2. 知名度と利益は別のもの

接着材料事業は、「アロンアルフア」で知られる家庭用と、工業用に分かれる。

家庭用は、米国での合弁解消による体制変更で、増収になった。しかし固定費が増え、利益は減っている。

工業用の機能性接着剤は、車載用とスマートフォン用部品向けの販売が堅調だった。車載はモビリティ分野に、つながる。

知名度と収益性は、別のものだ。同じ接着剤でも、家庭用と工業用で顧客が違う。

面接での使い方

志望動機に使える。「家庭用の知名度ではなく、車載用など工業用の接着剤の成長に関わりたい」と、注力分野と結んで語れる。

2-3. 2,680人の会社と、研究開発の置き場

従業員は、連結で2,680人、単体で1,444人だ。事業別では、ポリマー・オリゴマーが502人、樹脂加工が460人、基幹化学品が399人、接着材料が323人である。

全社部門は537人で、連結の2割にあたる。この人数は、単体でも同じだ。管理や研究開発の機能は、東亞合成本体に集まっているといえる。

前期から、新規製品の研究開発費を、事業ではなく全社の費用として扱う形に変えた。中期経営計画は、売上高に対する研究開発費の割合を4%以上に保つとしている。

面接での使い方

逆質問に使える。「研究開発を全社で管理する形にした狙いと、研究職が事業部とどう連携するか」を聞ける。

東亞合成の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(ROEが5期にわたって6%前後で動かない/基幹化学品への依存/接着材料事業の収益性/女性管理職比率8.0%という目標)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。「アロンアルフア」を含む接着材料事業の営業利益が3億円で、セグメント利益合計の2.0%にすぎないこと。利益の53.3%を稼いでいるのが、苛性ソーダやアクリルモノマーといった地味な基幹化学品事業であること。中期経営計画「Connect and Create 2028」がPBR1.0倍以上と総還元性向90%を掲げ、3年で590億円の設備投資を計画していること。そして5期のROEが5.6〜7.0%で動かない理由が、総資産回転率0.572回と財務レバレッジ1.327倍にあること。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 東亞合成が抱える構造的課題——ROEが5期にわたって6%前後で動かない/基幹化学品への依存/接着材料事業の収益性/女性管理職比率8.0%という目標
  • 第3.5章 面接前に押さえる東亞合成の最新ニュース10本——中期経営計画の発表、通期予想と配当の上方修正、米国の合弁解消まで
  • 第4章 内定者の正体——「アロンアルフアに惹かれた」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収7,398,744円の読み方と、連結2,680人・単体1,444人の組織でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——平均年齢43歳・勤続18年の読み方、女性役員比率16.7%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 東亞合成の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第113期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は740万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 東亞合成の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第113期)では、提出会社(単体)が1,444人、連結が2,680人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 東亞合成が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。