イビデン(4062)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、イビデンを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「投資を6割減らした年」です。

有報の数字(第173期)

売上高
4,162億円
純利益
637億円
ROE
12.2%
従業員数(連結)
11,105人
従業員数(単体)
4,036人
平均年間給与(単体)
766万円
平均年齢
40.2歳
平均勤続年数
16.9年

出典:イビデンの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

イビデンを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、イビデンに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはイビデンの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、イビデン株式会社 有価証券報告書 第173期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

イビデンは、AI向けの半導体部品に3年で約5,000億円を投じると決め、その前の1年で財務を固めた会社である。

知っておきたいことは3つある。

会社が賭けている先は、電子事業の1つだけだ。投資の中身は、事業場ごとに有報で公開されている。

当期の最終利益は大きく伸びたが、保有株の売却益が押し上げている。本業の伸びと分けて読む必要がある。

セラミック事業の利益は減り、従業員数も5期で減った。一方、平均給与は増えている。

この記事では、この3点を有報の数字で確かめる。

第1章 イビデンは何に賭けているのか

1-1. 会社の賭けは「電子事業に3年で約5,000億円」

有報は、2026年度から2028年度の3年間で、電子事業に総額約5,000億円を投じると書く。当期の売上高は4,162億円である。年間売上を超える額を、3年で1つの事業に注ぐことになる。

理由は生成AI向けの需要だ。有報は、AIサーバー向けの需要が好調で、高機能なICパッケージ基板の需要が伸びると見込む。ICパッケージ基板とは、半導体チップと基板をつなぐ土台の部品である。

この投資は、2023年度から5年間の中期経営計画「MNS115 Plan」の一部に位置づけられている。

面接での使い方

志望動機で「1つの事業に3年で約5,000億円を投じる姿勢に、会社の本気を感じた」と根拠つきで言える。

1-2. 賭けの中身は6件の設備計画、完成は2029年6月

有報の「設備の新設等の計画」には、事業場ごとの投資予定額が載っている。6件の合計は約5,767億円で、すべて電子事業だ。セラミック事業やその他事業に、重要な新設計画は載っていない。

6件のうち4件は、着手が2026年2〜3月で、支払いはほぼゼロである。完了予定は2029年6月にそろう。まだ始まったばかりの計画といえる。

28卒の入社は2028年4月で、5,000億円投資の最終年度にあたる。建てる決断より、建った設備を動かす段階で入社する世代になる。

面接での使い方

逆質問で「2029年6月の完成に向けて、入社1〜2年目の若手はどんな立ち上げに関わりますか」と聞ける。

1-3. 当期は「攻める前に財務を固めた1年」

営業利益(本業のもうけ)は620億円だった。最終利益は637億円で、本業のもうけより多い。理由は、保有株の売却益494億円である。最終利益の約8割にあたる。来期も同じ額が出る保証はない。

同じ年に、設備投資は1,573億円から642億円へ、6割近く減った。自己資本比率(返さなくてよい資金が、総資産に占める割合)は57.27%まで上がった。

5,000億円の投資は2026年度から始まる。当期は大型投資の前の、仕込みの年と読める。

面接での使い方

課題指摘として「最終利益の伸びには株の売却益が含まれる。本業の営業利益で見るべきだと理解している」と言える。

1-4. 電子は伸び、セラミックは減った

事業ごとの利益を前期と比べると、電子は+68.5%、セラミックは−37.4%だった。会社の稼ぎ頭は、1年でセラミックから電子へ移った。

電子には気になる点もある。稼働していない設備の減価償却費が、営業外費用として38億円出ている。投資した設備の一部が、まだ動いていないということだ。

面接での使い方

課題指摘として「セラミックの利益減をどう立て直すのか」を問える。逆質問では、休止設備の活用の見通しを聞ける。

1-5. 働く側の事実——人は減り、給与は増えた

連結の従業員は11,105名で、5期前から14.3%減った。イビデン本体は4,036名、平均年齢は40.2歳、平均勤続年数は16.9年である。

平均年間給与は766万円で、前期比+4.11%だった。有報は、役割・職務に基づく報酬制度と、成果・業績連動型の賞与があると書く。

管理職に占める女性の割合は2.5%と低い。男性の育児休業取得率は82.8%と高い。

面接での使い方

「人員が減るなか、これからの採用で期待される役割は何か」を逆質問にできる。女性管理職の比率にも触れると、人的資本を読んでいると伝わる。

第2章 電子部品業の収益構造

2-1. ICパッケージ基板は「半導体の土台」で、設備投資が重い

チップの端子は年々細かくなる。基板の配線もそれに合わせて微細になり、作れるメーカーは限られる。基板はチップに合わせて作るため、半導体メーカーと一体で開発する。関係は簡単には切れない。

その分、設備投資は重い。前期の電子への投資は1,467億円で、当期の電子の売上の約6割にあたる。当期はその投資が、利益の伸びとして出始めた。

牽引役は生成AI向けの需要だ。2027年3月期第1四半期の決算でも、増収増益の理由に挙がっている。

面接での使い方

志望動機で「AIの計算を支える半導体の土台を作る仕事に関わりたい」と、事業の中身と結びつけて語れる。

2-2. セラミックは固定費が重い

セラミックの中核は、自動車の排ガスを浄化するフィルターである。売上は前期比で−1.2%とほぼ横ばいだったが、利益は−37.4%と大きく落ちた。

固定費(売れなくても出る工場や設備の費用)が重い事業は、売上が少し減るだけで利益が大きく減る。

背景として、電気自動車は排ガスが出ず、フィルターが要らないという長期の逆風が考えられる。設備投資も絞られ、資源は電子へ寄っている。

面接での使い方

課題指摘として「縮む事業を支える側に回るなら、自分は何で貢献できるか」を語れる。

2-3. 設備産業は「膨らませて、締め直す」

総資産は第171期にピークをつけ、当期はそこから約15%縮んだ。自己資本比率は第171期の43.80%が底で、当期は57.27%まで戻った。

投資がすべて実るわけではない。当期の減損損失は164億円で、前期の185億円に続き2期連続だった。減損とは、投資した設備の価値が下がったとして、帳簿上の価値を切り下げることだ。

面接での使い方

逆質問で「期待どおりに実らなかった投資を、次の判断にどう活かしていますか」と聞ける。

イビデンの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(利益の77.6%は、株の売却益だった/セラミックをどうするか/稼働していない設備がある/2027年3月期は経常を41.1%上方修正——生成AIが牽引)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上高4,162億円(+12.7%)に対し販管費を+6.0%に抑えて営業利益620億円(+30.2%)・経常利益608億円(+27.0%)と本業が伸びる一方、親会社株主帰属当期純利益637億円(+89.0%)は経常を上回り、その主因は投資有価証券売却益494億円(前期の2.02倍・純利益の77.6%に相当)という2期連続の株式売却であること、そのお金で財務CF△1,575億円(前期の22.1倍)を支出し総資産を1,212億円圧縮して自己資本比率を45.35%から57.27%へ11.92ポイント改善させ、設備投資も1,573億円から642億円へ59.1%絞ったこと、セグメントでは電子が売上+23.4%・利益+68.5%・利益率13.61%→18.59%と伸びて投資の97.1%を受ける一方、セラミックは利益△37.4%・利益率14.51%→9.19%と1年で電子と逆転し設備投資も△75.3%に絞られたこと、それでも電子には休止固定資産減価償却費38億円(2.22倍)という稼働していない設備があり減損損失164億円を2期連続で計上していること、提出会社4,036名は連結の36.3%で平均年収766万3,191円(+4.11%)・勤続16.9年・組合員3,543名がJEC連合に加盟、そして2027年3月期は第1四半期で経常+57.8%・通期経常を900億円から1,270億円へ41.1%上方修正——イビデンの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 電子部品業の構造的課題——利益の77.6%は、株の売却益だった/セラミックをどうするか/稼働していない設備がある/2027年3月期は経常を41.1%上方修正——生成AIが牽引
  • 第3.5章 面接前に押さえるイビデンの最新ニュース10本——株売却益494億円・電子18.59%・経常2.1倍計画まで
  • 第4章 内定者の正体——「半導体に興味があります」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収766万円の読み方と、電子・セラミックのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続16.9年、男性育休82.8%、女性管理職2.5%の読み方
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. イビデンの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第173期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は766万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. イビデンの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第173期)では、提出会社(単体)が4,036人、連結が11,105人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. イビデンが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。