Sansan(4443)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、Sansanを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「純利益16倍の裏側」です。

有報の数字(第19期)

売上高
538億円
純利益
68億円
ROE
38.8%
従業員数(連結)
2,336人
従業員数(単体)
2,077人
平均年間給与(単体)
810万円
平均年齢
32.1歳
平均勤続年数
3.4年

出典:Sansanの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

Sansanを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、Sansanに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはSansanの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、Sansan株式会社 有価証券報告書 第19期(2025年6月1日〜2026年5月31日)に基づきます。直近の動向は、2027年5月期第1四半期決算短信(2026年10月9日提出)で補っています。

Sansanは、広告と人に投資して売上を伸ばす時期から、利益を出す時期へ移りつつあるSaaS企業だ。

知っておきたいことは3つある。

・純利益は前期の16倍だが、そのまま読めない。第19期は67.8億円で、前期の4.2億円から跳ね上がった。前期は保有株の売却に備えた引当金23.0億円が利益を押し下げ、当期は子会社株式の売却益14.4億円が乗っている。
・本業の利益は本当に伸びた。営業利益(本業の利益)は28.0億円から81.9億円になり、売上高に対する割合は15.2%まで上がった。
・看板と次の柱で、伸び方が違う。名刺管理「Sansan」の売上は+16.2%、請求書受領「Bill One」は+39.7%だ。

この記事では、会社が決めた目標、手放した事業と買った事業、稼ぎ頭の入れ替わり、働く側の事実を確かめ、面接で自分の言葉で語れる形にする。

第1章 Sansanは何に賭けているのか

1-1. 会社が自分で決めた目標——売上の成長と、利益の水準

会社は2027年5月期から2029年5月期の3年間について、中期財務方針を掲げている。売上高の年平均成長率は16〜20%、最終年度の調整後営業利益率は25〜30%という内容だ。

調整後営業利益とは、営業利益に株式報酬の費用と買収に伴う償却費を足し戻した、本業の稼ぐ力に近い指標だ。当期の調整後営業利益率は15.7%で、目標の水準はまだ先にある。

有報は新しい方針を「売上高と調整後営業利益の成長の両立」と書く。前の方針は「売上高の堅調な成長と調整後営業利益の成長加速」だった。最重要の指標は引き続き売上高だが、利益への責任が一段重くなったと読める。

面接での使い方

志望動機では、利益を伸ばす局面に入った会社で働く意味を語れる。逆質問では、利益率を引き上げる最大の変数は何かを聞ける。

1-2. 手放すものと買うものが、同じ期に動いた

手放す側から見る。2026年4月、連結子会社だったログミー株式会社の全株式を、ユーザベースに譲渡した。同社のログミーBusiness事業は、Sansan本体が引き継いでいる。冒頭の売却益は、この譲渡で生じた。

2025年7月には、出資していたUnipos株式会社の株式も売却し、資本業務提携を解消した。

買う側では、2026年1月に人材紹介のイードアを子会社化し、Eightキャリアに社名を変えた。2025年7月には、AIインターフェース「Ask One」を提供するナインアウトの持分を、全株に引き上げた。

ロールアップ(同じ領域の会社を買い重ねる型)の目で見ると、2023年以降の子会社化は3社だ。領域は、ナインアウト、言語理解研究所、イードアでばらばらで、同じ領域を束ねる型には読めない。しかも言語理解研究所は、当期にのれん(買収額と資産の差)を減損した。

面接での使い方

課題指摘として、買収と売却の基準が見えにくい点を論点にできる。逆質問では、次に手放す事業と買う事業をどう分けるかを聞ける。

1-3. 28卒が入るのは、中期財務方針の最終年度の直前

決算期は5月だ。28卒の入社は2028年4月で、2028年5月期(第21期)の終わりにあたる。入社するとすぐ、最終年度の2029年5月期(第22期)が始まる。

会社は2027年5月期の調整後営業利益率を20.0〜22.5%と見込む。最終年度に目指す水準までは、さらに上積みが要る。あなたが入るのは、その上積みを実行する局面だ。

面接での使い方

志望動機では、利益率を引き上げる最終局面に配属される点を軸にできる。逆質問では、入社1年目に任される数字が利益率にどう効くかを聞ける。

1-4. 売上の主役と、伸びの主役が違う

売上の6割近くは、名刺管理の「Sansan」だ。4分の1は請求書受領の「Bill One」で、残りはEightなどである。

伸びの主役は逆になる。Sansanの伸びに対し、Bill Oneは2倍以上の速さで伸びた。会社の2027年5月期の見通しでは、Sansanは+10〜12%まで落ち着く。

有報によれば、Sansanの利用者は総労働人口の一部にとどまり、会社は「広大な開拓余地」があるとする。ただ、新規の中心は中小規模の契約で、契約あたりの月額はわずかに下がった。看板の伸びを、単価でなく件数で作る局面に入っている。

面接での使い方

課題指摘として、Sansanの伸びが落ちる分をBill Oneでどう補うかを論点にできる。逆質問では、2つの商品への人員配分の考え方を聞ける。

1-5. 働く側の事実——社員は5期でほぼ2倍、平均勤続は3.4年

連結従業員は2,336人で、第15期の1,205人からほぼ倍になった。提出会社であるSansan単体は2,077人だ。

単体の平均年齢は32.1歳、平均勤続年数は3.4年、平均年間給与は810万円である。

社員が4年で倍になった会社では、勤続が短くなるのが自然だ。入れ替わりの多さだけでなく、新しく入った人の多さも映している。有報に離職率の記載はなく、どちらが主因かは断定できない。

面接での使い方

志望動機では、人が増え続ける組織で役割を取りに行く姿勢を語れる。逆質問では、新しく入った人が戦力になるまでの道筋を聞ける。

第2章 SaaSの収益構造

2-1. 費用が先に出て、売上はあとから積み上がる

SaaSは、ソフトウエアを月額などの利用料で提供するモデルだ。売り切りと違い、契約が続く限り売上が積み上がる。

ただし費用は先に出る。広告宣伝費は67.7億円で、テレビCMの強化を含む。人を採用して営業体制を整える費用も、契約が取れる前にかかる。

お金の入り方にも特徴がある。顧客から契約期間分の料金を一括で受け取るため、前受金が214.9億円ある。売上に計上される前の預かり金で、現金は先に入る。

面接での使い方

志望動機では、費用が先で売上があとという構造を理解したうえで選んだと語れる。逆質問では、広告費と営業人員のどちらが先に効くのかを聞ける。

2-2. 解約の少なさが、積み上げを支える

SaaSで大事なのは、契約がどれだけ続くかだ。会社は月次解約率(既存契約の月額収入のうち、解約で減った割合)を、直近12か月平均で開示している。

Sansanは0.55%、Bill Oneは0.34%で、どちらも1%を下回る。解約が少ないから、新しく取った契約が前の分に積み上がる。

市場での位置は2つで違う。Sansanは法人向け名刺管理で首位のシェアを持つ、成熟した市場にいる。Bill Oneも請求書受領で首位だが、会社は国内企業への浸透が1%に届いていないと書く。

面接での使い方

志望動機では、2つの商品の成長段階の違いを理解して選んだと語れる。逆質問では、解約を防ぐために現場が最初に見る数字を聞ける。

2-3. この構造で働くとは、どういうことか

契約を取って終わりの仕事ではない。解約が少ないほど売上が積み上がる構造なので、導入後に使い続けてもらう仕事が重い。有報は、営業体制の強化を通じて、新規顧客の獲得と既存顧客の利用拡大を進めると書く。

新卒の総合職には、入社後半年にわたる成果型研修「TOPGUN」がある。チームで実際のビジネス課題に取り組み、戦略立案から商談、クロージング、サポートまでを自分で行う。

面接での使い方

志望動機では、契約後まで責任を持つ働き方を選ぶ理由を語れる。逆質問では、TOPGUNの課題が配属後の仕事にどうつながるかを聞ける。

Sansanの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(看板商品の成長が落ちる局面/利益の伸びをBill Oneの黒字化に預ける構造/AIが追い風にも代替にもなる点/預かるのは企業の重要データ)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

■この会社の面接で落ちる人の共通点
「成長しているSaaS企業で早く成長したい」と言ったあとに、面接官から「売上は+24.4%伸びましたが、その伸びを作った事業はどれだと見ていますか」と返されて、言葉が止まる。名刺管理のSansanは+16.2%で、伸びを引っ張ったのは+39.7%のBill Oneだ。第4章では、この止まり方を3パターンに分けて、どこで差がつくかを書いた。

■逆質問の1本目だけ、ここに置いておく
「純利益は67.8億円ですが、その中に子会社株式の売却益14.4億円が含まれると読みました。売却益を除いた利益の増え方は、社内ではどの指標で見ていますか。」
この質問に必要な数字は、純利益67.8億円と売却益14.4億円の2つだ。残り6本は、配当と自己株式取得の配分、Sansanの伸びの落ち着き、Bill Oneの利益、AIによる代替、新卒研修TOPGUN、買収と売却の基準を、同じ型で組んである。

ここまでが無料パートです。純利益は前期の4.2億円から67.8億円へ、営業利益は28.0億円から81.9億円へ伸び、売上の伸びはSansanの+16.2%に対してBill Oneが+39.7%、社員は5期でほぼ倍の2,336人——Sansanの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 SaaS業界の構造的課題——看板商品の成長が落ちる局面/利益の伸びをBill Oneの黒字化に預ける構造/AIが追い風にも代替にもなる点/預かるのは企業の重要データ
  • 第3.5章 面接前に押さえるSansanの最新ニュース10本——第1四半期の調整後営業利益24.8億円・通期見通し・初配当まで。1本ごとに「面接で使うなら」
  • 第3.6章 数字で補足——5期の推移・セグメント別の利益と人員・ROEの分解・財務・株主還元・リスク要因
  • 第4章 内定者の正体——「成長企業で早く成長したい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収810万円の読み方と、2,336人でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続3.4年の読み方、女性役員比率20.0%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本(それぞれの狙いつき)
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. Sansanの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第19期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は810万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. Sansanの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第19期)では、提出会社(単体)が2,077人、連結が2,336人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. Sansanが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。