楽天(4755)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、楽天を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「営業利益が14倍に」です。

有報の数字(第29期)

売上高
2兆4,966億円
純利益
-1,779億円
ROE
-18.5%
従業員数(連結)
29,419人
従業員数(単体)
9,989人
平均年間給与(単体)
851万円
平均年齢
36.0歳
平均勤続年数
6.3年

出典:楽天の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

楽天グループを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、楽天グループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは楽天グループの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

楽天グループの論点は、携帯事業への大型投資が回収に向かうかどうかに尽きる。

知っておきたいことは3つある。

売上は伸びたが、利益は見方で姿が変わる。国際的な会計ルール(IFRS)では減益、会社が経営判断に使う社内指標(Non-GAAP)では大幅増益だ。

投資は携帯の基地局に集中している。会社自身がモバイルを「投資フェーズ」と認めている。

銀行・カード・証券を抱えるため、一般の事業会社とは財務の見え方が違う。

この記事では、楽天が何に賭け、どこが課題で、他社と何が違うのかを、有報の記述で確かめる。

第1章 楽天グループは何に賭けているのか

1-1. 「クロスユース率」——同じ人に複数のサービスを使わせる

有報には、会社が重視する指標として、売上収益、会員数、流通総額、クロスユース率などが並ぶ。流通総額とは、商品やサービスの取扱高のことだ。

注目はクロスユース率である。楽天市場の利用者が、カードや銀行、モバイルも使っている比率を指す。ひとつのサービスでなく、同じ人に複数を使ってもらう。この「楽天エコシステム」が、稼ぎ方の核にある。

この構造は18事業にまたがる。市場、トラベル、カード、銀行、証券、保険などだ。ポイントという共通の通貨が、それらをつなぐ。

面接での使い方

志望動機で「複数のサービスの組み合わせで稼ぐ構造に賭けたい」と語る根拠になる。逆質問では、クロスユース率の現状と目標を聞ける。

1-2. 基地局に2,000億円強——モバイルは「投資フェーズ」

楽天グループの投資は、ひとつの事業に集中している。楽天モバイルの基地局とネットワーク設備に、投資予定額2,000億円強を置く。資金は自己資金、借入金、社債でまかなう。

有報はモバイルを「投資フェーズにあるモバイルセグメント」と書く。まだ回収の段階に入っていないと、会社自身が認めている形だ。契約は伸びており、全契約回線は2025年12月に1,000万回線を超えた。

一方で、事業の整理も進めている。会社は事業の組み合わせの見直しを掲げ、電力供給の楽天エナジーを連結の対象から外した。国内スポーツ事業ではコンサル契約を解約し、中途解約金約25億円を支払った。

面接での使い方

逆質問に使える。「モバイルが回収フェーズに移ったと判断する基準は、契約者数ですか、基地局の整備率ですか」と聞ける。

1-3. 減益と大幅増益が同時に出る決算

2025年12月期の売上収益は2.50兆円で、前期比+9.5%だった。ところが利益は、物差しによって結論が割れる。

IFRSの営業利益は144億円で、前期比△72.9%の減益だ。一方、会社が経営判断に使うNon-GAAP営業利益は1,063億円で、前期から992億円増えた。

IFRSの減益の主因は、前期にあった約1,069億円の利益の反動である。AST SpaceMobile株の会計上の扱いを変え、株の価値を測り直して出た利益だ。

今期は一過性の損失も711億円出た。大きい内訳は、倉庫型ネットスーパー事業の減損等279億円と、通信ソフトを扱う楽天シンフォニーのOpen RAN事業の減損205億円だ。減損とは、資産の価値を帳簿上で切り下げることをいう。配当は年0円の無配が続く。

面接での使い方

「減益で危ない」「増益で安心」のどちらでもなく、差の原因を言い分けられると、課題指摘に使える。撤退や減損の対象になった事業名を挙げると、話が具体的になる。

1-4. 3つの事業の稼ぎ方——フィンテックがモバイルの赤字を支える

事業は3つに分かれる。インターネットサービス(楽天市場、楽天トラベルなど)、フィンテック(カード、銀行、証券、保険など)、モバイルだ。

事業別の利益を見ると、フィンテックが1,999億円で最大で、前期比+30.4%だった。対してモバイルは△1,618億円の赤字で、グループ最大の損失源である。

赤字は縮んでいる。前期の△2,089億円から、471億円の改善だ。

モバイル契約者は、グループの他サービスもよく使う。これを「アップリフト効果」と呼ぶ。上の利益は、この貢献額340億円をモバイルに配分した後の数字だ。

黒字化の目標時期は2026〜2027年とされる。2026年12月期の予想は、売上が証券を除き一桁後半の成長で、利益の数値は示されていない。

面接での使い方

課題指摘と志望動機の両方に使える。「フィンテックの稼ぎに支えられたモバイルを、黒字化へ進める一員になりたい」と言える。逆質問では、黒字化の時期の見立てを聞ける。

1-5. 次の看板——「AIエンパワーメントカンパニー」

経営の基本理念は、イノベーションで人と社会に力を与える「エンパワーメント」だ。三木谷会長兼社長CEOは、中長期の姿として「AIエンパワーメントカンパニー」を掲げる。

市場、トラベル、カード、モバイルなどで集まるデータをAIに生かす構想である。すでに楽天市場と楽天トラベルで、AIコンシェルジュをリリースした。

面接での使い方

志望動機で、基本理念とAIの方向性を結び付けて語れる。「AIでどの職種のどの業務を変えたいか」まで言えると、話に具体性が出る。

第2章 業界比較——日本IT・通信・EC大手の構造

2-1. 比べる相手は誰か——通信大手も「通信×金融×決済」

楽天の売上収益は2.50兆円。規模の大小より、事業の組み立て方を比べると違いが見える。

KDDIは通信を中心に、auじぶん銀行、au PAY、Pontaポイント、auでんき、auマーケットを展開する。NTTドコモも、dカード、dポイント、dマーケットを軸に、SMBCグループとの提携で金融を強めている。

別の型もある。ソフトバンクグループは投資ファンド型、Amazonは世界展開のEC×クラウド(AWS)型だ。楽天は、インターネット、フィンテック、モバイルを1社で束ねる型にあたる。

面接での使い方

志望動機で「なぜKDDIやドコモではなく楽天か」と問われたときの比較軸になる。各社の戦略は、それぞれの有報で確かめてから語ること。

2-2. 楽天だけの特徴は3つ

第1に、エコシステムの効果を数字で出している。アップリフト効果などをセグメント間で配分し、「モバイルエコシステム貢献」として開示する。同様の開示をする企業は、比較した範囲では他にない。

第2に、3つの軸をすべて自社で持つ。インターネット、フィンテック、モバイルを1社でそろえるのは、日本では楽天とKDDI、ドコモに限られる。

第3に、Non-GAAP指標を積極的に開示している。経営者が意思決定で使う社内指標を、外部にも示す姿勢だ。

面接での使い方

志望動機では、効果を数字で測って示す会社の姿勢に惹かれた、と語れる。逆質問では、モバイルエコシステム貢献の算出の考え方を聞ける。

楽天の構造的課題と追い風は、5つに分けて第3章で扱う(### 課題1:モバイル事業の黒字化タイミング不確実性/### 課題2:純利益の連続赤字/### 課題3:固定資産減損リスクの継続/### 課題4:金融サービスの規制対応/### 課題5:競合の本格化)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

  • 第3章 業界の構造的課題——### 課題1:モバイル事業の黒字化タイミング不確実性/### 課題2:純利益の連続赤字/### 課題3:固定資産減損リスクの継続/### 課題4:金融サービスの規制対応/### 課題5:競合の本格化
  • 第3.5章 押さえておくべき楽天グループ・IT/通信業界の最新ニュース
  • 第4章 内定者の正体
  • 第5章 職種別キャリア分析
  • 第6章 働く環境の現実
  • 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答例
  • 第8章 やましゃんの総合評価

よくある質問

Q. 楽天の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第29期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は851万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 楽天の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第29期)では、提出会社(単体)が9,989人、連結が29,419人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 楽天が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。