大塚商会(4768)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、大塚商会を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「回転させて稼ぐ構造」です。
有報の数字(第65期)
- 売上高
- 1兆3,228億円
- 純利益
- 643億円
- ROE
- 16.8%
- 従業員数(連結)
- 10,079人
- 従業員数(単体)
- 8,287人
- 平均年間給与(単体)
- 1,028万円
- 平均年齢
- 42.0歳
- 平均勤続年数
- 17.6年
出典:大塚商会の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
大塚商会を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、大塚商会に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは大塚商会の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社大塚商会 有価証券報告書 第65期(2025年1月1日〜2025年12月31日)に基づきます。
結論:大塚商会は、薄い利益率を「速い回転」と「毎月入る事業」で補う会社だ。
知っておきたいことは3つある。
売上高は1兆3,228億円と大きいが、営業利益率は6.8%にとどまる。営業利益率とは、売上のうち本業で残る利益の割合のことだ。
年限を切った中期経営計画はない。代わりに、会社が重視する指標を5つ掲げている。その先頭が取引企業数と、一企業あたりの売上高だ。
直近の売上は前年比+19.4%と伸びた。背景にはWindows10サポート終了に伴うパソコンの買い替えがある。この特需が一巡した後が、28卒の入社時期の論点になる。
この記事では、会社が何に賭け、どこに依存しているのか。そして働く側の実態はどうか。この3点を、有価証券報告書(会社が国に提出する年次の報告書)の記述で確かめる。
第1章 大塚商会は何に賭けているのか
1-1. 会社自身が掲げた5つの指標——先頭は「取引企業数」と「一企業あたりの売上高」
有価証券報告書の「目標とする経営指標」に、会社自身が重視する指標が書かれている。取引企業数、一企業あたりの売上高、営業利益伸長率、営業利益率、自己資本当期純利益率(ROE)の5つだ。
ROEは、株主から預かったお金でどれだけ利益を出したかを示す割合である。当期は16.8%だった。
並び順に注目したい。財務の指標より先に、取引企業数と一企業あたりの売上高が来る。この2つを掛ければ売上になる。顧客の数を増やすか、1社との取引を深めるか。会社は成長の道を2つに分けて管理している。
あわせて、恒常的な課題も5つ挙げている。グループ経営力の強化、各事業分野の評価徹底と経営資源の最適配分、サービス開発体制の強化、ワンストップ運営体制の強化、人材の育成だ。
志望動機では「顧客数と取引の深さの両方を見る会社に惹かれた」と語れる。逆質問では、この2指標の目標と現状の差を聞ける。
1-2. 「オフィスまるごと」と、毎月入る事業への賭け
戦略のキーワードは「オフィスまるごと」だ。リアル、Web、センターの3つの接点を連携させる。そして中堅・中小企業のオフィスに必要なものを、1社で任せてもらうことを目指している。
事業は2つに分かれる。システムインテグレーション事業は、パソコンやソフトを仕入れて売り、設計や設置工事まで担う。売上の構成比は68.3%だ。売上のうち仕入原価が占める割合(仕入率)は78.3%で、売上の8割近くが仕入れに消える。
もう一つのサービス&サポート事業は、構成比31.7%、仕入率は43.3%だ。核となるのは「たのめーる」(オフィス用品の通信販売)と「たよれーる」(保守・サポート)である。会社はこれを、毎月収入が入る「ストックビジネス」と位置づけている。
課題指摘に使える。売上の約7割は仕入れの重い側にある。「ストック側をどう伸ばすか」を、自分の論点として語れる。
1-3. 追い風は明記されている——Windows10サポート終了とAI
有価証券報告書は、経営環境を具体的に書いている。人手不足を背景に、省人化やAI活用の投資が求められている。さらに「Windows10サポート終了に伴うパソコンの更新需要も継続」していると明記する。
この追い風は数字にも出た。当期の売上高は1兆3,228億円で、前年から+19.4%伸びた。売上と各利益は、3年連続で過去最高となっている。
ただし、年限を切った中期経営計画は出していない。28卒が入社するのは2028年4月だ。特需が一巡した後に、この会社が何で伸びるのか。そこが問われる時期にあたる。
志望動機では、追い風を事実で示したうえで語れる。逆質問では、中期計画がない中で、特需後の成長を何を目安に描いているかを聞ける。
1-4. 働く側の事実——勤続17.6年、年収1,028万円、役員の女性は0.0%
連結従業員は1万79人だ。そのうち提出会社の大塚商会が8,287人を占め、ほぼ単一の会社といえる。平均年齢は42.0歳、平均勤続は17.6年である。差し引くと、平均的な社員は24.4歳で入社している。新卒で入り、長く勤める会社だ。平均年間給与は1,028万円となっている。
一方で、女性の登用は途上にある。管理職に占める女性は12.6%、男性の育児休業取得率は63.5%だ。これに対し、女性役員比率は0.0%である。現場の指標は改善しつつあるが、役員層には届いていない。
逆質問に使える。「役員層の女性比率が0.0%だが、登用に向けてどんな取り組みがあるか」と聞けば、開示資料を読んだ姿勢が伝わる。
第2章 IT商社・SIer業の収益構造
2-1. 薄利でも回る——メーカー製品を仕入れて届けるモデル
IT商社・SIer(システム構築会社)とは、メーカーの製品を仕入れて顧客に納め、導入や保守まで担う業態だ。大塚商会はこのモデルで、営業利益率は6.8%にとどまる。
比べやすい相手がオービックだ。オービックは自社開発の業務ソフトを直接売るため、営業利益率は65.7%と高い。それでもROEは、大塚商会16.8%、オービック15.8%でほぼ並ぶ。
差を生むのは回転の速さだ。仕入れて、売って、回収して、また仕入れる。このサイクルの速さが、薄い利益率を補っている。「どちらが優れているか」ではなく「稼ぎ方が違う」と整理するとよい。
志望動機では「利益率でなく回転で稼ぐ点に魅力を感じた」と、業界内の位置取りを語れる。課題指摘では、特需後もその回転を保てるかを論点にできる。
2-2. 安定装置とその弱点——ストックとAI
売上の伸びには、質の違いがある。システムインテグレーション事業は+24.1%と大きく伸びた。有価証券報告書は、その要因にパソコンの更新需要を挙げている。景気や更新時期の波を受けやすい側だ。一方、サービス&サポート事業の+10.5%は、契約の積み上げによる安定した成長といえる。
AIの位置づけも2つある。1つは自社の営業プロセスで使う側、もう1つは顧客に売る側だ。2025年度のスローガンは「お客様に寄り添い、DXとAIでお客様と共に成長する」である。自社で成果を出した事例を持って、中堅・中小企業に提案する形をとっている。
課題指摘では「波のある事業と、積み上がる事業の比率」を論点にできる。逆質問では、AIを使う側と売る側のどちらで若手が先に力をつけるかを聞ける。
大塚商会の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(パソコン更新需要という周期性/利益率6.8%という薄さ/クラウド化が「売るもの」を減らす/女性役員比率0.0%という数字)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上高1兆3,228億円(+19.4%)で営業利益率6.8%、それでもROEは16.8%(純利益率4.9%×総資産回転率1.81回×財務レバレッジ1.83倍)、システムインテグレーションの仕入率78.3%に対しサービス&サポートは43.3%、営業CFは545億円増えて922億円、平均勤続17.6年、女性役員比率0.0%——大塚商会の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 IT商社・SIer業の構造的課題——パソコン更新需要という周期性/利益率6.8%という薄さ/クラウド化が「売るもの」を減らす/女性役員比率0.0%という数字
- 第3.5章 面接前に押さえる大塚商会の最新ニュース10本——オフィスまるごと・AI戦略・第2四半期決算まで
- 第4章 内定者の正体——「営業力が強い会社だから」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,028万円(42.0歳)の読み方と、1万人組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——女性役員比率0.0%の他社比較、勤続17.6年の意味、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生