あすか製薬(4886)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、あすか製薬を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「売上の8割が武田向け」です。
有報の数字(第5期)
- 売上高
- 711億円
- 純利益
- 54億円
- ROE
- 8.0%
- 従業員数(連結)
- 1,611人
- 従業員数(単体)
- 94人
- 平均年間給与(単体)
- 1,021万円
- 平均年齢
- 46.0歳
- 平均勤続年数
- 17.0年
出典:あすか製薬の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
あすか製薬を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、あすか製薬に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはあすか製薬の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、あすか製薬ホールディングス株式会社 有価証券報告書 第5期(2025年4月1日-2026年3月31日)、および2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月4日公表)に基づきます。
結論から言う。あすか製薬は産婦人科と甲状腺の専門薬で伸びているが、売上の80.4%が武田薬品工業1社向けという構造が、この会社を読む軸になる。
知っておきたいことは3つある。
会社は前の中期経営計画(会社が決めた3年間の目標)の3目標を達成した。次は、売上850億円とROE10%(株主のお金に対する利益の率)を掲げた。
賭け先は東南アジアだ。ベトナムに約50億円の新工場を建てている。
売上の大半は武田経由で、増収の約3分の2は海外の新規連結によるものだ。
この記事では、会社が何に賭け、どこが課題で、面接で何を聞けるのかを確かめる。
第1章 あすか製薬は何に賭けているのか
1-1. 2028年度に売上850億円・ROE10%を目指す
会社は前の中期経営計画の3目標を、すべて達成して当期を終えた。ただし、いずれもぎりぎりの達成だった。
新しい計画は、2028年度に売上850億円、ROE10%を目標にしている。営業利益では、約46%増やさなければ届かない。
この中期経営計画2028は、2026年4月から2029年3月までだ。28卒が入る2028年4月は、その最終年度の始まりにあたる。
志望動機で「目標の最終年度に入社し、貢献したい」と語れる。逆質問では、営業利益を増やす上で最も寄与が大きい柱を聞ける。
1-2. ベトナムに約50億円の新工場——東南アジアで2社目
海外は、当期から有報のセグメントに独立して載るようになった。2024年12月に、ベトナムのハタファー社を連結子会社にしている。
ハノイ市の新工場の投資予定額は約50億円だ。2026年12月の完了を予定している。
2025年3月には、フィリピンのFTSアンブローズ社にも出資した。2社とも、目的は東南アジアでの戦略的パートナーシップだ。
代償もある。ハタファー社の取得直後に、のれんを124億円減損した。のれんとは、買収額が相手の純資産を上回った分の帳簿上の価値だ。減損は、その価値を減らす処理である。
志望動機では、東南アジアへの賭けを根拠にできる。逆質問では、減損した買収の成果を何で測るのかを聞ける。
1-3. ROEは横ばい、株主ではアクティビストが1割
ROEは当期8.0%で、前期と同じだった。純利益率、資産の回転、負債の使い方に分けても、どれも大きく動いていない。海外事業の連結で原価率が上がり、利益率が少し下がった。
2026年5月、会社は配当方針を変えた。利益のうち配当と自社株買いに回す割合(総還元性向)は40%を目安にする。あわせて、配当を減らさず増やしていく累進配当も導入した。
株主には、NIPPON ACTIVE VALUE FUNDなど2つのファンドと運用者のダルトン・インベストメンツがいる。2026年4月8日付の報告で、合計の保有は10.03%だ。ダルトンは、日本企業に資本効率の改善を求めることで知られる投資家(アクティビスト)である。
課題指摘として、ROEが横ばいであることを挙げられる。逆質問では、資本効率を求める株主が1割いる中で、目標をどう達成するのかを聞ける。
1-4. 増収の約3分の2は海外の連結——稼ぎ頭は導入品
当期の売上は711億円だった。この増収の66.4%は、ハタファー社の新規連結によるものだ。既存事業の伸びは4%前後にとどまる。
稼ぎ頭は、他社から導入した薬である。上位4製品が連結売上の50.8%を占める。そのうち3つは導入品で、レルミナは武田薬品工業から導入している。
海外事業には、連結従業員の52.5%がいる。しかし、利益は1億円ほどにとどまる。
課題指摘として、増収が買収由来で既存の伸びが小さいことを挙げられる。自分がどう貢献するかまで続けると、志望動機になる。
1-5. 働く側の事実——事業会社の平均年間給与は842万円
連結従業員は1,611人だ。持株会社は94人で、28卒が入るのは事業会社のあすか製薬株式会社である。
事業会社は643人で、平均年齢は43才0ヶ月、平均勤続は16年10ヶ月だ。平均年間給与は842万円で、前期より下がった。
逆質問で、平均年間給与が前期より下がった背景を聞ける。事実を踏まえて聞くと、準備の深さが伝わる。
第2章 医療用医薬品の収益構造
2-1. 薬価は国が決め、原価率は52.0%
医療用医薬品の売価は、市場ではなく国が決める。この公定価格を薬価という。薬価の改定は2021年から毎年になった。
売価が毎年下がる前提で、数量と製品構成で稼ぐ。ただし当期は、チラーヂンとリフキシマが薬価のプラス改定の影響もあって伸びた。
原価率は52.0%で、前期から上がった。原価率の高い海外事業の売上が加わったためだ。海外を伸ばすほど原価率が上がる構造を、会社は抱えている。
課題指摘として、海外を伸ばすと原価率が上がる点を挙げられる。逆質問では、利益率をどこで確保するのかを聞ける。
2-2. 売上の80.4%は武田経由
医療用医薬品は、武田薬品工業が販売する。販売権の契約は2040年3月末までだ。武田向けの売上は、全体の80.4%にあたる。
前期は86.5%だった。下がったのは、ベトナムの売上が加わって分母が増えたためだ。国内の依存度が下がったわけではない。
販売を1社に委ねると、営業コストを抑えられる。一方で、価格交渉の主導権を相手に渡す。会社自身が有報のリスク欄に、「取引先の上位1社で約8割の売上高を占めております」と書いている。
課題指摘として、1社依存を挙げられる。逆質問では、契約の期限まで約14年ある中で、武田以外の販路をどう広げるのかを聞ける。
2-3. 研究開発費は売上の9.9%——戦う場所を絞る
自社創薬に加えて、導入と共同研究で開発を進める。当期だけで、ペルセウスプロテオミクス、帝人ファーマ、Insilico Medicineと、3件の共同研究契約を結んだ。
2025年6月には、子宮内膜症を対象とするAKP-022が、最終段階の試験(PhaseⅢ)に入った。主力のレルミナの次を作る開発である。
志望動機で、領域を絞って戦う姿勢への共感を語れる。逆質問では、AKP-022の次に控える開発テーマを聞ける。
あすか製薬の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(第1四半期の営業利益が51.4%減った/主力製品に減速の兆しがある/導入品の契約には期限がある/中計目標との距離——営業利益を45.7%増やす必要がある)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。前の中期経営計画の3目標(売上700億円・営業利益率8%・ROE8%)を達成し、次は2028年度に売上850億円・営業利益率10%・ROE10%を掲げたこと。売上の80.4%が武田薬品工業1社向けであること。ROE8.0%を3分解するとどの要素も動いておらず、会社は総還元性向40%と累進配当でレバレッジを動かす選択をしたこと。アクティビストが10.03%を保有すること。そして第1四半期の営業利益が51.4%減ったこと。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 あすか製薬が抱える構造的課題——第1四半期の営業利益が51.4%減った/主力製品に減速の兆しがある/導入品の契約には期限がある/中計目標との距離——営業利益を45.7%増やす必要がある
- 第3.5章 面接前に押さえるあすか製薬の最新ニュース10本——中計2028、ベトナム新工場49億円、第1四半期△51.4%まで
- 第4章 内定者の正体——「女性の健康に貢献したい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収842万円(あすか製薬株式会社643人)の読み方と、連結1,611人という組織
- 第6章 働く環境の現実——平均年齢43才0ヶ月・勤続16年10ヶ月の読み方、女性役員比率23.1%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——志望動機3つの型、課題回答2パターン、逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生