富士フイルム(4901)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、富士フイルムを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「売上3.36兆円へ」です。
有報の数字(第130期)
- 売上高
- 3兆3,570億円
- 純利益
- 2,767億円
- ROE
- 7.7%
- 従業員数(連結)
- 73,526人
- 従業員数(単体)
- 1,198人
- 平均年間給与(単体)
- 1,086万円
- 平均年齢
- 43.3歳
- 平均勤続年数
- 17.2年
出典:富士フイルムの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
富士フイルムHDを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、富士フイルムHDに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは富士フイルムHDの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
富士フイルムHDは、写真フィルムの技術を医療と半導体材料に広げ、その2つに大きく投資している会社だ。
知っておきたいことは3つある。
稼ぎ頭が入れ替わっている。利益を押し上げたのは、半導体材料のエレクトロニクスと、instaxなどのイメージングだ。医療のヘルスケアは減益だった。
賭け先ははっきりしている。1年で3,380億円の設備投資を、バイオCDMOと半導体材料に回す計画だ。
課題は資本効率だ。株主のお金でどれだけ稼いだかを示すROEは、見通しで7.7%に近い水準にとどまる。中期計画の目標は8.1%である。
この記事では、会社が何に賭け、どこに弱みがあるのかを、面接で話せる形で確かめる。
第1章 富士フイルムHDは何に賭けているのか
1-1. 利益は計画超え、資本効率だけが目標に届かない
2026年3月期の営業利益は3,502億円だった。売上の65.2%は海外である。次期の売上と利益の見通しは、どちらも中期経営計画「VISION2030」の数字を上回る。
ただ、ROEだけは目標に届かない。 ROEとは、株主から預かったお金でどれだけ稼いだかを示す指標だ。次期の見通しは7.8%で、会社自身が掲げた目標は8.1%である。
会社はROICも並べて目標にしている。ROICは、事業に投じたお金でどれだけ稼いだかを示す。両方を掲げる点から、借金で数字を作らない姿勢が読み取れる。
利益が出ていても資本効率が低いのは、投資の最中だからだ。設備は稼ぎ始めるまで時間がかかる。その間は、投じた資本だけが増える。
計画の土台には、創立90周年で定めたパーパス「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」がある。
逆質問に使える。「利益は計画を上回る見通しなのに、ROEは目標の8.1%に届かない。その差を埋める最初の打ち手は何か」と聞ける。
1-2. 1年で3,380億円を、バイオCDMOと半導体材料へ
設備投資の計画は、1年で3,380億円だ。1年分の営業利益とほぼ同額にあたる。
行き先は、バイオCDMOと半導体材料である。バイオCDMOとは、製薬会社に代わってバイオ医薬品を作る事業だ。どちらも、写真フィルムで培った「薄く均一に塗る」「化学反応を精密に制御する」技術の延長にある。
半導体材料では、2026年2月にRapidusへ50億円を出資した。
買収も動いている。2026年3月に、トルコのERP会社ETGを買った。ERPとは企業の基幹業務システムだ。数を集める買収ではなく、持っていない機能を1つ買う形である。
削る側もある。インクジェットインク・ヘッドは、生産体制を再編して収益性の改善を図る。
28卒が入社する2028年は、VISION2030の後半にあたる。この設備が動き出す時期と重なる。
志望動機に使える。投資が2事業に絞られている点を根拠にできる。逆質問なら「2つを選んだ基準は、市場の伸びか、自社技術との近さか」と聞ける。
1-3. 利益を稼ぐ部門と、減益の部門に分かれた
4部門は、まったく違う商売をしている。利益の動きも分かれた。
エレクトロニクスの営業利益は1,009億円で、前期より34.4%増えた。半導体材料が押し上げた。
イメージングは、売上に対する利益の割合が25.5%と、4部門で最も高い。instaxなどが伸びている。動画を手渡せる新型のインスタントカメラも、2026年1月に出した。
ヘルスケアは、前期より20.3%減益だった。バイオCDMOの先行投資の負担と、中国の医療材料の需要減が重なった。投資の成果は、まだ利益に出る前の段階にある。
課題指摘に使える。「ヘルスケアの減益は先行投資の負担で、回収に入る時期が論点だ」と指摘し、自分の貢献につなげられる。
1-4. 縮む事業を認めたうえで、強い領域に絞る
ビジネスイノベーション部門は、複合機などのオフィス事業を抱える。利益率は5.4%と、4部門で最も低い。市況の低迷で減益にもなった。
有価証券報告書は、オフィス事業で「プリントボリュームが漸減する」と認めている。そのうえで、自社がトップレベルのシェアを持つA3カラー領域に絞る方針だ。
同時に、AIを組み込んだプロダクションプリンターを2025年12月に先行発売した。ITソリューションやDXへの転換も進めている。
課題指摘に使える。減っていく事業をどう次の柱に移すかを論点にし、自分の貢献を重ねられる。
第2章 業界比較——「複合化学」と「写真の会社」を比べる相手は誰か
2-1. 競合は部門ごとに別の顔ぶれになる
富士フイルムHDの競合は、事業ごとに大きく異なる。
・内視鏡:オリンパス、HOYA。この3社で世界トップ3とされる
・バイオCDMO:Lonza、Catalent、Samsung Biologics、WuXi Biologics
・半導体レジスト:JSR、東京応化工業、信越化学、住友化学
・複合機:リコー、キヤノン、京セラ、シャープ、Xerox
・デジタルカメラ:キヤノン、ニコン、ソニーグループ
同じ会社の中に、戦う相手が5種類以上ある。「競合はどこか」は、部門ごとに答える必要がある。
志望動機に使える。志望部門の競合を挙げ、その中で富士フイルムを選ぶ理由を話せる。
2-2. 他社が真似しにくい3つの強み
第1に、写真フィルム由来の技術が4部門に通っている。半導体のレジストは感光技術、医療の画像システムは画像処理AI、化粧品ASTALIFTはコラーゲンの応用だ。
第2に、M&Aの実績がある。2019年に富士ゼロックスを完全子会社化した。2011年には、MSDのバイオ医薬品の受託製造事業を取得した。
第3に、財務に余力がある。株主資本は3.84兆円だ。大型M&Aに動ける、数少ない日本企業の一つとされる。
志望動機に使える。「写真の会社が変身した」という話で終えず、技術が4部門に通う構造とM&Aの実績を根拠にできる。
富士フイルムの構造的課題と追い風は、5つに分けて第3章で扱う(### 課題1:バイオCDMO事業の先行投資負担/### 課題2:BI部門(複合機)の構造縮小/### 課題3:半導体材料の地政学リスク/### 課題4:イメージング事業の継続性/### 課題5:為替変動の影響)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題——### 課題1:バイオCDMO事業の先行投資負担/### 課題2:BI部門(複合機)の構造縮小/### 課題3:半導体材料の地政学リスク/### 課題4:イメージング事業の継続性/### 課題5:為替変動の影響
- 第3.5章 押さえておくべき富士フイルムHD・関連業界の最新ニュース
- 第4章 内定者の正体
- 第5章 職種別キャリア分析
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答例
- 第8章 やましゃんの総合評価