ライオン(4912)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、ライオンを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「純利益が30.1%増」です。

有報の数字(第165期)

売上高
4,221億円
純利益
276億円
ROE
9.0%
従業員数(連結)
8,346人
従業員数(単体)
3,059人
平均年間給与(単体)
711万円
平均年齢
44.0歳
平均勤続年数
17.0年

出典:ライオンの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

ライオンを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ライオンに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはライオンの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、ライオン株式会社 有価証券報告書 第165期(2025年1月1日〜2025年12月31日、IFRS)に基づきます。2026年5月発表の2026年12月期 第1四半期決算・会社予想も反映しています。

ライオンは、原材料高の谷を抜けて利益を取り戻し、改革の成果を刈り取る段階に入った会社だ。

知っておきたいことは3つある。

純利益は第163期の146億円から、第165期の275億円へ戻った。売上はほとんど伸びておらず、戻したのは採算である。

従業員の過半は海外にいる。ライオンを「日本の日用品メーカー」とだけ見ると、会社の半分が見えない。

会社が掲げるテーマは「収益力の強靭化」だ。最重点の分野は、歯みがきなどのオーラルヘルスケアである。

この記事では、会社が何に賭け、どこに課題があるかを、面接で自分の言葉で語れる形で確かめる。

第1章 ライオンは何に賭けているのか

1-1. 会社が賭けているもの——「収益力の強靭化」と口の健康

有報の経営戦略には、会社の賭けがはっきり書いてある。パーパス(会社の存在意義)は「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する」だ。

2025年度から3ヵ年の中期経営計画「Vision 2030 2nd STAGE」が始まった。当期がその初年度である。テーマは「収益力の強靭化」だ。成長ではなく、稼ぐ力を固める方針といえる。

最重点に置く分野はオーラルヘルスケアだ。価値提供の範囲を口腔衛生から、嚙む力・飲み込む力・会話を楽しむ力へ広げる。目指す先は「お口を起点とした全身健康」だと有報は書く。

社会価値の目標も具体的だ。2030年に、口腔の習慣づくりで5億人、清潔・衛生の習慣づくりでのべ10億人へ、製品や情報を届ける。日本の人口の4倍と8倍にあたる。

面接での使い方

志望動機では「歯を磨く会社が全身の健康に広げる点に、会社の賭けを感じた」と語れる。逆質問では「2nd STAGEの目標年である2027年に、強靭化の達成をどう判断するのか」と聞ける。

1-2. 従業員の過半は海外にいる——働く側から見た会社

賭けが口先でないことは、人員配置に出ている。連結従業員8,346人のうち、海外事業は4,282人で51.3%を占める。国内の日用品を担う一般用消費財事業は2,651人だ。

ライオン株式会社単体の従業員は3,059人である。連結に占める割合は36.7%にとどまる。

有報も「アジアを中心に習慣づくりを通じた社会価値、経済価値の創出」を目指すと明記している。重心はすでに海外へ移りつつある。

働く側の事実も押さえたい。単体の平均年齢は44歳、平均勤続は17年、平均年間給与は711万円だ。

面接での使い方

志望動機では「海外が過半の会社で、アジアの習慣づくりに関わりたい」と言える。逆質問では、若手が海外業務に関わる機会について聞ける。

1-3. 利益の谷と回復——売上は伸びず、採算が戻った

売上収益は5期連続で増え、第165期は4,220億円(前期比+2.2%)だった。ただし伸びは緩やかだ。一方、利益には深い谷があった。

第163期は、原材料価格の高騰で純利益が146億円まで落ちた。洗剤やハミガキの原料、包装材、物流費が上がり、値上げが追いつかなかったためだ。

第165期の純利益は275億円(+30.1%)まで戻った。売上が+2.2%しか伸びない中で、利益だけが大きく増えている。

回復の中身は、会社が進める収益構造改革だ。値上げ、高付加価値品への切り替え、コストの見直しを指す。一般用消費財事業は、売上+1.6%に対して事業利益が+21.3%伸びた。事業利益とは、売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた本業の利益である。

今期は、上期の営業利益+42.0%増を計画している。

面接での使い方

課題指摘では「売上+2.2%で利益+30.1%の今は、採算で稼ぐ局面だ。次は何で伸ばすのか」と切り出せる。逆質問では、+42.0%計画の主な要因を聞ける。

1-4. 海外は規模があるが、利益率が薄い

海外事業の売上は、全体の3分の1を超える。従業員も連結の過半が海外に所属する。規模は十分にある。

課題は利益率だ。海外事業の事業利益率は4.6%で、国内の一般用消費財事業の8.4%の半分ほどである。前期より改善はしているが、量に比べて利益が薄い。

見方を変えれば、海外には改善の余地が大きい。人も資産も海外に置く以上、ここの採算が会社全体の利益を左右する。

面接での使い方

課題指摘では「海外の利益率4.6%を上げる側で貢献したい」と、自分の役割に結びつけられる。逆質問では、海外の利益率改善の目標年度や打ち手を聞ける。

1-5. 稼ぎ頭はオーラルケア——縮小する分野もある

一般用消費財の分野別で、最大はオーラルヘルスケアだ。しかも前期比+4.7%と、最も伸びた。

牽引役は高価格帯である。最高価格帯の新製品「デントヘルス薬用ハミガキDXプレミアム」が好評だった。『システマハグキプラス』『クリニカPRO』も大幅に伸びた。

一方、すべての分野が伸びたわけではない。薬品は△3.9%と最も落ち込み、ファブリックケア(衣料用洗剤など)とリビングケアも減った。

高齢化で歯ぐきケアや口腔ケアの需要は増えていく。単価の高い製品へ客を導ける分野に、会社が力を入れる理由は読み取れる。

面接での使い方

志望動機では「高価格帯で伸びるオーラルケアに会社が集中する点に共感した」と語れる。逆質問では、縮小する洗剤や薬品の位置づけを聞ける。

第2章 日用品業界の収益構造

2-1. 景気に強く、価格競争に弱い——答えは高付加価値化

ハミガキ・洗剤・ハンドソープは、景気が悪くても売れ続ける。だから日用品メーカーの売上は安定する。

一方、店の棚では競合品と並べて比べられる。小売店が自社で出すプライベートブランド(PB)との価格競争も激しい。売上は守れても、利益率を守るのが難しい。

ライオンの第163期の谷は、この性質が原材料高で強まった結果だった。答えは2つある。値上げを通せるブランド力と、高付加価値品への切り替えだ。

同じハミガキでも、標準品と最高価格帯では単価が数倍違う。しかも製造コストの差は、価格差ほど大きくない。高価格帯が売れるほど利益率は上がりやすい。第165期の回復は、この2つが働き始めた表れである。

面接での使い方

課題指摘では「値上げと高付加価値化の両輪が、次の原材料高でも通用するか」と問える。志望動機では、機能で選ばれる商品づくりに関わりたい理由につなげられる。

2-2. 衛生習慣を作る——モノの前に習慣を売る

『キレイキレイ』は、日本の家庭に「泡で手を洗う」習慣を定着させたブランドだ。日用品の需要は、性能だけでなく生活習慣そのものから生まれる。

ライオンは東南アジアでも同じ型で動く。歯みがきや手洗いの啓発から入り、市場と一緒にブランドを育てる。1-1で見た5億人・のべ10億人の目標も、この発想の延長にある。

面接での使い方

志望動機では「習慣を作ってから商品を売る事業の進め方に魅力を感じた」と語れる。逆質問では、現地での啓発活動の成果をどう測っているかを聞ける。

2-3. 競合との位置——花王・ユニ・チャームと並べる

花王は化学を基盤に、化粧品まで持つ総合型の会社だ。ユニ・チャームは不織布・吸収体に特化し、海外の比率が高い。

ライオンの事業利益率は7.3%で、規模でも利益率でも両社を追う立場にある。ただしオーラルケアでは首位級の強みを持ち、両社の主戦場とは住み分けている。

「総合力の花王、海外のユニ・チャーム、口腔のライオン」と整理できる。

面接での使い方

志望動機では「なぜ花王ではなくライオンか」への答えとして、オーラルケアの強みを使える。課題指摘では、利益率で両社を追う立場にある点を取り上げられる。

ライオンの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(原材料と為替——利益率7.3%の会社に残されたバッファは薄い/国内市場の成熟——人口減の中で「単価」を上げ続けられるか/海外利益率4.6%——「進出済み」と「稼げる」の距離/ブランドの世代交代——若年層に選ばれ続けるために)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上4,220億円(5期連続増収)、純利益+30.1%のV字回復、オーラルケア802億円(+4.7%)という主戦場、海外利益率4.6%の伸びしろ、そして上期営業利益+42.0%計画——ライオンの逆襲の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 日用品業界の構造的課題——原材料と為替——利益率7.3%の会社に残されたバッファは薄い/国内市場の成熟——人口減の中で「単価」を上げ続けられるか/海外利益率4.6%——「進出済み」と「稼げる」の距離/ブランドの世代交代——若年層に選ばれ続けるために
  • 第3.5章 面接前に押さえるライオンの最新ニュース10本——上期+42%計画・累進配当・高価格帯戦略まで
  • 第4章 内定者の正体——「商品への愛着」だけで落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収711万円の読み方と、連結8,346人・単体3,059人でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——女性管理職比率19.3%の他社比較、男性育休90.2%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. ライオンの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第165期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は711万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. ライオンの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第165期)では、提出会社(単体)が3,059人、連結が8,346人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. ライオンが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。