コーセー(4922)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、コーセーを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「純利益2倍でも来期減益」です。
有報の数字(第84期)
- 売上高
- 3,302億円
- 純利益
- 151億円
- ROE
- 5.4%
- 従業員数(連結)
- 8,566人
- 従業員数(単体)
- 1,073人
- 平均年間給与(単体)
- 747万円
- 平均年齢
- 40.5歳
- 平均勤続年数
- 12.8年
出典:コーセーの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
コーセーは、利益が大きく戻った年に翌年の純利益を減らす計画を出した会社であり、その背景には「構造改革の途中」という事実がある。
知っておきたいことは3つある。
1つ目。2025年12月期の純利益は151億円で、前期のほぼ2倍になった。前期は中国事業の整理損失で落ち込んでおり、その反動が大きい。売上高は3302億円(前期比+2.3%)だった。
2つ目。2026年12月期の純利益予想は121億円で、前期比19.9%減る。売上と営業利益(本業のもうけ)は増える見込みなのに、純利益だけが減る。
3つ目。会社は2030年に営業利益率12%以上を目標に掲げている。営業利益率とは、売上のうち本業のもうけが占める割合だ。直近の実績は5.6%である。
この記事では、有価証券報告書と決算短信をもとに、コーセーが何に賭けているのか、同業と何が違うのかを確かめる。
第1章 コーセーは何に賭けているのか
1-1. 目標が遠い——会社自身が「構造改革の途中」と書いている
コーセーは有価証券報告書に、2030年に向けた目標と実績を並べて載せている。
売上高成長率は、目標が年平均+5%以上だ。直近の実績は+2.3%にとどまる。営業利益率は、目標12%以上に対して実績が5.6%だ。どちらも目標との差が大きい。
もう一つ、ROICという指標も目標に入っている。投じたお金に対して、どれだけ利益を生んだかを示す割合だ。目標は10%以上で、実績は3.7%である。これは会社自身が決めた目標なので、面接でも使いやすい。
会社は現在地を、フェーズ1「構造改革の完遂と基盤再構築」と書いている。成長の前に、まず立て直す段階にあるという自己認識だ。
28卒が入社する2028年は、2030年目標の2年前にあたる。構造改革が本当に終わったのかは、そのころ見えてくる。
志望動機では「構造改革の途中にある会社で、どの仕事で貢献したいか」を語る。逆質問では「営業利益率5.6%から12%へ、最初に動かす事業はどこですか」と聞ける。
1-2. 「脱・自前」——現地のブランドを買って広げる
成長戦略の中心にあるのは、「脱・自前による地域への最適化」という方針だ。
日本で作ったブランドを海外へ持ち出すのではない。現地に根付いたブランドを、M&A(企業の買収や提携)で手に入れる考え方である。現地起点のマーケティングやモノづくりへの転換も、あわせて掲げている。
実際に、2024年12月26日にタイ発のPURI社との企業結合が行われた。会計処理が確定したのは、2025年12月期になってからだ。
資金面では、普段は自己資金で事業を回している。ただし金融機関と、280億円のコミットメントラインを結んでいる。あらかじめ決めた枠の中で、必要なときに借りられる契約のことだ。
会社は、設備投資やM&Aで資本効率を高めると書いている。資本効率とは、かけたお金に対する利益の効率のことだ。1-1のROIC 10%以上という目標に、直接つながる話である。
逆質問では「買収したブランドに、コーセーの技術をどこまで入れますか。現地のまま運営しますか」と聞ける。志望動機では、海外で何を学びたいかの根拠になる。
1-3. 稼ぎ頭は化粧品事業——日本は立て直し、アジアは伸ばす
コーセーは1946年に創業し、化粧品ひとすじで成長してきた。事業は大きく2つに分かれる。
「化粧品事業」は、百貨店などで売るプレステージ(高価格帯)ブランドが中心で、売上の79.4%を占める。「コスメタリー事業」はセルフ化粧品などで、19.5%だ。
2025年12月期は明暗が分かれた。化粧品事業は営業利益が前期比+11.4%、コスメタリー事業は▲10.4%だった。化粧品事業では、中国本土の構造改革の効果が出て黒字転換している。
地域ごとの役割も違う。有価証券報告書は、日本を「収益性向上に向けた事業構造の見直し」、アジアを「売上拡大に向けた投資」と書き分けている。
アジアの売上は前期比8.6%増で、地域別では最も伸びた。中国本土の大型ECセールと、新たに連結に入ったPURI社が押し上げた。一方で、免税(インバウンド)向けは減収だった。海外売上高比率は34.8%で、残りは日本が占める。
志望動機では、日本の立て直しとアジアの拡大のどちらに関わりたいかをはっきりさせる。課題指摘では「免税向けの減収をどう補うか」を論点にできる。
1-4. 来期は増収なのに、純利益が減る
まず、2025年12月期に純利益が倍増した理由を押さえたい。最大の要因は反動増だ。前期は中国本土の構造改革で事業整理損を計上し、純利益が7億円まで落ち込んでいた。今期はこの一時的な損失がなくなった。
2026年12月期の予想は、売上高3500億円(前期比+6.0%)、営業利益200億円(同+8.3%)と、どちらも増える。ところが純利益は121億円で、19.9%減る。
理由は2つある。1つ目は、前期にあった為替差益を今期は見込んでいないことだ。2つ目は、新設する南アルプス工場が稼働し、減価償却費が増えることだ。減価償却費とは、設備の購入費を数年に分けて費用にしたものである。設備投資は300億円を計画している。
つまり、本業の利益は伸びる。そのうえで、一時的な押し上げ要因を織り込まない保守的な予想になっている。
「最高益回復なのに減益予想なのはなぜか」を、この2点で説明できる。逆質問では「南アルプス工場への投資は、利益率の改善にどう効きますか」と聞ける。
1-5. 揺れやすい前提——中国・米国・為替
会社自身が挙げているリスクも、面接の材料になる。
第1は、中国の動きだ。2025年11月中旬に中国政府が訪日渡航の自粛を求めた。それ以降、12月から中国人旅行客の消費が減速している。免税向けへの影響は、今後も続く可能性がある。
第2は、中国市場の二極化だ。中国国産ブランドが台頭し、現地の消費は「安いか、突き抜けて高いか」に分かれている。
第3は、米国の関税政策と個人消費の減退だ。中・高価格帯のブランドが、厳しい事業環境に直面している。
さらに、業績予想は想定為替レートを置いて作られている。そこから外れると、業績に直接響く。
課題指摘では「中国の消費の変化に、どう備えているか」を論点にできる。逆質問では「想定為替から外れた場合、最も影響を受ける事業はどこですか」と聞ける。
第2章 業界比較——資生堂・ポーラオルビスとの明暗
2-1. 本業と最終損益で見ると、3社は違う
化粧品大手3社の2025年12月期を並べると、立ち位置が見えてくる。
営業利益率は、コーセーが5.6%、資生堂が約4.6%(コア営業利益ベース)、ポーラ・オルビスHDが約9.2%だ。コーセーは、3社の中で真ん中にいる。
最終損益は分かれた。コーセーは151億円の黒字、ポーラ・オルビスHDも黒字だった。資生堂は406億円の赤字で、2期連続の最終赤字となった。
資生堂は本業の利益が改善しても、構造改革費用や減損損失で赤字が続いた。減損損失とは、資産の価値が下がった分を損失として計上するものだ。これに対しコーセーは、本業も最終利益も同時に回復している。
「なぜ同業の他社ではなくコーセーか」を語る材料になる。ただし、利益率ではポーラ・オルビスHDが上回る点も踏まえて話したい。
2-2. 3社とも構造改革中——打ち手が違う
3社に共通するのは、環境変化に応じた構造改革を進めていることだ。ただし、打ち手は違う。
資生堂は、国内で200人の早期退職を募集している。ポーラ・オルビスHDは、傘下のポーラで160人規模の希望退職募集を、2026年12月期に実施する予定だ。
コーセーは、2026年1月に持株会社体制へ移行した。持株会社とは、複数の事業会社を束ねる親会社のことだ。さらに、タイのPURI社を買収して事業構造を見直している。
同じ化粧品業界でも、改革の中身と進み具合は3社でまったく異なる。
課題指摘では、3社の打ち手の違いを整理して語れる。逆質問では「コーセーが買収と体制変更を軸にしている理由は何ですか」と聞ける。
コーセーの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(### インバウンド消費の急変動というリスク/### 中国市場の二極化/### 米国市場の価格感度上昇/### 「脱・自前」というグローバル戦略の転換)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。純利益が前期比101.2%増で最高益回復、それでも2026年12月期は南アルプス工場の減価償却費増加等で純利益2割減を見込む——。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題——### インバウンド消費の急変動というリスク/### 中国市場の二極化/### 米国市場の価格感度上昇/### 「脱・自前」というグローバル戦略の転換
- 第3.5章 面接前に押さえるコーセーの最新ニュース10本——持株会社体制移行・南アルプス工場稼働・創業80周年記念配当・中国渡航自粛の影響まで
- 第4章 内定者の正体——採用区分と就職難易度、ES「なぜコーセーか」の組み立て、逆質問のレベル別、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——年収と平均像、市場価値とセカンドキャリア
- 第6章 働く環境の現実——数字で見る組織、退職理由の構造、福利厚生
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答テンプレートと逆質問例
- 第8章 やましゃんの総合評価——投資視点×就活視点