長谷川香料(4958)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、長谷川香料を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「ROE5.7%。自己資本比率83.5%の香料メーカーが、配当を74円から100円へ上げた」です。

有報の数字(第64期)

売上高
735億円
純利益
69億円
ROE
5.7%
従業員数(連結)
1,942人
従業員数(単体)
1,154人
平均年間給与(単体)
760万円
平均年齢
44.4歳
平均勤続年数
17.4年

出典:長谷川香料の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

長谷川香料を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、長谷川香料に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは長谷川香料の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、長谷川香料株式会社 有価証券報告書 第64期(2024年10月1日-2025年9月30日)、および2026年9月期第3四半期決算短信(2026年8月3日公表)に基づきます。

結論から言う。長谷川香料は、資本が厚く堅い会社が、ベトナムの買収と米国の黒字化で成長に動き出した局面にある。

知っておきたいことは3つだ。

利益の出方が売上と違う。アジアは日本の半分以下の売上で、日本とほぼ同額の利益を出している。

ROE(自己資本に対する利益の割合)は5.7%と低い。原因は稼ぐ力ではなく、自己資本比率83.5%という資本の厚さだ。

海外の伸びには円安が混じっている。現地通貨で見ても伸びているのは米国だけだ。

この記事では、会社の賭け先と、その数字の読み方を確かめる。

第1章 長谷川香料は何に賭けているのか

1-1. 3つの賭け——高付加価値の香料、海外、ベトナム買収

長谷川香料は、飲料や菓子、加工食品に入る「香り」と「味」を作る会社だ。製品名は表に出ない。

事業は2部門ある(第3四半期累計)。食品部門の売上は約526億円で、全体の88.6%を占める。フレグランス部門(化粧品や日用品向けの香り)は約68億円、11.4%だ。

会社は決算短信で、国内市場をこう書く。「国内市場の成熟化、同業者間での競争激化」。市場が伸びないと、会社自身が認めている。

賭け先は3つある。独自の高品質・高付加価値製品、日本・アジア・米国の海外展開、そして買収だ。2025年11月にベトナムの会社を買い、第2四半期から連結に取り込んだ。この買収で、一度きりの買収費用も出ている。

面接での使い方

志望動機で「国内が成熟するなか、海外と買収に賭ける姿勢に共感した」と語る根拠になる。

1-2. アジアは日本の半分以下の売上で、ほぼ同額の利益を出す

この会社で最も重要な構造がここだ。第3四半期累計の地域別を並べる。

日本:売上330億円、利益38億円

アジア:売上148億円、利益38億円

米国:売上138億円、利益1億円

アジアの売上は日本の半分以下だが、利益はほぼ同じだ。売上に対する利益の割合は、日本が11.6%、アジアが25.8%になる。アジアは日本の2.2倍だ。

米国は前年同期の3億円の損失から、ようやく黒字になった。売上は18.0%伸びたが、利益の割合は0.8%にとどまる。

働く側の事実も押さえたい。従業員は、グループ全体で1,942人いる。日本1,219人、アジア517人、米国206人だ。アジアの517人が、日本の1,219人とほぼ同額の利益を稼いでいる。

面接での使い方

課題指摘に使える。「米国の利益率0.8%をアジア並みに近づけるのが課題だと考える」と語れる。

1-3. 28卒が入る2028年4月は、買収の成果が問われる時期

時間軸を並べる。

2025年9月期は売上734億円で、前期比2.6%増だった。一方、経常利益(本業に金融収支を加えた利益)は92億円で、4.5%減った。増収減益だ。

2026年9月期に入ると流れが変わる。第3四半期累計の売上は593億円で、8.8%増だ。営業利益(本業の利益)は78億円で、8.1%増となった。通期予想は売上765億円、営業利益94億円だ。

この営業利益は、買収費用と人件費の増加を吸収しての数字だ。買収した会社が本格的に貢献するのは、これからになる。

面接での使い方

逆質問に使える。「ベトナム子会社の貢献は、いつ頃から数字に表れる見通しですか」と聞ける。

1-4. 現地通貨で見ると、実力で伸びているのは米国だけ

決算短信は、海外子会社の売上を円ベースと現地通貨ベースの両方で開示している。円ベースでは全社が増収だが、現地通貨ベースでは様子が違う。

米国:円ベース18.4%増、現地通貨ベース13.1%増

中国:円ベース2.1%増、現地通貨ベース6.6%減

マレーシア:円ベース12.5%増、現地通貨ベース1.0%減

中国とマレーシアは、現地通貨では減収だ。円安が円換算の数字を押し上げていた。

面接での使い方

課題指摘になる。「海外が伸びている」で止めず、「現地通貨では米国だけが伸びている」と言える学生は少ない。

1-5. ROE5.7%と、74円から100円への増配

2025年9月期のROEは5.7%で、前期の6.1%から下がった。ROEが低い理由は、稼げていないからではない。自己資本比率が83.5%と高く、資本が厚すぎるからだ。

会社は、この資本を返しはじめている。2026年9月期の年間配当は、74円から100円へ引き上げた。増配率は35.1%だ。

もう一つの使い道が、ベトナム買収のような投資だ。還元と投資の両方に動いている。

面接での使い方

志望動機と逆質問に使える。「厚い資本を、配当と買収にどう配分する方針ですか」と聞ける。

第2章 香料メーカーの収益構造

2-1. 「見えない部品」を売る商売

香料は、最終製品に名前が出ない。顧客は食品メーカーで、香料は食品の味と香りを決める。

この構造が、収益に2つの形で表れる。

第1に、一度採用されると変えにくい。香料を替えると味が変わり、消費者が気づくからだ。第2に、新商品の開発段階から入れる。採用されれば、その商品が売れる限り注文が続く。

結果として、第3四半期累計の営業利益率(売上に対する本業の利益の割合)は13.2%になっている。

面接での使い方

志望動機に使える。「顧客の商品開発に入り込む点に、この仕事の価値を感じた」と語れる。

2-2. 国内は成熟し、成長は緩やかだ

国内市場は成熟していると、会社は書いている。日本の第3四半期累計は、売上が4.3%増、利益が4.0%増。伸びてはいるが緩やかだ。

売上は、5期で557億円から734億円へ、1.32倍になった。一度も減っていない。ただ、伸び率は年で大きく振れ、2025年9月期は2.6%だった。

面接での使い方

課題指摘に使える。「安定して積み上がる一方、国内の伸びは緩やかで、成長の柱は海外だ」と整理できる。

2-3. アジアの高い利益率の理由は、開示されていない

1-2で見たとおり、アジアの利益率は25.8%で、日本の11.6%を大きく上回る。決算短信は、この理由を直接は書いていない。

しかも1-4のとおり、中国とマレーシアは現地通貨では減収だ。アジアが好調と、単純には言えない。

面接での使い方

逆質問に使える。「アジアの利益率が高い要因は何ですか。その仕組みはベトナムでも再現できますか」と聞ける。

長谷川香料の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(国内が伸びない市場で、どう成長するか/米国事業が、ようやく黒字になったところ/円安が実力を見えにくくしている/資本が厚すぎるという、共通の課題)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。食品部門が売上の88.6%を占める構造と、日本の半分以下の売上でほぼ同額の利益を稼ぐアジア(利益率25.8%)。ROE5.7%の中身が、純利益率9.42%ではなく総資産回転率0.504回と財務レバレッジ1.20倍にあること。中国とマレーシアの子会社が現地通貨ベースでは減収であること。そして2025年11月のベトナム子会社買収と、74円から100円への増配。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 香料業界の構造的課題——国内が伸びない市場で、どう成長するか/米国事業が、ようやく黒字になったところ/円安が実力を見えにくくしている/資本が厚すぎるという、共通の課題
  • 第3.5章 面接前に押さえる長谷川香料の最新ニュース10本——ベトナム子会社の買収、米国事業の黒字転換、35%の増配まで
  • 第4章 内定者の正体——「食に関わりたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収7,598,257円の読み方と、連結1,942人・単体1,154人の組織でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続17.4年の読み方、女性役員比率14.3%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 長谷川香料の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第64期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は760万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 長谷川香料の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第64期)では、提出会社(単体)が1,154人、連結が1,942人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 長谷川香料が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。