NGK(5333)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、NGKを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「社名を日本ガイシから変えた」です。
有報の数字(第160期)
- 売上高
- 6,701億円
- 純利益
- 599億円
- ROE
- 7.8%
- 従業員数(連結)
- 19,869人
- 従業員数(単体)
- 5,024人
- 平均年間給与(単体)
- 920万円
- 平均年齢
- 40.7歳
- 平均勤続年数
- 15.4年
出典:NGKの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
日本ガイシは2026年4月にNGKへ社名を変え、がいしの会社から、半導体と自動車を支えるセラミックスの会社へ軸足を移した。
知っておきたいことは3つある。
1つ目。2026年3月期は売上高6,701億円、営業利益950億円で、ともに過去最高だった。営業利益とは、本業で稼いだ利益のことだ。
2つ目。伸びを引っ張ったのは、AI向け半導体の製造装置に使うセラミックス部品だ。社名の元になったがいし製品は、いまや売上の1割に届かない。
3つ目。この会社はNAS電池をやめる一方で、石川県に700億円超の工場を建てる。やめる決断と始める決断を、同じ年に出した。
この記事では、会社が何に賭け、何を畳み、どこに課題を残しているかを確かめる。
第1章 日本ガイシは何に賭けているのか
1-1. がいしメーカーという看板の裏側
事業は3つに分かれる。
1つ目はエンバイロメント事業だ。自動車の排ガスを浄化するセラミックス部品などを扱う。会社の収益基盤で、営業利益は686億円ある。
2つ目はデジタルソサエティ事業だ。半導体製造装置用の部品や、データセンター向けの部品を扱う。営業利益は281億円で、全社の増益を牽引した。
3つ目はエネルギー&インダストリー事業だ。送配電用のがいしなどを扱い、NAS電池もここに含まれていた。2026年3月期は13億円の営業損失だった。
志望動機では「自動車で稼ぎ、半導体で伸ばす会社」と一言で説明できる。課題指摘では、赤字の3つ目の事業を取り上げられる。
1-2. 賭け先は半導体——700億円超の新工場
会社が最も大きく賭けているのは、半導体製造装置用のセラミックスだ。2026年3月に700億円超を投じ、石川県の自動車関連製品工場の隣に新工場を建てると決めた。国内の生産能力は約2割増える。
翌年度の設備投資計画も、同じ方向を向いている。合計は620億円で、最大はデジタルソサエティ事業の240億円だ。主力のエンバイロメント事業は、設備の更新が中心の150億円にとどまる。
投資の配分が、会社が何を成長の柱と見ているかを示している。28卒が入社する2028年は、この新工場が立ち上がるころだ。
志望動機では「成長領域に投資が集中している点に惹かれた」と言える。逆質問では、新工場が動き出す時期に若手がどう関わるかを聞ける。
1-3. やめる決断——NAS電池と買収契約
この会社は、始めるだけでなく、やめる判断も早い。
2025年10月、NAS電池の製造・販売活動の終了を決めた。NAS電池は、同社が世界で唯一量産していた大容量蓄電池である。この事業構造改革で、200億円弱の特別損失(一時的な損失)を計上した。
買収の判断も見直した。2025年2月にドイツの熱交換器メーカーDeutsche KNM社の全株式を取得する契約を結んだが、2026年1月に解除した。契約から11か月である。
さらに2026年度から「事業再生・撤退検討プロセス」を規程にした。低成長・低収益の事業は、立て直せるかを迅速に判断する仕組みだ。
課題指摘では、赤字事業の整理が途中であることを挙げられる。逆質問では、撤退を判断するときの基準を聞ける。
1-4. 10年で3,000億円の研究開発と新事業の目標
研究開発にも、期間・金額・配分が明記されている。2021年からの10年間で3,000億円を投じ、うち8割をカーボンニュートラルとデジタル社会に向ける計画だ。最初の5年間で、すでに1,426億円を使った。
背景には、主力事業の見通しがある。自動車の電動化にはやや減速がみられ、排ガス規制の強化もしばらく続く見込みだ。ただ、エンジンがなくなれば、排ガスを浄化する部品も要らなくなる。
新しい柱の目標は「NewValue1000」だ。2030年に、新事業化品(研究から生まれた新製品)の売上高を1,000億円以上にする。研究開発から商品化までの速度を上げる3本部の体制も整えている。
志望動機では「会社が自分で決めた2030年の目標に関わりたい」と言える。逆質問では、1,000億円に向けた現在の進み具合を聞ける。
1-5. ROEが目標に届かない理由
ROEとは、自己資本(株主が出したお金と積み上げた利益)に対して、1年でどれだけ利益を出せたかを示す割合だ。
2026年3月期のROEは7.8%で、前期と同水準だった。会社の目標は10%以上で、これを下回った。さらに会社は、デジタルソサエティ事業の収益拡大を目指し、水準を12%へ引き上げるとしている。
未達の理由を、会社は有価証券報告書に書いている。純利益は増えたが、自己資本も増えたからだ。利益を出すほど自己資本が厚くなり、ROEは上がりにくくなる。会社は配当を引き上げ、自己株式の取得も進めている。
課題指摘では、「利益は増えたのにROEが動かない構造」を自分の言葉で説明できる。逆質問では、目標との差を埋める主な打ち手を聞ける。
第2章 業界比較
2-1. Niterraも同じ構図で戦っている
最も近い競合は日本特殊陶業(Niterra)だ。同じ「森村グループ」の出身で、互いに株を持ち合う関係にある。
主力は自動車用スパークプラグやセンサーで、半導体関連のセラミックス事業も伸びている。規模・収益性ともに日本ガイシに匹敵する。両社とも、自動車の内燃機関向け事業を安定収益源にしながら、半導体関連の新事業に賭けている。
志望動機では、同じ構図の競合との違いを聞かれたときの土台になる。逆質問では、Niterraと比べた自社の強みを聞ける。
2-2. 半導体特需は業界横断、電力は明暗
半導体の波に乗っているのは、この2社だけではない。衛生陶器のTOTOは、住宅設備が中国市場の停滞で苦戦する一方、半導体製造装置向けのセラミック事業が業績を牽引した。
電力インフラでは、東光高岳が営業利益を前期比60.2%伸ばした。データセンター向け設備などの需要拡大が追い風だ。日本ガイシのエネルギー&インダストリー事業は、NAS電池の構造改革費用が重く、赤字に沈んだ。同じ電力関連でも明暗が分かれている。
課題指摘では「半導体は追い風だが、電力事業の立て直しが残る」と整理できる。逆質問では、この事業をどう立て直すかを聞ける。
NGKの構造的課題と追い風は、3つに分けて第3章で扱う(### 脱炭素とEV化のジレンマ/### 電力インフラ更新需要の拡大/### AI半導体需要の急拡大と設備投資競争)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。社名を日本ガイシから変えた——NGKの構造を数字で確認しました。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 セラミックス・電力インフラ業界の構造的課題——### 脱炭素とEV化のジレンマ/### 電力インフラ更新需要の拡大/### AI半導体需要の急拡大と設備投資競争
- 第3.5章 面接前に押さえる日本ガイシ(NGK)最新ニュース10本
- 第4章 内定者の正体
- 第5章 職種別キャリア分析
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略
- 第8章 やましゃんの総合評価