古河電気工業(5801)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、古河電気工業を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「利益2.2倍の正体」です。
有報の数字(第204期)
- 売上高
- 1兆3,076億円
- 純利益
- 725億円
- ROE
- 19.1%
- 従業員数(連結)
- 49,112人
- 従業員数(単体)
- 4,009人
- 平均年間給与(単体)
- 749万円
- 平均年齢
- 43.4歳
- 平均勤続年数
- 18.4年
出典:古河電気工業の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
古河電気工業を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、古河電気工業に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは古河電気工業の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、古河電気工業株式会社 有価証券報告書 第204期(2025年4月1日-2026年3月31日)、および2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月6日公表)に基づきます。
古河電気工業は、データセンター向けの光関連に大きく賭けている会社であり、その賭けはまだ途中だ。
知っておきたいことは3つある。
1つ目。会社は2030年度に営業利益2,500億円を目指し、5年間で6,500億円を投じる計画を立てている。
2つ目。当期の純利益は2.2倍になったが、その大半は一度きりの利益だ。投資有価証券の売却益193億円と、退職給付制度の改定益194億円が押し上げている。
3つ目。営業利益の53%は自動車部品が稼ぐ。一方、伸びを引っ張ったのは従業員の少ない光の事業だ。
この記事では、賭けの中身と、それを支える電線・光ファイバの稼ぎ方を確かめる。
第1章 古河電気工業は何に賭けているのか
1-1. 賭けは3つ——2030年度に営業利益2,500億円
有価証券報告書(以下、有報)は、2025年度で終わった中期経営計画の振り返りと、2030年度の目標を書いている。
「2030年度財務到達水準は、営業利益2,500億円、自己資本利益率(ROE)20%、投下資本利益率(ROIC)15%としています。」
ROEとは、株主から預かったお金でどれだけ利益を出せたかを示す率だ。会社が自分で決めた目標なので、面接でも使える。
当期の営業利益は639億円。2030年度までに約3.9倍にする計画である。
賭けは3つに整理できる。
1つ目はデータセンターだ。光ファイバケーブル、放熱・冷却製品、半導体製造用テープ、銅箔、光電融合デバイスなどが対象になる。有報は「成長分野への投資を加速」と書く。
2つ目は投資額だ。2030年度までの5年間で6,500億円を投じ、うち5,000億円を注力分野に振り向ける。
3つ目は、既存技術の外側の領域だ。医療用光ファイバ、レーザ応用、核融合炉向けの超電導線材、グリーンLPガスなどがある。すぐに稼ぐ分野ではなく、2030年の先を見た賭けである。
志望動機に使える。「電線の会社」ではなく「データセンターに5年で5,000億円を賭ける会社」と言い換えて、そこで何をしたいかを語る。
1-2. 賭けは口先ではない——設備投資と買収
当期の設備投資は566億円で、前期より46.8%増えた。投資先ははっきりしている。
インフラ 254億円——光半導体デバイスと光ファイバの増産、電力ケーブルの製造拠点
電装エレクトロニクス 143億円——自動車用ワイヤハーネスの生産準備
機能製品 97億円——データセンター向け水冷モジュールの新工場
M&Aも動いている。光コネクタに強い会社、高速光変調器で世界トップレベルのシェアを持つ会社、医療・産業機器向け光ファイバの会社を子会社にした。
一方で、中国の電力ケーブル子会社の全持分を譲渡し、電池事業の子会社を連結から外した。光に集め、ノンコア事業は切り離す動きだ。
志望動機の根拠になる。「光関連の買収と、それ以外の整理を同時に進めている点に、会社の本気を感じた」と言える。
1-3. いまは投資期、2030年度から回収期
資本政策の項には、時間軸がそのまま書かれている。
「2026、2027年度については、大型投資の実行のため一時的に資金調達が拡大する見込みですが、2030年度以降は、先行投資分の刈り取り等を踏まえて投下資本の増加を抑制しつつ収益性を高めます。」
2026〜2027年度は借りて投資し、2030年度以降に回収する計画だ。28卒が入社する2028年4月は、投資期の終わりと回収期の入口にあたる。新しい設備を動かして稼がせる仕事が、中心になるだろう。
株主への配当の考え方も変わった。従来は純利益の30%を目途にしていた。これを、株主資本の3.5%を目途とする方式(DOE)に改めた。DOEは、株主のお金に対する配当の率である。
純利益が一度きりの要因で上下しても、配当がぶれにくい形だ。2027年3月期からは中間配当も再開する。
逆質問にできる。「投資期から回収期への移行で、新卒に最初に任される仕事は何か」と聞ける。
1-4. 利益2.2倍の中身——本業の伸びは35.8%
当期の連結業績は、売上高1兆3,076億円、営業利益639億円(前期比+35.8%)だった。親会社株主に帰属する当期純利益は725億円で、117.4%増えた。
営業利益は35.8%しか増えていないのに、純利益は2.2倍になった。差を生んだのは、先に挙げた2つの特別利益である。投資有価証券売却益193億円と、退職給付制度改定益194億円だ。どちらも来期は出ない。
本業の力は営業利益率で見る。当期は4.9%だった。2027年3月期の売上予想1兆5,300億円のままなら、2030年度の2,500億円には営業利益率16.3%が要る。
つまり、売却益ではなく、本業の稼ぎ方そのものを変える必要がある。会社の答えは、利益率の高いデータセンター関連製品の比率を上げることだ。
課題指摘と逆質問に使える。「純利益2.2倍は一過性が大きい。営業利益率4.9%から16.3%へ、どの事業が何ポイントずつ押し上げる想定か」と聞ける。
1-5. 利益の53%は自動車部品、伸びは光、人員は減少
営業利益639億円のうち、電装エレクトロニクス(自動車用ワイヤハーネスなど)が339億円で、53.1%を占める。従業員は34,934人で、連結49,112人の71.1%にあたる。
一方、インフラ(光ファイバ、電力ケーブル)は従業員9,319人で、営業利益が57億円から214億円へ約3.8倍になった。増益額169億円のうち、157億円がインフラである。人の多い事業と、伸びている事業が別なのだ。
連結従業員は、ピークの52,757人から49,112人へ、3,645人減った。中国子会社の譲渡と電池子会社の連結除外が主な要因である。
単体の古河電気工業は4,009人。平均年齢は43.4歳、平均勤続は18.4年、平均年間給与は749万円だ。自動車部品の人員は、ほとんど子会社と海外拠点にいる。
課題指摘に使える。「稼ぎの半分を占める自動車部品の収益性を、光で培った技術でどう底上げできるか」と、自分の貢献につなげる。
第2章 電線・光ファイバという産業の収益構造
2-1. 売上の伸びは銅の値段で変わる
電線の原材料は銅だ。銅の価格は国際市況で決まり、電線メーカーはその変動を販売価格に転嫁する。銅価が上がれば売上は増え、下がれば減る。当期の増収要因にも、有報は「銅地金価格の高騰の影響」を挙げている。
つまり、売上の伸び率は会社の実力を示さない。営業利益率4.9%という数字も、分母の売上が銅価で膨らんでいるぶん、低く見える。
電線メーカーを見るときは、売上より営業利益の額と、利益の質を見る。値上げを顧客に受け入れてもらえたか。有報の言葉では「販売価格の適正化」だ。当期はそれができた。
課題指摘に使える。「銅価の影響を除いた実力で見ると」と切り出せば、業界を理解している学生として話せる。
2-2. 光は「密度」と周辺部品で稼ぐ
データセンターでは、サーバー同士を光ファイバでつなぐ。サーバーが増えても、配線できるスペースは増えない。だから、同じ太さのケーブルにどれだけ多くの光ファイバを詰められるかが価値になる。有報の「ローラブルリボンケーブル」は、その密度を上げる製品だ。
古河電気工業の範囲は、ケーブルだけではない。接続部品、発光素子、水冷モジュール、半導体製造用テープ、銅箔まで広がっている。有報はこれらを「高付加価値製品」と呼び、開発と拡販を進めると書く。
志望動機に使える。「ケーブルだけでなく周辺部品まで持つ点が強みだと考え、その部品の開発に関わりたい」と語れる。
2-3. 自動車部品は人手で稼ぐ——同業との違い
ワイヤハーネスは、自動車の中を走る電線の束だ。車種ごとに形が違い、機械化しにくく、人の手で組む。だから人件費の安い国に工場を置く。電装エレクトロニクスの34,934人は、その工場の人員だ。
有報は「生産拠点の重畳化・最適化」や「自動化」による生産体制の強化を掲げる。米国の通商政策で関税が変われば、どこで作るかが利益を左右する。営業利益率4.4%は、人件費、関税、銅価の3つに挟まれた数字だ。
同業のフジクラと比べると、平均年間給与は934万円、古河電気工業は749万円で、185万円の差がある。平均年齢はどちらも43.4歳だ。
逆質問と志望動機に使える。「なぜフジクラではなく古河なのか」に答えるため、自動車部品と国内事業の比重の違いを押さえ、「処遇をどう上げていく考えか」と質問できる。
古河電気工業の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(従業員の71%がいる事業の利益率が4.4%/2030年度の2,500億円は、当期の3.9倍/利益が出ても現金が残らない——銅価と運転資本/女性管理職の目標を下げた)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。純利益2.2倍のうち特別利益が291億円、ROE19.1%の3分解で動いたのは純利益率、営業利益の53%は34,934人の自動車部品、伸びは9,319人の光、2030年度に営業利益2,500億円・5年で6,500億円投資、営業キャッシュ・フローは53.0%減。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 古河電気工業が抱える構造的課題——従業員の71%がいる事業の利益率が4.4%/2030年度の2,500億円は、当期の3.9倍/利益が出ても現金が残らない——銅価と運転資本/女性管理職の目標を下げた
- 第3.5章 面接前に押さえる古河電気工業の最新ニュース10本——第1四半期の営業利益3.1倍、通期経常利益を1,430億円へ43%上方修正、DOE3.5%まで
- 第4章 内定者の正体——「データセンターの成長に関わりたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収749万4,597円の読み方と、連結49,112人・単体4,009人でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続18.4年の読み方、女性管理職6.3%と女性役員18.2%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生