LIXIL(5938)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、LIXILを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「利益の半分が本社で消える」です。

有報の数字(第84期)

売上高
1兆5,107億円
純利益
81億円
ROE
1.3%
従業員数(連結)
48,073人
従業員数(単体)
15,128人
平均年間給与(単体)
730万円
平均年齢
46.2歳
平均勤続年数
20.3年

出典:LIXILの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

LIXILを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、LIXILに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはLIXILの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、株式会社LIXIL 有価証券報告書 第84期(2025年4月1日-2026年3月31日)、および2027年3月期第1四半期決算(2026年7月31日公表)に基づきます。

LIXILは、買収した海外事業の立て直しと国内のリフォーム化に賭け、本社コストを減らそうとしている会社だ。

知っておきたいことは3つある。

長期目標は事業利益率10%だが、当期は2.5%にとどまる。事業利益率は、売上のうち本業で残る利益の割合だ。

ROE(株主のお金から生んだ利益の割合)は0.3%から1.3%に上がった。ただし押し上げたのは本業ではなく、税金の減少だった。

3つの事業が稼いだ利益の51.9%が、本社費用として消えている。

この記事では、有価証券報告書(以下、有報)の数字でこの3点を確かめる。

第1章 LIXILは何に賭けているのか

1-1. 会社が掲げる長期目標は、事業利益率10%とROIC10%

LIXILは2011年に、国内の建材・設備機器メーカー5社が統合してできた。2013年に米国のASD、2015年にドイツのGROHEを買収し、世界150カ国以上で約48,000人が働く。

有報は長期目標として、事業利益率10%とROIC10%を掲げる。ROICは、投じた資金がどれだけ利益を生んだかを示す指標だ。当期の事業利益率は2.5%で、目標の4分の1である。

中期の指標は事業利益率7.5%だが、これにも届いていない。賭けは3つに絞れる。海外の立て直し、国内のリフォーム化、コストと資産の圧縮だ。

有報は当期の注力点として、米国事業の立て直し、GROHEの成長、日本のリフォーム強化を並べた。

面接での使い方

志望動機では、長期目標に賭ける会社だと根拠にできる。逆質問では、2.5%と10%の差をどう埋めるかを聞ける。

1-2. 賭けは実行されている——事業の整理と現在地

実行の証拠は3つある。米国の浴槽事業をAmerican Bath Groupへ完全移管した。セグメントを2区分から3区分に再編し、リビング事業を作った。窯業サイディング事業も終了した。

M&Aについて、有報は「大型のM&Aや設備投資は検討していません」と書く。いまは買う局面ではなく、買ったものを使い切る局面だ。

28卒が入る時点でも、回収期の途中にある。2027年3月期の会社予想は、売上1兆6,000億円、事業利益450億円だ。

2026年4〜6月は、事業利益が17億円、純損益が35億円の赤字で始まった。会社は通期予想を据え置いた。下期に取り戻す前提の計画だ。

面接での使い方

志望動機では、買収資産を使い切る局面で働く意義を語れる。逆質問では、第1四半期の赤字を下期にどう取り戻すかを聞ける。

1-3. ROEは0.3%から1.3%に上がったが、押し上げたのは税金だった

ROE(自己資本利益率)は、株主のお金からどれだけ利益を生んだかを示す。当期は1.3%で、前期の0.3%から上がった。

だが中身は、本業の改善ではない。事業利益は385億円と増えたが、構造改革費用や金融費用が重なり、税引前の利益は減益だった。それでも純利益は81億円と、前期の約4倍になった。

理由は、有報の言葉で「海外の連結子会社における法人税率変更により税金費用が減少したこと」だ。ROEの上昇は、税金の効果である。本業の実力は、価格改定やリフォーム向け売上の増加で改善している。ただ、その改善は税引前に届く前に消えている。

面接での使い方

課題指摘では、ROE上昇の理由が税金だと説明でき、数字の表面だけを見ない学生として見てもらえる。逆質問では、本業の利益を税引前まで届かせる施策を聞ける。

1-4. 本社で消える利益と、買収資産への依存

3つの事業が稼いだ事業利益は約800億円だ。本社の管理部門などの費用約415億円が、その半分強を消している。

有報は「本社費などの販管費削減努力の継続」を挙げ、AI活用を含むデジタル化で費用構造を作り変えるとする。

もう一つの依存先が買収資産だ。GROHEとASDののれんと商標権は合計約5,208億円で、親会社の持分の78.3%にあたる。のれんは、買収時に資産の価値を上回って払った代金のことだ。

監査法人は、この評価を監査上の主要な検討事項に選んだ。ASDは、GROHEより減損(価値が下がったとして帳簿から減らすこと)までの余裕が小さい。

面接での使い方

課題指摘では、本社費用と買収資産への依存を2つの課題として挙げられる。逆質問では、本社費用の削減をどこから進めるかを聞ける。

1-5. 働く側の事実——連結は減り、本体は増えている

連結の従業員は4万8,073人で、前期より587人減った。5期では3,567人減っている。一方、LIXIL本体(提出会社)は1万5,128人で、5期で776人増えた。

本体の平均年齢は46.2歳、平均勤続年数は20.3年。平均年間給与は約730万円で、前期から2.9%増えた。

勤務地限定社員制度(地域別賃金)は、管理職で2022年4月、一般社員で2026年4月に廃止された。職務と職責で賃金を決める制度に一本化している。

面接での使い方

志望動機では、連結が減り本体が増えている点から、本体で働く意味を語れる。逆質問では、制度を一本化した後の評価や配属の方針を聞ける。

第2章 住宅設備という産業の収益構造

2-1. 新築からリフォームへ——着工が減った年に増収

住宅設備の売上は、長らく新設住宅着工戸数と連動してきた。家が建てば、窓やキッチン、浴室が売れるからだ。当期は、着工戸数が前年比12.9%減った。

それでも売上は増えた。リフォームが埋めたからだ。有報は「国策による大規模な補助金制度を背景に窓を中心とした断熱商品のリフォーム向け売上が堅調」と書く。

新築向けは住宅メーカーが決め、リフォームは生活者が決める。だからブランドとショールームと施工店のネットワークが効く。

面接での使い方

志望動機では、新築の落ち込みをリフォームで補う構造を根拠にできる。逆質問では、補助金が終わった後の需要をどう見るかを聞ける。

2-2. ブランドで稼ぎ、原材料に左右される

水栓金具は技術的に成熟した製品だが、ブランドで価格差がつく。有報は欧州について「GROHEのブランド力の強化により、ハイエンドのカテゴリーでシェア拡大」と書く。ウォーターテクノロジーの事業利益は23.3%増えた。

一方、住宅設備は素材の塊で、アルミや銅などの価格が原価に直結する。当期は値上げが通ったが、2026年4〜6月は原材料高でハウジングテクノロジーが赤字になった。会社は2026年4月から10月にかけて、段階的に価格改定を進めている。

面接での使い方

課題指摘では、値上げと原材料高の追いかけっこが損益を左右すると説明できる。逆質問では、価格改定の進み具合を聞ける。

2-3. 成熟市場と成長市場を同時に相手にする

欧州と米国は、インフレと高金利で住宅市場の回復が遅れている。中国も、不動産市況の低迷で減速した。一方、中東・インドでは大幅な売上成長を達成したと有報は書く。

2026年第1四半期は、ウォーターテクノロジーの海外売上が15.8%伸び、欧州と中東が牽引した。縮む市場と伸びる市場を、同じブランドで同時に相手にしている。

面接での使い方

志望動機では、成熟市場と成長市場を併走する事業の幅を語れる。逆質問では、中東・インドへの力の入れ方をどう考えているかを聞ける。

LIXILの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(事業利益率2.5%——目標10%までの距離/買収資産5,208億円——成長率1.0%の下落で減損するASD/本社費用と金融費用——事業の外で消える600億円/縮む国内市場と、減り続ける人員)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上1兆5,107億円で事業利益率2.5%、事業が稼いだ800億円のうち415億円が本社で消え、ROE0.3%→1.3%の上昇は税金の効果、自己資本の78.3%がGROHEとASDののれんと商標権、長期目標は事業利益率10%・ROIC10%。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 LIXILが抱える構造的課題——事業利益率2.5%——目標10%までの距離/買収資産5,208億円——成長率1.0%の下落で減損するASD/本社費用と金融費用——事業の外で消える600億円/縮む国内市場と、減り続ける人員
  • 第3.5章 面接前に押さえるLIXILの最新ニュース10本——第1四半期の事業利益17億円、通期予想450億円の据え置き、価格改定まで
  • 第4章 内定者の正体——「住まいを豊かにしたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収729万6,288円の読み方と、連結48,073人・単体15,128人でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続20.3年の読み方、女性役員比率35.3%と女性管理職7.9%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問7本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. LIXILの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第84期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は730万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. LIXILの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第84期)では、提出会社(単体)が15,128人、連結が48,073人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. LIXILが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。