タクマ(6013)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、タクマを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「受注残高7,451億円。売上の4.5年分を、すでに持っている会社。」です。
有報の数字(第122期)
- 売上高
- 1,656億円
- 純利益
- 137億円
- ROE
- 12.4%
- 従業員数(連結)
- 4,504人
- 従業員数(単体)
- 1,117人
- 平均年間給与(単体)
- 917万円
- 平均年齢
- 42.2歳
- 平均勤続年数
- 14.3年
出典:タクマの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
タクマを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、タクマに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはタクマの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社タクマ 有価証券報告書 第122期(2025年4月1日-2026年3月31日)、2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月5日公表)、および自己株式の取得状況および取得完了ならびに自己株式の消却に関するお知らせ(2026年8月25日公表)に基づきます。
結論は一つだ。タクマは、すでに受けた仕事で数年先まで売上が見えており、長期目標にも近づいている会社である。
知っておきたいことは3つある。
受注残高が厚い。受注残高とは、契約は取ったが、まだ売上にしていない金額だ。7,451億円で、売上の4.5年分にあたる。
長期目標が近い。長期ビジョンは「2030年に経常利益200億円」だ。2027年3月期の予想は185億円である。
事業が偏っている。国内の環境・エネルギー事業が、売上と営業利益の約8割を占める。
この記事で確かめるのは、会社が何に賭け、その賭けがどんな仕組みで利益になるかを、有価証券報告書(会社が法律に基づいて出す年次報告書)の記述から読み取ることだ。
第1章 タクマは何に賭けているのか
1-1. 有報が明かす「賭け」——2030年に経常利益200億円
タクマは、ごみ処理プラントとボイラの会社だ。ごみ処理プラントとは、ごみを燃やして蒸気を作り、発電する施設である。
事業は4つに分かれる。環境・エネルギー(国内)、環境・エネルギー(海外)、民生熱エネルギー、設備・システムだ。
有報は、国内の環境・エネルギー事業を「最も重要な事業セグメント」と書く。売上と営業利益の約8割を、この事業が占める。
長期ビジョンは「2030年に経常利益200億円を目指す」だ。経常利益とは、通常の事業活動で稼いだ利益のことである。
第122期(2026年3月期)の実績は162億円だった。
志望動機では、会社自身が掲げた「2030年に経常利益200億円」を引き、どの事業で貢献したいかを語る。逆質問では、約8割を占める国内事業への依存をどう広げるかを聞ける。
1-2. 受注高は期首の目標を大きく上回った
受注高とは、1年間に取った仕事の金額だ。期首の目標は2,500億円だったが、実績は3,330億円になった。
受注高、受注残高、当期純利益は、そろって過去最高を更新した。
中身は、ごみ処理プラントのDBO事業を中心とする新設工事5件などだ。DBOとは、作って終わりではなく、完成後の運営まで請け負う契約を指す。
運営について、有報は「プラントの稼働後20~30年間のライフサイクルにわたって安定した需要が見込まれます」と書く。
志望動機では、作って終わりにせず、20〜30年付き合う事業モデルに惹かれたと語れる。逆質問では、DBO案件が今後も続く見通しを聞ける。
1-3. 第14次中期経営計画の途中——目標を前倒しで超えつつある
中期経営計画とは、会社が数年先までの数値目標を示したものだ。第14次は2024年度から2026年度で、28卒が入社する2028年は第15次の途中にあたる。
経常利益は、3か年累計450億円が目標だ。2年目までの実績は約304億円である。
2027年3月期の予想185億円を足すと、目標を超える計算になる。
ROEの目標は、2027年3月期に11.5%以上だ。ROEとは、株主が出した資金で、どれだけ利益を出したかを示す比率である。第122期はすでに12.4%で、前期は9.5%だった。
ただし、この期の純利益には、保有する株式の売却益が含まれる。総資産がほぼ横ばいのまま売上が伸びたことも、ROEを押し上げた。
会社は自己株式の取得にも動いた。自己株式の取得とは、会社が自社の株を買い戻すことだ。2026年8月25日に、取得の完了と消却を公表している。
逆質問では、第14次の目標を前倒しで超えそうな今、第15次にどんな指標を掲げるのかを聞ける。ROEには売却益の分が含まれると理解している、と添えれば利益の中身まで見ていると伝わる。
1-4. 伸びる事業と縮む事業
民生熱エネルギー事業は、買収で大きく伸びた。㈱IHI汎用ボイラを連結子会社にしたためだ。
2026年4月1日には、㈱日本サーモエナーとの合併が控えていた。有報は、国内シェアの向上による規模のメリットを狙うと書く。
一方、海外の環境・エネルギー事業は縮んでいる。受注残高は前期から約78%減った。
有報は理由を、インド・中国メーカーとの厳しい競争と、制度の未整備や政府の資金不足で安定した市場にならないことだと書く。
課題指摘として、海外事業の縮小と国内への偏りを挙げ、自分ならどう貢献するかを語れる。逆質問では、合併後の民生熱エネルギー事業の狙いと、海外の立て直し方針を聞ける。
1-5. 第1四半期は大幅増益——受注は四半期ごとに振れる
2027年3月期の第1四半期(2026年4〜6月)は、営業利益が前年同期より約223%増えた。受注残高は7,593億円まで積み上がった。
一方、受注高は前年同期より約860億円減った。前年同期にはDBO事業2件などの大型案件があったためだ。
大型案件が入るかどうかで、四半期ごとの受注は大きく振れる。受注産業では、だから受注残高を見る。
通期の経常利益予想は185億円で、長期ビジョンの200億円まで、あと15億円である。
最新ニュースの文脈として、受注高が減っても受注残高は増えている点を語れる。逆質問では、200億円に近づく中で、次の目標をどう置くのかを聞ける。
第2章 受注産業の収益構造
2-1. 受注残高7,451億円という意味
受注残高7,451億円は、この期の売上の4.5年分にあたる。今日から新規受注がゼロになっても、4年半は売上が立つ計算だ。
理由は、案件そのものが長いからである。ごみ処理プラントの建設には数年かかり、DBOならその後も運営が続く。
有報は、プラント建設(EPC)事業は国の政策や公共投資の動向を受けやすく、需要が大きく変動すると書く。一方、メンテナンスなどのアフターサービス事業は、稼働後20〜30年にわたり安定した需要が見込まれるとする。
建設には波があり、運営は安定している。この2つを組み合わせるのが、この会社の設計だ。
志望動機では、波のある建設と安定した運営を組み合わせた収益構造に魅力を感じたと語れる。逆質問では、建設と運営のバランスをどう考えているかを聞ける。
2-2. 顧客は自治体で、運営も任される流れにある
主な顧客は自治体だ。有報は、ごみ処理プラントの老朽化に伴う更新・延命化の需要が、当面は堅調に続くと見込む。
ごみ処理施設は全国の自治体が持ち、寿命がある。更新の時期が来れば、発注される。
運営の形も変わりつつある。包括委託とは、自治体が施設の運営をまとめて民間に任せることだ。
有報は、行政サービスの外部化が進み、包括委託が増えると見ている。人手不足の自治体が増えれば、この流れは強まる。
志望動機では、自治体の更新需要と包括委託の増加という追い風を根拠に挙げられる。逆質問では、国の政策や自治体の予算に左右されやすい点への備えを聞ける。
2-3. 関係会社の顔ぶれが、事業構造を語っている
連結子会社には、「ハイトラスト」の名を持つ会社が並ぶ。長泉ハイトラスト、藤沢ハイトラストなどで、いずれも納入したプラントの運転管理を担う。
自治体ごとに運営会社を作り、建てて終わりではなく、その土地で運営を続ける形だ。このほか、設計のタクマ・エンジニアリング、保守のタクマプラント、電力小売のタクマエナジーなどがある。
働く側の事実も押さえたい。連結従業員4,504人のうち、国内の環境・エネルギー事業は3,537人だ。提出会社(単体)は1,117人で、多くは子会社に所属している。
志望動機では、建設から運営までをグループ全体で担う構造に惹かれたと語れる。逆質問では、入社後の配属先が単体か子会社か、キャリアで行き来があるかを聞ける。
タクマの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(人材の不足を、中期経営計画の冒頭に書いている/海外事業が縮んでいる/国内市場は、いずれ縮む/女性管理職比率1.9%と、エンゲージメントの未達)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。受注残高7,451億円が売上の4.5年分にあたること。受注高が期首目標2,500億円を830億円上回り、受注高・受注残高・当期純利益の3つが同時に過去最高を更新したこと。ROEの3分解では純利益率と総資産回転率の2つが上がり、ただしその純利益には投資有価証券売却益が含まれること。長期ビジョンの「2030年に経常利益200億円」に対し、2027年3月期の予想が185億円で、あと15億円まで来ていること。そして「人材のリソース不足」を中期経営計画の冒頭に書いていること。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 タクマが抱える構造的課題——人材の不足を、中期経営計画の冒頭に書いている/海外事業が縮んでいる/国内市場は、いずれ縮む/女性管理職比率1.9%と、エンゲージメントの未達
- 第3.5章 面接前に押さえるタクマの最新ニュース10本——過去最高3つ、IHI汎用ボイラの子会社化と合併、自己株式の取得完了と消却まで
- 第4章 内定者の正体——「環境に貢献したい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収9,171,677円の読み方と、連結4,504人・単体1,117人の組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——平均年齢42.2歳・勤続14.3年の読み方、KPIの達成と未達、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生