ベクトル(6058)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、ベクトルを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「売上15%が利益の4割」です。

有報の数字(第34期)

売上高
638億円
純利益
51億円
ROE
26.8%
従業員数(連結)
1,571人
従業員数(単体)
184人
平均年間給与(単体)
658万円
平均年齢
35.4歳
平均勤続年数
3.2年

出典:ベクトルの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

※本記事の決算数字は、株式会社ベクトルが提出した第34期(2025年3月1日〜2026年2月28日)有価証券報告書に基づきます(2026年7月執筆)。

この記事は、最低3回は読み返してほしい。

自ずと「なぜベクトルがこの決算になったのか」を自分の言葉で説明できるようになる。
そこまで来れば、面接で財務の話になったとき、面接官より深く踏み込める。

ベクトルを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ベクトルに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。役員を目指すなら、自社がどの数字で評価されているかを知らないままでは話にならない。

ベクトルは、人が動くPR事業と、上場子会社のプラットフォーム事業の二階建てで稼ぐ会社だ。知っておきたいことは3つある。

2026年2月期は売上637億円、営業利益91億円で、増収増益の過去最高だった。営業利益とは本業の儲けのことだ。

売上の15.0%しかないプレスリリース配信事業が、営業利益の39.7%を稼いでいる。担い手は上場子会社のPR TIMESだ。

成長の型はM&A(企業買収)だ。ただ買うだけでなく、売却も同時に進んでいる。

この記事では、有価証券報告書だけを使い、この二階建ての構造と、買って整理する会社の素顔を確かめる。

第1章 ベクトルは何に賭けているのか

1-1. 「FAST COMPANY」に時代が追いついた

有報は戦略の名前と手応えを書いている。「『FAST COMPANY』という戦略に時代が適合してきた」。戦略が正しかったとは書かず、時代が追いついたと書いている点が特徴だ。

過去最高を押し上げた要因は4つ挙がる。前期に赤字だったNewsTVと韓国事業の黒字化、戦略PR事業、タクシーサイネージ事業、そして子会社に加えたgracemodeだ。赤字だったと率直に書いている。

会社が重視する指標は営業利益だ。当期は13.5%増だった。親会社の株主に帰属する純利益は51億円で、21.8%増である。

面接での使い方

志望動機では「時代が適合した」という会社自身の言葉を引き、その流れに乗りたい理由を語れる。赤字事業を黒字化した点は、課題への関心を示す材料になる。

1-2. 買って束ねる会社

有報はM&Aの方針を正面から書いている。「M&Aによる事業領域の拡充および成長の加速」だ。狙いは、生活者の利用時間が増えているSNS領域である。直近では2025年4月30日に、gracemodeの全株式を取得した。

グループには、アンティル、プラチナム、イニシャルという広報・PR代行の会社が並ぶ。同じ領域の会社を3社、社名もそのまま持っている。PRは担当者と顧客の関係で成り立つため、混ぜない形を選んだと読める。

買い続ける会社には歯止めが要る。有報は「財務状況とのバランスを考慮しながら」進めると書く。現金222億円に対し、借入は75億円ほどだ。本当の難所は買った後の管理で、有報も新しい事業を経営管理体制へ効率的に統合することを課題にあげる。

面接での使い方

逆質問に使える。「同じPR領域の会社を複数お持ちですが、社名を統合せず並べるのは、担当者と顧客の関係を守るためですか」と聞ける。

1-3. 売却と減損——整理も同時に進む

買う一方で、手放す動きもある。HR事業の株式会社あしたのチームは、2026年2月27日に全株式を売却した。売却益は18億円だ。この結果、HR事業の従業員は前期末から142人減った。

逆に、買った会社が期待どおり稼げないこともある。ビジコネットとOwnedでは、のれんの減損損失が12億円出た。のれんとは、買収時に上乗せして払った分を資産にしたもの。減損とは、その価値を切り下げることだ。

残ったHR事業には、就活生が直接ぶつかる採用プラットフォーム「JOBTV」がある。HR事業は営業損失2,300万円だった。

面接での使い方

課題指摘に使える。「買った会社を稼がせる統合力が論点だと理解している」と言える。JOBTVに関心があるなら、HR事業が赤字だった事実を踏まえて貢献策を考えたい。

1-4. 二階建ての利益構造

セグメント(事業区分)別に見ると、顔が変わる。売上の約55%を占める主力のPR・広告事業は、営業利益49億円で、利益率は14.0%だ。

一方、プレスリリース配信事業は営業利益36億円で、利益率は37.9%ある。前年から93.0%増と突出している。

差は事業の性質から来る。PR・広告は人が動くサービスで、売上を倍にするには人も倍いる。配信はPR TIMESのサイトに企業が自分でリリースを載せる仕組みだ。利用企業が増えても、費用は同じ比率では増えない。利用企業は124,000社を超えた。

面接での使い方

「PRの会社」で止まらず、「人が動く事業と、プラットフォーム事業の両方を持つ点が特徴だ」と語れる。志望動機でも逆質問でも使える。

1-5. 上場子会社と、ベクトル以外の株主

PR TIMESは東証に上場する別会社で、ベクトルは全株を持っているわけではない。そのため、子会社が稼いだ利益の一部は、ベクトル以外の株主のものになる。この株主を非支配株主という。

当期、非支配株主に帰属する純利益は12億円だった。配信事業の36億円の営業利益が、全部ベクトルの株主のものになるわけではない。ここが上場子会社を持つ会社の読み方だ。

面接での使い方

課題指摘に使える。「配信事業の利益が、ベクトルの株主に全部は届かない構造だと理解している」と言える。グループ全体の価値向上の考え方を、逆質問にもできる。

第2章 グループ43社という形

2-1. 本体は184人、連結は1,571人

有報によれば、グループは子会社41社と関連会社1社の計43社だ。サービスの実務は子会社が担い、経営企画や人事などの管理機能を本体が一括して持つ。

従業員数もそれを裏づける。連結は1,571人(臨時雇用者548人)で、提出会社であるベクトル本体は184人だ。セグメント別では、PR・広告事業が1,193人、プレスリリース配信事業が241人である。

投資事業は3人で、前期は17億円の営業利益を出していた。当期は営業損失だった。

面接での使い方

入社先が「本体」か「グループ会社」かで仕事の中身が変わる。説明会で必ず確認したい。配属の考え方を逆質問にできる。

2-2. 上場会社が複数あるという意味

PR TIMESに加え、ダイレクトマーケティング事業の株式会社ビタブリッドジャパンも、2026年4月2日に東証グロース市場へ上場した。

就活生にとっての意味は2つある。1つ目は、待遇や制度が会社ごとに違うことだ。上場子会社は独自に有報を出し、独自の人事制度を持つ。

2つ目は、キャリアの選択肢が広いことだ。有報は人材施策として「アントレプレナー制度」をあげる。ベンチャー教育や起業家支援で、次世代の経営者を育てる趣旨だ。子会社を作り、育て、上場させる道筋が現にある。

面接での使い方

志望動機では、アントレプレナー制度を挙げて将来像を語れる。逆質問では、グループ会社間の待遇や異動の仕組みを聞ける。

ベクトルの構造的課題と追い風は、3つに分けて第3章で扱う(市場は4年連続で過去最高/「FAST COMPANY」という戦略/労働集約とプラットフォームの違い)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上637億9,400万円で7.7%増、営業利益91億1,600万円で13.5%増、ROE26.8%。ただしセグメントを開くと、売上15.0%のプレスリリース配信事業が営業利益の39.7%を稼いでおり、その担い手は上場子会社のPR TIMES。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 広告・PR業界の構造——市場は4年連続で過去最高/「FAST COMPANY」という戦略/労働集約とプラットフォームの違い
  • 第3.5章 面接前に押さえるベクトル最新ニュース10本——PR TIMESの93%増益、あしたのチーム売却、ビタブリッドジャパン上場まで
  • 第4章 内定者の正体——「PRがやりたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収658万4,000円と平均勤続3.2年の読み方
  • 第6章 働く環境の現実——女性比率62%の組織と、43社グループで働くということ
  • 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. ベクトルの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第34期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は658万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. ベクトルの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第34期)では、提出会社(単体)が184人、連結が1,571人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. ベクトルが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。