島精機製作所(6222)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、島精機製作所を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「ROE目標1.1%を1年早く達成した。同じ年に、営業赤字17億円。」です。
有報の数字(第65期)
- 売上高
- 335億円
- 純利益
- 9億円
- ROE
- 1.1%
- 従業員数(連結)
- 1,654人
- 従業員数(単体)
- 1,256人
- 平均年間給与(単体)
- 598万円
- 平均年齢
- 45.5歳
- 平均勤続年数
- 22.3年
出典:島精機製作所の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
島精機製作所を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、島精機製作所に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは島精機製作所の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社島精機製作所 有価証券報告書 第65期(2025年4月1日-2026年3月31日)、および2027年3月期第1四半期決算短信(2026年7月31日公表)に基づきます。
結論:島精機製作所は、赤字から黒字へ戻す途中にあり、2027年3月期が中期経営計画の勝負の年だ。
知っておきたいことは3つある。
本業の営業は赤字だが、最終利益は黒字に戻した。前期は142億円の純損失だった。
ROE(株主から預かったお金で、どれだけ利益を出したかの割合)の目標は1.1%以上だ。実績はすでに1.1%で、一方で売上と営業利益は目標に届いていない。
受注残高が減り、2027年3月期第1四半期の売上は27.3%減った。来期の土台は厚くない。
この記事では、会社が何に賭けているか、その賭けが数字にどう出ているか、何が課題として残るかを確かめる。
第1章 島精機製作所は何に賭けているのか
1-1. 賭けの中身——主力の「再生」と構造改革本部
島精機製作所は、ニットを編む機械のメーカーだ。主力は横編機(セーターなどを編む機械)で、売上の71.2%を占める。
有価証券報告書(会社が国に出す年次報告書)は、4つの重点施策を挙げる。「①経営基盤の再構築 ②ソリューションビジネスの確立 ③横編機事業の再生 ④自動裁断機事業の拡大」だ。主力事業に「再生」という言葉を使っている。
第1四半期の決算短信には、構造改革本部を立ち上げたとある。「従来の慣習にとらわれない抜本的な見直し」を進め、外部人材も登用する。性能を絞って価格を下げたコストパフォーマンスモデルは、下期から本格展開する。
志望動機で「主力の再生に会社が賭けている」と述べ、構造改革の中で自分が関わりたい領域を語れる。
1-2. 目標と現在地——最終年度の課題は売上と営業利益
中期経営計画「Ever Onward 2026」は、2024年度から3年間の計画だ。最終年度の2027年3月期は、売上高410億円、営業利益3億円、ROE1.1%以上を目標にしている。
2026年3月期のROEは1.1%で、目標を1年早く達成した。届いていないのは売上と営業利益だ。売上は目標まで75億円足りない。営業利益は目標まで20億円足りない。
会社は2027年3月期の業績予想を、目標と同じ数字に置いている。28卒が入社する2028年4月は、立て直しが実ったかが見える時期にあたる。
逆質問で「売上と営業利益の差を、どの施策でどう埋める計画か」を聞ける。
1-3. 黒字の中身——前期の異常が消えた結果
営業は17億円の赤字だが、経常利益と純利益は黒字だ。営業から下へ行くほど、数字が良くなっている。
前期は、棚卸資産評価損、貸倒引当金繰入額(回収できない見込みの代金の備え)、為替差損、減損損失(価値が下がった資産の損失)が重なった。今期はこれらが大幅に減った。改善は、前期の異常が戻った面が大きい。
最終黒字には、投資有価証券の売却益も入っている。直近5期のうち3期が赤字だった。
課題指摘で「黒字は一過性の損失が消えた面が大きく、本業の赤字は残る」と整理できる。
1-4. 4事業すべて黒字なのに、全社は赤字
4つの事業は、すべて黒字だ。利益を足すと42億円になる。それでも全社の営業損失は17億円である。差の約60億円は、どの事業にも配分されない全社費用だ。
人員にも同じ構造が出る。連結1,654人のうち、特定の事業に属さない全社(共通)は437人で、26.4%を占める。約4人に1人だ。
重点施策の1つ目は「経営基盤の再構築」だ。「社内体制・業務プロセスの刷新」を掲げ、この構造に手を入れる狙いがある。
課題指摘で「全社費用の重さ」を挙げ、管理部門や業務改善での貢献を語れる。全社部門が約4人に1人という事実は、入社後の姿を考える材料になる。
1-5. 受注と第1四半期——土台は薄い
売上は伸びたが、受注高は18.1%減った。受注残高(受注済みで未売上の分)は41.2%減り、来期売上の土台は薄い。
2027年3月期第1四半期の売上は76億円で、前年同期比27.3%減だった。会社は理由として、バングラデシュと中国で競争が厳しくなり、顧客が設備投資に慎重になったと書く。
それでも通期の売上予想410億円は据え置かれている。第1四半期の達成度は18.7%だ。
逆質問で「通期予想の達成に、下期のコストパフォーマンスモデルをどこまで見込むか」を聞ける。
第2章 ニット機械メーカーの収益構造
2-1. ホールガーメントとデザインシステム——技術が向かう先
通常のセーターは、身頃と袖を別々に編んで縫い合わせる。ホールガーメントは、1本の糸から立体のまま編み上げる。縫い目がなく、裁断も縫製も要らない。
有報は、大量に作って売れ残るモデルからの脱却が急務と書く。目指すのは「必要なときに必要な量だけ生産し、短納期で消費者に届ける」モデルだ。この技術はその答えに位置づけられている。
もう一つの柱がデザインシステム(設計用のソフト)だ。月額で使うサブスクリプション「APEXFiz」の契約数が増えた。この事業の利益率は22.1%で、4事業で最も高い。
志望動機で、在庫を持たない生産への貢献と、売り切りでない収益の両方を軸にできる。
2-2. 顧客は分散、競合は中国メーカー
地域ごとに事情は違う。バングラデシュは受注が回復基調だ。イタリアは高級ブランドを中心にホールガーメント横編機が増えた。中国は、香港系大手顧客を中心に台数が前期を下回った。
有報は、中国メーカーなどとのシェア争いが激化することも想定している。中国は顧客であり、競合でもある。
一方、売上の10%以上を占める顧客はいない。特定の顧客に頼る構造ではない。
課題指摘で「価格競争への対抗策」を、逆質問で「ホールガーメントと低価格モデルの役割分担」を聞ける。
2-3. 自己資本比率75.2%という守り
自己資本比率(返済不要のお金が総資産に占める割合)は75.2%だ。第64期に大きな純損失を出しても、比率の下がり幅は約7ポイントにとどまった。もともとの資本が厚く、それが赤字を支えた。
逆質問で「厚い資本を、再生のどの分野に投じる考えか」を聞ける。
島精機製作所の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(営業利益3億円という目標/受注残が1.6か月分しかない/中国メーカーとの価格競争/平均年収が前年比6.1%下がった)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。中期経営計画「Ever Onward 2026」のROE目標が1.1%で、それを1年早く達成したこと。営業損失17億円でありながら経常利益2億円・当期純利益8億円と黒字になった理由が、前期の一過性損失(棚卸資産評価損・貸倒引当金繰入額・為替差損・減損損失)の反動にあること。4つのセグメントすべてが営業黒字(合計42億円)なのに全社では赤字で、その差が約60億円の全社費用であること。そして受注が18.1%・受注残が41.2%減り、受注残が1.6か月分しかないこと。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 島精機製作所が抱える構造的課題——営業利益3億円という目標/受注残が1.6か月分しかない/中国メーカーとの価格競争/平均年収が前年比6.1%下がった
- 第3.5章 面接前に押さえる島精機製作所の最新ニュース10本——構造改革本部の立ち上げ、コストパフォーマンスモデル、サブスクリプションまで
- 第4章 内定者の正体——「ホールガーメントに惹かれた」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収5,984,096円の読み方と、連結1,654人・単体1,256人の組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——平均年齢45.46歳・勤続22.34年の読み方、女性役員比率25.0%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生