SMC(6273)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、SMCを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「経常利益が12.2%増」です。
有報の数字(第67期)
- 売上高
- 8,425億円
- 純利益
- 1,673億円
- ROE
- 8.3%
- 従業員数(連結)
- 24,773人
- 従業員数(単体)
- 6,560人
- 平均年間給与(単体)
- 780万円
- 平均年齢
- 41.1歳
- 平均勤続年数
- 19.7年
出典:SMCの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
SMCを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、SMCに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはSMCの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
結論から言う。SMCは、在庫・技術者・生産拠点に自己資金で賭け続ける会社であり、その代わりROE(株主のお金に対する利益の割合)は低めに出ている。
知っておきたいことは3つある。
SMCは、工場の機械を空気の力で動かす部品(空気圧制御機器)の会社だ。世界シェアは40%超とされる。売上は8,425億円で、売上に対する本業の利益の割合(営業利益率)は22.6%ある。
総資産のうち返さなくてよいお金の割合(自己資本比率)は91.5%で、ほぼ無借金だ。そのうえで、在庫を厚く持つ方針を変えないと有価証券報告書に明記している。
来期は売上1兆円を予想している。今期の営業利益はほぼ横ばいで、強気の予想といえる。
この記事では、その賭けの中身と1兆円予想の背景、競合との違いを確かめる。
第1章 SMCは何に賭けているのか
1-1. 「厚めの在庫を持つ方針を変更する予定はありません」
有価証券報告書には、次の一文がある。「戦略的に厚めの在庫を保持するという方針を変更する予定はありません」。在庫は普通、減らすものだ。多いほど資産が膨らみ、お金の使い方の効率が落ちるからだ。
それでも在庫を厚く持つのは、顧客の工場のラインが止まったときに部品がすぐ届くかが選ばれる決め手になるからだ。「明日届きます」と言える会社は強い。この会社にとって、在庫は商品そのものである。
投資の姿勢も同じだ。同社は「不況期にも着実な設備投資を行って生産能力を確保」し、需要が戻ったときに他社より先に受注を取る戦略を採ってきた。設備投資を控える動きが出ている今も、生産・物流・研究開発の拠点を広げていると書いている。
逆質問に使える。「不況期にも設備投資を続ける判断は、どのくらい先の需要を見て決めておられるのですか」と聞ける。
1-2. 技術者約2,000人を、世界5か国に置く
SMCは、世界5か国の技術センターに約2,000人の技術スタッフを置いている。役割は研究開発、技術情報の収集、顧客への技術サポートの3つだ。製品は顧客の装置に組み込まれるため、顧客が何を作ろうとしているかを知ることが次の製品につながる。
設備投資額は約1,503億円で、前期より39.4%増えた。目的は、供給能力の拡大、災害時にも供給を止めないための生産の複線化(同じ製品を2か所以上で作る備え)、開発力の強化だ。
有価証券報告書に、買収の記述は見当たらない。長期の設備投資の資金は自己資金でまかなう方針も示されている。同業を買い集める成長ではなく、自前の工場・拠点・在庫で伸ばす会社だと読める。
志望動機に使える。「買収に頼らず自前で伸ばす姿勢に惹かれた」と言える。逆質問では、技術センターで集めた顧客情報を営業にどう生かすかを聞ける。
1-3. 一度採用されると、図面が変わるまで買い続けてもらえる
有価証券報告書には、こうある。顧客は「次にラインや装置の図面を更新するまで長期間にわたり継続して同一の製品を購入される傾向があります」。他社製品に替えるには、設計の引き直しや検証が要る。だから勝負は、新しい図面に載れるかどうかに集まる。
会社が伸ばしたいのは、すでに強い場所ではない。「低シェア地域及び低シェア製品の領域」を中心にシェアを上げるとしている。
一方で、売上は地域に偏りがある。中国が27.9%で最大であり、日本は18.9%だ。自動車関連では、中華圏のEV向けは底堅いが、北米・日本・欧州は設備投資の先送りが続いている。
課題指摘に使える。「売上で最大の中国への依存をどう見ているか」と聞ける。営業職なら、設計者に提案して図面に載る仕事だと自分の言葉で語れる。
1-4. 利益率が高いのに、ROEは8.3%
ROEは、株主が預けたお金(自己資本)に対して、どれだけ利益が出たかを示す。SMCの直近期は8.3%だ。一方、売上のうち最終的に残る利益の割合(純利益率)は19.9%と高い。
差が生まれる理由は、1-1の方針にある。在庫を厚く持つと資産が膨らむ。さらにほぼ無借金なので、総資産の約9割が自己資本になる。どちらもROEを押し下げる。
在庫を減らし、借金を増やせばROEは上がる。ただしその場合、注文にすぐ応える強みと、不況期にも投資を続ける余力が弱まる。会社は後者を守る選択をしている。この選択が正しいかは、株主が判断することだ。
課題指摘に使える。「ROEが低い」で終えず、「在庫と無借金という意図的な選択の結果だ」と説明できる。逆質問では、資本効率と在庫方針の両立をどう考えているかを聞ける。
1-5. 今期は横ばい、来期予想は売上1兆円
今期の売上は8,425億円で、前期より6.4%増えた。営業利益(本業の利益)は1,906億円で、前期比0.2%増とほぼ横ばいだった。
来期の予想は強気だ。売上は1兆円(18.7%増)、営業利益は2,190億円を見込む。背景として、半導体関連の需要回復、自動車関連の増加、労働力不足に対応する自動化需要の広がりを挙げている。
働く側の事実もある。連結従業員数は24,773人で、前期より1,659人増えた。世界で人を増やしている。
志望動機に使える。「売上1兆円という目標に、自分の仕事でどう貢献したいか」を語れる。逆質問では、増える売上をどの地域・製品で作る計画かを聞ける。
第2章 業界比較——空気圧制御機器世界市場の構造
2-1. 競合は、何で勝負しているのか
世界シェアの推定では、SMCが首位に立つ。競合は戦略が異なる。
Festo(ドイツ):工場自動化やロボット周辺、教育まで含めたソリューション型。
Parker Hannifin(米国):油圧・空気圧・流体制御を幅広く扱い、自動車や航空宇宙など顧客も広い。
CKD(日本):国内ではSMCに次ぐ位置にある。半導体製造装置向けの薬液バルブに強みがある。
SMCは空気圧制御に集中し、世界で現地生産・現地販売を徹底するタイプだ。
志望動機に使える。「専業で全品揃えを目指す点が他社と違う」と言える。逆質問では、教育まで含めて売るFestoのような相手にどう対抗するかを聞ける。
2-2. SMCにしかない3つの強み
第1は、品ぞろえの幅と深さだ。12,000品種・70万品目超は業界最多とされ、空気圧の需要を一社で完結できる。
第2は、直販営業と代理店の併用だ。直販スタッフを世界に置き、設計段階から顧客の自動化を支援する。導入後の困りごと、設計の改善、省エネの提案までフォローする。
第3は、自己資本比率91.5%という財務の余力だ。景気が悪い時期でも、設備投資と自社株買いを続けられる。
志望動機に使える。営業志望なら「設計段階から入る伴走型営業」を理由に挙げられる。逆質問では、直販と代理店の使い分けの考え方を聞ける。
SMCの構造的課題と追い風は、5つに分けて第3章で扱う(### 課題1:中国市場の依存度/### 課題2:自動化と省人化の二面性/### 課題3:電動化(モーター駆動)への対抗/### 課題4:為替変動の影響/### 課題5:世界での人材確保)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題——### 課題1:中国市場の依存度/### 課題2:自動化と省人化の二面性/### 課題3:電動化(モーター駆動)への対抗/### 課題4:為替変動の影響/### 課題5:世界での人材確保
- 第3.5章 押さえておくべきSMC・FA業界の最新ニュース
- 第4章 内定者の正体
- 第5章 職種別キャリア分析
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答例
- 第8章 やましゃんの総合評価