ナブテスコ(6268)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、ナブテスコを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「営業利益が60.3%増」です。
有報の数字(第23期)
- 売上高
- 3,079億円
- 純利益
- 157億円
- ROE
- 5.8%
- 従業員数(連結)
- 8,472人
- 従業員数(単体)
- 2,186人
- 平均年間給与(単体)
- 715万円
- 平均年齢
- 42.6歳
- 平均勤続年数
- 16.9年
出典:ナブテスコの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
ナブテスコを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ナブテスコに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはナブテスコの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
結論から言う。ナブテスコは「稼ぐ力を取り戻すこと」に賭けている。2025年12月期は利益が大きく回復したが、会社自身の目標にはまだ届いていない。
知っておきたいことは3つある。
事業の中身:産業用ロボットの関節に使う精密減速機(RV減速機)が主力だ。鉄道のブレーキ、航空機の部品、自動ドアも手がける。
直近の業績:2025年12月期の営業利益は207億円で、前期より60.3%増えた。営業利益率は6.7%まで上がった。
会社が決めた目標:事業に投じたお金の稼ぎやすさを示すROICで、10%以上を掲げる。実績は4.4%だ。油圧機器事業の70%も手放した。
この記事では、この目標と現状の差を軸に、面接で語れる論点を確かめる。
第1章 ナブテスコは何に賭けているのか
1-1. 目標はROIC 10%以上、実績は4.4%
有価証券報告書には、中期経営計画(2025〜2027年度)の目標と、初年度の実績が並んで載っている。ROICとは、事業に投じたお金が利益をどれだけ生んだかを示す指標だ。
目標はROIC 10%以上。初年度の実績は4.4%で、目標の半分にも届いていない。有報はこの未達を隠さず書いている。
環境面の目標も同じ構図だ。2027年のCO₂排出量削減は50%が目標で、実績は43.6%である。
計画の基本方針は「再興」と「進化」だ。再興は、Project 10という収益性改善活動で、稼ぐ力を取り戻すことを指す。「新しく作る」ではなく「取り戻す」と書く点に、かつては出せていた水準という認識が表れている。
進化は、動きを制御する技術「モーションコントロール」を、電動化・インテグレーション・データ活用で「スマートモーションコントロール」へ発展させることだ。
28卒が入社する2028年は、この計画が終わった直後にあたる。
逆質問に使える。「ROIC 10%以上に対し初年度は4.4%でした。2027年度までに最も効く打ち手は何ですか」と聞ける。志望動機では「稼ぐ力を取り戻す局面に加わりたい」と言える。
1-2. 油圧機器の70%を譲渡し、自動ドアは買い増す
2025年7月、ナブテスコは油圧機器事業を新設の子会社に移した。その株式の70%をイタリアのComer Industries社へ譲渡することを決め、2026年1月1日に完了した。
30%は手元に残す。完全撤退でも継続でもない、中間の選択だ。
油圧機器は建設機械のショベルなどを動かす部品で、精密減速機とは顧客も技術も違う。会社はROICを軸に、事業の組み合わせを見直している。
増やす側もある。子会社のGilgen Door Systems社が、豪州のAccess Entry社の持ち株比率を33%から80%に引き上げた。いずれも自動ドアの領域だ。
自前の投資も続く。2026年12月期の設備投資計画は125億円で、中心は精密減速機の生産能力の増強だ。
逆質問に使える。「油圧機器事業を全部売らず、30%を残された狙いは何ですか」と聞ける。志望動機では、精密減速機への投資を根拠に挙げられる。
1-3. 2025年12月期の回復と、2026年12月期の予想
営業利益207億円(+60.3%)の背景には、3つの変化がある。
油圧機器事業を除いた継続事業ベースに組み替わった。
産業用ロボット向けの在庫調整が終わった。精密減速機を含むコンポーネント事業は、売上が17.3%増え、営業利益は103.2%増えた。
Project 10の効果が全社に広がった。
トランスポート事業(鉄道・航空など)の営業利益は136億円で、利益の柱になっている。
2026年12月期の営業利益予想は277億円(+33.6%)だ。ここには、2025年12月期の一過性の損失がなくなる影響も含まれる。
課題指摘と逆質問に使える。「回復は在庫調整の終了に支えられた面もあります。需要が落ちても利益を守る手は何ですか」と聞ける。
1-4. リスクは「ロボット景気」「為替」「中国」
精密減速機の業績は、産業用ロボットの出荷台数に直接連動する。需要が反転すれば、同じ振れ幅で悪化するおそれが残る。
売上の約50%は海外で、為替の影響を受けやすい。
中国の売上は前期比32.4%増と好調だった。ただし対中輸出規制が広がれば、需要の構造が変わりうる。欧州は微減で、地域ごとに景気の局面が違う。
課題指摘に使える。「回復の中心がロボット向けと中国である以上、その波をどう平準化するか」を、自分の言葉で問える。
第2章 業界比較——精密減速機「日本2強」と社会インフラ事業の組み合わせ
2-1. 精密減速機は「腕のRV」と「指の波動歯車」
産業用ロボットの関節に使う精密減速機は、2タイプに分かれる。
RV減速機:大きな力に強く、ロボットの腕や基部に向く。ナブテスコの世界シェアは60%超だ。
波動歯車装置:小型・軽量で、指や手首などの小さな関節に向く。ハーモニック・ドライブ・システムズが世界トップだ。
両社は競い合うより住み分けている。腕の関節はナブテスコ、指や手首の関節はハーモニック、という設計の考え方が業界で共有されている。
志望動機に使える。「ロボットの腕を動かすRV減速機で世界シェア60%超という、替えの利きにくい立場に魅力を感じた」と言える。
2-2. 強みは「事業の分散」と「保守の収益」
ロボット向けだけでなく、鉄道・航空・自動ドアも手がける。景気の波を事業の組み合わせで和らげられる構造だ。
新幹線のブレーキ、自動ドア、プラットホームドアなど、社会インフラとの接点も多い。
鉄道・航空・舶用では、MRO(保守・修理・オーバーホール)の需要が続く。新品を売るだけでなく、点検や部品交換が長く安定した収益になる。
志望動機と課題指摘に使える。強みを挙げたうえで、「ロボット向けの波をこの分散がどこまで吸収できているか」を自分なりに問える。
2-3. 「なぜナブテスコか」を語る4つの軸
「ハーモニックでも、ファナックでも、安川電機でもなく、なぜナブテスコか」と聞かれたときの軸は4つある。
RV減速機の世界シェア60%超という立ち位置
複数の事業を持つことによる安定性
鉄道・航空・自動ドアなど、社会インフラへの貢献
Project 10と油圧機器の譲渡に表れた、集中と選択を実行する力
ロボットの小型関節ならハーモニック、ロボット完成品ならファナックや安川電機、という住み分けも押さえておく。
志望動機に使える。4つのうち自分が最も共感する1つを選び、第1章の数字(ROIC 4.4%、油圧機器の70%譲渡)とつなげて話すと、他社との違いが伝わる。
ナブテスコの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(産業用ロボット需要の中長期拡大/AIロボット(ヒューマノイド)の量産期到来/鉄道車両のグローバル需要/商用航空機・防衛航空機の需要拡大)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題と追い風——産業用ロボット需要の中長期拡大/AIロボット(ヒューマノイド)の量産期到来/鉄道車両のグローバル需要/商用航空機・防衛航空機の需要拡大
- 第3.5章 押さえておくべきナブテスコ 最新ニュース
- 第4章 内定者の正体——選考プロセスとES・面接攻略
- 第5章 職種別キャリア分析
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答例
- 第8章 やましゃんの総合評価