日立製作所(6501)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、日立製作所を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「エナジーが利益の3割」です。
有報の数字(第157期)
- 売上高
- 10兆5,868億円
- 純利益
- 8,024億円
- ROE
- 12.9%
- 従業員数(連結)
- 287,901人
- 従業員数(単体)
- 25,934人
- 平均年間給与(単体)
- 995万円
- 平均年齢
- 42.2歳
- 平均勤続年数
- 18.1年
出典:日立製作所の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
日立製作所を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、日立製作所に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは日立製作所の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社日立製作所 有価証券報告書 第157期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。同社はIFRS(国際会計基準)を採用しています。
日立製作所は、家電や空調を手放し、電力網とITを軸に会社を組み替えている最中の企業だ。
知っておきたいことは3つある。
・中期経営計画の初年度で、利益率以外の指標は目標圏内に入った。本業の利益に近い指標の売上比は12.4%で、2027年度の目標は13〜15%だ。
・利益の出どころが、人数と合わない。エナジーは連結従業員の20.3%で、5セグメント合計の利益の30.5%を稼ぐ。日立製作所の単体では、エナジーの従業員は522人にすぎない。
・事業の入れ替えを、同じ年に進めている。空調の合弁会社や家電を手放す一方、鉄道信号やAIコンサルティングを買っている。
この記事では、会社の目標、売る事業と買う事業、稼ぎ頭と人数のずれ、働く側の事実を確かめ、面接で自分の言葉で語れる形にする。
第1章 日立製作所は何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で決めた目標——利益率とROICの水準
会社は経営計画「Inspire 2027」で、デジタルを軸にした企業への変革を掲げている。最終年度は2027年度だ。目標は4つの指標で置かれている。
利益率の指標は、AdjustedEBITA率だ。AdjustedEBITAとは、売上から原価と販管費を引き、買収で生じた無形資産の償却を足し戻した、本業の利益に近い指標である。2025年度の実績は12.4%で、目標の13〜15%にあと一歩だった。ROIC(投じた資金でどれだけ稼いだかを示す割合)は、すでに目標の12〜13%に入っている。売上の成長率とキャッシュを生む力の指標も同じだ。
長期の目標は「Lumada 80-20」である。Lumada(日立のデジタル技術を使った事業の総称)の売上比率とAdjustedEBITA率に、高い水準を置いている。
28卒の入社は2028年4月だ。計画の最終年度は2028年3月に終わるため、達成か未達かが出た直後に入社する。
志望動機では、残る未達の指標である利益率を、自分がどの仕事で押し上げるかを語れる。逆質問では、目標の水準に届く道筋を聞ける。
1-2. 売る事業と買う事業を、同じ年に入れ替えた
売る側から見る。空調の合弁会社JCHの全株式を、独ボッシュに2,071億円で売った。日立建機とAstemoは持分を大きく下げ、持分法適用会社から外れる。家電事業は、新会社の株式の大半をノジマが管理する会社に譲渡する契約を、2026年4月に結んだ。
買う側では、2024年に仏タレスの鉄道信号事業を取得した。有報は、2025年にOmnicom、2026年3月にはClever Devices(米国の公共交通向けITS)の買収契約も記す。信号、監視、交通ITSと、鉄道のデジタル領域に3件が続く。同じ領域を買い重ねる型に近いが、会社は自らロールアップとは呼んでいない。
課題指摘として、売却で減る利益を買収先で埋められるかを論点にできる。逆質問では、買収後の統合を何で測るのかを聞ける。
1-3. 稼ぎ頭はエナジー——人は2割、利益は3割
エナジーのAdjustedEBITAは、前期から1,640億円増えて4,160億円になった。5セグメント合計の30.5%にあたる。連結従業員は58,547人で、全体の20.3%だ。
増益の中心は、送配電を担うパワーグリッド事業にある。大型プロジェクトが進み、受注残が売上に着実に変わった。売上の9割超は海外の顧客向けで、とくに欧州が大きい。
ただし、就活ではここに落とし穴がある。日立製作所の単体で、エナジーの従業員は522人だ。事業の担い手の大半は、日立エナジーなどのグループ会社である。
志望動機でエナジーを語るなら、本体とグループ会社の違いを理解したうえで話せる。逆質問では、本体の若手がエナジーにどう関われるかを聞ける。
1-4. 働く側の事実——単体は連結の1割弱、勤続は18.1年
連結従業員は287,901人で、提出会社(日立製作所の単体)は25,934人だ。単体は連結の9.0%にあたる。
単体の平均年齢は42.2歳、平均勤続年数は18.1年である。平均年間給与は994万9,714円で、賞与と基準外賃金を含む。
新卒採用では、内定時点で職種と配属ポジションを明確にする「ジョブマッチング型採用」を入れている。内定者アンケートでは、9割以上が職務内容との適合を実感したと答えた。
志望動機では、28万人のグループのどの事業で働くかを自分の言葉で語れる。逆質問では、内定時に決まる職務を、入社後にどう広げられるかを聞ける。
第2章 社会インフラ事業の収益構造
2-1. 納めて終わりにせず、納めたあとで稼ぐ
日立が目指すのは、鉄道・変電設備・昇降機などを納めて終わる商売ではない。納めた機器やシステムを「デジタライズドアセット」と呼び、そこから集めたデータをAIで分析して、サービスとして売る。有報は、この循環を「Lumada 3.0」と説明する。
代表例が、AIで社会インフラを革新するソリューション群「HMAX」だ。2024年に鉄道事業者向けで生まれ、エネルギーや製造、ビルの保守へ広がった。当期の売上は約3,000億円、AdjustedEBITA率は20%以上に達した。全社の水準を大きく上回る。
HMAXは、継続的に価値を提供するリカーリング型(継続課金型)のサービスだと有報は説明する。納めた機器が増えるほど、続けて売れる土台が広がる構造だ。
志望動機では、機器を売るだけでなく、納入後のデータで稼ぐ構造を選ぶ理由にできる。課題指摘として、HMAXを全社の利益率にどこまで波及させるかを論点にできる。
2-2. 4つのセクターは、稼ぎ方がそれぞれ違う
日立の事業は、4つのセクターに分かれる。デジタルシステム&サービス(DSS)、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズ(CI)だ。
DSSは、システム構築、クラウド、ソフトウェアなどを手がけ、利益率は15.3%と4つの中で最も高い。エナジーは、受注した大型プロジェクトを売上に変えていく事業だ。モビリティは鉄道で、買収した事業の統合費用がかかり、利益率は8.2%と最も低い。
CIは、昇降機、産業機器、半導体の計測装置など、種類の違う製品の集まりだ。
志望動機では、どのセクターの稼ぎ方に自分を重ねるかを語れる。逆質問では、利益率が最も低いモビリティの引き上げ策を聞ける。
2-3. 売上の6割超は海外——6つの地域で自律的に動く
日立の売上収益に占める海外の比率は63%で、前期より2ポイント上がった。最も大きい海外地域は欧州で、エナジーとモビリティの伸びが支えた。
会社は世界を、米州、EMEA、APAC、インド、日本、中国の6極に分け、地域ごとに成長分野を決める「グローバル自律分散型経営」を掲げる。工場を現地につくり、調達先を分散して、関税や紛争の影響を抑える狙いだ。米国の相互関税の影響は、第3章で金額を確かめる。
志望動機では、地域ごとに事業機会を探る経営のもとで働く意味を語れる。課題指摘として、関税や地政学の影響を、現地調達でどこまで抑えられるかを問える。
日立製作所の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(利益の質/エナジーへの傾斜と関税・地政学/のれん/伸びていない二つの事業)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
■この会社の面接で落ちる人の共通点
「日立は総合電機メーカーなので、幅広い事業に関われると思いました」と言ったあとに、面接官から「家電も空調も手放しています。いま利益の約3割を稼ぐエナジーは、日立製作所の単体では522人ですが、どの事業で働きたいですか」と返されて、言葉が止まる。第4章では、この止まり方を3パターンに分けて、どこで差がつくかを書いた。
■逆質問の1本目だけ、ここに置いておく
「エナジーは連結で58,547人、5セグメント合計の利益の30.5%を占めます。日立製作所の単体では522人ですが、新卒が本体に入った場合、エナジーの事業にどう関われるのでしょうか。」
この質問を作るのに必要な数字は、連結の人数と、単体の人数の2つだ。残り6本は、利益率13%への道筋、売却益に頼らない利益、のれん、買収後の統合、HMAXの広がり、関税の影響を、それぞれ同じ型で組んである。
ここまでが無料パートです。2025年度のAdjustedEBITA率は12.4%で、目標の13〜15%にあと一歩。エナジーは連結従業員の20.3%で利益の30.5%を稼ぎ、日立製作所の単体では522人。売上の63%は海外で、平均年間給与は994万9,714円(+3.5%)——日立製作所の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 社会インフラ事業の構造的課題——利益の質/エナジーへの傾斜と関税・地政学/のれん/伸びていない二つの事業
- 第3.5章 面接前に押さえる日立製作所の最新ニュース10本——第1四半期の過去最高、通期予想の上方修正、自己株式5,000億円まで。1本ごとに「面接で使うなら」
- 第3.6章 数字で補足——5期の推移・セグメント別の利益と人員・ROEの分解・財務・株主還元・リスク要因
- 第4章 内定者の正体——「総合電機メーカーで幅広く働きたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年間給与994万9,714円の読み方と、セクター別の人員
- 第6章 働く環境の現実——勤続18.1年の読み方、女性役員比率16%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本(それぞれの狙いつき)
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生