アンリツ(6754)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、アンリツを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「第1四半期の受注が前年の1.95倍。第100期を迎えた計測器メーカーに、AIの追い風が来た」です。
有報の数字(第100期)
- 売上高
- 1,175億円
- 純利益
- 117億円
- ROE
- 9.1%
- 従業員数(連結)
- 4,114人
- 従業員数(単体)
- 1,734人
- 平均年間給与(単体)
- 784万円
- 平均年齢
- 46.1歳
- 平均勤続年数
- 21.3年
出典:アンリツの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
アンリツを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、アンリツに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはアンリツの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、アンリツ株式会社 有価証券報告書 第100期(2025年4月1日-2026年3月31日)、および2027年3月期第1四半期決算短信(2026年7月30日公表)に基づきます。
結論:アンリツは、AI向けデータセンターの通信を測る装置に賭けた会社であり、その注文が前年同期の1.95倍に増えている。
知っておきたいことは3つある。
受注高とは、顧客から受けた注文の金額だ。2026年4〜6月は約491億円で、前年同期比+95.0%だった。まだ納めていない注文(受注残高)は約604億円で、+69.1%である。
主力の通信計測事業は、減収なのに営業利益が+28.7%増えた。在庫とコストを絞ったためだ。
平均年齢は46.1歳、平均勤続は21.3年である。長く働く人が多い会社だ。
この記事では、会社が何に賭け、その賭けが数字にどう出て、どんな商売の仕組みで成り立つのかを確かめる。
第1章 アンリツは何に賭けているのか
1-1. 3つの賭け——データセンター、規格の世代交代、EV/電池
アンリツは、通信を測る計測器を作る会社だ。スマートフォンの電波や光ファイバーの速度が規格どおりか、それを確かめる装置を売っている。
売上の柱は通信計測事業で、全体の58.6%を占める。次いで、食品・医薬品向けの検査機を作るPQA事業が26.4%だ。
1つ目の賭けは、データセンターの高速化である。決算短信は「800GEネットワークへの更新が本格化」と書く。「1.6TE向け光トランシーバーの開発も進展」ともある。800GEと1.6TEは通信速度の規格名で、数字が大きいほど速い。光トランシーバーは、光と電気の信号を変換する部品だ。
2つ目は、規格の世代交代である。PCIe(Gen6、7)、Wi-Fi 7、6Gなどが並ぶ。新しい規格ができるたびに、それを測る装置が要る。
3つ目は、EV/電池である。中期経営計画「GLP2026」の重点開拓領域のひとつだ。2025年10月21日に、オーストリアの電力計測器メーカーDEWETRON GmbHをグループに加えた。
志望動機に使える。「AIで通信量が増えるほど、測る装置が必要になる点に魅力を感じた」と語れる。
1-2. 受注が1.95倍になった——28卒が入る頃には何が起きているか
製造業では、売上より先に受注高を見る。注文が先にあり、売上は後から付いてくるからだ。
2026年4〜6月の受注高は約491億円だった。前期の通期受注、約1,246億円の39.4%を、3か月で受けた計算になる。受注残高は約604億円ある。
一方、同じ期間の売上は+38.0%にとどまった。注文の伸びに、売上がまだ追いついていない。
会社の通期予想は、売上1,400億円(+19.2%)だ。28卒が入社する2028年4月は、GLP2026の次の計画が動く時期にあたる。いま積み上がった受注が、売上になり終えた後である。
逆質問に使える。「受注の山を越えた後、次の成長を何で作る計画か」と聞ける。
1-3. 通信計測は減収なのに、営業利益が28.7%増えた
2026年3月期の通信計測事業は、売上が1.9%減った。それでも営業利益は28.7%増えた。
理由は決算短信にある。「棚卸資産の圧縮やコストコントロールを継続して進めたことにより収益性が改善しました」。棚卸資産とは在庫のことだ。
需要を待つ間に、コスト構造を絞った。そこへ2026年4〜6月の需要が乗り、営業利益は前年同期の2.5倍近くになった。
一方、環境計測事業は増収減益だった。売上は買収の効果で26.2%増えたが、営業利益は5.5%減った。国内のEV/電池向け試験で、顧客の投資が先に延びたためだ。
課題指摘に使える。「EV/電池の賭けは、まだ利益に出ていない。そこで貢献したい」と言える。
1-4. PQA事業という、通信とは別の商売
PQAは、食品・医薬品の重さや異物を調べる検査機の事業だ。売上は+9.9%で伸びた。
決算短信は需要の背景をこう書く。「食品メーカーの人手不足を背景に、…自動化、省人化に係る投資が行われており、需要が継続しています」。計量制度の改正も追い風になっている。
2026年4〜6月も好調で、北米では食肉市場を中心にX線検査機の需要を得た。通信の波とは別の理由で売れている。
志望動機に使える。「通信一本ではなく、別の波を持つ事業構成に安定感を感じた」と語れる。
1-5. 働く側の事実——長く勤める人が多い会社
連結従業員数は4,114人で、うち通信計測が2,469人だ。単体では1,734人である。
平均年齢は46.1歳、平均勤続は21.3年。この記事で扱ってきた11社のなかで、どちらも最も高い。平均年間給与は約784万円で、前年度より7.3%増えた。
25歳前後で入って、そのまま21年勤める。それが平均像である。
逆質問に使える。「長く働く先輩が多いなか、若手には何を期待するか」と聞ける。
第2章 計測器メーカーの収益構造
2-1. 規格が変わるたびに、装置が要る
通信計測の収益源は、規格の世代交代だ。新しい規格ができると、3つの段階で装置が要る。
標準化・研究開発:規格を決める側、チップを作る側が測る
開発・量産:機器メーカーが、規格どおり動くかを測る
敷設・保守:通信会社や工事業者が、現場で測る
決算短信を見ると、800GEは「更新が本格化」で量産段階にある。1.6TEは開発段階、6Gは「仕様についての議論も始まり」で標準化段階だ。
ただし、世代交代が止まれば需要も止まる。5Gについて決算短信は「5Gスマートフォン市場が成熟しつつあります」と書く。
課題指摘に使える。「6Gの次の需要が来るまでの谷間を、どう埋めるか」と問える。
2-2. 受注残高という先行指標
受注残高とは、注文を受けて、まだ納めていない分だ。将来の売上そのものである。
約604億円は、通期予想の売上1,400億円の43.2%にあたる。期初の時点で、通期売上の4割強がすでに手元にある。
2026年4〜6月は、受注高に対して売上が約165億円少なかった。その差が、そのまま残高に積み上がった。注文は来ているが、納めるのが間に合っていない。通期予想が据え置かれたのは、生産能力の制約を織り込んでいる可能性がある。
逆質問に使える。「増えた受注に対し、生産と納期をどう整える計画か」と聞ける。
2-3. 「測る」でつながる3つの波
電波の強さも、食品の重さも、異物の有無も、「精密に測る」技術の応用だ。だから、通信とPQAが同じ会社にある。
3つの事業は、それぞれ別の波に乗っている。
通信計測:通信規格の世代交代とデータセンター投資
PQA:食品工場の人手不足と制度改正
環境計測:EV/電池の投資動向
2026年3月期は、通信計測が減収でも、PQAと環境計測が増収で支えた。波が別々に動くため、全体では5期連続で増収となった。
志望動機に使える。「測る技術を軸に、複数の需要を持つ点に惹かれた」と語れる。
アンリツの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(顧客の投資判断に、すべてが左右される/5Gの成熟と、6Gまでの空白/資本効率という積み残し/平均年齢46.1歳という組織)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。第1四半期の受注高が前年同期比+95.0%、受注残高が+69.1%となり、通期売上予想1,400億円の43.2%にあたる604億円を抱えていること。主力の通信計測事業が減収(△1.9%)でも棚卸資産の圧縮とコストコントロールで営業利益を+28.7%伸ばし、その体質のまま需要が来て第1四半期の同事業利益が+148.7%になったこと。ROEが7.4%から9.1%へ戻った中身と、持分比率76.6%という構造。そして第100期の記念配当。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 計測器業界の構造的課題——顧客の投資判断に、すべてが左右される/5Gの成熟と、6Gまでの空白/資本効率という積み残し/平均年齢46.1歳という組織
- 第3.5章 面接前に押さえるアンリツの最新ニュース10本——受注高95.0%増、DEWETRON買収、第100期の記念配当まで
- 第4章 内定者の正体——「通信に興味があります」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収7,838,000円の読み方と、連結4,114人・単体1,734人の組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続21.3年の読み方、女性役員比率11.1%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生