アズビル(6845)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、アズビルを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「最高益でも純利益減」です。
有報の数字(第104期)
- 売上高
- 2,989億円
- 純利益
- 386億円
- ROE
- 15.7%
- 従業員数(連結)
- 9,170人
- 従業員数(単体)
- 5,143人
- 平均年間給与(単体)
- 918万円
- 平均年齢
- 46.0歳
- 平均勤続年数
- 19.8年
出典:アズビルの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
アズビル(あずびる)は、知名度は低いが、直近決算で営業利益が過去最高になった会社だ。
知っておきたいことは3つある。
事業の中身。 ビルの空調やセキュリティを自動制御する「ビルディングオートメーション」で国内最大手のBtoB企業だ。前身は1906年創業の山武商会で、2026年に創業120周年を迎える。
直近決算のねじれ。 売上高は2,989億円(前期比0.5%減)、営業利益は473億円(14.0%増)だった。一方、純利益は385億円(5.8%減)に減った。この理由を説明できるかが、理解度の最初の関門になる。
会社が掲げた目標。 営業利益率15.8%、ROE15.7%は、会社が掲げた目標をすでに上回っている。ROEとは、株主のお金でどれだけ純利益を出したかを示す割合だ。
この記事では、アズビルが何に賭けていて、どこに課題があるかを、面接で自分の言葉で語れる形で確かめる。
第1章 アズビルは何に賭けているのか
1-1. 「営業利益は最高、純利益は減益」の正体
営業利益が増えたのに純利益が減ったのは、前期の特別な利益の反動だからだ。前期は海外子会社アズビルテルスターの出資持分を譲渡し(2024年10月31日付)、約76億円の売却益が出ていた。今期はその分が消え、純利益を押し下げた。
事業別に見ると、3事業のうち2つは好調だ。ビル向けのBA事業は売上高1,563億円(5.1%増)、利益率18.5%だった。工場向けのAA事業も増収増益だ。
売上高そのものは前期比0.5%減だった。それでも営業利益は、価格転嫁などの収益力強化策で伸びた。研究開発費や人件費が増えた中での増益である。
課題指摘に使える。「純利益の減益は前期の売却益の反動で、本業は伸びていると理解しています」と言えば、決算を読んだ学生として伝わる。
1-2. 長期目標のROE15%を、すでに超えている
会社自身が決めた目標は2段階ある。ROEは、株主のお金でどれだけ利益を出したかを示す割合だ。
2027年度(中期経営計画の最終年度):売上高3,400億円、営業利益510億円、営業利益率15.0%、ROE14%
2030年度(長期目標):売上高4,200億円、営業利益650億円、営業利益率15.5%、ROE15%
直近の営業利益率は15.8%、ROEは15.7%で、この2つの指標はどちらの目標も上回っている。会社も初年度の2025年度を「当初計画を上回る業績」と書いている。
それでも会社は目標を引き上げていない。有価証券報告書には、不透明な情勢が見通せるようになった段階で見直しを検討する、とある。
逆質問にできる。「ROEなどが目標を上回っていますが、見直しの判断は何を見て決めるのですか」と聞ける。
1-3. 買わずに、組んでいる
直近期のアズビルは、買収ではなく提携が目立つ。外部の技術と組んで、自社の弱い部分を補っている。
AI:2025年12月にDATAFLUCTと資本業務提携した。AIを使ったビル運用サービスを目指す。
水道:2025年7月に、デンマークのKamstrup社と水道スマートメーターで協業を始めた。同社は漏水検知のクラウドサービスに実績がある。
病院:病院施設を対象にした官民連携の省エネ事業で、2026年10月から15年間の省エネ保証サービスを始める予定だ。
M&Aは今後の投資方針として書かれているが、直近は提携が中心である。自社の技術はMEMSセンサなどを「シン・オートメーション」と名づけ、事業拡大の柱にしている。
志望動機と逆質問に使える。「買収でなく提携を選ぶのは、外部の技術は組むほうがよいというお考えですか」と聞ける。
1-4. 3事業のうち1つが3割近く減っている
ガス・水道メーターなどを扱うLA事業は、売上高が333億円と28.5%減った。セグメント利益は6億円(46.2%減)で、利益率は1.9%と低い。
LA事業の再建には、Kamstrup社との協業や、通信機能付きのスマートメーターへの切り替えなどが挙げられている。
人についても動きがある。2026年4月に、採用と育成を一気通貫で行う組織体制を整えた。2028年に入社する28卒は、中期経営計画の最終年度(2027年度)の直後に入る。計画の達成度は、入社前に答えが出ている。
リスクとしては、2026年に入って緊迫した中東情勢がある。会社は次期予想に確認できる影響を織り込みつつ、情勢次第で見直す可能性があると明記している。
課題指摘と逆質問に使える。「LA事業の立て直しに、新入社員としてどう関われますか」と聞ける。
第2章 業界比較
2-1. 売上は小さいが、利益率は高い
比較相手は、同じ計装制御・オートメーション業界の横河電機とオムロンだ。いずれも2026年3月期の数字である。
売上高:アズビル2,989億円、横河電機6,048億円、オムロン7,673億円
営業利益率:アズビル15.8%、横河電機13.6%、オムロン7.8%
売上規模は横河電機の約半分、オムロンの約4割だ。それでも営業利益率はアズビルが最も高い。
背景には、ビル・工場の制御は一度導入されると、保守・更新まで長く取引が続く点がある。価格競争に陥りにくい。
志望動機に使える。「規模より利益率で勝つ会社だと理解して志望しました」と言える。
2-2. 平均年収は横河電機とほぼ同水準
平均年収は、アズビルが918万円(平均年齢46.0歳、2026年3月期有報)だ。横河電機は927万円(平均年齢44.6歳、2025年3月期有報)で、ほぼ同水準である。
比較した決算期が1年ずれている点には注意したい。
働く側の事実として押さえたい。年収を志望動機の主軸にせず、長く働く前提の安定性の裏づけとして話すのが安全だ。
アズビルの構造的課題と追い風は、第3章(有料パート)で扱う。
ここまでが無料パートです。営業利益は過去最高の473億円(前期比14.0%増、利益率15.8%)を更新した一方、純利益は前期の特別利益の反動で5.8%減。この「増益なのに減益」というねじれをどう説明するかが、選考突破の分かれ目になります。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 オートメーション業界の構造的課題——構造的課題と追い風
- 第3.5章 面接前に押さえるアズビル最新ニュース10本——パーパス制定・IFRS適用・海外拠点新設・AI活用まで
- 第4章 内定者の正体——選考プロセス、ES「なぜアズビルか」の組み立て、逆質問のレベル別、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——年収と平均像、市場価値とセカンドキャリア
- 第6章 働く環境の現実——数字で見る組織、注意点、福利厚生
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答テンプレートと逆質問例
- 第8章 やましゃんの総合評価——投資視点×就活視点