フェローテック(6890)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、フェローテックを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「売上は5期で2.16倍。ROEは26.9%から6.0%になった。」です。
有報の数字(第46期)
- 売上高
- 2,889億円
- 純利益
- 149億円
- ROE
- 6.0%
- 従業員数(連結)
- 16,858人
- 従業員数(単体)
- 519人
- 平均年間給与(単体)
- 670万円
- 平均年齢
- 42.4歳
- 平均勤続年数
- 10.4年
出典:フェローテックの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
フェローテックを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、フェローテックに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはフェローテックの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社フェローテック 有価証券報告書 第46期(2025年4月1日-2026年3月31日)、および2026年12月期第1四半期決算短信(2026年8月14日公表)に基づきます。
結論から言う。フェローテックは、半導体の部材と中国・マレーシアの工場に大きく賭けており、売上は伸びたが、投資の回収はまだ途中である。
知っておきたいことは3つある。
売上は5期で2倍超になった。一方、ROE(株主のお金に対し、どれだけ利益が出たかを示す割合)は大きく下がった。
本業のもうけを示す営業利益は増えた。だが、最終的な利益である当期純利益は減った。
2026年6月に、決算期を3月から12月へ変えた。2026年12月期は9か月だけの変則決算になる。
この記事では、この3点がなぜ起きたのかを、会社が毎年出す公式の報告書(有価証券報告書。以下「有報」)の記述で確かめる。
第1章 フェローテックは何に賭けているのか
1-1. 何を作る会社か——半導体の部材と、熱を操る部品
フェローテックは、半導体の製造装置に入る部材と、熱を制御する電子部品を作る会社である。祖業は「真空シール」だ。回転する軸を通しながら、真空を保つ部品である。半導体の製造装置は真空の中で動くため、この部品が要る。
事業は4つに分かれる。中心は半導体等装置関連で、石英やセラミックスの部材などを扱う。次に電子デバイスがあり、電気を流すと片面が冷える熱電素子を作る。この素子は、データセンターの光トランシーバー(光信号と電気信号を変換する部品)の熱対策に使われる。残りは車載関連と、その他である。
有報は、経営戦略の第一に製造ラインの増設を挙げている。需要が強い部材を増産し、新しい素材の開発も進める方針だ。
志望動機で「需要の強い部材の増産と素材開発に賭ける会社だから」と理由にできる。
1-2. 賭けの規模——5期で約2,970億円を投じた
この会社が本気だと分かるのは、投資の額である。5期の投資額(設備などに使った金額)は、合計で約2,970億円になる。その原資は借入だ。
建てている場所も有報に明記されている。中国では30年来、量産拠点をつくってきた。ここに加えて、マレーシア北部のクリム第2工場が2026年から稼働を始める。中国でも、北京・合肥・紹興・武漢の工場建設を進めている。つまり5か所が同時に動いている。
志望動機では「拠点の立ち上げ期に働ける」点を挙げられる。逆質問では「5か所は、どの順で収益に出る計画か」と聞ける。
1-3. ROEが下がった理由——資産が先に増え、利益は少数株主にも分かれる
ROEが下がった理由は、大きく2つある。
1つ目は、資産が先に増えることだ。総資産は886億円増えたが、売上の伸びは5.3%にとどまった。工場を建てれば資産は先に増え、売上はその後についてくる。
2つ目は、非支配株主持分の存在である。これは、子会社の株式のうち親会社が持っていない部分を指す。純資産3,620億円のうち、自己資本は2,588億円だ。差の部分は、非支配株主持分などである。
中国の拠点を現地の少数株主と組んで作ってきたため、資産は連結に全額が乗る。しかし利益の一部は少数株主に分かれる。有報も、税金と非支配株主への配分が当期純利益に効いたと読める構成だ。
課題指摘で「ROEの低下は、投資が先行したことと、利益が少数株主にも分かれることが理由」と語れる。逆質問では「工場が稼働すれば、ROEは戻る見通しか」と聞ける。
1-4. 4事業は同じ方向を向いていない
4事業は、それぞれ違う方向に動いている。
半導体等装置関連が、売上の64.1%を占める本体である。電子デバイスは、売上構成比こそ小さいが、営業利益率が18.2%と際立って高い。生成AI向けのサーバー投資を背景に、光トランシーバーメーカー向けが伸びた。
一方、車載関連だけは営業利益が25.1%減った。EV市場が調整局面にあり、熱電素子も基板も販売が減ったためだ。
同じ熱電素子が、データセンター向けでは追い風、EV向けでは逆風になっている。
志望動機では「AI向けの伸びに関わりたい」と言える。課題指摘では「車載の落ち込みをどう補うか」を論点にできる。
1-5. 中期計画は毎年作り直す——決算期変更と株主還元
この会社の中期経営計画は、ローリングプランである。毎年、3年先までを見直して公表する方式だ。現時点の計画は、2026年12月期から2028年12月期までを対象とする。売上高、営業利益、当期純利益、ROEなど6つの指標を掲げ、進み具合も外部に公表している。
株主還元では、DOEを新たに採用した。DOEとは、株主のお金に対して何%を配当するかを示す指標だ。会社は下限を3.5%に設定した。2026年12月期の年間配当は、前期の148円に対し、200円を予想している。
2026年6月26日には、決算日を3月31日から12月31日へ変更した。中国の子会社はもともと12月決算だったため、グループ全体の期末がそろう。28卒の入社は2028年4月で、計画の最終年度の途中にあたる。
逆質問で「6つの指標のうち、2028年12月期に最も重視するのはどれか」と聞ける。決算期の変更を「数字の見通しを立てやすくする判断」と捉えて語ってもよい。
第2章 半導体部材メーカーの収益構造
2-1. 連結16,858人に対し、単体は519人
従業員数の構成は、この会社の大きな特徴だ。グループ全体の連結従業員数は16,858人だが、日本の提出会社は519人にすぎない。生産のほぼ全部が海外子会社にあるからだ。
単体519人のうち、装置関連が390人を占める。日本で採用された人の多くは、設計、開発、営業、そして海外拠点のマネジメントに関わることになる。日本にいる少数の人員が、世界の拠点を動かす構造である。
志望動機で「海外拠点を動かす側に立ちたい」と語れる。逆質問では「日本と海外拠点の人の行き来は、どのくらいあるか」と聞ける。
2-2. 減価償却費274億円という重さ
減価償却費とは、設備の購入費用を使う年数で分けて、毎年の費用にしたものだ。この期は274億円で、営業利益の275億円とほぼ同額だった。
設備は、稼働を始めた時点から償却が始まる。売上が追いつくまでは、利益が圧迫される。第1四半期の決算短信にも、新工場の建設に伴う固定費の負担があったと書かれている。それを、工場稼働率の向上と製品構成の改善で吸収したという。
この綱引きが、いまの損益を決めている。
課題指摘で「稼働率を上げて償却を吸収できるかが、利益を伸ばす焦点」と語れる。自分の貢献を「工場の立ち上げと稼働率の改善」に結びつける材料にもなる。
2-3. 「その他」が赤字に転落した
4つ目の区分である「その他」は、約3億円の営業損失になった。前期は利益が出ていた。中身は、ソーブレード、工作機械、太陽電池用シリコン製品などである。工作機械と太陽電池用シリコン製品が、いずれも減収だった。
太陽電池向けの不振は、装置関連にも及んでいる。石英坩堝(原料を溶かす容器)が、太陽光パネルメーカー向けの出荷抑制で減収になった。
有報は、もう一つの苦戦も書いている。CVD-SiC製品が、「中国工場立上げの難航」で減収となったという。5か所で同時に工場を建てる中で、個別の遅れが出ていることを会社自身が開示している。
課題指摘で「太陽電池向けの縮小と、中国工場の立ち上げ遅れが、利益の重しになっている」と語れる。逆質問では「難航した中国工場の立ち上げは、どう改善したのか」と聞ける。
フェローテックの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(売上は伸びたが、株主に帰属する利益は伸びていない/中国への集中/EV市場の調整が続いている/平均年収が前年比20.8%下がった)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上が5期で2.16倍になりながらROEが26.9%から6.0%へ落ちた理由が、5期2,970億円の投資、156億円増えた非支配株主持分、そして2,175億円の借入調達にあること。営業利益+14.4%なのに当期純利益△5.1%となる構造。4つの事業のうち電子デバイスが利益率18.2%で伸び、車載関連だけがEV調整で25.1%減ったこと。そして2026年6月に決算期を3月から12月へ変更し、第1四半期が変則決算になっていること。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 フェローテックが抱える構造的課題——売上は伸びたが、株主に帰属する利益は伸びていない/中国への集中/EV市場の調整が続いている/平均年収が前年比20.8%下がった
- 第3.5章 面接前に押さえるフェローテックの最新ニュース10本——決算期変更、DOE3.5%の導入、マレーシア新工場まで
- 第4章 内定者の正体——「半導体の成長市場で働きたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——連結16,858人・単体519人という構造でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続10.4年の読み方、女性役員比率16.7%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生