レーザーテック(6920)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、レーザーテックを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「営業利益率46%」です。
有報の数字(第63期)
- 売上高
- 2,515億円
- 純利益
- 847億円
- ROE
- 46.9%
- 従業員数(連結)
- 1,163人
- 従業員数(単体)
- 516人
- 平均年間給与(単体)
- 1,681万円
- 平均年齢
- 40.1歳
- 平均勤続年数
- 8.3年
出典:レーザーテックの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
レーザーテックは「減益予想の会社」ではなく、「利益は谷にあり、受注は山へ向かう会社」と読むのが正確だ。
知っておきたいことは3つある。
今期の通期予想は、営業利益1,000億円(前期比▲18.6%)の減益だ。だが2026年4月30日発表の9カ月累計では、純利益が568億円(前年同期比+7.8%)で、同じ期間としては過去最高だった。
会社は同じ日に、今期の受注見通しを引き上げた。今期2度目の上方修正である。受注は、装置の注文を受けた金額のことだ。
この会社は、最先端の半導体づくりに使うEUV(極端紫外線)向けに、マスク(回路の原版)の検査装置で世界シェア100%を持つ。9カ月累計の営業利益率は46.1%で、会社が掲げる下限の目標(20%以上)を大きく上回る。
この記事では、「減益予想」の裏で会社が何に賭け、どこにリスクがあるのかを、面接で語れる形に整理する。
第1章 レーザーテックは何に賭けているのか
1-1. 目標は「営業利益率20%以上」——不況期に守る下限
有価証券報告書(会社が年に一度出す公式の報告書)に書かれた経営目標は、営業利益率20%以上だけだ。営業利益率は、売上のうち本業で残る利益の割合である。売上高の目標は書かれていない。
特徴は目標の置き方にある。報告書は「市場縮小に見舞われた状況下でも営業利益率20%以上を堅持」と書く。好況期の目標ではなく、不況期に守る下限だ。顧客である半導体メーカーの投資には、数年周期の波がある。
守る目的も明記されている。成長投資を続けられる事業基盤をつくるためだ。利益率を守ることで、不況期にも研究開発を止めない狙いがある。
計画は2025年6月期から2030年6月期の6カ年だが、毎年見直される。28卒が入社する2028年は、その中盤にあたる。入社時の計画は、今のものとは違っているはずだ。
経営理念は「世の中にないものをつくり、世の中のためになるものをつくる」である。
逆質問に使える。「目標は20%以上で、直近の実績は46%台です。この差の部分を、どう使う方針ですか」と聞ける。
1-2. 工場も買収もなく、ニッチ市場だけを狙う
報告書には「重要な設備の新設、除却等の計画はありません」とある。買収の記述も見当たらない。この会社が賭けているのは、市場の選び方だ。
狙うのは、「大手企業が参入しにくいサイズ」で、かつ「中小企業には参入が困難」なニッチ市場である。大手には小さすぎ、中小には技術が難しすぎる領域だ。主力は、半導体の回路の原版であるマスクに欠陥がないかを調べる装置だ。回路が細かくなるほど欠陥も小さくなり、光で見つける技術が要る。
引き際も書かれている。採算を維持できない製品は、「撤退・売却も視野に速やかにテコ入れ」する。利益率を守るには、儲からない製品を抱え続けられないからだ。
中期経営計画の取り組みには、「人材採用の強化と職場環境の整備」も入っている。装置は受注してから作る。注文が急に増えると、作る人も保守する人も足りなくなる。
志望動機では、市場の選び方を会社の賭け先として語れる。逆質問では、「ニッチが大きくなり大手が入ってきたとき、どう対応されますか」と聞ける。
1-3. 今期は「利益の谷」と「受注の山」
通期予想の減益は、1-1の目標から見れば、下限を大きく上回ったままの減益だ。その一方で、受注の見通しは上向いている。
受注見通しは、期初の1,700億〜2,200億円から、4月30日に2,000億〜2,400億円へ引き上げられた。理由として、新型の検査装置ACTIS A200HiTの受注獲得などが挙げられている。
装置は、受注から売上になるまでに時間がかかる。そのため、今期の利益は過去の受注の谷を映している。受注の上方修正は、来期以降の山を先取りしているといえる。
ただし、冷静に見るべき点もある。9カ月累計の純利益が伸びたのは、営業外の収支が改善したためだ。前年同期の為替差損41億円が、今期は為替差益に変わった。本業の営業利益は前年同期比で▲1.4%と、ほぼ横ばいだった。
志望動機では、「受注が上向いている」ことを根拠にできる。課題指摘では、「純利益の伸びは為替の影響が大きく、本業は横ばい」と、一歩踏み込んで話せる。
1-4. 装置は減速、サービスが伸びる——ただし顧客は偏る
9カ月累計で、半導体関連装置の売上は前年同期比▲6.7%と減った。一方、保守やアップグレードなどのサービスは420億円(同+35.5%)に伸びた。納めた装置が使われ続ける限り、収益が入る仕組みだ。装置販売の波をやわらげる役目を持つ。
地域別では、台湾向けが前年同期比▲43.8%と急減した。韓国向けは+69.3%と急伸している。売上が特定の顧客や地域に左右されやすいことがわかる。
課題指摘に使える。「サービスの比率をさらに高める考えはありますか」「顧客や地域の偏りを、どう見ていますか」と聞ける。
1-5. 押さえておきたいリスク
リスクは主に3つある。
地政学:2026年4月、米下院に対中の半導体輸出規制を同盟国にも合わせる新法案が出された。合わせられなければ、米国が単独で対中国向けの装置輸出を全面禁止する内容も含む。
為替:売上の海外比率が極めて高い。円高方向への振れは、業績に直接影響する。
競合:KLA(米)の参入が探られている。業界専門家は、開発が大幅に遅れ、2027年頃まで独占が続くと見る。
仙洞田哲也社長は、競争優位の本質を「2019年のACTIS投入以来の量産ノウハウ」と述べている。
課題指摘に使える。「競合が参入したとき、量産ノウハウ以外に何で優位を守りますか」と、社長の発言を引いて聞ける。
第2章 業界比較——半導体製造装置業界の中の異次元ポジション
2-1. 営業利益率は東京エレクトロン・ディスコを上回る
本業の利益率を並べる。レーザーテックは46.1%(9カ月累計)だ。ディスコは42.3%、東京エレクトロンは25.6%である(ともに2026年3月期)。
ディスコは6年連続で最高益を更新中の会社だ。レーザーテックは減益局面にありながら、その水準を上回っている。保守のような継続収益を持つ会社は、利益率が高くなりやすい。東京エレクトロンは売上が過去最高でも、研究開発費が増えて営業利益は減った。同じ業界でも、今どの局面にいるかは会社ごとに違う。
志望動機に使える。同業の利益率を並べたうえで、差が生まれる理由を自分の言葉で話せる。
2-2. 「なぜこの会社か」と聞かれたときの答え軸
「なぜ東京エレクトロンでもディスコでもなく、レーザーテックか」と問われたときの軸は4つある。
EUV向けのマスク検査という単一の領域で、世界シェア100%を持つ。
装置の生産を協力会社に任せる(ファブレス)ため、利益率が高い。
ASMLとは「対」の関係にあり、EUVの仕組みの片翼を担う。
装置販売とサービスの組み合わせで、業績の質が安定しやすい。
業界内の住み分けは次のとおりだ。幅広い工程に関わりたい人は東京エレクトロン、後工程を極めたい人はディスコ、EUVの検査に特化したい人はレーザーテックである。
志望動機の骨格にそのまま使える。自分がどの住み分けを選ぶのかを一言で言い切ると、答えが締まる。
レーザーテックの構造的課題と追い風は、5つに分けて第3章で扱う(高NA EUVへの世代交代——ACTIS A300・A200HiTが担う次の成長エンジン/生成AI・HBM需要の継続/地政学リスクの構造化/受注のリードタイム構造/中期経営計画——2030年6月期に売上高4,000億〜5,000億円、営業利益率35%以上)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。3Q累計営業利益率46.1%・四半期純利益は同期間として過去最高、それでも通期は減益予想という一見矛盾した数字の裏で、通期受注見通しは2度連続で上方修正(1,700億〜2,200億円→2,000億〜2,400億円)されています。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題と追い風——高NA EUVへの世代交代——ACTIS A300・A200HiTが担う次の成長エンジン/生成AI・HBM需要の継続/地政学リスクの構造化/受注のリードタイム構造/中期経営計画——2030年6月期に売上高4,000億〜5,000億円、営業利益率35%以上
- 第3.5章 面接前に押さえるレーザーテック最新ニュース10本——受注上方修正・地政学リスク・新製品・自己株買い・人的資本データまで
- 第4章 内定者の正体——選考フロー、ES「なぜレーザーテックか」の組み立て、面接で見られる資質
- 第5章 職種別キャリア分析——初任給と年収カーブ、配属先、セカンドキャリアの市場価値
- 第6章 働く環境の現実——離職率1.4%・女性管理職比率の課題まで数字で見る組織
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ志望動機と逆質問例
- 第8章 やましゃんの総合評価——5軸スコアリングと向き不向き