日本電子(6951)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、日本電子を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「医用機器事業を売却した」です。
有報の数字(第79期)
- 売上高
- 1,794億円
- 純利益
- 221億円
- ROE
- 15.7%
- 従業員数(連結)
- 3,731人
- 従業員数(単体)
- 2,313人
- 平均年間給与(単体)
- 858万円
- 平均年齢
- 44.6歳
- 平均勤続年数
- 15.9年
出典:日本電子の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
日本電子(JEOL)は、電子顕微鏡で世界大手の理科学・計測機器メーカーだ。本社は東京都昭島市にある。
日本電子は、利益の薄い医用機器事業を手放し、半導体とライフサイエンスに賭ける会社へ変わった。
知っておきたいことは3つある。
2026年3月期は、売上高が1,793億円(前期比8.8%減)、営業利益が260億円(26.7%減)だった。営業利益とは本業のもうけのことだ。それでも純利益は221億円で、過去最高を更新した。
2026年4月1日付で、医用機器事業をシスメックスへ譲渡した。会社は2029年度までに、売上高営業利益率を21.5%に上げる目標を掲げている。2026年3月期の実績は14.5%だった。
顧客が大学・研究機関・メーカーのBtoB企業で、就活生には知られにくい。ただし平均年間給与は857.5万円で、従業員数は3,731人。働く側の数字は具体的に確認できる。
この記事では、この3点を根拠に、面接で「なぜ日本電子か」を自分の言葉で語れるかを確かめる。
第1章 日本電子は何に賭けているのか
1-1. 医用機器を手放し、2つの分野に絞った
日本電子は、2026年4月1日付で医用機器事業をシスメックスへ譲渡した。シスメックスは、血液や尿の検査機器で世界的な地位を持つ会社だ。これで3つあった事業は、理科学・計測機器事業と産業機器事業の2つになった。
手放した事業は、利益がほとんど出ていなかった。医用機器の営業利益率は0.4%で、前期の4.3%から急に下がっていた。
会社が重点領域に置くのは、半導体とライフサイエンスだ。市場の成長が見込まれ、自社のニッチな技術が活きる分野だからである。同業を買い集める動きではなく、売って絞る動きだと言える。
戦略の名前は「YOKOGUSHI 2.0」だ。電子顕微鏡、質量分析計、NMR(核磁気共鳴装置)などを、製品別ではなく分野別にまとめて提案する考え方である。
志望動機では「事業を絞る決断をした会社に将来性を感じた」と言える。逆質問では「手放す事業と残す事業は、何を基準に判断されたのですか」と聞ける。
1-2. 稼ぐ力は事業ごとに大きく違う
2026年3月期の営業利益率は、事業によって差が大きい。産業機器事業は40.2%、理科学・計測機器事業は11.2%だった。
産業機器事業は、半導体の回路の原版(フォトマスク)をつくる電子ビーム描画装置が中心だ。代わりの利かないニッチ市場で、価格を決める力が強い。売上は481億円で、前期の営業利益率は46.6%だった。
理科学・計測機器事業は売上1,163億円だ。電子顕微鏡などを大学や研究機関に納めている。中国の補正予算が一巡したことと、米国政府の科学技術予算の削減が重なり、減益になった。
産業機器事業の中でも、需要は割れている。マスク描画装置の販売台数は減った。一方、AIデータセンター向けの光トランシーバーに使うレーザーの量産需要は伸びている。
課題指摘として「利益率の高い産業機器に比べ、理科学・計測機器の利益率をどう上げるか」を提案できる。逆質問としても、そのまま使える。
1-3. 目標と現状の差は、営業利益率にある
会社は2025〜2029年度の中期経営計画「Evolving Growth 2.0」で、3つの目標を掲げた。売上高営業利益率21.5%、ROE15%以上、ROIC15%以上だ。ROEは株主のお金でどれだけ稼いだかを示す。ROICは事業に投じたお金がどれだけ利益を生んだかを示す。
ROEは2026年3月期に15.7%となり、初年度で目標を上回った。しかし営業利益率は14.5%で、前期の18.0%から下がった。目標との差は7ポイントある。ROICも12.3%で、目標に2.7ポイント届いていない。
純利益が過去最高になった理由も押さえたい。前期に投資有価証券評価損124億円を計上した反動があった。税引前の純利益は295億円で、前期の250億円から増えた。本業の力が伸びたわけではない。
2027年3月期の予想は、売上高1,640億円、営業利益265億円だ。減収でも営業利益は増える見込みで、低収益事業を切り離した効果が表れる。
「ROEが目標を達成した」で終わらず、「営業利益率があと7ポイントの課題だ」と語れる。逆質問では「その7ポイントは、どの施策で埋めるお考えですか」と聞ける。
1-4. 250億円の工場投資が進み、回復待ちの事業もある
重点領域には、大きな投資をしている。昭島製作所の工場・建物設備に、250億円を投じる計画だ。期間は2026年1月から2027年12月で、すでに67億円を支払った。
まだ完成していない設備の金額も、116億円増えた。工場の建設が実際に進んでいる証拠だ。自己株式の取得にも118億円を使った。
一方で、回復を待つ事業もある。マルチビームマスク描画装置は、主要顧客の設備投資の回復が想定より遅れている。顧客の数が少ないため、1社が投資を止めれば売上は大きく振れる。
28卒の入社は2028年だ。工場の完了予定は2027年12月で、中期経営計画の最終年度である2029年度の直前にあたる。
志望動機では「投資が動いている時期に入社できる」と言える。逆質問では「工場が稼働した後、どの事業の売上に結びつける計画ですか」と聞ける。
1-5. 働く側の事実:人員は増え、年収も上がった
2026年3月期の平均年間給与は857.5万円で、前期より3.6%増えた。平均年齢は44.6歳、平均勤続年数は15.9年だ。
従業員数は3,731人である。2022年3月期の3,291人から、5年で440人増えた。売上が減った期にも、人員は増えている。
人を増やしながら、事業は絞っている。投資を続ける姿勢が、人員にも表れている。
志望動機では「人員を増やし続ける会社で、成長に関われる」と言える。逆質問では「増員は、どの部門が中心ですか」と聞ける。
第2章 業界比較——サーモフィッシャー・ブルカー・日立ハイテクとの立ち位置
理科学・計測機器の業界は、細かく分かれた市場だ。測定の原理や対象分野ごとに、多くの会社がニッチで競っている。
2-1. 規模では戦わず、深さで戦う
米国のサーモフィッシャーは、売上が日本電子の30倍を超える世界最大手だ。試薬や消耗品、サービスまで含めた全体を押さえている。機器の販売で勝負する日本電子とは、ビジネスモデルが違う。
それでも電子顕微鏡という領域に絞れば、日本電子は世界トップクラスのシェアを持つ。「規模で戦わず、深さで戦う」という生き方だ。
日立ハイテクは、2025年3月期の売上が7,565億円だ。半導体検査装置に強く、日本電子の産業機器事業とは隣り合う領域で競っている。マスク描画装置では、東芝グループのニューフレアテクノロジーなども競合になる。
志望動機で「なぜ他社でなく日本電子か」に答える材料になる。「大手と同じ土俵で戦わず、電子顕微鏡の深さで戦う会社だから」と言える。
2-2. 逆風は業界共通で、知名度だけが低い
米国のブルカーは、2025年12月期の業績を押し下げた要因を挙げている。米国の学術・政府予算の混乱、関税と為替の圧力、中国の需要の弱さ、設備投資の遅れだ。
これは、日本電子が理科学・計測機器事業の減益理由とする説明と符合する。自社だけの競争力低下ではなく、業界全体が直面する逆風だと読める。
もう一つ知っておきたいのは知名度だ。電子顕微鏡ならJEOLという評価は、科学者の間では定着している。しかし就活市場では、ほとんど知られていない。
課題指摘として「米国予算や中国需要の波を、どう吸収するか」を語れる。逆質問では「地域ごとの需要の波を、どう平準化されていますか」と聞ける。
日本電子の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(### 追い風——AI半導体・データセンター投資の拡大/### 追い風——半導体市況の底打ち期待/### 構造的課題——米国の科学技術予算削減と中国の反動減/### 構造的課題——為替と季節性)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上1,793億円・営業利益260億円と減収減益ながら、純利益は221億円で過去最高、ROE15.7%は中計目標を前倒しで達成。医用機器事業を売却し半導体・ライフサイエンスに経営資源を集中させる大転換の年でした。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題と追い風——### 追い風——AI半導体・データセンター投資の拡大/### 追い風——半導体市況の底打ち期待/### 構造的課題——米国の科学技術予算削減と中国の反動減/### 構造的課題——為替と季節性
- 第3.5章 面接前に押さえる日本電子の最新ニュース10本——決算・増配・医用機器譲渡・自己株買い・M&Aまで
- 第4章 内定者の正体——選考フロー、ES「なぜ日本電子か」の組み立て、面接で見られる資質
- 第5章 職種別キャリア分析——初任給と年収カーブ、配属先、海外駐在、セカンドキャリアの市場価値
- 第6章 働く環境の現実——勤続15.9年・エンゲージメントスコアの意味、注意すべきポイント
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ志望動機と逆質問例
- 第8章 やましゃんの総合評価——5軸スコアリングと向き不向き