ローム(6963)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、ロームを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「黒字化の年に大型減損」です。

有報の数字(第68期)

売上高
4,811億円
純利益
-1,584億円
ROE
-19.2%
従業員数(連結)
21,756人
従業員数(単体)
4,199人
平均年間給与(単体)
804万円
平均年齢
42.4歳
平均勤続年数
14.0年

出典:ロームの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

ロームを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ロームに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはロームの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、ローム株式会社 有価証券報告書 第68期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

ロームは、本業が黒字に戻った年に、減損で最終赤字が膨らんだ京都の半導体メーカーである。

知っておきたいことは3つある。

・本業は戻った。営業利益は前期の△400億円から、当期は108億円の黒字になった。
・最終損益は△1,584億円の赤字だった。主因は減損損失1,936億円である。減損とは、稼ぐ力が落ちたと見て設備の帳簿上の価値を減らす処理だ。
・会社は営業利益率20%以上を2028年度の目標に掲げ、東芝・三菱電機との統合協議も進めている。

この記事では、赤字の中身と会社の賭け先を、自分の言葉で説明できるか確かめる。

第1章 ロームは何に賭けているのか

1-1. 会社自身が決めた目標——2028年度に営業利益率20%以上

ロームを読む出発点は、当期の赤字ではない。会社が置いた目標である。有報には、2025年11月公表の中期経営計画「MOVING FORWARD to 2028」の目標が書かれている。

・売上高:5,000億円以上
・売上高営業利益率:20%以上(売上100円のうち、本業の儲けが20円以上)
・ROE:9%以上(株主から預かったお金で、どれだけ稼いだかを示す指標)

当期の売上高は4,811億円で、目標にほぼ届いている。一方、営業利益率は約2%にとどまる。

ROEは△19.2%で、目標とは約28ポイント離れている。足りないのは規模ではなく、利益率である。

有報は手段として「経営統合を含めた事業規模の確保」を挙げる。自力の成長だけでは足りないと、会社自身が書いている。

面接での使い方

志望動機で「稼ぎ方を作り替える局面に関わりたい」と語る根拠になる。逆質問では「約2%の営業利益率を、どの事業で引き上げるのか」と聞ける。

1-2. 賭けは動いている——東芝・三菱電機との統合協議

2026年3月27日、ロームは東芝の半導体事業、三菱電機のパワーデバイス事業との統合協議に向けた基本合意書を結んだ。実現すれば、会社の形が変わる。

設備投資も止めていない。有報の予定は総額600億円で、4件すべてが2026年4月着手、2027年3月完了である。2026年4月1日には、ローム・アポロを前工程製造会社へ統合する再編もある。

28卒が入社する2028年4月は、中期経営計画の最終年度(2028年度)の入口にあたる。統合が進めば、入社時の会社は今と違う形になる。

面接での使い方

志望動機では「再編の最中に入る世代として働きたい」と言える。逆質問では「統合が決まった場合、新入社員の配属はどう変わるか」と聞ける。

1-3. 赤字の主因は減損——本業の悪化ではない

当期は売上が増え、売上原価と販売費及び一般管理費(営業や管理にかかる費用)が減った。その結果、営業利益は赤字から黒字へ改善した。

それでも最終損益は△1,584億円に膨らんだ。原因は減損損失1,936億円で、前期の約6倍である。

有報によれば、対象は主に半導体素子セグメントのパワーデバイス(電力を制御する半導体)だ。理由は「収益環境の悪化」と書かれている。

内訳は、日本の事業用資産が中心である。国内の建物と機械そのものが対象になった。減損は、現金が出ていく損失ではない。

面接での使い方

課題指摘で「赤字の主因は減損で、本業は改善している」と切り分けて話せる。そのうえで「だから統合協議が出てきた」と戦略につなげられる。

1-4. 立ち直った事業と、そうでない事業

ロームの事業は、LSI・半導体素子・モジュール・その他(抵抗器事業等)の4つである。赤字なのは半導体素子だけだ。

LSI(電源制御などの機能を1つにまとめたチップ)は、赤字から245億円の黒字に転換した。半導体素子は△227億円の赤字が続く。

設備投資の大半、690億円が半導体素子に向いた。前期も同じ水準で、赤字の事業に投資が集中している。

会計の注意点もある。当期から減価償却方法を定率法から定額法に変えた。設備の費用を、初期に多く計上するか毎期同額にするかの違いである。

この変更で、セグメント利益は合計155億円押し上げられた。現金の動きとは関係がない。

面接での使い方

課題指摘で「LSIは強み、半導体素子の立て直しが課題」と整理できる。逆質問では「半導体素子への投資を、いつ頃までに回収する見通しか」と聞ける。

1-5. 働く側の事実——人員・年収・女性管理職

連結従業員は21,756人。平均年齢は42.4歳、平均勤続は14.0年、平均年間給与は約804万円である。

有報には、セグメント別の従業員数がない。複数の事業にまたがって働く部門が多く、区分が難しいためと説明している。

女性管理職の比率は1.5%と低い。会社は理工系の女性比率の少なさを理由に挙げ、課題として目標値を設定している。一方、月の平均残業は13.7時間である。

面接での使い方

志望動機では「製品をまたいで働く組織に惹かれた」と言える。逆質問では「女性管理職の目標値と、現在の進み具合」を聞ける。

第2章 半導体業の収益構造

2-1. 半導体は「設備投資が先、回収は後」

半導体メーカーの収益構造の鍵は、投資と回収の時間差にある。工場を建て、装置を入れ、量産を立ち上げるまでに、数年と数千億円がかかる。売上が立つのはその後だ。

ロームでは、第66期(2024年3月期)に総資産が大きく増えた。大型投資に踏み切った時期と重なる。

先に資産が積み上がり、後から利益が問われる。需要が想定どおりに来なければ、その資産は減損の対象になる。当期の減損1,936億円も、この構造の中で起きた。

面接での使い方

志望動機では「投資と回収の時間差を理解したうえで、回収期を支えたい」と語れる。逆質問では「投資の判断基準と、見直しの時期」を聞ける。

2-2. なぜLSIは黒字で、半導体素子は赤字なのか

同じ会社の中で、LSIは黒字、半導体素子は赤字である。差は3つの違いから読める。

第1に、製品の性格だ。LSIは設計の付加価値が高く、顧客ごとの作り込みが効く。半導体素子は大量生産で単価が決まる領域が大きく、需要の波を受けやすい。

第2に、投資負担だ。設備投資は半導体素子がLSIの約8倍だった。第3に、市況である。有報は「収益環境の悪化」と書く。電気自動車向けの需要拡大を見込んで各社が投資したが、想定した需要が想定した時期に来なかったと読める。

同じ会社の中に、稼ぐ事業と、投資を続ける事業がある。

面接での使い方

課題指摘では、事業ごとに稼ぎ方が違う点を押さえて語れる。逆質問では「LSIの強みを、半導体素子の立て直しにどう生かすか」と聞ける。

ロームの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(5期で売上は+6.4%、純利益は668億円から△1,584億円へ/赤字事業に投資の8割を入れ続ける/会計方針の変更をどう見るか/2027年3月期は純利益290億円へ黒字転換の計画)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上高4,811億円(+7.3%)に対し売上原価は△2.2%と減って売上総利益は+55.2%(粗利率23.95%・+7.39ポイント)、販管費も△8.7%削って営業利益は前期△400億円から+108億円へ、経常利益も△296億円から+192億円へ黒字転換した一方、特別損失2,154億円——うち減損損失1,936億円(前期の6.38倍)——により親会社株主帰属当期純損失は△1,584億円(前期△500億円)でROEは△19.2%と2期連続赤字、その減損は有報が「主に半導体素子セグメントにおけるパワーデバイス」「収益環境の悪化」と明記し割引率14.4%で算定され日本1,490億円(77.0%)・ドイツ等434億円(22.5%)に及び、セグメントではLSIが+245億円で黒字転換して全体を支える一方、半導体素子は△227億円の赤字ながら設備投資690億円(全体の83.9%)を2期連続で受け続け、さらに減価償却方法を定率法から定額法へ変更したことでセグメント利益が合計155億円押し上げられ、自己資本比率は5期で81.6%から59.1%へ22.5ポイント低下、投資有価証券は3,515億円から1,580億円へ半減し現金及び預金は2.13倍の4,191億円に、そして2027年3月期第1四半期は経常利益+352.6%・通期は純利益290億円への黒字転換計画——ロームの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 半導体業の構造的課題——5期で売上は+6.4%、純利益は668億円から△1,584億円へ/赤字事業に投資の8割を入れ続ける/会計方針の変更をどう見るか/2027年3月期は純利益290億円へ黒字転換の計画
  • 第3.5章 面接前に押さえるロームの最新ニュース10本——減損1,936億円・投資の83.9%・純利益290億円計画まで
  • 第4章 内定者の正体——「半導体に興味があります」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収804万円の読み方と、4セグメントのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続14.0年、残業13.7時間、女性管理職1.5%の読み方
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. ロームの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第68期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は804万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. ロームの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第68期)では、提出会社(単体)が4,199人、連結が21,756人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. ロームが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。