IHI(7013)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、IHIを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「平均年収836万円」です。
有報の数字(第209期)
- 売上高
- 1兆6,434億円
- 純利益
- 1,610億円
- ROE
- 28.4%
- 従業員数(連結)
- 26,224人
- 従業員数(単体)
- 8,199人
- 平均年間給与(単体)
- 1,001万円
- 平均年齢
- 42.4歳
- 平均勤続年数
- 15.2年
出典:IHIの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに——「重工3社」の中でIHIを選ぶ理由
IHIを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、IHIに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはIHIの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
IHIは、航空エンジンの稼ぎに支えられながら、構造改革を終えて次の成長に向かう会社だ。
知っておきたいことは3つある。
稼ぎの中心は航空・宇宙・防衛の1事業で、ここへの依存が最大の課題だ。
構造改革は一定の区切りを迎え、2026〜2028年度は先行投資の期間と位置づけられている。
平均年収は836万円で、重工3社では三菱重工(1,018万円)に次ぐ。
この記事では、IHIが何に賭けているかと、面接で突ける論点がどこにあるかを確かめる。
第1章 IHIは何に賭けているのか
1-1. 「人材こそが最大かつ唯一の財産である」
有価証券報告書は、経営理念に「人材こそが最大かつ唯一の財産である」と書く。「最大」ではなく「最大かつ唯一」だ。重工業の会社が、設備や技術より人を前に置いている。
計画は2段構えだ。2040年に向けた「中長期の方向性」と、3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」である。後者について、同社は「構造改革に一定の目途をつけることができました」と書いている。
会社が自分で掲げる指標に、CCCがある。これは仕入れた材料が現金になって戻るまでの日数のことだ。受注から完成まで何年もかかる重工業では、この日数を縮めることが財務の改善に直結する。
志望動機では、人を唯一の財産とする理念への共感を語れる。逆質問では「CCCを短くするために、現場ではどんな取り組みがありますか」と聞ける。
1-2. 事業を手放し、社内を整理する
直近期の売上収益は1兆6,434億円で、前期比1.0%増だった。中核事業の譲渡による減収があっても、防衛・航空エンジン・車両過給機(エンジンに空気を送り込む部品)の伸びで増収を確保した。
整理は社内でも進む。橋梁・水門を担うIHIインフラシステムとIHIインフラ建設が、2025年11月1日に統合した。外の企業を買い集めるのではなく、事業を手放し、内側の重複を減らす方向だ。
一方で、伸ばす領域には設備を投じる。相生工場に、アンモニアを燃料にするガスタービンの大型燃焼試験設備を新設した。アンモニアは燃やしても二酸化炭素を出さない。
注意点もある。営業利益には、運搬機械事業と投資不動産の譲渡益が含まれている。本業の力だけで増えた利益ではない。
課題指摘では、利益に譲渡益が混ざる点を踏まえて語れる。逆質問では「残す事業と手放す事業は、何を基準に決めていますか」と聞ける。
1-3. 稼ぎの中心は1事業——依存という課題
事業は4つに分かれる。このうち航空・宇宙・防衛が営業利益1,124億円を稼ぎ、4事業の合計1,527億円の約74%を占める。
この依存は強みであり、同時に弱みでもある。2023年に欧州エアバス向けエンジンで品質問題が発覚し、IHIは2024年3月期に営業赤字701億円へ落ち込んだ。1事業の不調が会社全体を揺らす構造だ。
ほかの事業には課題が残る。資源・エネルギー・環境の営業利益は59億円で、海外事業の採算悪化が響いた。社会基盤は前期の42億円の赤字から、37億円の黒字へ戻った。
経営陣も、航空エンジンに次ぐ「第2の柱」づくりを長年の課題としている。
課題指摘では「1事業への依存を、自分がどの分野で薄めたいか」を語れる。逆質問では「第2の柱の候補は、現場でどう見られていますか」と聞ける。
1-4. 回復する財務と、「助走の3年間」
財務は回復している。自己資本比率(返す必要のない資金の割合)は、21.5%から26.9%へ上がった。業績の回復が、財務の体力づくりにつながっている。
決算短信は、2026〜2028年度を「先行投資と財務基盤強化に集中的に取り組む期間」と位置づける。飛躍は2029年度以降という宣言だ。投資先は、航空エンジンの整備拠点、防衛、原子力、アンモニアガスタービン、宇宙の5つである。
来期(2027年3月期)の営業利益予想は2,400億円だ。ただし約393億円は、東京都江東区の不動産の譲渡益が占める。本業の営業利益は約2,000億円になる。
28卒が入社する2028年は、この助走期間の最後にあたる。
志望動機では「投資の成果が出る時期に、中堅として関わりたい」と語れる。逆質問では「助走期間の次の中期計画で、何を伸ばす想定ですか」と聞ける。
第2章 業界比較——重工3社(三菱重工・川崎重工・IHI)の立ち位置
2-1. 働く側の事実:年収と勤続年数
平均年収は、三菱重工が1,018万円(平均年齢42.5歳)、IHIが836万円(41.8歳)、川崎重工が793万円(41.5歳)だ。IHIは三菱重工の約82%で、川崎重工を上回る。
平均勤続年数は、三菱重工が19.0年、IHIが16.6年である。3社とも、長く腰を据えて働くことを前提にした会社だと読める。
志望動機では「長く働き、技術を積み上げる環境に惹かれた」と語れる。他社との比較は年収の高さに寄せず、事業の中身で説明したい。
2-2. 事業の柱と、IHIの立ち位置
売上は、三菱重工が4.6兆円、川崎重工が1.8兆円、IHIが1.6兆円だ。IHIは規模では2社に劣る。
事業の柱は3社で違う。三菱重工は防衛・宇宙・発電・航空・原子力を持つ「総合重工」。川崎重工は航空宇宙、車両、モーターサイクル、ロボットなどを持つ「多角経営」。IHIは航空エンジン、防衛、原子力、ターボチャージャー(過給機)、宇宙を持つ「航空エンジン特化型」だ。
規模で戦う三菱重工、多角化で粘る川崎重工に対し、IHIは技術を絞って戦う。第1章で見た依存の大きさは、この選択の裏側でもある。
「なぜ三菱重工や川崎重工ではなくIHIか」への答えに使える。「技術を絞る戦い方に賭けたい。その分、依存の課題を自分も担いたい」とつなげたい。
IHIの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(### 追い風1:防衛予算の拡大/### 追い風2:民間航空需要の回復/### 追い風3:脱炭素・SAF・水素航空/### 構造的課題:航空エンジン依存のボラティリティ)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題と追い風——### 追い風1:防衛予算の拡大/### 追い風2:民間航空需要の回復/### 追い風3:脱炭素・SAF・水素航空/### 構造的課題:航空エンジン依存のボラティリティ
- 第3.5章 押さえておくべきIHI最新ニュース(過去1年)
- 第4章 内定者の正体——選考プロセスとES攻略
- 第5章 職種別キャリア分析
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略——有報・IRを使った回答例と逆質問
- 第8章 やましゃんの総合評価——5軸スコアリング