日産(7201)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、日産を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「1台売って1万8,406円」です。
有報の数字(第127期)
- 売上高
- 12兆79億円
- 純利益
- -5,331億円
- ROE
- -10.9%
- 従業員数(連結)
- 120,079人
- 従業員数(単体)
- 23,174人
- 平均年間給与(単体)
- 857万円
- 平均年齢
- 40.9歳
- 平均勤続年数
- 14.9年
出典:日産の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
日産自動車を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、日産自動車に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは日産自動車の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、日産自動車株式会社 有価証券報告書 第127期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
結論から言う。日産は、市場が伸びる中で販売を減らし、2期連続の大赤字を抱えたまま、再建計画の最終年度に入った会社だ。
知っておきたいことは3つある。
本業のもうけがほとんど残っていない。売上は約12兆円だが、営業利益(本業で稼いだ利益)は580億円で、営業利益率は0.48%だ。
赤字が2期続いている。最終赤字は5,331億円で、前期と合わせると2期で1兆2,040億円になる。
市場が伸びる中で、販売が減っている。世界の自動車需要は+3.5%だったが、日産の販売台数は△5.8%だった。
この記事では、日産が何に賭けているか、その進み具合、自動車業のどこに弱点があるかを確かめる。
第1章 日産自動車は何に賭けているのか
1-1. 日産の賭けは再建計画「Re:Nissan」——2026年度が最終年
会社の賭けは、有価証券報告書(有報)に書いてある。有報は、会社が投資家向けに毎年出す公式の報告書だ。日産は2025年5月に、経営再建計画「Re:Nissan」を発表した。有報は成長計画とは呼ばず、再建計画と書いている。
目標は、2026年度までに自動車事業の営業利益とフリーキャッシュフローを黒字にすることだ(関税の影響は除く)。フリーキャッシュフローとは、本業で得た現金から投資に使った現金を引いた残りを指す。
柱は3つある。コスト構造の抜本的改革、市場戦略と商品戦略の見直し、パートナーとの協働の強化だ。コスト削減の目標は、固定費と変動費を合わせて5,000億円規模である。
商品戦略では、車種を56から45に減らす。重点市場は日本、米国、中国の3つに絞った。
志望動機で「再建という局面に関わりたい」と言う根拠になる。逆質問は「黒字化の最終年度に、私の職種はどんな役割を担いますか」とできる。
1-2. 削減は目標の約半分——残りを最終年度で取りに行く
進み具合は、有報に数字で出ている。台数に関係なくかかる固定費は、2,000億円減った。売上に応じて増減する変動費は、550億円減った。合計は2,550億円で、目標のちょうど半分である。
変動費では、5,000件を超える改善案が出ている。ただし、費用減として実績に出たのは550億円だけだ。開発部門では、人件費の単価を18%減らした。工場は2027年度までに17から10へ減らす。
有報は、計画どおりに進めていると自己評価している。残り半分を最終年度の2026年度で取る計画だ。
課題指摘に使える。「改善案は多いが、実績に出ているのは一部」と数字で言える。逆質問は「残りの削減は、どの部門が主役になりますか」が合う。
1-3. 28卒が入社するのは「再建後」の日産
28卒の入社は2028年4月だ。会社の時間軸に重ねてみる。
・Re:Nissan:2025年5月発表。2026年度が最終年で、2025年度はその1年目
・工場の再編(17→10):2027年度まで
・長期ビジョン「モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に」:2026年4月に策定
計画どおりに進めば、入社時の日産は再建を終えた後の会社だ。入社後に取り組むのは、長期ビジョンのほうになる。
技術の中核は、AIディファインドビークル(AIDV)だ。AIの力で走りや移動体験を作る車を指す。AIドライブ技術を搭載するモデルを、ラインアップの約9割に広げる方針である。電動化は、独自のe-POWERが中心だ。
志望動機に使う。「再建ではなく、その後の成長に関わりたい」と語り、AIDVやe-POWERへの関心を結びつける。
1-4. 市場は伸びたが、日産は全地域で販売を減らした
日産の世界の小売台数は、約315万台だった。市場が伸びる中で、減少は全地域に及んでいる。特に母国の日本は△13.5%で、約40万台まで減った。北米、欧州、アジア、中国も減っている。
有報は、この原因を外部環境だけにしていない。関税やインフレなどに加え、「当社固有の課題によっても厳しい状況となった」と書いている。自社の課題を認めた書き方だ。
課題指摘に使える。市場の追い風を取り込めていない点を、日本市場から指摘できる。逆質問は「日本で販売が減った理由と対策を教えてください」だ。
1-5. 働く側の事実——人員は再編の途中、年収は下がった
連結の従業員は12万79人。日産本体は2万3,174人で、全体の約2割だ。残りは国内外の子会社にいる。工場を減らす話は、この人員の配置に直結する。
日産本体の平均年齢は40.9歳、平均勤続は14.9年だ。平均年間給与は857万円で、前期より4.3%減った。希望退職などに伴う割増退職金は、850億円を計上した。
課題指摘と逆質問に使える。「再編の中で若手にどう仕事を任せますか」「評価や処遇の見直しはありますか」と聞ける。
第2章 自動車業の収益構造
2-1. 台数が利益を決める——固定費の重い産業
自動車は、工場や開発拠点に数千億円規模の投資が先に要る。この費用は、車を作っても作らなくてもかかる。台数が増えれば1台あたりの負担は軽くなり、減れば重くなる。
日産の生産台数は約216万台で、10.5%減った。工場の稼働率が下がると、1台あたりの固定費は跳ね上がる。営業利益率0.48%の背景には、この稼働率の低下がある。
営業利益580億円を小売台数で割ると、1台あたり1万8,406円だ。平均で約380万円の車を売って、残るのは2万円弱である。
課題指摘に使える。「台数が利益に直結する産業で、台数が減っている」と構造で説明できる。逆質問は「工場の稼働率に目標はありますか」だ。
2-2. 値引きと電動化——台数を追うほど利益が削られる
販売店に払う奨励金は、実質的な値引きの原資になる。台数を維持しようと奨励金を積めば、1台の利益は削られる。抑えれば台数が減る。この台数と利益率のトレードオフが、経営判断の中心にある。北米は日産にとって最大の市場で、ここでの競争が利益を左右する。
さらに、電動化、車載ソフト、自動運転の3つの技術転換が同時に進む。どれも巨額の開発投資が要り、成果が出るまで数年かかる。日産は世界に先駆けてEV「リーフ」を市販したが、その先行者利益を収益に変えきれていない。
志望動機と逆質問に使える。「台数と利益率のどちらを優先する局面ですか」と、経営の判断軸を聞ける。
2-3. 「規模はあるが、利益が出ていない」会社
日産は規模が大きい。生産拠点は日本、米国、メキシコ、英国、タイなど世界に広がる。それでも利益が出ていない。課題を一言で言えば、これに尽きる。
裏を返せば、稼働率と1台あたりの利益が改善すれば、この規模が利益に変わる余地がある。
志望動機の締めに使える。「規模を利益に変える側で貢献したい」と、課題と自分の役割を一文でつなげられる。
日産の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(固定費の削減が終わっていない/母国市場での△13.5%/自己資本比率24.2%という財務の余裕/給与が下がっている)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上12兆79億円に対し経常利益11億円・営業利益率0.48%、1台あたり営業利益1万8,406円、世界需要+3.5%の中で販売△5.8%、減損損失3,662億円と特別退職加算金850億円、2期で1兆2,040億円の赤字、それでも営業CFは+7,947億円で現金2兆2,648億円——日産の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 自動車業の構造的課題——固定費の削減が終わっていない/母国市場での△13.5%/自己資本比率24.2%という財務の余裕/給与が下がっている
- 第3.5章 面接前に押さえる日産の最新ニュース10本——構造改革・地域別販売・第1四半期の黒字転換まで
- 第4章 内定者の正体——「車が好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収857万円(△4.3%)の読み方と、12万人組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——女性役員比率29.0%の他社比較、勤続14.9年の意味、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生