ホンダ(7267)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、ホンダを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「4,239億円の最終赤字」です。
有報の数字(第102期)
- 売上高
- 21兆7,966億円
- 純利益
- -4,239億円
- ROE
- -3.5%
- 従業員数(連結)
- 195,109人
- 従業員数(単体)
- 32,547人
- 平均年間給与(単体)
- 933万円
- 平均年齢
- 43.9歳
- 平均勤続年数
- 21.0年
出典:ホンダの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
※本記事の決算数字は、本田技研工業が2026年6月に提出した第102期(2025年4月1日〜2026年3月31日)有価証券報告書に基づきます(2026年7月執筆)。
この記事は、最低3回は読み返してほしい。
自ずと「なぜ本田技研工業がこの決算になったのか」を自分の言葉で説明できるようになる。
そこまで来れば、面接で財務の話になったとき、面接官より深く踏み込める。
本田技研工業を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、本田技研工業に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。役員を目指すなら、自社がどの数字で評価されているかを知らないままでは話にならない。
ホンダは2026年3月期に4,239億円の最終赤字を出したが、原因はEV戦略の見直しに集中しており、二輪事業が会社を支えている。
知っておきたいことは3つある。
赤字の主因は、EV関連で計上した1兆5,778億円の損失と関税だ。会社は有報に「柔軟に対応できなかった」と書いている。
会社は今後3年間で6.2兆円を投じる。EVは0.8兆円に絞り、残りの大半をハイブリッド車などに振り向ける。
稼ぎ頭は二輪で、売上収益は前期比10.8%増だった。一方、従業員の約7割は赤字の四輪にいる。
この記事では、有価証券報告書(上場企業が毎年出す公式の報告書。以下、有報)をもとに、赤字の理由と会社の賭けを面接で語れるかを確かめる。
第1章 ホンダは何に賭けているのか
1-1. 赤字の中身——増収なのにEV関連損失が重かった
売上収益は21兆7,966億円で、前期比0.5%増とほぼ横ばいだった。それでも最終損益は赤字に転落した。前期までは4年続けて黒字だった。
原因は、EV関連の損失と関税の2つだ。米国でEV市場が想定ほど伸びず、一部のEVの発売と開発を中止した。他社と共同開発したEVの製造も終える。この見直しの費用が、四輪事業で1兆5,778億円の損失として計上された。有報は、2027年3月期以降も追加の損失が出る可能性があると書いている。
自社の判断についても、有報は「事業環境の変化に柔軟に対応できなかった」と認めている。
課題指摘に使う。「赤字ですよね」と問われたら、主因はEVの見通しの誤りと関税だと、有報の言葉で答えられる。
1-2. 会社の賭け——EVを絞り、ハイブリッドへ振る
会社は2029年3月期までの3年間に、合計6.2兆円を投じる。内訳はEVが0.8兆円、ソフトウェアが1兆円、ICE(ガソリン車など内燃機関の車)とハイブリッド車が4.4兆円だ。
有報は「長期的にはEVが最適解」と述べる。それでも資金の配分は、ハイブリッドに大きく傾いている。
止めた案件も具体的に書かれている。カナダのEV向け部品調達網の構築は、無期限で凍結した。ソニー・ホンダモビリティと共同開発したEVも、発売と開発が中止された。
志望動機にも逆質問にも使える。「EVを絞りハイブリッドに振る判断に賭けたい」と話せる。「EVへの投資を再び増やす時期は何で判断するのか」とも聞ける。
1-3. 二輪が会社を支えている
二輪事業の売上収益は4兆188億円で、前期比10.8%増だった。売上台数は1,467万3千台で、インドなどアジアでの増加が牽引した。生産台数が減ったのは四輪だけで、二輪もパワープロダクツも増えている。有報は二輪を「盤石な収益性を持つ」と表現する。
働く側の事実も見ておく。連結従業員は19.5万人(195,109人)。うち四輪が13.2万人(131,856人)で、全体の67.6%を占める。二輪は5.2万人(52,013人)だ。少数の二輪が、多数の四輪を支える構図になっている。
課題指摘に使う。「四輪の再建が会社全体の鍵だ」と言い、自分が貢献できる職種に結びつける。逆質問は「二輪の稼ぎを四輪の再建にどう配分するか」が考えられる。
1-4. 北米への依存——赤字の舞台は最大の市場だった
地域別の売上収益で、北米は12兆5,788億円。全体の58%を占める。その北米が前期比1.7%減った。関税の影響も、EV市場の環境変化も、起きたのは北米だ。
一方、「その他」の地域は15.8%増と伸びている。二輪が強い新興国の存在感が増している。
課題指摘と逆質問に使う。「北米への依存が大きい中、関税の影響にどう備えるか」と聞ける。志望動機では、新興国の成長を取り込みたいと話せる。
1-5. 時間軸——入社1年目の終わりに答えが出る
28卒の入社は2028年4月だ。会社の計画に重ねてみる。
足元3年間(2029年3月期まで)は、四輪事業の体質の立て直しに集中する。2029年3月期には、過去最高の営業利益をめざす。2031年3月期には、ROIC 10%をめざす。ROICとは、事業に投じた資本でどれだけ稼いだかを示す指標で、会社自身が掲げた目標だ。
つまり入社1年目の終わりに最高益の答えが出る。3年目にはROICの答え合わせがある。ホンダが「戻せたかどうか」を、内側から見ることになる。
志望動機と逆質問に使う。「再建の最前線で働きたい」と伝える。「2029年3月期の最高益に向けた現在の進み具合をどう見ているか」と聞くのもよい。
第2章 業界比較——トヨタ・日産との違い
2-1. 二輪を持っているのはホンダだけ
トヨタも日産も、二輪車事業を持たない。今期のホンダは四輪で苦しんだが、二輪の増収が下支えになった。四輪だけの会社だったら、決算はもっと厳しかったはずだ。
事業の幅も特徴だ。二輪、四輪、パワープロダクツ、金融サービス、さらに航空機やロボティクスまで手がける。
志望動機に使う。「なぜトヨタや日産ではなくホンダか」と聞かれたら、事業の幅と二輪の存在を理由に挙げられる。
2-2. 待遇——長く働く人が多い会社
提出会社(本田技研工業単体)の数字を並べる。
平均年間給与:932万6,000円
平均勤続年数:21.0年
平均年齢:43.9歳
平均年齢から勤続年数を引くと22.9歳になる。新卒で入り、そのまま長く働く人が多い会社だと読める。女性役員比率は12.0%で、製造業全体の傾向でもあるが、今後問われる指標だ。
志望動機では、長く働ける環境を理由にできる。逆質問は「女性役員を増やす計画はあるか」が考えられる。
2-3. 赤字をどう受け止めるか
EVへの移行が想定より遅いことは、自動車各社の決算に表れている。ホンダだけの問題ではない。有報は「需要が再び拡大に転じるタイミングを見据え、長期的な仕込みを継続していきます」と書く。EVをやめるのではなく、時期を後ろにずらす判断だ。
ただし時期を読み違えると、今回のような損失になる。
「なぜ赤字の会社を志望するのか」への答えに使う。業界共通の問題だと説明したうえで、立て直しの局面に加わりたいと志望動機につなげる。
ホンダの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(EV移行のタイミングという読み違え/関税という外部リスク/原材料とサプライチェーン/知能化という次の競争軸)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上21兆7,966億円で+0.5%、しかし最終損益は4,239億円の赤字。一方で二輪は+10.8%の増収、営業CFは3.9倍の1兆1,352億円。ここから先は、この数字を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 自動車業界の構造的課題——EV移行のタイミングという読み違え/関税という外部リスク/原材料とサプライチェーン/知能化という次の競争軸
- 第3.5章 面接前に押さえるホンダ最新ニュース10本——EV計画の見直し、関税影響、二輪1,467万台、営業CF3.9倍まで
- 第4章 内定者の正体——「クルマが好き」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——年収932万円の位置づけ、二輪と四輪でのキャリアの違い、市場価値
- 第6章 働く環境の現実——勤続21.0年という長さの意味、女性役員比率12.0%の課題
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問4本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生