マツダ(7261)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、マツダを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「関税が営業利益の3倍」です。

有報の数字(第160期)

売上高
4兆9,182億円
純利益
351億円
ROE
1.9%
従業員数(連結)
47,144人
従業員数(単体)
22,857人
平均年間給与(単体)
711万円
平均年齢
42.5歳
平均勤続年数
17.7年

出典:マツダの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

マツダを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、マツダに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはマツダの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、マツダ株式会社 有価証券報告書 第160期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

結論から言う。マツダは、関税で稼ぐ力の大半を失った年を、手元の資金を厚くして乗り切り、2028年からの電気自動車(EV)本格導入に備えている。

知っておきたいことは3つある。

米国の関税が利益を削った額は1,549億円。残った営業利益516億円の約3倍にあたる。

会社は電動化を3段階に区切っている。EV本格導入の第3段階は2028年に始まり、28卒の入社年と重なる。

財務は崩れていない。現金から借入を引いた実質の余力が4,430億円ある。

この記事では、会社が何に賭け、関税でどこが傷み、どこが残ったのかを確かめる。

第1章 マツダは何に賭けているのか

1-1. 電動化は3段階——第3段階は2028年、あなたの入社年から

有報は、電動化の計画を年で区切った3段階で書いている。第1段階は2022〜2024年の基盤強化。第2段階は2025〜2027年で、電動化への移行期だ。第3段階は2028〜2030年で、バッテリーEVを本格導入する。

28卒が入社する2028年4月は、第3段階の初年度にあたる。終わりの2030年は入社3年目だ。EV本格導入の号砲と同時に入社することになる。

賭けの中身は3つある。1つ目は「マルチソリューション」。地域の電源事情に合わせ、エンジン車・電動車・代替燃料を組み合わせる。EV一本には賭けない立場だ。

2つ目は、2025年3月に公表した「ライトアセット戦略」。自前主義をやめ、協調できる領域ではパートナーの資産を使う。有報には、開発の生産性を3倍にすること、電池投資を協業で半減できる見込みであることが書かれている。EV専用工場は新設せず、既存工場でEVとエンジン車を混ぜて作る。

目的は「資本コストを上回るリターン」の創出と明記されている。資本コストとは、投資家や銀行が会社に求める最低限のもうけの水準のことだ。

3つ目は「ブランド価値経営」。2030年の姿として「『走る歓び』で移動体験の感動を量産するクルマ好きの会社になる」を掲げる。環境面の目標年度は、2035年に自社工場のカーボンニュートラル(CO2排出の実質ゼロ)、2050年に全体での実現だ。

面接での使い方

志望動機では、「2028年のEV本格導入の局面で働きたい」と時期を添えて語れる。逆質問では、専用工場を建てない混流生産で若手の仕事がどう変わるかを聞ける。

1-2. 関税1,549億円を吸収し、営業利益は516億円

当期は、この賭けが試された1年だった。期初に想定した関税の影響は2,300億円超。実際の関税コストは1,549億円で、これを吸収して営業利益516億円を確保した。

営業利益は前期から72.3%減った。売上高営業利益率は1.0%で、売上100円あたりの本業の利益が1円ということだ。売上高は4兆9,182億円とほぼ横ばいだった。最終利益は351億円まで落ちた。

雇用を守る姿勢は目標にも出ている。会社は国内生産70万台の維持を掲げ、実績は73万5千台だった。新型「CX-5」では、開発の初期から日本製鉄を設計に加えた。この共創活動は、庫受け額(部品・材料の受け入れ額)の80%にあたる領域まで広がっている。

財務そのものは崩れていない。現金は1兆2,932億円あり、借入などを引いた実質の余力が4,430億円ある。これを会社はネット・キャッシュ・ポジションと呼ぶ。第3段階に進む体力は残っていると読める。

面接での使い方

課題指摘では、「関税で利益率が1.0%まで下がった」ことを出発点にできる。志望動機では、雇用を守りながら黒字を確保した姿勢を根拠にできる。

1-3. 米国は販売を絞り、欧州は単価を上げた

世界の販売台数は122万3千台。米国は39万5千台で、前期より9.2%減った。関税負担の大きいメキシコ製「CX-30」を、自ら絞ったためだ。米国の販売網は約550店舗で、350店舗以上が新世代店舗に刷新された。

欧州は台数が6.0%減ったのに、売上金額は17.5%増えた。1台あたりの単価が上がったということだ。新型電動車「MAZDA6e」と新型「CX-5」の導入が背景にある。台数を追わずに単価を上げる路線が、数字に出た市場だ。

日本では、国内販売20万台の早期実現を目指している。当期の日本の販売は14万4千台だった。

面接での使い方

逆質問では、「国内20万台に向けた施策は今どこまで進んでいますか」と目標と現状の差を聞ける。課題指摘では、欧州の単価上昇を成功例として挙げられる。

1-4. 働く側の事実——4万7,144人、平均年間給与711万円

連結従業員は4万7,144人。内訳は日本3万5,961人、北米6,976人、欧州1,405人、その他2,802人だ。マツダ本体の従業員は2万2,857人で、平均年齢は42.5歳、平均勤続は17.7年である。

平均年間給与は711万円で、前期より0.5%減った。女性役員比率は20.0%だ。

面接での使い方

志望動機では、平均勤続17.7年を「社員が長く働く会社かどうか」を考える材料にできる。逆質問では、給与が微減した当期を踏まえた処遇の考え方を聞ける。

第2章 自動車業の収益構造

2-1. 作る場所と売る場所が離れている

有報は、米国関税が「輸出比率が高い当社グループの事業に大きな影響」を及ぼしたと記す。生産は日本が全体の63.1%を占める。一方、売上の52.1%は北米だ。

日本とメキシコで作り、米国で売る。この構造が、関税の影響を最大にした。

面接での使い方

課題指摘では、「作る場所と売る場所の距離が弱みだ」と言える。逆質問では、生産拠点の配分をどう考えているかを聞ける。

2-2. 動かせるものを全部動かす——自力で取り返した793億円

有報は「自らがコントロールできる領域を徹底的に磨き、地域の雇用とサプライチェーンを守り抜く」と繰り返す。具体策は、原価低減、固定費削減、価格戦略の見直し、市場別の販売構成の最適化だ。

成果として、コスト改善と固定費の削減で、合計793億円の改善を出した。関税1,549億円の約半分を、自力で取り返した計算になる。関税も為替も動かせないから、動かせるものを全部動かす。この割り切りが、この会社の経営スタイルだ。

面接での使い方

志望動機では、雇用と調達網を守る姿勢を、広島を本拠とする企業らしさとして語れる。課題指摘では、残りの半分をどう埋めるかを論点にできる。

2-3. 1車種への集中と、中国パートナーとの電動化

「CX-5」は2012年の発売以来、世界累計500万台。グローバル販売のおよそ4分の1を占める主力だ。約8年ぶりの全面刷新が、当期の後半に欧州と北米で始まった。1車種の成否が、業績を大きく左右する。

電動化は、中国の重慶長安汽車と組んで進める。出資先の長安マツダ汽車が、電動車の開発と製造を担う。欧州で売る「MAZDA6e」もこの系統だ。「MAZDA EZ-6/MAZDA6e」は、2026年4月に「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。

面接での使い方

課題指摘では、1車種への依存と、電動車づくりを他社に委ねる点を論点にできる。逆質問では、自社で持つ技術と任せる領域の線引きを聞ける。

マツダの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(関税という自社では動かせない変数/営業キャッシュフローがほぼゼロになった/規模の小ささという構造的な制約/平均年収711万円という現実)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。営業利益516億円(△72.3%)に対し関税影響は△1,549億円でちょうど3倍、コスト改善+369億円と固定費他+424億円で793億円を自力で取り返した、営業CFは3,056億円から2億円へ、グローバル販売122万3千台(△6.1%)は関税を避けるための生産抑制が主因、欧州だけ台数△6.0%でも売上金額+17.5%——マツダの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 自動車業の構造的課題——関税という自社では動かせない変数/営業キャッシュフローがほぼゼロになった/規模の小ささという構造的な制約/平均年収711万円という現実
  • 第3.5章 面接前に押さえるマツダの最新ニュース10本——関税・新型CX-5・電動車の受賞・第1四半期の黒字転換まで
  • 第4章 内定者の正体——「マツダのデザインが好き」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収711万円(△0.5%)の読み方と、4.7万人組織でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——女性役員比率20.0%の他社比較、勤続17.7年の意味、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. マツダの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第160期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は711万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. マツダの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第160期)では、提出会社(単体)が22,857人、連結が47,144人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. マツダが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。