大日本印刷(7912)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、大日本印刷を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「6期連続の増収増益」です。

有報の数字(第132期)

売上高
1兆5,126億円
純利益
1,040億円
ROE
8.9%
従業員数(連結)
36,360人
従業員数(単体)
8,911人
平均年間給与(単体)
861万円
平均年齢
44.8歳
平均勤続年数
20.7年

出典:大日本印刷の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

大日本印刷(DNP)は、印刷会社から、半導体や電池の材料で稼ぐ会社へ組み替えている最中の会社だ。

知っておきたいことは3つある。

学情の「2026年卒 就職人気企業ランキング」で総合7位に入った。印刷・紙・パルプ・事務用品のカテゴリーでは首位だ。

営業利益1,010億円のうち、半分の507億円をエレクトロニクス部門が稼いでいる。社名から連想する紙・印刷のイメージと、実際の収益構造は大きく違う。

会社は2028年度に営業利益1,300億円を目標に掲げた。直近の実績との差は約3割ある。

この記事では、有価証券報告書と決算資料から、会社が何に賭けているか、数字をどう読むか、同業のTOPPANと何が違うかを確かめる。

第1章 大日本印刷は何に賭けているのか

1-1. 会社が自分で決めた目標:営業利益1,300億円

有価証券報告書(有報)には、2027年3月期から3年間の中期経営計画が書かれている。有報とは、上場企業が毎年出す公式の報告書だ。

最終年度の2028年度に、過去最高の営業利益を超える1,300億円、ROE 9.0%を計画している。ROEとは、株主から預かったお金で、どれだけ利益を出せたかを示す割合だ。

直近の実績は、営業利益が1,010億円、ROEが8.9%だ。ROEは目標まであと0.1ポイントにまで来ている。

一方で営業利益は、目標まで29%増やす必要がある。ROEはほぼ届いているのに、利益は3割足りないということだ。

さらにその先の2032年3月期には、営業利益1,500億円以上、ROE 10%を最終目標としている。会社は、株価が純資産の何倍で評価されているかを示すPBRも、経営の評価指標に入れている。

28卒が入社する2028年は、この計画の最終年度にあたる。

面接での使い方

志望動機では「計画の最終年度に入社し、1,300億円の達成に関わりたい」と語れる。逆質問では「1,010億円から1,300億円へ、どの事業がどれだけ担う想定ですか」と聞ける。

1-2. 注力事業6つと、縮小・撤退も書く姿勢

DNPは事業を4つに分け、それぞれの扱いを有報に書いている。「注力事業」「基盤事業」「再構築事業」「成長ポテンシャル事業」の4つだ。

注力事業は次の6つだ。情報セキュア、フォトイメージング、モビリティ、産業用高機能材、デジタルインターフェース、半導体の各関連事業である。「印刷」という言葉は、6つのどこにも入っていない。

再構築事業については、成長余地が低いと判断した製品やサービスの縮小・撤退も検討すると明記している。伸ばす事業だけでなく、整理する事業も自分で書いている点は押さえておきたい。

投資の具体例も出ている。

2025年7月に、アフリカ中心に政府向けID認証サービスを持つRubicon SEZCを連結子会社にした。

Turing社と資本業務提携を結び、完全自動運転に必要な製品の開発を進めている。

久喜工場(埼玉県)で、次世代半導体向けのガラスコア基板の試作ラインが2025年12月に動き出した。

新しい中期経営計画の骨子では、注力事業の領域に5年間で2,600億円超を集中投資するとしている。

面接での使い方

逆質問で「注力事業に『印刷』の語がありません。社名の印刷と今の注力事業は、技術としてどうつながっていますか」と聞ける。志望動機では、6つのうち自分が貢献したい事業を名指しできる。

1-3. 稼ぎ頭はエレクトロニクス、ただし揺れやすい

2026年3月期の売上高は1兆5,125億円(前期比3.8%増)、営業利益は1,010億円(同7.9%増)だった。営業利益率は6.7%だ。

部門別に見ると、エレクトロニクス部門の営業利益は507億円で、全社の半分にあたる。売上に占める割合は約17%にすぎない。半導体用フォトマスクや、ディスプレイ用の光学フィルムなどを手がける部門だ。

ライフ&ヘルスケア部門は、営業利益372億円で前期比56.6%増と伸びた。EV電池向けのバッテリーパウチや、飲料向けの無菌充填システムが支えている。

ただし、稼ぎ頭には揺れもある。エレクトロニクス部門の営業利益は、前期比11.6%減った。為替の影響に加え、フォトマスクの設備・開発投資で固定費が増えたためだ。

出版・マーケティング関連など、昔ながらの印刷需要は縮み続けている。広告需要の弱さでマーケティング関連は前年を下回った。事業を入れ替えるスピードが、今後の成長を左右する。

面接での使い方

課題指摘として「稼ぎ頭の半導体関連が半導体市況に左右される点を、どう安定させますか」と切り込める。志望動機では、利益の半分を担う部門に関わりたい理由を語れる。

1-4. 資本政策がROEを支えている

DNPは、取引先の株を持ち合う「政策保有株式」を減らしている。純資産の10%未満まで縮める方針で、2,200億円規模の売却を前倒しで進めてきた。あわせて、自社の株を買い戻す自己株式の取得も続けている。

成長投資のお金は、手元資金の圧縮や有利子負債の活用でも作ると有報に書かれている。借入を増やす方向に、考え方が変わりつつある。

ROEは前期の9.6%から、直近の8.9%へ下がった。それでも目標の9.0%に近い水準を保っている。

自社株買いは、株主のお金の分母を小さくするので、ROEを押し上げやすい。営業利益が目標の1,300億円に届かないなかで、ROEが目標に近いのは、こうした資本政策にも支えられているからだと読める。

本当の改善は、半導体関連の投資が利益に変わるかどうかにかかっている。投資はいま費用として利益を押し下げているが、量産に入れば取り返す構図だ。

面接での使い方

ROEの数字だけで終わらず、「資本政策が数字を支えており、本当の勝負は半導体投資の回収だと見ています」と課題指摘にできる。逆質問では「投資の回収はいつ頃から見込んでいますか」と聞ける。

第2章 業界比較——DNPとTOPPAN、「脱印刷」の戦略差

2-1. 規模で攻めるTOPPAN、稼ぐ力で攻めるDNP

印刷業界は長らく、DNPとTOPPANの2強と言われてきた。両社の戦略は、ここ数年で大きく分かれている。

TOPPANは、北米を中心とした大型買収で規模を広げている。2026年3月期の売上高は過去最高の1兆8,050億円で、DNPを上回った。ただし営業利益は671億円で、前期比21.1%減だった。

DNPの売上高は1兆5,125億円で、TOPPANより小さい。営業利益は1,010億円で上回り、営業利益率は6.7%と、TOPPANの3.7%のほぼ倍だ。

単純にどちらが大きいかではなく、売上の中でどれだけ利益が残るかで会社を見る視点を持っておきたい。

面接での使い方

「売上規模ではなく、利益の残り方で御社を選びました」と志望動機の軸にできる。同業比較を語れる学生は多くないので、差別化にもなる。

2-2. 株主還元は同じ、収益の質が違う

両社とも、自社株の買い戻しを大きく進めている。DNPは新しい中期経営計画で5年3,000億円規模の取得を計画した。TOPPANも2026年3月期に500億円の取得を発表している。

株主への姿勢は似ているが、それを支える収益の質には差がある。TOPPANは規模を広げる総合力型、DNPは特定の領域で技術の強みを築く専門特化型だ。

どちらが優れているという話ではない。自分がどちらの成長ストーリーに乗りたいかで選ぶ会社だ。

面接での使い方

志望動機で「特定領域で技術優位を築く会社で働きたい」と、TOPPANとの違いを踏まえて語れる。逆質問では「技術優位を保つために、若手が任される仕事は何ですか」と聞ける。

大日本印刷の構造的課題と追い風は、3つに分けて第3章で扱う(### 紙媒体市場の構造的な縮小/### DXと「脱印刷」への転換圧力/### コーポレートガバナンス改革と政策保有株式売却の波)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。6期連続増収増益、そしてエレクトロニクス部門が全社利益の半分を稼ぐ収益構造への転換。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。

  • 第3章 印刷業界の構造的課題——### 紙媒体市場の構造的な縮小/### DXと「脱印刷」への転換圧力/### コーポレートガバナンス改革と政策保有株式売却の波
  • 第3.5章 面接前に押さえるDNP最新ニュース10本——決算・新中期経営計画・M&A・半導体投資・株主構成の変化まで
  • 第4章 内定者の正体——採用区分と就職難易度、ES・面接の組み立て方、逆質問のレベル別、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——年収と平均像、市場価値とセカンドキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——数字で見る組織、離職率・定着率の構造、福利厚生
  • 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答テンプレートと逆質問例
  • 第8章 やましゃんの総合評価——投資視点×就活視点

よくある質問

Q. 大日本印刷の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第132期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は861万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 大日本印刷の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第132期)では、提出会社(単体)が8,911人、連結が36,360人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 大日本印刷が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。