アシックス(7936)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、アシックスを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「4年連続で最高益」です。
有報の数字(第72期)
- 売上高
- 8,109億円
- 純利益
- 987億円
- ROE
- 39.1%
- 従業員数(連結)
- 9,455人
- 従業員数(単体)
- 988人
- 平均年間給与(単体)
- 1,080万円
- 平均年齢
- 40.4歳
- 平均勤続年数
- 12.2年
出典:アシックスの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
アシックスは「靴の会社」から「複数のブランドで稼ぐ会社」へ変わる途中にあり、その変化と残る課題を自分の言葉で語れるかが、面接の分かれ目になる。
知っておきたいことは3つある。
2025年12月期は売上高8,109億円、営業利益1,425億円で、どちらも過去最高だった。4年連続の増収増益である。
主力のランニング以外でも、オニツカタイガーなど2つの事業が売上1,000億円を超えた。オニツカタイガーの利益率は37.7%で、全カテゴリーで最も高い。利益率とは、売上のうち利益として残る割合のことだ。
売上の約75%は海外で稼いでいる。日本発のブランドだが、収益の中心は海外にある。
この記事では、会社自身が掲げた目標と現状の差を確かめ、志望動機・課題指摘・逆質問に使える材料を整理する。
第1章 アシックスは何に賭けているのか
1-1. 目標を2回、前倒しで達成した
会社の賭けは、中期経営計画に書かれている。2023年11月に発表した中期経営計画2026の当初目標は、2年前倒しで達成できる見込みになった。そのため2024年11月に、目標を引き上げた。
引き上げた目標は、営業利益1,300億円以上、営業利益率17.0%以上だ。営業利益率とは、売上のうち本業の利益が残る割合を指す。この目標も、1年前倒しで達成した。
次の目標は、2029年12月期を最終年度とする次期計画にある。連結売上高1兆円の早期達成を目指している。2025年の売上高は8,109億円で、1兆円まではまだ距離がある。
28卒が入社する2028年は、この次期計画の途中にあたる。1兆円が見えてくる時期に、働き始めることになる。
志望動機では「目標を2度上回った会社で、次の1兆円に関わりたい」と言える。逆質問では「1兆円に向けて、最も伸ばしたい事業はどこですか」と聞ける。
1-2. 戦う場所を絞り、走る人の生活に入り込む
アシックスは、戦う場所を絞っている。有価証券報告書は、ランニングシューズとテニスで「圧倒的No.1」を目指すと書く。全部で勝つとは言っていない。
買収もこの方針に沿っている。靴も服も作らない、マラソン大会の申し込みを受け付ける会社を、複数買収した。会社はこれを「ランニングエコシステム」と呼ぶ。商品の購入から大会参加、大会後までを、一続きで支える仕組みという意味だ。
国ごとではなく、ランニングやテニスといったカテゴリーで連携する体制も作っている。名前は「Global Integrated Enterprise」だ。
作って届ける仕組みにも投資が出ている。埼玉県蓮田市の新物流センターには、約71億円を投じる。2026年12月の完成予定だ。有価証券報告書は、供給体制の効率化を収益性向上の手段に挙げている。
逆質問では「レース登録会社で得たデータは、商品開発とマーケティングのどちらに効いていますか」と聞ける。志望動機では「作って届ける仕組みを磨く仕事に関わりたい」と使える。
1-3. 稼ぎ頭の主役が、ランニングの外にも増えた
主力のパフォーマンスランニングは、売上高3,635億円で今も最大の事業だ。
一方、スポーツスタイルとオニツカタイガーは、ともに前期比+40%超で伸びた。どちらも初めて売上1,000億円を超えている。
オニツカタイガーの売上は1,365億円だ。カテゴリー利益率は37.7%で、全カテゴリーで最も高い。スペイン、イギリス、フランスでは大規模な直営店を開き、欧州での地位を固め始めている。
「シューズの会社」という理解だけでは、いまのアシックスは説明できない。
志望動機では「ランニング一本から、複数ブランドで稼ぐ会社に変わった点に魅力を感じた」と言える。逆質問では「ランニングとオニツカタイガーで、求められる人材は違いますか」と聞ける。
1-4. 収益の4分の3は海外にあり、日本は反動を予想している
売上の約75%は海外だ。日本発のブランドでも、収益の4分の3は海外で稼いでいる。
日本地域の2025年の売上高は2,042億円だった。訪日外国人による売上(インバウンド)が前期比+84%と大きく伸び、全体を引っ張った。
ところが、2026年12月期の会社予想では、日本は1,800億円に減る。会社はインバウンドの反動を理由のひとつに挙げている。欧州や北米は伸びる予想で、成長の中心は海外に移る。
課題指摘では「日本の売上が減る局面で、国内の事業をどう支えるか」を論点にできる。逆質問では「インバウンドに頼らない国内の成長策は何ですか」と聞ける。
1-5. 会社自身が挙げているリスク
有価証券報告書には、会社が自分で書いたリスクがある。就活生が使いやすいのは3つだ。
中期経営計画の目標未達。グローバルでの連携が計画通りに進まない場合、達成が遅れる可能性がある。
競合と技術革新。有力企業との競争が激しく、研究開発への先行投資を回収できる保証はない。
M&A(企業買収)。のれんの減損リスクがある。のれんとは、買収額が相手の純資産を上回った分の価値で、買収先が期待ほど稼げないと損失にする必要がある。
課題指摘では「買収を重ねる戦略だからこそ、統合の進め方が成長の鍵になる」と言える。逆質問では「買収した会社との連携で、最も難しい点は何ですか」と聞ける。
第2章 業界比較——ミズノとの数値比較で見えるアシックスの立ち位置
収益性の差は圧倒的
国内の上場スポーツ用品メーカーで、よく比べられるのがミズノだ。ミズノの2026年3月期の売上高は2,590億円である。アシックスの8,109億円は、およそ3倍にあたる。
営業利益率は、ミズノが約8.7%、アシックスが17.6%だ。2倍以上の差がある。
ミズノも4期連続で過去最高の業績を出しており、弱い会社ではない。それでも差がつく理由は、アシックスがスポーツスタイルとオニツカタイガーという、利益率の高いブランドを世界で展開しているところにある。
志望動機では「同じ業界のなかで、なぜアシックスなのか」に答えられる。複数ブランドで収益性を高めた点を理由にすればよい。
平均年収に見る待遇差
有価証券報告書の平均年間給与は、アシックス(単体)が約1,080万円だ。平均年齢は40.4歳、平均勤続年数は12.2年である。
ミズノ(単体)は約699万円で、平均年齢43.0歳、平均勤続年数18.0年だ。年収はアシックスが約1.5倍高い。一方、勤続年数はアシックスのほうが短い。
年収だけでなく、勤続年数の差も合わせて読みたい。待遇を理由にするなら、その背景まで確かめておくべきだ。
逆質問では「平均勤続年数が業界内で短めですが、若手が成長する環境をどう作っていますか」と聞ける。年収の高さだけを志望動機にするのは避けたい。
グローバルブランドとしての戦い方の違い
ミズノは、国内を基盤にゴルフや野球など幅広いカテゴリーで展開している。アシックスは、ランニングの技術力を核にして、欧州・北米・東南南アジアでシェアを広げる。
海外売上比率は、アシックスが約75%だ。ミズノは国内比率が相対的に高い。働く環境の国際性も、この差に比例して大きく変わる。
志望動機では「海外の仲間と働く環境を求めている」と言える。そのうえで「自分は海外と、どう関わりたいか」を具体的に語れるようにしておきたい。
アシックスの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(### 追い風——健康志向とスポーツ参加人口の拡大/### 追い風——インバウンド需要とラグジュアリーブランド化/### 逆風——業界内の二極化と為替・関税リスク/### 逆風——中期経営計画達成へのプレッシャー)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上高8,109億円・営業利益42.4%増で4年連続最高益、営業利益率は17.6%まで急改善——。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題——### 追い風——健康志向とスポーツ参加人口の拡大/### 追い風——インバウンド需要とラグジュアリーブランド化/### 逆風——業界内の二極化と為替・関税リスク/### 逆風——中期経営計画達成へのプレッシャー
- 第3.5章 面接前に押さえるアシックスの最新ニュース10本——オニツカタイガー分社化・上場来高値・世界陸上パートナーシップまで
- 第4章 内定者の正体——選考プロセスとES「なぜアシックスか」の組み立て、面接で聞かれること
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収の中身、職種別キャリアパスと市場価値
- 第6章 働く環境の現実——数字で見る組織、退職理由の構造、福利厚生
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ志望動機と逆質問例
- 第8章 やましゃんの総合評価——5軸スコアリングと向き不向き