YUASA(8074)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、YUASAを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「創業360年の商社」です。
有報の数字(第147期)
- 売上高
- 5,450億円
- 純利益
- 120億円
- ROE
- 10.5%
- 従業員数(連結)
- 3,088人
- 従業員数(単体)
- 1,286人
- 平均年間給与(単体)
- 839万円
- 平均年齢
- 38.3歳
- 平均勤続年数
- 11.4年
出典:YUASAの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
ユアサ商事を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ユアサ商事に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはユアサ商事の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社YUASA(ユアサ商事)有価証券報告書 第147期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
創業360年の産業機械商社は、いま住宅設備で稼ぎながら、10年後に向けて生まれ変わろうとしている。
知っておきたいことは3つある。
2026年4月に社名が「株式会社YUASA」へ変わった。同じ月に5カ年計画「Reborn 2031」が始まり、28卒の入社はその3年目にあたる。
稼ぎ手は住宅設備・配管材・空調だ。利益の51.9%を占め、売上の構成比41.0%を上回る。
目標は大きい。一方で、減益の事業や本社費用という課題も、有報の数字から読み取れる。
この記事では、会社が何に賭け、どこで稼ぎ、どこに課題があるかを、有報の数字で確かめる。
第1章 ユアサ商事は何に賭けているのか
1-1. 社名が変わり、10年の目標が決まった
2026年4月、ユアサ商事は「株式会社YUASA」へ社名を変えた。海外子会社の名前からも「TRADING(商事)」が消えている。
長期ビジョン「YUASA vision 370」は、2036年3月期に経常利益300億円以上、海外売上高1,000億円以上を掲げる。経常利益とは、本業の利益に金利などの収支を加えた、会社の通常の利益だ。当期は172億円で、10年で約1.7倍にする計画になる。
最初の5年は基盤づくりで、2031年3月期の目標は経常利益200億円以上、海外売上高400億円以上だ。有報は、伸びを加速させるのは後半の5年と明言している。海外では、タイ・バンコクに住宅設備のモデルハウス「YUASA SAKURA HOUSE」を開設した。
志望動機では、基盤づくりの5年に加わりたい理由を語れる。逆質問では、タイのモデルハウスの次の一手を聞ける。
1-2. 5年で400億円の投資と、会社が決めた指標ROIC
Reborn 2031の5年間で、事業で得る現金をもとに累計400億円程度の投資を予定している。うち30億円程度は、人財基盤の強化に充てる。
会社が自分で決めた指標がROICだ。事業に投じたお金に対して、どれだけ利益が出たかを示す。目標は2031年3月期に8%以上、2036年3月期に10%以上である。
ROICは借入金も含めて測る。借金を増やしても数字をよく見せられない指標だ。
逆質問では「人財への30億円は何に使うのか」と聞ける。ROICを目標に置く理由を自分の言葉で語れれば、会社の経営を見ている学生だと伝わる。
1-3. 稼ぎ手は住設・管材・空調——決算と社員の数字
当期の売上高は5,450億円、親会社株主に帰属する当期純利益は120億円だった。連結の従業員3,088人のうち、965人が住設・管材・空調の部隊だ。社内で最大の部隊であり、利益でも最大の事業になっている。
働く側の数字も見ておく。単体の従業員は1,286人で、平均年齢は38.3歳、平均勤続は11.4年だ。平均年間給与は839万円で、前期より3.5%増えた。
志望動機では「住まいのインフラを支える事業が利益の中心だから」と根拠を示せる。年収や勤続年数は、長く働くイメージを語る材料になる。
1-4. 課題は減益の事業と本社費用
当期は事業ごとに明暗が分かれた。工業機械は利益が13.8%減った。有報によれば、自動車関連が通商政策の影響を受けた一方、半導体や航空機関連の設備投資は底堅かった。
建築・エクステリアは売上が大きく伸びたのに、利益は3.9%減った。有報に理由は書かれていないため、売上の中身は面接で確かめたい点だ。
本社の管理部門の費用は47億円で、各事業の利益合計の2割強にあたる。
課題指摘では、工業機械の減益に省人化の提案で貢献したいと語れる。逆質問では、建築・エクステリアの利益が伸びなかった要因を聞ける。
第2章 産業機械商社の収益構造
2-1. 「モノ売り」から「コト売り」へ
有報には、戦略を示す一文がある。「『モノ売り』と『コト売り』の両面でマーケットアウト型へのビジネス変革を推進」と書かれている。
「モノ売り」は商品そのものを売ること。「コト売り」は課題の解決を売ることだ。例えば、工作機械を1台売るのがモノ売り、工場の生産性を上げる仕組みを提案するのがコト売りである。
具体例は、無人搬送ロボットなど、現場の省人化に役立つロボット・AI活用の提案だ。有報は、建設業や物流業を中心に人手不足が常態化しているとも書く。建設機械は売上がほぼ横ばいなのに、利益は32.0%伸びた。コト売りが効いている可能性がある。
志望動機では、人手不足の解決を商社の立場で支えたいと語れる。逆質問では、コト売りの具体的な案件を聞ける。
2-2. 住設・管材・空調は規制を追い風にした
当期は「省エネ基準」の適合義務化などで、戸建て住宅を中心に新設住宅の着工戸数が落ち込んだ。それでも有報は、機能性の高い商品の需要が堅調だったと記す。
その結果、住設・管材・空調の利益は12.1%増えた。省エネ基準が厳しくなれば、断熱材や省エネ空調など、高性能な商品が選ばれやすくなる。数が減っても、単価の高い商品への置き換えで利益を伸ばせたと読める。
逆風に見える環境を、強みに変えた事例として語れる。逆質問では、省エネ基準の次に追い風となる規制や需要を聞ける。
2-3. エネルギーは48人で売上175億円
最も特徴的なのがエネルギーだ。従業員は48人しかいないのに、売上は175億円ある。1人あたりの売上は6セグメント中で最も多い。
一方で、利益率は6セグメント中で最も低い。当期は売上が6.0%減ったが、利益はわずかに増えた。少人数で大きな金額の取引を回す、薄利の事業だ。有報は、取引先のカーボンニュートラルを支える「グリーン事業」を全社で進めると書く。
課題指摘では、薄利の事業を付加価値のある事業へ変える視点を示せる。逆質問では、エネルギー事業におけるグリーン事業の位置づけを聞ける。
YUASAの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(営業利益率3.1%という薄さ/管理部門費用が利益の22.2%/工業機械の△13.8%/建築・エクステリアの逆転)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上+3.1%・営業利益+6.2%・経常利益+7.7%・純利益+17.4%と下に行くほど伸び、6セグメント利益213億円のうち住設・管材・空調が110億円で51.9%(売上構成は41.0%)、管理部門費用47億円が報告セグメント利益の22.2%を食い、建設機械は売上+0.6%で利益+32.0%・建築エクステリアは売上+11.3%で利益△3.9%、エネルギーは従業員48人で1人あたり売上3.6億円——ユアサ商事の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 産業機械商社の構造的課題——営業利益率3.1%という薄さ/管理部門費用が利益の22.2%/工業機械の△13.8%/建築・エクステリアの逆転
- 第3.5章 面接前に押さえるユアサ商事の最新ニュース10本——創業360年・省エネ基準・ロボットAI・DX投資56億円まで
- 第4章 内定者の正体——「機械が好き」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収839万円(38.3歳)の読み方と、単体1,286人組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——女性役員比率23.1%の他社比較、勤続11.4年の意味、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生