ユニ・チャーム(8113)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、ユニ・チャームを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「24期連続で増配」です。
有報の数字(第66期)
- 売上高
- 9,453億円
- 純利益
- 652億円
- ROE
- 8.3%
- 従業員数(連結)
- 16,542人
- 従業員数(単体)
- 1,429人
- 平均年間給与(単体)
- 875万円
- 平均年齢
- 40.7歳
- 平均勤続年数
- 14.7年
出典:ユニ・チャームの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
ユニ・チャームを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ユニ・チャームに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはユニ・チャームの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、ユニ・チャーム株式会社 有価証券報告書 第66期(2025年1月1日〜2025年12月31日、IFRS)に基づきます。2026年8月5日発表の2026年12月期 中間決算も反映しています。
結論から言う。ユニ・チャームは、売上が4.4%減り、本業の利益が21.4%減った直後に、2030年のROE 17%という高い目標を掲げた会社だ。
知っておきたいことは3つある。
ROE(株主のお金でどれだけ稼いだかを示す比率)は、当期が8.3%だ。会社は2030年に17%を目指しており、その差が最大の論点になる。
従業員の大半はパーソナルケア(おむつ・生理用品)にいる。その事業の利益が落ちた。一方、ペットケアは売上が伸びた。
売上の3分の2近くは海外だ。連結の従業員は1万6,542人で、本社(単体)は1,429人しかいない。
この記事では、この3点が有価証券報告書のどこに書かれているかを確かめる。
第1章 ユニ・チャームは何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で書いた「3つの賭け」
有価証券報告書の「対処すべき課題」に、会社の賭け先が書いてある。中心は、2026年から始まる第13次中期経営計画だ。
「2030年のROE17%達成に向け、事業成長に加え、資本政策の再構築(Rebirth)の両輪で推進」と書かれている。当期のROEは8.3%なので、5年で2倍以上にする計画だ。
賭けの1つ目は、アジアの高齢化だ。タイ、インドネシア、ベトナムでは、大人用排泄ケア用品の需要が高まっている。会社は日本式のケアモデルを広げている。中国は高齢化が日本以上の速さで進む。ただ、専用品の認知度は低く、ベッドシーツなどで代用する例も多い。市場はこれから立ち上がる段階だ。
2つ目は、国内の切り分けだ。赤ちゃん用と生理用品は、対象人口が減ると会社自身が書いている。大人用ケアとペット用品は引き合いが強い。同じ会社の中に、縮む市場と伸びる市場が同居している。
3つ目は資源循環だ。使用済み紙パンツから作った再生パルプを、新しい紙おむつの原材料の一部に使っている。
志望動機で「どの賭けに自分が関わりたいか」を1つ選んで語れる。逆質問では「ROE 17%に向けて、どの事業の貢献を最も期待しているか」を聞ける。
1-2. 当期のつまずき——売上△4.4%、コア営業利益△21.4%
第66期(2025年12月期)は減収減益だった。売上高は9,452億円で、前期より4.4%減った。
コア営業利益は1,088億円で、21.4%減った。これは売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた、本業の利益だ。売上の減り方の約5倍の速さで、利益が落ちている。
セグメント(事業区分)別に見ると、落ちた場所がはっきりする。パーソナルケアは売上が6.3%減り、コア営業利益は25.0%減った。ペットケアは売上が5.0%増えた。
人員は主力に偏っている。連結の従業員のうち、約93%がパーソナルケアにいる。落ち込んだ事業に、人の大半がいるということだ。
課題指摘として「主力のパーソナルケアの利益回復が最優先の課題だ」と述べられる。逆質問では「利益率の回復は、価格と数量のどちらで進める想定か」と聞ける。
1-3. 減益の原因は3つ——外部ショックと競争
有価証券報告書は、減益の原因を具体的に書いている。
1つ目は中国の風評だ。生理用品の品質・廃棄管理に関する風評が報道され、販売が一時的に減った。会社はeコマースでの情報発信を強めて対応した。
2つ目は東南アジアの価格競争だ。出生数の減少と景気の低迷で、消費者が安い商品へ移る「ダウントレード」が起きた。ユニ・チャームは高品質・高付加価値で戦ってきたため、これは逆風になる。
3つ目はインドの制度変更だ。2025年9月のGST(物品・サービス税)改正で、69億円の評価損失を計上した。ただし、これだけでは利益の減少額を説明できない。
3つに共通するのは、需要が消えたのではなく、外部の変化と競争が原因だという点だ。
「減益の原因を3つに分けて把握している」と示せば、課題の理解を伝えられる。ダウントレードへの対応策は、逆質問にできる。
1-4. ROE 17%への道と、28卒が入る時期
ROE 17%の中身を見ておく。自己資本比率(総資産のうち自分のお金の割合)は、5期で56.5%から65.0%へ上がった。自己資本が厚くなると、ROEは上がりにくくなる。
会社が「事業成長」に加えて「資本政策の再構築(Rebirth)」を掲げる背景には、この点があると読める。これは有価証券報告書の記述に基づく筆者の読みだ。
株主還元には会社自身の目標がある。年間配当を増やす記録は24期連続で、DOE(株主資本配当率)は4.0%、総還元性向は50%以上だ。減益の年も、増配を続けている。
28卒が入社する2028年4月は、計画の3年目にあたる。2030年の答えが出る前に、計画の真ん中で働くことになる。
志望動機に「計画の途中から参加し、2030年の目標に貢献したい」と入れられる。逆質問では「資本政策と事業成長で、現場に求められる役割は何か」と聞ける。
第2章 日用品業界の収益構造
2-1. 景気に強く、人口動態に従う
おむつ・生理用品・介護用品は、景気が悪くても使うのをやめられない。だから日用品メーカーは景気変動に強い。ただし、需要の天井は人口が決める。
日本では少子化でベビー用が縮み、高齢化で大人用が伸びる。ユニ・チャームの国内戦略が『ライフリー』など大人用ケアに厚いのは、この人口の動きを映している。成長は、海外の人口と普及率から取る。海外売上が3分の2近くを占めるのは、その結果だ。
志望動機で「人口が減る国内で、なぜ海外が成長の軸なのか」を自分の言葉で説明できる。
2-2. シェアNo.1と、市場を作る力
日用品の勝負は、店の棚をどれだけ取れるかで決まる。ユニ・チャームは国内のベビーケアとフェミニンケアで、市場シェアNo.1を保っている。
シェアが強いブランドは、原材料が上がったときに値上げが通りやすい。当期の国内は、高付加価値商品で価格に転嫁し、安定した成長を守った。一方、シェア基盤の弱い東南アジアでは、ダウントレードに苦しんだ。
もう1つの強みは、市場そのものを作る力だ。生理用品の普及率が低いインドでは、啓発活動と、現地の価格感度に合う個包装の仕様で、取扱店を広げた。
「国内と海外でブランド力の差が出た」という見方は、課題指摘に使える。インドの事例は、志望動機の具体例になる。
2-3. 競合比較——花王との違い
最も比べやすい相手は花王だ。花王は化学を土台に、洗剤や化粧品まで広がる総合メーカーで、36年連続で配当を増やしている。ユニ・チャームは不織布・吸収体に特化し、おむつ・生理用品・ペットに集中する。24期連続の増配で、還元の考え方は近い。
違いは構造だ。ユニ・チャームは単体従業員が1,429人で、連結の8.6%しかいない。この少人数の本社が、世界の製造と販売を束ねている。
「大きな本社が管理する会社ではなく、小さな本社が世界を回す会社だ」と語れる。逆質問では「少人数の本社で、若手はどんな裁量を持つか」と聞ける。
ユニ・チャームの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(中国という難所——風評・低価格志向・出生数減の三重苦/東南アジアの価格競争——ローカル勢の台頭とダウントレード/新興国の制度リスク——インドGSTの69億円が教えること/中計目標との距離——利益率11.5%から17%へ、ROE 8.3%から17%へ)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上9,452億円(△4.4%)、コア営業利益率11.5%(前期14.0%)、減益の3要因(中国風評・アジア価格競争・インドGST)、それでも24期連続増配、そして翌期は初の売上1兆円予想——ユニ・チャームの谷と回復力を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 日用品業界の構造的課題——中国という難所——風評・低価格志向・出生数減の三重苦/東南アジアの価格競争——ローカル勢の台頭とダウントレード/新興国の制度リスク——インドGSTの69億円が教えること/中計目標との距離——利益率11.5%から17%へ、ROE 8.3%から17%へ
- 第3.5章 面接前に押さえるユニ・チャームの最新ニュース10本——中間決算+14.1%増益・初の1兆円予想・ペット事業まで
- 第4章 内定者の正体——「商品が好き」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収875万円の読み方と、連結1.65万人・単体1,429人でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——女性管理職比率19.5%の他社比較、男性育休102.7%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生