JR東日本(9020)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、JR東日本を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「利益の3割は不動産・ホテル」です。
有報の数字(第39期)
- 売上高
- 3兆847億円
- 純利益
- 2,478億円
- ROE
- 8.4%
- 従業員数(連結)
- 70,623人
- 従業員数(単体)
- 39,598人
- 平均年間給与(単体)
- 819万円
- 平均年齢
- 39.8歳
- 平均勤続年数
- 17.1年
出典:JR東日本の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
JR東日本を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、JR東日本に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはJR東日本の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、東日本旅客鉄道株式会社 有価証券報告書 第39期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。直近の四半期は、2026年7月31日公表の決算説明資料に基づきます。
JR東日本は、運賃を上げて鉄道を立て直しながら、稼ぎの軸を駅の外の不動産に広げている鉄道会社だ。
知っておきたいことは3つある。
・利益の約3割は、従業員の8.5%が働く不動産・ホテルが稼ぐ。鉄道会社というイメージと、利益の出どころがずれている。
・会社が掲げた中期の目標は、ROE 10%以上だ。当期の実績は8.4%で、目標との差をどう埋めるかが、この会社の論点になる。
・運賃を上げたのは、会社発足以来、実質的に初めてだ。2026年3月14日に改定した。
この記事では、利益の出どころ、ROE目標の読み方、運賃改定の意味を確かめ、面接で自分の言葉で語れる形にする。
第1章 JR東日本は何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で決めた目標——2031年度にROE 10%以上
会社は2025年7月、グループ経営ビジョン「勇翔2034」を発表した。鉄道を中心とする「モビリティ」と、駅や街を使う「生活ソリューション」の二軸で伸びる計画だ。
2031年度を一つの区切りとし、ROEを最上位の目標(KGI)に据えた。ROEは、株主のお金でどれだけ稼いだかを示す割合である。目標は10%以上で、当期は8.4%だった。
有報は、二軸の「それぞれの成長と、二軸を有するからこそ可能となる様々なシナジーの創出」を掲げる。安全を最優先にする点は変えないとも書く。
志望動機では、鉄道の土台の上に事業を広げる二軸経営を選ぶ理由にできる。逆質問では、ROE 10%以上への道筋を聞ける。
1-2. 賭けは口先ではない——投資額は不動産が運輸を上回った
当期の設備投資で目を引くのは、不動産・ホテル事業の4,543億円が、運輸事業の4,239億円を上回ったことだ。品川エリアの「TAKANAWA GATEWAY CITY」や「OIMACHI TRACKS」の建設が中心である。
2026年4月15日には、伊藤忠グループと不動産事業を統合する契約を結んだ。JR東日本不動産と伊藤忠都市開発を合併させ、JR東日本が議決権の過半を持つ。2026年10月1日の統合を予定し、今後5年で売上2,500億円規模をめざす。同じ領域を買い重ねるロールアップではなく、他社の開発力を取り込む型だ。
資産の入れ替えも進む。当期は政策保有株式(取引先との持ち合い株)の一部を売却し、津軽線と久留里線の一部区間は2027年4月に廃止する。
志望動機では、駅という資産を事業に変える投資を根拠にできる。課題指摘では、統合後の新会社と鉄道の役割分担を論点にできる。
1-3. 28卒が入るのは、成長投資が落ち着く直前の時期
配当性向(利益のうち配当に回す割合)は、成長投資が落ち着く2027年度に向けて、段階的に40%へ引き上げる、と有報にある。裏返せば、大型の開発投資は2027年度ごろまでが山場だ。
28卒の入社は2028年4月で、その直後にあたる。会社の目標では、2028年3月期の営業利益は4,880億円で、当期より上積みする。営業利益は、本業の儲けを示す利益である。
入社後の数年は、積み上げた投資を収益に変えられるかが問われる。投資期から回収期への境目に入る世代、と整理できる。
志望動機では、回収期に入る世代として関わりたい、と語れる。逆質問では、2028年3月期の目標に向けた現場の課題を聞ける。
1-4. 稼ぎ頭はどこか——利益の約3割は、従業員の8.5%が稼ぐ
JR東日本の事業は4つに分かれ、売上の3分の2は運輸事業(鉄道が中心)だ。
利益と人員を並べると、様子が変わる。運輸事業は利益の46%を稼ぎ、連結従業員の75%を抱える。不動産・ホテル事業は利益の約3割を稼ぎ、従業員は8.5%である。
不動産・ホテルは、駅ビルやオフィスの賃貸、ホテル、不動産販売を指す。少ない人数で利益を出せるのは、土地と建物という資産が収益を生むからだ。ただし、不動産販売は物件を売る時期で利益が振れる。
志望動機では、人員あたりの利益が高い領域に関わりたい理由を語れる。課題指摘では、利益の3割が振れやすい事業にある点を論点にできる。逆質問では、運輸から生活ソリューションへの人の動かし方を聞ける。
1-5. 働く側の事実——単体39,598人、平均年間給与819万1,696円
提出会社(単体)の従業員は39,598人で、ほぼ全員が運輸事業の38,879人だ。連結では70,623人いる。
単体の平均年齢は39.8歳、平均勤続年数は17.1年。平均年間給与は819万1,696円で、前期比+6.8%だった。賞与と基準外賃金を含む。2026年4月には人事・賃金制度を改正し、定年も満65歳に延びた。
志望動機では、制度が変わる時期に入社する意味を語れる。逆質問では、改正後の評価と昇給の運用を聞ける。
第2章 鉄道業の収益構造
2-1. 新幹線が稼ぎ、在来線はほとんど利益が出ない
鉄道の利益は、路線ごとに大きく違う。会社の決算説明資料によると、2026年3月期の営業利益率は新幹線が34.1%、在来線が0.6%だった。営業利益率は、売上のうち利益として残る割合だ。
営業キロ(路線の長さ)は、新幹線が1,194km、在来線が6,108kmある。長さの大半は在来線だが、利益を生むのは新幹線だ。在来線は、毎日大量の人を運び沿線の暮らしを支える一方で、ほとんど利益が残らない。
志望動機では、在来線を支える使命と、事業としての厳しさの両方を語れる。課題指摘では、在来線の収益を上げる打ち手を論点にできる。
2-2. 運賃は自由に決められない——認可制と「実質初」の改定
鉄道の運賃には上限がある。鉄道事業法により、旅客運賃と新幹線特急料金の上限は国土交通大臣の認可で決まり、その範囲内なら事前の届出で変えられる。路線の廃止も事前の届出が要り、廃止日の1年前までに出す。
有報は、消費税の転嫁などを除くと実質的に初めてとなる運賃改定を、2026年3月14日に実施したと書く。人口減少や物価高騰で、設備投資や修繕の資金を安定して確保しにくくなったことが理由だ。会社は、費用をもとに上限を決める総括原価方式そのものの見直しも、国に求めている。
価格を自分で決めきれない制約も、稼ぎの軸を駅の外へ広げる一因だと読める。
志望動機では、公共性と事業性の両立に取り組みたい理由にできる。逆質問では、改定後の利用動向をどの指標で見ているかを聞ける。
2-3. 駅と線路用地を、事業の場に変える
グループの商品やサービスは、毎日のべ3,500万人が使う。有報は、この接点を生かし、鉄道用地を再編して生活ソリューションと組み合わせる方針を示す。
組織も変わった。2026年7月、第一線の職場と本部・支社を融合し、36の事業本部と本社の2層構造に改めた。現業と非現業の区別をなくし、地域ごとに事業を動かす。
鉄道会社の仕事は、運転や保守だけではない。駅を街の中心として育てる仕事も、同じ会社の中にある。「鉄道が好き」とだけ語ると、実態とずれる。
志望動機では、鉄道と街づくりの両方に関わる会社だと語れる。逆質問では、事業本部制になって若手の仕事がどう変わったかを聞ける。
JR東日本の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(鉄道収入への依存と運賃改定/安全とガバナンスの回復費用/不動産の振れと財務の重さ/人手不足と地方)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
■この会社の面接で落ちる人の共通点
「安定した会社だから志望しました」と言ったあとに、面接官から「有報は、連続した輸送トラブルと不適切事象をお詫びしています。そのうえで、安定とは何を指しますか」と返されて、言葉が止まる。第4章では、この止まり方を3パターンに分けて、どこで差がつくかを書いた。
■逆質問の1本目だけ、ここに置いておく
「不動産・ホテルは従業員の8.5%で、利益の約3割を稼いでいます。2031年度のROE 10%以上に向けて、不動産と鉄道のどちらの利益を、どの順で伸ばす計画でしょうか。」
この質問に必要な数字は、人員比8.5%と、利益比の約3割の2つだ。残り6本は、運賃改定後の利用動向、修繕費の増額、人材の配置転換、伊藤忠との統合、ローカル線の判断基準、エンゲージメント調査を、同じ型で組んである。
ここまでが無料パートです。従業員の8.5%が働く不動産・ホテルが利益の約3割を稼ぎ、ROEは8.4%で目標は2031年度の10%以上、営業利益率は新幹線34.1%・在来線0.6%、平均年間給与は819万1,696円(+6.8%)——JR東日本の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 鉄道業の構造的課題——鉄道収入への依存/安全とガバナンスの回復費用/不動産の振れと財務の重さ/人手不足と地方
- 第3.5章 面接前に押さえるJR東日本の最新ニュース10本——営業利益4,142億円・運賃改定7.1%・第1四半期の純利益680億円まで。1本ごとに「面接で使うなら」
- 第3.6章 数字で補足——5期の推移・セグメント別の利益と人員・ROEの分解・財務・株主還元
- 第4章 内定者の正体——「安定した公共インフラだから」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収819万1,696円の読み方と、連結70,623人でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続17.1年の読み方、女性役員比率、雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本(それぞれの狙いつき)
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生