近鉄GHD(9041)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、近鉄GHDを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「持株会社の年収が高い」です。

有報の数字(第115期)

売上高
1兆7,503億円
純利益
538億円
ROE
9.3%
従業員数(連結)
44,759人
従業員数(単体)
264人
平均年間給与(単体)
823万円
平均年齢
44.6歳
平均勤続年数
17.7年

出典:近鉄GHDの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

近鉄グループホールディングスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、近鉄グループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは近鉄グループの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、近鉄グループホールディングス株式会社 有価証券報告書 第115期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

結論から言う。近鉄は単なる「鉄道会社」ではなく、国際物流まで抱える複合企業であり、いま事業の組み替えに踏み出している。

知っておきたいことは3つある。

営業収益は1兆7,503億円で、前期比+0.5%。このうち最大は国際物流で43.0%を占め、運輸(鉄道)は12.8%にとどまる。

利益は逆の順になる。運輸がセグメント利益(事業別の利益)の42.3%を稼ぎ、国際物流の利益率は1.59%と低い。

会社自身が有報に「株価は十分に評価されなかった」と書いた。そのうえで、事業と資産の入替えを進めると宣言している。

この記事では、会社が何に賭けているのか、そして鉄道業がどう稼いでいるのかを確かめる。

第1章 近鉄グループHDは何に賭けているのか

1-1. 会社は有報に「株価は評価されなかった」と書いた

出発点は、会社が有価証券報告書(有報)に書いた自己評価の一文だ。「当社株価は市場全体や鉄道業界と比較して相対的に低位で推移し、資本市場から十分に評価されませんでした」とある。上場企業が評価不足を自ら認めるのは珍しい。

理由として挙げるのは、新型鉄道車両の入替えと首都圏の賃貸資産の取得だ。これで有利子負債(借入)が一時的に増えた。金利の上昇も重なった。

背景には、2025年3月に決めた2つの計画がある。10年後の姿を描く「長期ビジョン2035」と、その実行計画の「中期経営計画2028」だ。後者で会社は、投じた資金からどれだけ利益を出せたかを測る「ROIC」を経営指標に入れた。

計画初年度の2025年度、営業利益は894億円で、前期比+6.0%となった。期初の目標は達成している。それでも株価は評価されなかった。利益は出たが、資金の使い方の効率は足りなかった。これが当期の総括だ。

面接での使い方

志望動機で「弱点を自ら認め、組み替えに踏み出す姿勢に賭けたい」と述べる根拠になる。「ROICを現場の仕事にどう落とすのか」は逆質問になる。

1-2. 打ち手は、資産の入替えと取締役会の作り替え

会社の答えは2つある。第1は計画の更新だ。事業や資産の「選択と集中」を加速し、「バランスシートの入替え」を進める。持つ資産を売り、買い、組み替えるという意味だ。外部との連携・協業も使うとしており、自前主義からの転換が読み取れる。

第2は監督の仕組みの変更だ。株主総会の承認を得たうえで、監査等委員会設置会社へ移行する予定である。取締役会の監督機能を強め、業務執行を速くする狙いと書かれている。

ただし、新型車両の入替えは借入を増やした要因でもあった。自己資本比率(総資産のうち返済不要の自己資金の割合)は23.6%と低い。支払利息は前期比+24.3%増えた。安全への投資と資本の効率が、正面からぶつかっている。

なお有報は、経営資源が大阪・奈良・三重など沿線に集中しており、南海トラフ地震で深刻な影響を受けうるとも明記している。

面接での使い方

課題指摘として「安全投資と資本効率の両立が論点だ」と語れる。逆質問は「バランスシートの入替えで、見直しの対象になる事業はどこか」が使える。

1-3. 28卒が入るのは、中期経営計画の最終年度

計画を時間軸に並べると、28卒の立ち位置が見える。

・2025年3月:長期ビジョン2035と中期経営計画2028を策定
・2025年度:計画初年度。利益面で期初の目標を達成
・2026年度以降:計画をアップデートし、事業と資産の入替えを加速
・2028年4月:28卒が入社
・2028年度:中期経営計画の最終年度
・2035年:長期ビジョンの「ありたい姿」。28卒は入社8年目

入社する年は、ROICという新しい物差しの成果が問われる年にあたる。2035年に向けた計画の後半を担うのが、28卒の世代だ。「安定した私鉄」という枠では、この会社は語れない。

面接での使い方

志望動機で「最終年度に入社し、2035年へ向けた後半を担いたい」と時間軸で語れる。逆質問は「2028年度の最終年度に、どの水準を目指すのか」が使える。

1-4. 国際物流が最大で、利益率は最も低い

報告セグメント(事業区分)は6つある。外部顧客への営業収益では、国際物流が43.0%で最大だ。運輸は12.8%にすぎない。ところが利益は逆で、運輸がセグメント利益の42.3%を占める。利益率は運輸16.41%に対し、国際物流は1.59%で最も低い。

国際物流は、近鉄エクスプレスをTOB(株式公開買付け)で取得し、130社を連結に加えて生まれた事業だ。人員は18,351人にのぼる。当期は利益が前期比△7.4%と減り、のれん償却額33億円も計上した。のれんとは、買収価額が相手の純資産を上回った差額のことだ。

一方、設備投資は不動産に振り向けられた。不動産は845億円で前期の3.91倍となり、全体の56.0%を占める。買収で規模を得たあと、投資先を移している。

面接での使い方

課題指摘として「規模は買えても利益率は買えない。国際物流の採算が課題だ」と語れる。逆質問は「不動産への投資は、国際物流の低い利益率をどう補うのか」が使える。

1-5. 「近鉄の年収」は、どの会社の数字かで変わる

連結従業員は44,759人だ。有報は、持株会社(グループを束ねる会社)の数字を最初に載せる。その従業員は264人で、全員が管理部門に所属する。平均年齢は44.6歳、平均勤続年数は17.7年、平均年間給与は822万円だ。

これに対し、鉄道を運行する近畿日本鉄道は6,674人で、平均年間給与は640万円。同じ「近鉄」でも、数字が大きく違う。有報によれば、給与制度はグループ各社がそれぞれ整えている。

面接での使い方

「年収は持株会社と鉄道会社で水準が違うと理解している」と言えば、調べ方の深さが伝わる。逆質問は、志望する会社の給与制度について聞くとよい。

第2章 鉄道業の収益構造

2-1. 鉄道は収益の8分の1だが、利益の4割を稼ぐ

運輸が占める割合は、見る数字で変わる。外部収益では12.8%、連結従業員では27.6%、セグメント利益では42.3%だ。鉄道は規模こそ小さいが、グループの稼ぎ頭である。運輸の利益率16.41%は、グループ内で最高だ。

ただし、有報の読み方としては、鉄道だけでは規模が足りない。沿線人口が増えなければ、鉄道収入は伸びにくい。だから国際物流や不動産などへ広げている。

当期は大阪・関西万博で関西の鉄道需要が押し上げられ、運輸の利益は+9.8%となった。ただし、会社の2027年3月期予想は万博の反動減を織り込んでいる。

面接での使い方

志望動機で「高収益の鉄道を軸に多角化する構造に魅力を感じた」と語れる。逆質問は「万博の反動減を、どう埋めていくのか」が使える。

2-2. 国際物流は「規模は大きく、利幅は薄い」事業

国際物流は、荷主から預かった貨物を、航空会社や船会社のスペースを使って運ぶ事業だ。自社で飛行機や船を持つわけではない。荷主から受け取る運賃と、支払う費用の差が利益になる。だから収益は大きいが、利幅は薄い。

世界の貨物需要が、そのまま業績に表れる。当期は利益が△7.4%と減った。一方で、2027年3月期の第1四半期には大幅増益が報じられている。この事業は波が大きい。

のれん償却額33億円は、買収時に将来の収益力を見込んで支払った上乗せ分の一部を、費用にしたものだ。見込みを一部見直したと読める。

面接での使い方

課題指摘として「18,351人を抱える事業の採算をどう上げるかが中期の課題だ」と語れる。逆質問は「景気の波が大きい国際物流で、安定して稼ぐ工夫は何か」が使える。

近鉄GHDの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(純利益+15.1%の正体は、税金の減少だった/万博の反動減が来る/自己資本比率23.6%と、投資が営業CFを上回る構造/2027年3月期は純利益△12.6%の計画)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。営業収益1兆7,503億円(+0.5%)に対し運輸業等営業費及び売上原価を△0.03%に抑えて営業利益894億円(+6.0%)と本業は伸びた一方、支払利息が+24.3%増えて経常利益845億円(+3.7%)、特別損失も+48.2%(減損損失2.03倍・のれん償却額33億円・店舗閉鎖損失13億円)で税金等調整前当期純利益は+0.2%とほぼ横ばいだったにもかかわらず、法人税等が△27.7%(法人税等調整額が+46億円から△87億円へ133億円動き税負担率は33.6%から24.3%へ9.4ポイント低下)となって親会社株主帰属当期純利益は537億円(+15.1%)まで伸びたこと、6つのセグメントでは国際物流が外部収益の43.0%・従業員の41.0%(18,351人)を占めながら利益率1.59%・利益構成13.4%にとどまる一方、運輸は収益12.8%で利益の42.3%・利益率16.41%を稼ぎ1人あたりでも運輸308万円に対し国際物流65万円と4.7倍の差があること、その国際物流は2022年の近鉄エクスプレスTOB(130社を連結)で加わり営業収益を1年で2.26倍にした事業であること、設備投資は1,509億円(+81.7%)で不動産に56.0%(845億円・前期の3.91倍)が振り向けられフリーキャッシュフローは△208億円、自己資本比率23.6%・提出会社264人(年収822万8,945円)と最大人員会社の近畿日本鉄道6,674人(640万5,420円)の182万円差、そして2027年3月期は万博の反動減で純利益470億円(△12.6%)の計画——近鉄グループHDの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 鉄道業の構造的課題——純利益+15.1%の正体は、税金の減少だった/万博の反動減が来る/自己資本比率23.6%と、投資が営業CFを上回る構造/2027年3月期は純利益△12.6%の計画
  • 第3.5章 面接前に押さえる近鉄グループHDの最新ニュース10本——持株会社と鉄道本体の182万円差・国際物流1.59%・純利益△12.6%計画まで
  • 第4章 内定者の正体——「鉄道が好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——年収823万円と641万円の読み方と、6事業でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続23.2年、男性育休95.4%、グループ各社の人事制度
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 近鉄GHDの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第115期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は823万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 近鉄GHDの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第115期)では、提出会社(単体)が264人、連結が44,759人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 近鉄GHDが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。