阪急阪神HD(9042)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、阪急阪神HDを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「年収に300万円の差」です。

有報の数字(第188期)

売上高
1兆2,035億円
純利益
785億円
ROE
7.3%
従業員数(連結)
23,867人
従業員数(単体)
241人
平均年間給与(単体)
920万円
平均年齢
42.4歳
平均勤続年数
17.5年

出典:阪急阪神HDの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

阪急阪神ホールディングスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、阪急阪神ホールディングスに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは阪急阪神ホールディングスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、阪急阪神ホールディングス株式会社 有価証券報告書 第188期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

阪急阪神HDは、鉄道を土台に不動産で稼ぎ、2030年度に事業利益1,600億円を目指す会社だ。

知っておきたいことは3つある。

・利益の中心は不動産だ。 鉄道会社というより、不動産会社が鉄道を持つ姿に近い。
・会社自身が数字の目標を掲げている。 目標と現状の差が、志望動機や逆質問の材料になる。
・同じグループでも事業で処遇が違う。 利益率の低い旅行は、年収も低い。

この記事では、会社が何に賭け、どの事業が稼ぎ、働く側に何が返っているかを確かめる。

第1章 阪急阪神ホールディングスは何に賭けているのか

1-1. 会社が自分で決めた目標——2030年度に事業利益1,600億円、ROE 8%

有報の「経営方針」には、会社自身が決めた目標が2つある。1つは2030年度の事業利益1,600億円だ。事業利益とは、会社が目標に使っている利益の指標である。

もう1つは、早期にROE 8%を持続的に達成することだ。ROEは、株主から預かったお金でどれだけ利益を出したかを示す。当期は7.3%で、目標にはまだ届いていない。

「持続的に」という言葉がある。単年で超えるだけでなく、毎年出し続けるという意味だ。

成長の柱は、分譲マンションや短期回収型事業、海外事業を軸にした不動産の拡大である。短期回収型事業とは、開発した物件を売って早く資金を回収する事業だ。

株主還元は、2025〜2030年度の6年累計で総還元性向50%以上とした。総還元性向とは、利益のうち配当と自社株買いに回す割合である。年間配当の下限は1株100円だ。

面接での使い方

志望動機で「2030年度の事業利益1,600億円に、自分がどう貢献するか」を語れる。逆質問では「ROE 8%を毎年出すうえで、最も重いテーマは何か」と聞ける。

1-2. 入社は目標の2年前——2026年度は万博の反動が来る

28卒の入社は2028年4月だ。会社の時間軸に置くと、2030年度の目標の2年前にあたる。

その前に、反動の年がある。会社は2026年度について、大阪・関西万博の需要がなくなり、事業利益は1,240億円にとどまると見ている。当期の業績には、万博の追い風が含まれていたことになる。

一方で、資産売却を進めることで、純利益は790億円を予想している。利益の水準を、売却で支える設計だ。

その先には、2032年に鉄道の大型工事の完成が控える。2040年度には「従来の延長線上にはない成長」を掲げている。

面接での使い方

課題指摘として「万博の反動を、資産売却だけでなく本業の伸びでどう埋めるのか」と問える。最新ニュースを聞かれたときも、万博の翌年という文脈で答えられる。

1-3. 利益の半分は不動産——鉄道を持つ不動産会社

この会社の中心は不動産だ。事業ごとの利益で見ると、不動産は連結営業利益の52.8%を占める。事業ごとの資産でも、総資産の59.5%を不動産が持つ。

最大の開発案件は、大阪駅北側の「グラングリーン大阪」(うめきた2期)だ。すでに440億円が支払われ、投資予定額は「未定」とされている。

事業領域は6つある。都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送だ。阪神タイガースや宝塚歌劇も、このグループの事業に含まれる。

面接での使い方

志望動機では「鉄道と不動産を一体で動かす点に惹かれた」と、利益の構成を根拠に語れる。職種の希望を聞かれたときも、不動産がグループの稼ぎ頭だという事実を前提に話せる。

1-4. 年収は会社で違う——919万円、794万円、611万円

働く側の事実も、有報に出ている。この会社は純粋持株会社で、本体の従業員は241人だ。純粋持株会社とは、自らは事業をせず、グループを束ねる会社である。

そこで有報は、従業員が多い2社の平均年間給与も載せている。

・阪急阪神HD(持株会社):919万円
・阪急電鉄(都市交通):794万円
・阪急交通社(旅行):611万円

利益率の高い事業ほど、年収も高い傾向がある。阪急交通社は「従業員が最大の資本」と最も踏み込んだ方針を書くが、実際の年収は3社で最も低い。

連結の従業員は23,867人で、5期で4.4%増えた。

面接での使い方

「どの会社・職種で働くかで処遇が変わる点を理解したうえで志望している」と伝えられる。逆質問では、人的資本への投資方針が現場の処遇にどう表れているかを聞ける。

第2章 鉄道業の収益構造

2-1. 鉄道は効率が高いが、利益額は不動産が約2倍

都市交通(鉄道)の利益率は16.47%だ。不動産の16.50%とほぼ同じ高さで、鉄道単体の効率は低くない。

ただし利益額と資産では、不動産が鉄道の約2倍ある。関東の私鉄3社(小田急・京急・京王)のうち、不動産が交通を上回るのは京王だけだ。阪急阪神は、その差が最も大きい。

背景には梅田がある。阪急うめだ本店、グランフロント大阪、阪神梅田本店と、駅そのものが巨大な商業拠点になっている。鉄道が人を運び、人が集まる場所を不動産が持つ構図だ。

鉄道の投資は時間軸も長い。淡路駅付近の連続立体交差化は、2008年9月に着工し、2032年3月に完成予定だ。行動規範にも「中長期的な視点で考えます」とある。

面接での使い方

鉄道志望でも、不動産と連動して稼ぐ構図を前提に志望動機を組み立てられる。逆質問では、長期工事の期間に若手がどんな役割を担うかを聞ける。

2-2. 旅行は売上の24.6%、利益は4.3%

旅行は営業収益で、全社の24.6%を占める。都市交通を上回る規模だ。ところが利益は、連結営業利益の4.3%にすぎない。

利益率は1.83%で、不動産の16.50%と大きく開く。ツアー代金は総額が売上に立つが、大半は航空券やホテル代として支払われる。手元に残る手数料は少ない。

会社は旅行事業の伸長も成長策に挙げている。売上の大きさと利益の小ささを、どう縮めるかが論点になる。

面接での使い方

課題指摘として「売上は大きいが利益率が低い旅行で、利益を上げるにはどこを変えるか」と提案型で話せる。逆質問では、旅行事業の利益を伸ばす具体策を聞ける。

阪急阪神HDの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(2027年3月期は減益計画——万博とプロ野球の反動/営業CFが40.9%減り、フリーキャッシュフローは△1,114億円/旅行と国際輸送——売上の30.2%で、利益の5.9%/ROE 7.3%と自己資本比率31.2%)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。営業収益1兆2,035億円(+8.7%)・営業利益1,271億円(+14.7%)・純利益785億円(+16.6%)と過去最高を更新し私鉄4社で唯一の全項目増益、7セグメントすべてが増収し6つが増益・国際輸送は黒字転換、不動産は利益の52.8%と資産の59.5%を占め利益率16.50%が都市交通16.47%をわずかに上回る一方で旅行は売上の24.6%を占めながら利益率1.83%、有報が開示するグループ3社の平均年収は持株会社919万8,043円・阪急電鉄794万3,736円・阪急交通社611万8,594円と1.50倍の差、営業CFは△40.9%で投資1,630億円によりフリーキャッシュフローは△1,113億円、そして2027年3月期は万博・プロ野球特需の剥落により営業△4.3%の減益計画——阪急阪神ホールディングスの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 鉄道業の構造的課題——2027年3月期は減益計画——万博とプロ野球の反動/営業CFが40.9%減り、フリーキャッシュフローは△1,114億円/旅行と国際輸送——売上の30.2%で、利益の5.9%/ROE 7.3%と自己資本比率31.2%
  • 第3.5章 面接前に押さえる阪急阪神HDの最新ニュース10本——年収1.50倍差・不動産52.8%・2027年計画まで
  • 第4章 内定者の正体——「鉄道が好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——年収920万・794万・612万の読み方と、7セグメントのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——持株会社241人の意味、人材戦略、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 阪急阪神HDの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第188期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は920万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 阪急阪神HDの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第188期)では、提出会社(単体)が241人、連結が23,867人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 阪急阪神HDが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。