SGホールディングス(9143)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、SGホールディングスを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「利益の78%は宅配便」です。
有報の数字(第20期)
- 売上高
- 1兆6,448億円
- 純利益
- 591億円
- ROE
- 10.5%
- 従業員数(連結)
- 60,483人
- 従業員数(単体)
- 242人
- 平均年間給与(単体)
- 786万円
- 平均年齢
- 38.5歳
- 平均勤続年数
- 9.9年
出典:SGホールディングスの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
SGホールディングスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、SGホールディングスに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはSGホールディングスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、SGホールディングス株式会社 有価証券報告書 第20期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
SGホールディングスは、佐川急便の宅配便で稼いだお金を、海外の国際物流と冷たい物流に注ぎ込んでいる会社だ。
知っておきたいことは3つある。
・稼いでいるのは、いまも宅配便だ。セグメント利益の78.3%をデリバリー事業(佐川急便など)が出している。
・賭けているのは、まだ稼いでいない事業だ。2025年5月に台湾の国際物流会社を約10億ドルで買った。それでもグローバル物流の営業利益は1億円台にとどまった。
・荷物は増えたが、1個あたりの値段は下がった。取扱個数は4.0%増えた。一方で小さな荷物が増え、平均単価は下がったと有報は書く。
この記事では、宅配便の稼ぎ方、海外への賭け、働く人の数を確かめ、面接で自分の言葉で語れる形にする。
第1章 SGホールディングスは何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で決めた目標——2028年3月期に営業利益1,100億円・ROE12%
会社は2026年3月期から3年間の中期経営計画「SGH Story 2027」を動かしている。最終年度の2028年3月期に置いた目標は、営業利益1,100億円とROE12%だ。
ROEは、株主から預かったお金でどれだけ利益を出したかを示す割合で、当期は10.5%。営業利益は902億円で、目標まで2割ほど足りない。長期では2031年3月期にROE15%を置く。
方針は「トータルロジスティクスの高度化とグローバル物流の基盤拡大」。運ぶだけでなく、保管や国際輸送まで丸ごと請け負う、という意味だ。
志望動機では「運ぶ会社から、物流を設計する会社へ」という方向に乗せて語れる。逆質問では、営業利益の残り2割をどの事業で埋めるかを聞ける。
1-2. 減らす事業と増やす事業——2年で3社を買い、中国の1社を手放した
増やす側の動きは速い。
・2024年7月:冷蔵・冷凍物流のC&Fロジホールディングス(現・名糖運輸)を買収
・2025年5月:台湾の国際物流会社Morrison社を約10億ドルで買収
・2025年11月:幹線輸送の主要な委託先だったディーラインを100億円で買収
減らす側では、2025年11月に中国の物流会社の出資持分を売った。
フォワーディングの買収は、2014年のスリランカ・エクスポランカ社に続く2社目だ。得意分野(海上・アパレルと、航空・半導体)は別だ。会社は「ロールアップ」とは言っていないが、同じ領域を足し算で厚くする動きと読める。
課題指摘に使える。「買った会社を1つのチームにできるか」が、これからの勝負どころだと言える。
1-3. 入社時期と中計の関係——28卒は答え合わせの直後に入る
中計の最終年度は2028年3月期だ。28卒の入社は2028年4月。達成したかどうかが出た翌月に入る。
その間に、関東と関西のハブセンター(荷物を仕分ける大型拠点)の自動化設備が2026年7月に、九州が2028年6月に完了する予定だ。新しい拠点を、次の中計で利益に変える時期に入社する。
志望動機では「次期中計の初年度に入る世代として」と時間軸を示せる。逆質問では、次期中計で若手に任せたい領域を聞ける。
1-4. 稼ぎ頭はどこか——宅配便が78%、7,926人の国際物流は1億円
デリバリー事業の営業利益は701億円で、全体の78.3%を占める。一方、グローバル物流事業は売上を25.4%伸ばしたが、営業利益は1億3,700万円で、前期から96.1%減った。米国の通商政策で、アジア発北米向けの運賃と荷物が落ち込んだためだ。
逆に目立つのが不動産事業で、97人で104億円の営業利益を出した。
会社が賭けている場所と、いま稼いでいる場所がずれている。
課題指摘の柱になる。「国際物流を宅配便に次ぐ柱にする計画だが、当期はまだ利益にほぼ貢献していない」と数字で言える。
1-5. 働く側の事実——持株会社242人と、佐川急便3万8,920人
連結の従業員は6万483人だ。これとは別に、パートナー社員などが年平均で4万5,281人いる。
持株会社のSGホールディングス単体は242人で、平均年齢38.5歳、平均勤続9.9年、平均年間給与786万4,340円(前期比+2.24%)である。
最大の事業会社の佐川急便は3万8,920人で、平均年齢44.2歳、平均勤続15.3年、平均年間給与564万1,733円(前期比+0.01%)だ。
逆質問に使える。「佐川急便と持株会社の間で、若手はどう行き来するのか」を聞けば、組織を読んだ学生だと伝わる。
第2章 宅配・物流業の収益構造
2-1. 宅配便は「固定費のネットワーク」で稼ぐ
宅配便は、全国に拠点とトラックと人を先に用意する商売だ。網を張るコストは荷物の数であまり変わらないので、荷物が増えるほど1個あたりのコストは下がる。逆に、網を維持する費用(人件費・外注費・燃料)が上がると、値上げしない限り利益は削られる。
デリバリー事業の営業利益率は6.7%。人件費や委託費が上がる中、運賃の見直しで率を保ったと有報は書く。
志望動機では「網の効率を上げる仕事」に関わりたいと語れる。課題指摘では、コスト上昇を価格に移せるかを論点にできる。
2-2. 企業の荷物に強い佐川、という立ち位置
宅配便は大手3社が競う市場で、有報も「大手3社での競争が激化」と書く。
その中で佐川急便は、企業からの荷物(BtoB)と、企業から個人への荷物(BtoC)をまとめて「fromB」と呼び、ここに力を集めてきた。約2万人のセールスドライバーが、集荷をしながら営業もする。
一方で、大手のEC事業者が自前の配送網を広げている。
志望動機では「法人のお客さまの物流全体を提案する仕事」と具体的に言える。逆質問では、EC事業者の自前配送をどう見ているかを聞ける。
2-3. この構造で働く人——社員6万人と、外の力
宅配便の個人宅への配達のうち、7割程度はパートナー企業に委託している。長距離輸送も大部分が委託だ。
この会社の網は社員だけでは回らない。2024年4月から運転手の残業に上限がかかり(いわゆる2024年問題)、外の力を確保するコストは上がり続けている。
課題指摘に使える。「社外のパートナーとどう網を守るか」は、どの職種でも問われる。
SGホールディングスの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(個数と単価のねじれ/人と委託に頼る網/運賃市況に振られる国際物流/買収で膨らんだのれんと借入)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
■この会社の面接で落ちる人の共通点
「ECが伸びているので、宅配便はこれからも成長すると思います」と言ったあとに、面接官から「荷物は4%増えましたが、平均単価は下がっています。それでも成長と言えますか」と返されて、言葉が止まる。第4章では、この止まり方を3パターンに分けて、どこで差がつくかを書いた。
■逆質問の1本目だけ、ここに置いておく
「宅配便の取扱個数は13億6,000万個と前期より4.0%増えましたが、平均単価は下がったと有報にありました。2027年1月の運賃改定(飛脚宅配便で平均約13.8%)は、個数を多少失っても単価を取りにいく判断と理解してよいでしょうか。」
この質問に必要な数字は、個数の伸び4.0%と、改定率約13.8%の2つだ。残り6本は、Morrison社の統合、パートナー企業との関係、冷蔵・冷凍物流の伸ばし方、ROE12%への道筋、女性管理職比率を、同じ型で組んである。
ここまでが無料パートです。セグメント利益の78.3%がデリバリー事業、グローバル物流は営業利益1億3,700万円(△96.1%)、取扱個数は+4.0%、ROE10.5%と中計目標12%——SGホールディングスの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 宅配・物流業の構造的課題——個数と単価のねじれ/人と委託に頼る網/運賃市況に振られる国際物流/買収で膨らんだのれんと借入
- 第3.5章 面接前に押さえるSGホールディングスの最新ニュース10本——運賃改定の平均約13.8%・第1四半期の営業利益200億円・通関業の許可取消まで。1本ごとに「面接で使うなら」
- 第3.6章 数字で補足——5期の推移・セグメント別の利益と人員・ROEの分解・財務・株主還元・リスク要因
- 第4章 内定者の正体——「物流は社会インフラだから」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収786万4,340円と佐川急便564万1,733円の読み方と、6万人グループでのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——佐川急便の勤続15.3年の読み方、女性役員比率16.7%と女性管理職12.2%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本(それぞれの狙いつき)
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生