NXHD(9147)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、NXHDを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「過去最大2,070億円の買収」です。
有報の数字(第4期)
- 売上高
- 2兆5,748億円
- 純利益
- 27億円
- ROE
- 0.3%
- 従業員数(連結)
- 77,925人
- 従業員数(単体)
- 296人
- 平均年間給与(単体)
- 833万円
- 平均年齢
- 47.5歳
- 平均勤続年数
- 22.2年
出典:NXHDの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
NXHDを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、NXHDに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはNXHDの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社 有価証券報告書 第4期(2025年1月1日-2025年12月31日)、および2026年12月期第2四半期決算・業績予想修正(2026年8月7日公表)に基づきます。本文ではNIPPON EXPRESSホールディングスを「NXHD」と表記します。
NXHDは、海外の会社を買って大きくなる道を選んだ会社だ。その賭けの成否は、まだ数字に表れていない。
知っておきたいことは3つある。
・NXHDは2028年度までに、売上3兆円・事業利益1,500億円・ROE10%以上を目指している。28卒が入社する年に、答え合わせが来る。
・2025年12月期に、欧州の買収で生じた「のれん」を592億円減損した。のれんとは、買収額が相手の価値を上回った分のことだ。翌2026年4月には、カナダで約2,070億円の買収を発表した。
・国際物流は、船や飛行機を持たずに手配して稼ぐ商売だ。利益率が低く、運賃相場で売上が振れやすい。
この記事では、会社が何に賭け、どこがまだ届いていないのかを確かめる。
第1章 NXHDは何に賭けているのか
1-1. 3つの賭け——2028年度に売上3兆円、事業利益1,500億円、ROE10%以上
NXHDは、日本通運を中核とするグループの持株会社だ。2022年1月に発足した。創立100周年の2037年に、「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」になることを長期ビジョンに置く。
その途中経過として、2037年度に海外売上比率50%を目指す。2024年1月からの5年間は「NXグループ経営計画2028」で動く。
2028年度の目標は、売上3兆円、事業利益1,500億円、ROE10%以上だ。事業利益は本業のもうけ、ROEは株主から預かったお金に対する利益の割合を指す。
賭けは3つに絞れる。
・M&Aで海外を買う。 中東欧のcargo-partner社、ドイツのSimon Hegele社に続き、カナダのMetro Supply Chain Groupの買収を発表した。
・日本事業を作り直す。 2025年1月に社内カンパニー制を入れた。特積み事業(路線で荷物を集めて運ぶ事業)は名鉄運輸に承継した。
・資産を軽くする。 利益の出にくい事業用資産や不動産を売る。2025年12月には、江東区の物流センターを約1,000億円で売却した。
志望動機で「海外M&Aと国内の作り直しに賭ける会社」と語れる。逆質問では「2028年度の3つの目標のうち、どれが最も難しいか」を聞ける。
1-2. 賭けは口先ではない——4社目の買収と、592億円の減損
M&Aは、すでに4社目に入っている。cargo-partner社、Tramo社、Simon Hegele社、そしてMetro Supply Chain Groupだ。
4社とも、国際物流とコントラクトロジスティクス(荷主の物流を丸ごと請け負う事業)の領域にある。有報は「M&Aによる海外の顧客基盤獲得」を進めると書く。
ただし、買収には請求書が来る。2025年12月期、欧州ののれんを592億円減損した。買った会社の収益が計画に届かないと、のれんは費用として落とす。
理由は欧州の収益性の低下だ。欧州の事業利益は、目標130億円に対して47億円だった。
次に買うのは、約2,070億円のカナダの会社だ。欧州と同じことが起きないかは、買収後の統合で決まる。有報も、統合に取り組むと書いている。
課題指摘で「買った後に利益を出せるかが論点だ」と言える。逆質問では「欧州の減損から、北米の統合で何を変えるのか」を聞ける。
1-3. 28卒が入るのは経営計画の最終年——売上は近く、利益は遠い
経営計画の期間は2028年12月までだ。28卒は2028年4月に入社するので、最終年度の途中に入る。
2025年12月期の売上は2兆5,748億円で、目標の3兆円に近づいている。一方、事業利益は659億円だ。目標の1,500億円まで、残り841億円ある。
ROEは0.3%で、目標の10%以上と開きがある。純利益は26億円だった。のれんの減損は、税金の計算では費用と認められにくい。利益が減っても、税金は減らなかった。
本業の事業利益は前期比3.8%増だった。ROEの低さは、本業の弱さだけが原因ではない。
2026年12月期の営業利益予想は1,200億円だ。このうち428億円は不動産の売却益である。
売上目標は買収で届きそうだが、利益目標は届いていない。28卒は、次の計画を議論する時期に入社する可能性が高い。
志望動機で「利益の改善に貢献したい」と言う根拠になる。逆質問では「売却益に頼らない利益をどう伸ばすのか」を聞ける。
1-4. 稼ぎ頭は日本、足を引っ張るのは欧州
日本(ロジスティクス)は、売上がほぼ横ばいでも利益が9.8%増えた。理由は、料金改定とコスト削減の効果だ。
欧州は、売上が5.2%増えたのに利益は57.4%減った。理由は、各種コストの増加だ。南アジア・オセアニアも利益が40.5%減っている。販売単価の下落とコスト増が響いた。
つまり、国内で稼いだ利益を、海外で買った事業が削る構図になっている。
課題指摘で「海外の利益率を上げることが最大の論点だ」と言える。希望する地域や職種があれば、その地域の利益の動きを逆質問にできる。
1-5. 働く側の数字——従業員7万7,925人、持株会社の平均年収833万円
連結の従業員は7万7,925人で、前期より1,536人増えた。買収で人が増えている。
提出会社である持株会社は296人で、全社共通部門のみだ。平均年齢は47.5歳、平均勤続年数は22.2年、平均年間給与は833万円である。これはグループ全体の平均ではない。
「年収が高い」ではなく、「持株会社の数字であり、グループ全体とは違う」と正確に語れる。逆質問では「グループ全体の人材配置は、海外と国内でどう変わるか」を聞ける。
第2章 国際物流という産業の収益構造
2-1. 自分で運ばずに運ぶ——フォワーディングという商売
国際物流の主役は、船や飛行機を持たない。荷主から貨物を預かり、船会社や航空会社のスペースを買って、手配する。これをフォワーディングという。
利益は、仕入れる運賃と売る運賃の差で決まる。運賃が動くと売上も大きく振れるが、利益率は数%にとどまる。
NXHDの事業利益率は2.6%だ。経営計画の目標は5.0%で、まだ半分ほどにとどまる。
課題指摘で「運賃に左右されにくい荷主との関係を増やすことが鍵だ」と言える。逆質問では「利益率5.0%に向けて、何を変えるのか」を聞ける。
2-2. 倉庫を持って稼ぐ——コントラクトロジスティクスという商売
もう一つの商売は、荷主の物流業務を丸ごと請け負うことだ。倉庫を運営し、在庫を管理し、配送まで担う。3PLとも呼ばれる。
フォワーディングと違い、倉庫と人を持つ。固定費は重いが、契約は数年単位で、荷主は離れにくい。利益率は高くなりうるが、荷主を失えば倉庫が空く。
NXHDが国内で建てる倉庫も、海外で買う3PLも、この商売への重心移動だ。ただし資産が増えるので、会社は資産に対する利益が5%を下回る資産は売る方針をとる。
志望動機で「持って稼ぐ事業に挑む会社」と語れる。逆質問では「持つ資産と売る資産を、どう選別しているのか」を聞ける。
2-3. 日本という足場——売上の48.9%、そして縮む市場
NXHDの売上の48.9%は日本にある。有報は、今後も事業の核は日本事業と日系企業との取引になると書く。
同じ有報は、日本国内のB to Bの貨物輸送需要は減ると見込む。軸足の日本は縮むので、海外を買い、国内は値上げと効率化で利益を上げる。
2026年1〜6月期は、日本の営業利益が44.3%増えた。値上げと効率化が効き始めている。一方、海外売上比率は35.4%で、2037年の50%までまだ遠い。
志望動機で「縮む国内と伸ばしたい海外の両方を見る会社」と語れる。逆質問では「国内の値上げ効果は、いつまで続くと見ているか」を聞ける。
NXHDの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(のれん——買った売上と、落ちる利益/事業利益率2.6%——目標5.0%までの距離/ROE0.3%と総還元55%——利益が出ない年に、還元は続く/人——7万7,925人、日本通運の女性管理職4.1%、そして足りない人)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。欧州で592億円を減損した翌年に北米で2,070億円を買う、売上2兆5,748億円で営業利益+4.9%・純利益△91.5%、実効税率90.01%、ROE0.3%で動いたのは純利益率、事業利益率2.6%に対し目標5.0%、日本が売上の48.9%でその市場は縮む。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 NXHDが抱える構造的課題——のれん——買った売上と、落ちる利益/事業利益率2.6%——目標5.0%までの距離/ROE0.3%と総還元55%——利益が出ない年に、還元は続く/人——7万7,925人、日本通運の女性管理職4.1%、そして足りない人
- 第3.5章 面接前に押さえるNXHDの最新ニュース10本——Metro Supply Chain Groupの買収、上期の営業利益+56.7%、通期予想1,200億円への上方修正、インド半導体物流まで
- 第4章 内定者の正体——「グローバルに働きたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収833万1,000円の読み方と、連結77,925人・持株会社296人でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続22.2年の読み方、女性役員比率36.0%と日本通運の女性管理職4.1%、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生