大林組(1802)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、大林組を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「受注2割減で利益1.4倍」です。
有報の数字(第122期)
- 売上高
- 2兆5,863億円
- 純利益
- 1,738億円
- ROE
- 14.4%
- 従業員数(連結)
- 18,031人
- 従業員数(単体)
- 9,472人
- 平均年間給与(単体)
- 1,239万円
- 平均年齢
- 42.0歳
- 平均勤続年数
- 15.9年
出典:大林組の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
大林組を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、大林組に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは大林組の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社大林組 有価証券報告書 第122期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
大林組は、受注を減らしながら利益を大きく伸ばし、国内建設の外にも賭けている会社だ。
知っておきたいことは3つある。
第122期は売上がほぼ横ばいなのに、営業利益が36.6%増えた。工事の採算が良くなったためだ。
会社は「国内建設と同等以上」を建設の外で稼ぐ体制を掲げ、豪州の建設会社の買収に動いた。
平均年間給与は1,239万円で、前期より8.7%増えた。働く側にとっても大きな事実だ。
この記事では、大林組が何に賭け、どこで利益が出て、どこに課題があるかを、面接で語れる形で確かめる。
第1章 大林組は何に賭けているのか
1-1. 賭けは「国内建設の外で、国内建設と同じだけ稼ぐこと」
有報には、会社が目指す姿が1文で書かれている。国内建設を中核とし、それ以外の事業が国内建設と同等以上の業績を出す体制だ。
土台は2022年3月に公表した中期経営計画2022と、2024年5月の追補である。中期経営計画とは、会社が数年先の目標を自分で決めた計画のことだ。
この賭けには、すでに金が動いている。2026年6月18日、豪州などで建築を手がけるMultiplex社を完全子会社にする契約を結んだ。取得を担う英国の持株会社の資本金は、増資後で約886億円の予定だ。
翌期の設備投資計画は840億円で、最大の配分先は不動産の380億円(45.2%)である。建設の360億円を上回る。
28卒が入社する2028年4月は、買収した会社と不動産投資が積み上がった後の局面にあたる。
志望動機で「国内建設の外で稼ぐ」という賭けに自分が加わりたい理由を語り、逆質問で買収後の統合の進め方を尋ねられる。
1-2. 第122期決算——売上は横ばい、利益は1.4倍
連結売上高は2兆5,862億円で、前期比0.2%減。ほぼ横ばいだった。それでも営業利益は1,946億円と、36.6%増えた。
増益の中身は工事の採算改善だ。完成工事総利益率(工事の売上から原価を引いた粗利の割合)は、10.76%から13.64%へ上がった。
有報も、国内建築での追加・変更工事の獲得や、採算の良い案件の寄与が高まったことを理由に挙げている。売上を増やして稼いだ年ではない。
「売上ではなく採算で利益を伸ばした会社」と説明でき、課題指摘では、この採算が続くかを論点にできる。
1-3. 国内建築は売上を減らして利益を増やし、海外建築だけが減益
セグメント(事業の区分)で見ると、国内建築事業の売上は14.8%減った。一方で営業利益は65.8%増えている。利益率は4.70%から9.14%へ上がった。
反対に、海外建築事業だけが減益だった。売上は6.3%増えたが、営業利益は6.3%減り、利益率は2.36%と全区分で最も低い。
海外事業全体では、従業員の29.2%、売上の32.6%を占める。だが利益は13.8%にとどまる。
不動産事業の利益率は18.71%と最も高い。しかも従業員は331人しかいない。
課題指摘では「海外は人も売上も大きいが利益が追いついていない」と指摘し、自分がどう貢献するかにつなげられる。
1-4. 働く側の事実——平均年収1,239万円、従業員は5期で16.6%増
平均年間給与は1,239万3,648円で、前期比8.7%増だった。同じスーパーゼネコンの大成建設は1,191万円である。
平均年齢は42.0歳、平均勤続年数は15.9年だ。連結従業員は18,031人で、5期前の15,470人から16.6%増えた。
提出会社単体の従業員は9,472人で、海外は243人にとどまる。海外の実務は、現地の子会社が担っている。
志望動機で待遇面の事実を裏づけに使えるほか、海外の仕事が現地法人中心という点は、配属や働き方の逆質問になる。
第2章 総合建設業の収益構造
2-1. 「受注を選べる」という強さ
建設業の鍵は繰越工事高、つまり受注済みで未完成の工事の残高だ。単体の繰越工事高は2兆9,102億円で、当期売上の約2.0年分にあたる。
2年分の仕事を抱えていれば、採算の合わない案件は断れる。実際、単体の受注高は20.6%減ったが、繰越工事高は4.7%増えた。
量を減らして質を取った判断が、先に見た営業利益36.6%増につながっている。
「受注を減らす判断ができるのは、手持ち工事が十分にあるから」と語れる。逆質問では、この水準を今後も保つ考えを聞ける。
2-2. 「特命」が示すブランドの実体
特命とは、競争入札にかけず、発注者が施工者を指名して発注する方式だ。価格の比較にさらされにくい。
建築の特命比率は、60.6%から63.7%へ上がった。単体の建築受注の93.5%は民間発注だ。民間の発注者が、価格だけでなく大林組を選んでいると読める。
土木の特命比率は29.0%と低い。公共工事は入札が原則だからだ。それでも国内土木の利益率は9.59%ある。
志望動機で「指名される理由」に惹かれた点を語り、土木志望なら、入札でも利益を出せる技術を逆質問できる。
2-3. 海外は土木が伸び、建築が課題
海外事業は一律に苦戦しているわけではない。海外土木事業は売上が34.2%増え、営業利益は84.5%増えた。利益率も3.20%から4.40%へ上がっている。
一方、海外建築は先に見たとおり利益率が2.36%にとどまる。同じ海外でも、土木は伸び、建築が課題という差がある。
「海外のどの領域で貢献したいか」を、土木と建築の差を踏まえて具体的に語れる。
大林組の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(海外建築事業の利益率2.36%/受注を減らし続けることはできない/不動産事業への依存/一過性要因と、来期の減益計画)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上2兆5,862億円(△0.2%)でありながら営業利益1,946億円(+36.6%)・純利益1,737億円(+19.5%)・ROE 14.4%、単体の受注高は△20.6%と2割減らす一方で繰越工事高は2兆9,102億円(約2.0年分)へ+4.7%、特命受注比率は建築で63.7%、完成工事総利益率は10.76%から13.64%へ+2.88ポイント、国内建築は売上△14.8%で営業利益+65.8%、海外は従業員29.2%・売上32.6%で利益13.8%、不動産331人の1人あたり営業利益は6,036万円、平均年収1,239万3,648円は+8.7%——大林組の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 総合建設業の構造的課題——海外建築事業の利益率2.36%/受注を減らし続けることはできない/不動産事業への依存/一過性要因と、来期の減益計画
- 第3.5章 面接前に押さえる大林組の最新ニュース10本——特命63.7%・受注△20.6%・第1四半期営業利益2.1倍まで
- 第4章 内定者の正体——「ものづくりが好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,239万円の読み方と、国内・海外・不動産のキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続15.9年の意味、フェロー制度、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生